高層建築物解体 における昇降式養生システムを用いた解体工事 De mo l i t i o nMe t hodf o rHi ghィi s eBui l di ngUs i ngby" MOVEHAT"
内海 伸樹* 久田 勝啓*
NobukiUtsumi KatsuhiroHisada 千葉 実車 秋 山 竜也 * MinoruChiゎa TatsuyaAkiyama 林 輝男*
TeruoHayashi
要 約
当六本木三丁 目解体工事 は,首都高速道路3号線 と同環状線 に隣接 した敷地 に建設 された高層(19 階),中層棟 (2枚),低 層棟,駐車場棟 の解体工事 で
,
「災害0,環境保全 に配慮」 を基本理念 とし た ものであった. このため,晶質の確保お よび廃棄物処理 まで含めた環境負荷低減,周辺部 に対す る危険予知 を考慮 した計画 を主眼 に置 き,高層棟 の解体 にあた り「MOVEHAT解体工法」を発案, 実施工 を行 った. この解体工法 は,世界で も前例 のない移動式養生 フ レームを用 いた方式で,短時 間に効率良 く解体工事 を行 える ものである.目 衣
§1.は じめ に
§2.MOVEHAT解体工法の基本方針
§3.解体計画概要
§4.基準階構造体解体作業概要
§5.おわ りに
S l. は じめに
従来の高層 ビルの解体方法 は、外部足場養生 を架設 し、
大型重機で解体す る工法であるが、作業時の飛来落下 ・ 墜落の危険、所定強度 を確保す るための外部足場 の補強
とい う大 きな問題が残 されている。当工事現場 の周辺 に はオフ ィスやホテルな どが集 中 し、 さらに、首都 高速道 に接 しているため、落下物 は重大 な第三者災害 を引 き起 こす ことは明白である。 また、大型重機 の荷重 に対応す るス ラブ補 強 を行 う作業 は、工事 を進め る上で多大 な負 担 となる。 このため、高層棟 (地上19階、PH2階、最高 高 さ74.8m)解体 を施工す るにあた り、安全面、環境面 を考慮 した昇降式養生 フ レーム (以下MOVE HAT図‑
1、図‑2)を用いた解体工法 (以下MOVE HAT解体工
*東京建築支店 六本木出張所
摘図如S=1/60)
図‑1 MOVEHAT断面図
高層建築物解体における昇降式養生システムを用いた解体工事
法 (特許出願お よび商標登録 l‥障琵河 =f)を発案 し,解体工 事 を行 った.
§2 MOVEHAT解体工法の基本方針
安全確保 と環境保全 を施工計画の重点課題 として,T 記の基本方針 に基づ き,MOVE HAT解体工法の検討 を 行 った.
①地上で地組 した養生パ わ レの昇降式 によ り,高所での 外部作業 をな くす.
②解体作業部分 を養生パ わ レで覆い
,飛
散物や騒音 を抑 制 し,安全確保 と環境保全 を図る.③躯体 をピース大 に解体 し, ウインチで1階 に降ろす こ とで,投 げ降ろ しによる危険をな くす.
④小型軽量の解体機械 を使 うことで排気 ガス発生量 を低 減 し,騒音 ・振動の発生 を抑制す る.
(釧 草体工事 における廃棄物の分別処理の さらなる推進 と リサ イクル率の向上 を実現す る.
$3 解体計画概要
3‑ 1 事前解体作業
事前解体作業の概要 を図‑3お よび①〜④ に示す.
(∋内部事前解体
西松建設技報 VOL.24
構造体解体の事前工事 と して
,
「内装撤去」,
「アスベ ス ト除去」,
「スラブ受け トラス撤去」,
「設備機器撤去」
お よび 「ELV撤去」 を行 った.
②pH階解体
安全確保のため,外壁面はMOVE HATが最ー日管まで 上昇 し,飛散養生が完了 した段階で解体 した.
③地下埋 め戻 し準備
地上部構造体の解体で発生す るコンクリー トガラは, 作業床確保のため,地下に埋戻 し,場内 リサ イクル処分
とした.
④MOVEHATの組立
MOVE HATは,地組 にて組立 を行い,その後 ガイ ド 柱の接続 を行いなが ら建物外周 に沿って上昇 させた.
3‑ 2 MOVEHATによる解体
①基準階構造体の解体 (19F〜4F)
MOVE HATを解体作業階の高 さに停止 させ,外部‑
の飛散防止の上,構造体 を解体 した.構造体の解体 は, MOVE HATに常設す る 「PC板 テルハ」,「ロー ドカ ッ ター」
,
「ミニクレー ン」お よび 「ガス切断機」等 を使用 し,スラブ,梁,柱等 をピース大に切断 し,切除 した.外装のPC版 カーテ ンウオールは,PC版テルハ を使用 し 割付毎 に取外 した.廃棄物 は逐次,荷下ろ しを行い,PC 版やスラブは,地上で破砕 しコンクリー トガラとし,地
外J呂3滋生の計画校鍔は次の迫りですa
外す昌j養生tTL、施設全体を終縁可綾なものとし、解体作芸を行う独物のレベル に停止 させ 、その内部で手絡迄件の郎体を行いますo
図‑2 MOVEHAT概要
⑪天井ダ外解体 ⑩天井トラス解体 ⑨天井軽天解体 ⑧天井タりト保温材撤去 ⑦梁、柱クうスト ル撤去
図‑3 事前解体作業
下 に埋戻 した. これを準 じ下の階へ と繰 り返 し行 った.
②
MOVEHAT
撤去MOVEHAT
は,
4階の解体が終了 した後撤去 した (南 側建物の外構 レベルが高 く,4
階以下 にMOVE HAT
は 下降出来ない).隻4 基準階構造体解体作業概要
4‑ 1 解体概要
基準階構造体解体作業 フローチ ャー トを図‑4,解体 作業手順 を図‑5,解体サ イクル工程図を図‑6に示す.
(ヨガラス ・サ ッシの解体
外装
P
C版 の 窓 ガ ラス (2,100mmx650mm x66枚)は ガラス付で障子 ごと吊元 よ り,基本的に人手 (部位 によ りPC
版テルハ利用)によ り取外 した.取外 した障子 は,1
階 まで下ろ し,ガラス とアル ミに分別 して処分 した.なお,枠側 は,存置 し
PC
版取外 し後の破砕 時 に分別 し て処分 した.② スラブ解体
解体 フロアは,ロー ドカッターによ り切断・解体 した 後,下階 フロア (作業 フロア)のスラブ
援
降機 (或いは フォークリフ ト)を用い,作業 フロアに降ろ した.なお, 200mmを越 える屋上等 のス ラブ (防水押 さえ コ ンク リ ー トを含む)は,スラブ上層 (上配筋) を一次切断 し,基準階構造体の解体 (19F・‑4F)
①ガラス・サッシュ解体
②スラブ解体
③ 内部鉄骨解体
④PC版撤去
⑤外部鉄骨解体
⑥昇降式養生フレーム ダウン
MOVEHAT撤 去
低層階 構 造 体 の解 体
(3F‑ 1F) 地上階解体完了
MOVEHAT組立用足場解終
図‑4 基準階構造体解体作業 フローチ ャー ト
高層建築物解体における昇降式養生システムを用いた解体工事
その後下半分 を二次切 断 した.解体 したス ラブは
,
1階 作業ヤー ドに下ろ し,破砕 して鉄筋 とコンクリー トガラ に分別 した.(む内部解体
スラブ切断を行 った後,解体 フロアの鉄骨梁の切断を 行 った.なお, フランジ上のスラブコンクリー トは,ス ラブ解体前 に梁切断部分 を位置出 しし,ハ ツリ取 った.
梁切断は下記のA,B2工法 にて行った.
《A工法≫
梁 を ミニクレー ンにて仮 吊 りし,柱 との仕 口部分 をア セチ レンガスにて切断,その まま1階へfろ した.
《B工法≫
梁の片側 を仮吊 りせず にアセチ レンガスにて片側 を切 断 し,その後,反対側 を梁の上 フランジか ら下側 に向か ってガス切断 し,最初の切断側 を拝 ませ,作業 フロアに 落 とし,最後 に下 フランジを切断 し落下 させた.
( むPC
版撤去MOVEHAT
に備 え付 けのテルハ(
横行ホイス ト) を 使用 しフ ァスナー部 を切 り離 して取外 した.PC
版 (〟 般部) は開口部 を,無窓の版はコア穴を開けた後,玉掛 けを行い,テルハ にて吊込みPC
版 フ ァスナー を切 断 し て取外 した.その後,テルハ にて横行 させ,東西面にあ る外郭 シャフ トよ り,
1階 まで降ろ し破砕 した.南北面 の妻側PC
版 は取外 し後,フロア内部 に取込み,内部 開外部シャフト
西松建設技報 vOL.24
口よ り1階作業 フロア‑降ろ し破砕後,ス クラ ップ, コ ンクリー トガラな どに分別処分 した.
(彰外部鉄骨解体
外周部の鉄骨 は,ス ラブ切 断 と外装
PC
版 を撤去 した 後解体 した.梁部分 はP C
版 テルハ を利用 し仮 吊 りした 状態で梁の両端部 をアセチ レンガスで切断 した. また, 柱 は建物内側 に レバーブロックで引 きなが らアセチ レンガスで切断 した.
(
むMOVEHAT
のダウン 4‑2 上昇作業(∋上部 シーブ取外 しお よび仮 吊込み
上部 シーブユニ ッ トをガイ ド柱真上 にある電動チ ェー ンブロック (2台)で吊上げ,昇降式養生 フ レーム最上 部に仮吊 りを行 った.
② ガイ ド柱継 ぎ足 し
1階分上昇するため,ガイ ド柱 を1本継 ぎ足 した.ガイ ド柱 は,外部 シャフ トよ り荷揚 げ を行 い,テルハ にて4 カ所のガイ ド柱 まで横行搬送 し,ボル ト接合 した.また, 壁継 ぎ用 プ レー トを本体柱 に潜接 した.
(む上部 シーブ再セ ッ ト
上部 シーブユニ ッ トをガイ ド柱上部に再セ ッ トし,ボ ル ト接合 し,上部 ・下部 シーブ間のワイヤーを巻 き戻 し 緊張 した.
㊥ 0 ㊥ ㊥ ㊥ ㊥ ㊥ 0 0
図‑5 解体作業手順図
G ) G ) G ) G) G) G )
Oe ) oolL r OO I J cD :Cloa clco。crcozc1.OZL
( むMOVEHAT
地切 りMOVE HAT
をTr嘩防止 ス トッパ ー よ り浮 き上が ら せ, シーブお よびガイ ド柱の状況 をロー ドセルによ り荷 重 を確認 した.(9昇降式養生 フレーム上昇
10cm毎 に
MOVE HAT
を停止 させ,全体 の姿勢 を点 検 し,10cm以上 の不 陸が生 じた場合,水平 となる よう 補正 を行 った.4‑ 3 下降作業
①昇降式養生 フレーム地切 り (上昇作業(むと同 じ) (参下降防止ス トッパー取外 し
(む昇降式養生 フレーム下降 (上昇作業(彰と同 じ) (む下降防止ス トッパー点検
ス トッパー取 り付部ボル ト継手 を点検 した.
①上部 シープ取外 し (上昇作業(おと同 じ)
⑥ ガイ ド柱取外 し
下降後,不安 となったガイ ド柱 を1本取外 し,テルハ にて横行 させ,外部 シャフ トよ り下 ろ した.
(む上部 シーブ再セ ッ ト (上昇作業③ と同 じ)
4‑ 4 昇降作業管理
MOVEHAT
の運用上,最 も重要な事項は上昇 ・下降 時の運用管理である.管理系統図を図‑7に示す(1)管理組織 (∋指揮者
全体 を総括 し,チェックリス トを用いて運転 を指示す る.各チ ェックポイン トにおいては,その旨を元方に報 告 した後,次工程 に進める.
(彰運転者
指揮者 の指示 に よ り, リモ コ ン操作 を行 い
,MOVE HAT
の昇降を担 当す る (監視員の報告 に従 う).③昇降監視員
シーブワイヤー (上下 シープユニ ッ ト)の状況 を観察 し,乱巻 き ・キ ンク等が発生 した場合,停止の合図を発 す る.
(彰監視員
昇降フレームと本体建物の干渉,フレーム本体お よび ウインチを観察 し,異常時に停止の合図を発す る.
(む外部監視員
工事区域の外側か ら観察 し,フレームの異常や落下物 の有無 を点検す る.
(2)昇降監視設備 (むロー ドセル
各荷重 を常時確認す るため,4カ所 の下部 シープユ ニ ッ トに設置 した.荷重が不均等 な場合
,MOVEHAT
と 本体建物 との干渉や姿勢の偏 りが考 えられるので確認 を 行 った.step(ら step程) スラブ解体 step@ 内 部 鉄 骨 解 体
数量i 66枚i 日数 巨 5日 散蓋 い 33枚 t 日数 … 2日 致盈 E 82P E 日数 l 2日
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st印(む p c鮫撤去 Sとep⑤ 外部鉄骨解体 step⑥
致盈 l 4 8枚 l 目敏 い .5B 致盈 i SSP 】 日数 】 1‑5日 数量 】 3.5m 】 日数 i o.5日
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図‑6 解体サイクル工程図
高層建築物解体における昇降式養生システムを用いた解体工事
0 ㊥ ㊥㊥ ㊥ ㊥ 0
西松建設技報 voL.24
0 ㊥ ㊥ ㊥ ㊥ 0 0 0 図‑7 MOVEHAT昇降作業管理系統図
(む昇降寸法測定器
水平 を保つため, リボ ンロッ ド, ワイヤ一式測定器 を 併用 し,養生 フレームの姿勢 を4カ所で確認 した.
(釘通信設備
各通信 は,携帯型簡易無線機 を併用す ることで相互の 連絡 を可能 とした. また,元方事務所 にも備 え,状況 を モニ ター した.
(3)運行管理注意事項
①作業 は,チェ ックリス トに基づ き,元方担当者の確認 を得てか ら昇降を行 う.
②昇 降は,10cm毎 に停止 し,昇 降 フ レームの姿勢 を確 認す る.
③水平変位 の許容値 は,最大10cmとし, これ を超 え よ うとする時は,必ず修正 を行 う.
④下降防止ス トッパー,ガイ ド柱付近の眉間ふ さぎの点 検 を重点的に行 う.
① ロー ドセルによる荷重測定デー タを常 にモニ ター し, 10%以上の差が出た場合,監視員に再点検 を命 じ,原
因を調査す る.
$5 おわ りに
19階塔屋2階の建物の解体工事 に 『MOVE HAT解体 工法』 を提案 し,解体施工 を行 った. これにより,周辺 への解体工事 による公害 を最小限にお さえた安全な解体 施工 を実現で きた.今回の施工 を見直 し改善 を行い,棉 来予想 される高層建築物の解体工事へ生か してい きたい
と考えている.
最後に,解体施工時に適切 なご指導頂 きました三星物 産(掬李氏,三井不動産建設㈱ 曽根部氏,尾崎氏 に感謝の 意を表 します. また,今回の工法 を導入す るにあた り, 東京建築支店北村次長,技術研究所有坂副所長,宮下課 長,技術部桜井副課長,建築設計部後藤課長,機材部
川
村副部長,東京建築支店建築部鹿龍課長 をは じめ,多数 の方 々のご協力 に謝意 を表 します.