所得格差の現状について
岩 田 一 政
張 富 士 夫
三 村 明 夫
吉 川 洋
各グラフの(備考)の詳細については、巻末の【グラフ 詳細備考一覧】を参照。
平成21年4月22日
経済財政諮問会議
民間議員提出資料
(平成21年4月22日)
0.25
0.30
0.35
0.40
0.45
0.50
0.55
0.60
1979 81
83
85
87
89
91
93
95
97
99 2001 03
05
07
(年)
全国消費実態調査(二人以上の世帯)
所得再分配調査
(当初所得)
図表1-1 各種調査においても世帯所得の
ジニ係数
は上昇傾向
税・社会保障 による再分配家計調査
所得再分配調査
(再分配所得)
ジニ係数・・・所得分配等における不平等度を表す指標。
0から1までの値をとり、0に近いほど所得分配等が
均等であることを示す。
国民生活基礎調査
所 得 格 差 大 所 得 格 差 小 (備考)総務省「家計調査」、「全国消費実態調査(2004年)」、厚生労働省「所得再分配調査」、 「国民生活基礎調査」 により作成。世帯ベース。詳細は備考一覧を参照。○所得格差は
ジニ係数
、
相対的貧困率
、
年間労働所得150万円以下の労働者の割合
、
いずれの統計でみても、緩やかな拡大を示している。
○ただし、その要因については、以下でみるように精査が必要。
(備考)総務省「全国消費実態調査」により作成。等価変換した世帯員ベース。詳細は備考一覧を参照。7.3
7.5
8.1
9.1
9.5
6
7
8
9
10
11
12
1984
1989
1994
1999
2004
(年)
(%)
図表1-2
相対的貧困率
は緩やかながら増加
19.4%
22.5%
24.3%
18.0%
19.0%
20.0%
21.0%
22.0%
23.0%
24.0%
25.0%
1997
2002
2007
労働者総数に占める割合
(年)
(備考)総務省「就業構造基本調査」により作成。一人当たり。詳細は備考一覧を参照。図表1-3
年間労働所得150万円未満の労働者の割合
は、増加傾向
1
相対的貧困率・・・所得の分布における中央値(2004年290万円)
の50%に満たない所得の人々の割合を示す。
○ジニ係数の上昇要因
高年齢層及び単身世帯では所得格差が大きいため、
高齢者世帯や単身世帯の増加
はマクロ
のジニ係数を上昇させる。
0.20 0.22 0.24 0.26 0.28 0.30 0.32 0.34 0.36 0.38 0.40 25歳 未満 25~ 29 30~ 34 35~ 39 40~ 44 45~ 49 50~ 54 55~ 59 60~ 64 65~ 69 70~ 74 75歳 以上 ▲ 6 ▲ 4 ▲ 2 0 2 4 6世帯の年齢別シェアの変化幅(2004-1989)(右目盛)
ジニ係数(2004)
(%ポイント)
(世帯主年齢)
図表2-1 二人以上世帯のジニ係数(2004年)及び
世帯の年齢別シェアの変化幅(1989~2004年)
(備考)総務省「全国消費実態調査」により作成。詳細は備考一覧を参照。【高齢者世帯の増加】
【単身世帯の増加】
(備考)1.ジニ係数については、総務省「全国消費実態調査」により作成。 2.シェアについては、総務省「国勢調査」により作成。2
0.295
0.300
0.305
0.310
0.315
0.320
0.325
0.330
0.335
二人以上世帯
単身世帯
▲ 8
▲ 6
▲ 4
▲ 2
0
2
4
6
8
シェアの変化幅(2005-1990)(右目盛)
ジニ係数(2004)
(%ポイント)
図表2-2 単身世帯、二人以上世帯のジニ係数(2004年)及び
シェアの変化幅(1990~2005年)
所 得 格 差 大 所 得 格 差 小○年齢階層別にジニ係数の変化を見ると、
60代
の高年齢層の所得格差は
縮小傾向
にあるが、
25歳未満や50代
において、所得格差は
拡大傾向
。
3
所 得 格 差 大 所 得 格 差 小0.200
0.250
0.300
0.350
0.400
0.450
25
歳未満
25
~
29
30
~
34
35
~
39
40
~
44
45
~
49
50
~
54
55
~
59
60
~
64
65
歳以上
2004年
1994年
(世帯主年齢) (備考)内閣府「平成18年度版 年次経済財政報告書」第3-3-7図による。図表3-1 世帯主年齢階層別ジニ係数の推移
▲ 0.07
▲ 0.06
▲ 0.05
▲ 0.04
▲ 0.03
▲ 0.02
▲ 0.01
0.00
0.01
0.02
0.03
25
歳未満
25
~
29
30
~
34
35
~
39
40
~
44
45
~
49
50
~
54
55
~
59
60
~
64
65
歳以上
(世帯主年齢)図表3-2 世帯主年齢階層別ジニ係数の変化幅(1994~2004年)
(備考)内閣府「平成18年度版 年次経済財政報告書」第3-3-7図による。(備考)1.総務省「全国消費実態調査」により作成。 2.近似式により寄与を計算。詳細は注一覧を参照。合計は必ずしも一致しない。
図表4-1 相対的貧困率の上昇要因
+0.4%ポイント
各カテゴリー毎のシェア
各カテゴリー内の貧困率
=
の変化の寄与度
+
の変化の寄与度
99年 9.1% → 04年 9.5%
あ
図表4-2 世帯類型別シェアの推移
(備考)総務省「国勢調査」により作成。詳細は注一覧を参照。○ 相対的貧困率の上昇要因
・
高齢者世帯や単身世帯の増加
が、マクロでみた相対的貧困率を押し上げている。
・これまで
貧困率の比較的低かった世帯
(世帯主が50~64歳の世帯や2人以上の
大人のみの世帯)のカテゴリー内において貧困率が高まっており、それがマク
ロでみた相対的貧困率を押し上げている。
「単身世帯」の シェアの変化 (0.23) 「2人以上の大人のみの世 帯」のシェアの変化 (0.35) その他 (▲0.45) 「2人以上の大人のみの世 帯」の貧困率の変化 (0.28) 「世帯主が65歳以上の世 帯」のシェアの変化 (0.69) 「世帯主が50~64歳の世 帯」の貧困率の変化 (0.22) その他 (▲ 0.47) ▲ 0.6 ▲ 0.4 ▲ 0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0世帯主年齢階級別の寄与度
世帯類型別の寄与度
マクロでみた 相対的貧困率 +0.4%ポイント4
(%ポイント) 7.9 6.5 3.1 21.6 17.7 その他 単身世帯 大人1人と子 供の世帯 2人以上の大 人のみの世 帯 大人2人以上 と子供の世 帯 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1985 2000 2005 (%) (年) 高齢単身世帯 21.10% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50万 円未満 50~ 99万 円 100~ 149 150~ 199 200~ 249 250~ 299 300~ 399 400~ 499 500~ 599 600~ 699 700~ 799 800~ 899 900~ 999 1000~ 1499 1500万 円以上
正社員
パート・アルバイト
派遣
○低所得労働者の増加要因
・正社員が減少する一方、年収が比較的低い
パート・アルバイト
が増加している。
・労働所得150万円未満の労働者には、特に仕事を従(家事等が主)としている女性が
増加している。
(備考)総務省「就業構造基本調査」により作成。全労働者。図表5-1 雇用形態別年収(労働所得)分布(2007年)
▲ 8
▲ 6
▲ 4
▲ 2
0
2
4
正社員
パート・
アルバイト
派遣労働者
契約+嘱託
87年→97年
97年→07年
(%ポイント)
パート・
アルバイト
図表5-2 雇用形態別に見た就業者数の総就業者に占める
シェアの変化幅(20年間)
(備考)総務省「就業構造基本調査」により作成。全労働者。 (備考)総務省「就業構造基本調査」により作成。 年間労働所得150万円未満の就業者の割合が、 1997年19.4%から2007年24.3%まで4.9%ポイント増加した 内訳を属性別に見たもの。 詳細は備考一覧を参照。5
0.7
0.9
1.7
▲ 1.0
▲ 0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
男性仕事主
男性仕事従
女性仕事主
女性仕事従
派遣・契約・嘱託・その他
パート・アルバイト
正社員・役員
自営・家従
(%ポイント)
図表5-3 労働所得150万円未満の就業者数の総就業者に占めるシェアの変化幅
(1997~2007年、男女・仕事の主従・雇用形態別)
○就職氷河期に正社員として就職できなかったフリーターの存在等により
フリーターの年齢構成
は高齢化
している。
○派遣労働者の派遣元に対する要望では、「
正社員として雇用してほしい
」という要望が最も高い。
○両親の年収が少ないほど、4年制
大学進学率
が低く、就職する割合が高い。
33.9
44.6
48.0
55.4
60.7
8.0
29.1
20.7
20.2
18.6
15.7
11.1
10.3
8.8
10.7
9.5
5.6
13.7
8.5
6.6
7.3
15.8
19.8
10.8
6.6
0
10
20
30
40
50
60
70
400万円以下 600万円以下 800万円以下 1000万円以下 1000万円超(%)
4年制大学
専門学校
短期大学
受験浪人・未定
就職など
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 不明 その他 派遣契約外業務を命じないよう管理してほしい 指揮命令系統を明確にしてほしい 派遣契約期間を長くしてほしい 派遣契約の中途解除を避ける努力をしてほしい 適切な労働時間管理をしてほしい 年次有給休暇を取りやすくしてほしい 職場でのいじめやセクハラの防止について責任を持って対応してほしい 苦情の申し立てに対して迅速に対応してほしい 個人情報の保護に配慮してほしい 職場環境(安全・衛生等)を良くしてほしい 派遣前の事業所訪問等を求めないでほしい (%)6
(備考)厚生労働省「派遣労働者実態調査」により作成。 (備考)東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策研究センター「高校生の進路追跡調査 第1次報告書」(2007年9月) により作成。詳細は備考一覧を参照。図表6-2 派遣労働者の派遣元に対する要望
図表6-3 高校卒業後の予定進路(両親年収別)
(備考) 1.総務省「労働力調査」により作成。詳細は備考一覧を参照。 2.「フリーター」とは、15歳から34歳で、男性は卒業者、女性は卒業者かつ未婚の者とし、 (1) 雇用者のうち勤め先における呼称が「パート」又は「アルバイト」である者 (2) 現在無業の者については家事も通学もしておらず「パート・アルバイト」の仕事を希望する者 とする(内閣府 平成18年度年次経済財政報告)。 91 (44%) 87 (51%) 117 (56%) 83 (49%) 0 50 100 150 200 250 2002年 2008年 (万人) 25-34歳 15-24歳 計208万人 計170万人図表6-1 年齢別に見た2002年と2008年のフリーターの数
正社員として雇用してほしい○
子どものいる世帯
のうち、大人1人または無業の場合には、相対的貧困に占めるシェアが総世
帯に占めるシェアに比べ高い。
○
母子世帯
の一人当たり平均所得金額は、児童のいる世帯の4割程度。
高齢者世帯の一人当たり平均所得金額は、全世帯の7割程度。
7
(備考) 1.厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成18年)により作成。 2.等価変換した所得。詳細は備考一覧を参照。 (備考)1.総務省「全国消費実態調査」(平成16年)により作成。世帯員分布による。 2.2004年の相対的貧困率は9.5%。 3. 子ども=17歳以下。563.8
718.0
211.9
301.9
345.9
345.2
131.6
239.6
0
100
200
300
400
500
600
700
800
全世帯
児童のいる世帯
母子世帯
高齢者世帯
1世帯当たり平均所得金額
世帯人員一人当たり平均所得金額
(万円)
(23.2)
大人2人以上と
子どもの世帯
(有業者2人以上)
(14.8)
(19.1)
大人2人以上と
子どもの世帯
(有業者1人)
(18.0)
(0.4)
大人2人以上と子ども
の世帯(無業)(2.3)
(0.7)
大人1人と子どもの世
帯,(有業)(4.3)
(0.1)
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
相対的貧困に占める
子どものいる世帯の割合
(40.4)
総世帯に占める
子どものいる世帯の割合
(43.5)
(%)
大人1人と子どもの世帯(無業)(1.0)
図表7-1 子どものいる世帯の割合
図表7-2 世帯類型別の平均所得金額
8
○OECDの分析によると、相対的貧困ライン以下に該当する子どもの割合は、2000年以降は
減少しているが、長期的には増加傾向にある。
○ただし、このデータには以下の注意が必要。
・給付については、年金、児童手当等の現金給付に限定されており、医療、保育、教育等の
現物給付は含まれない。
・負担については、所得税等の直接税及び社会保険料に限定されており、消費税等の間接税は
含まれない。
・国民生活基礎調査に基づくものであること。
図表8 相対的貧困ラインを下回る子どもの全子ども数に占める割合
8.3%
11.3%
12.9%
12.8%
10.8%
12.1%
14.5%
13.7%
0.0%
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
10.0%
12.0%
14.0%
16.0%
18.0%
20.0%
1985年
1994年
2000年
2003年
当初所得(所得再分配前)
可処分所得(所得再分配後)
(備考)OECD FACTBOOK2009により作成。9
(備考)・OECD FACTBOOK2009により作成。 ・相対的貧困率・・・所得の分布における中央値の50%に満たない所得の人々の割合を示す。図表9-1 相対的貧困率の比較(2000年代半ば)
5.8% 8.1% 8.7% 9.5% 12.0% 14.1% 17.1% 11.0% 11.4% 10.8% 8.3% 8.1% 7.7% 7.3% 7.1% 7.1% 6.6% 5.3% 5.3% 12.4% 12.6% 14.8% 14.6% 14.6% 14.9% 17.5% 18.4% 12.9% 10.6% 7.1% 6.8% 8.8%0.0%
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
10.0%
12.0%
14.0%
16.0%
18.0%
20.0%
デンマ ーク スウェ ーデ ン チェ コ オー ストリ ア ノルウェ ー フランス アイス ランド ハン ガリ ー フィンラ ンド オラ ンダ ルク セン ブルク スロバ キア イギ リス スイス ベル ギー 参考:日本(全国消費 実態調査)OECD平均 ニュ ージ ーラ ンドドイツ イタリ ア カナ ダ オー ストラ リア ギリ シャ ポルトガ ル スペイン 韓国ポーラ ンド アイルラ ンド 日本(国民生活 基礎調査)ア メリカトルコメキシ コ図表9-2 相対的貧困ラインを下回る現役世帯
(世帯主が18~65歳の世帯)における有業者の数
2.3
4.0
5.0
12.1
14.6
17.0
20.0
39.0
32.8
31.3
64.1
28.0
60.8
47.9
45.7
52.0
43.8
49.0
66.4
31.9
67.0
27.2
37.5
37.3
28.1
17.3
18.2
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
ドイツ イタリア イギリス スウェーデン フランス OECD平均 アメリカ 日本(国民生活基礎調査) 日本(全国消費実態調査) 有業者2人以上 有業者1人 有業者なし○OECDの分析によると、日本の相対的貧困率は、OECD諸国のうち、高位に属する。
ただし、使用する統計によって結果が異なることに留意(次ページ参照)。
○相対的貧困ラインを下回る現役世帯(世帯主が18~65歳の世帯)においても、
働いている人がいる世帯の割合が高い。
(備考)・OECD FACTBOOK2009により作成。 ・失業率については、スウェーデン以外は総務省「労働力調査」関連資料 主要国の失業率 より、スウェーデンはOECD.Statより作成。2005年の
失業率
(%)
4.4
5.1
8.9
4.9
7.8
7.7
10.6
―
10
図表10-3 国民生活基礎調査と全国消費実態調査
における対象者の所得分布の比較
0
5
10
15
20
25
30
35
300
万
円未
満
300
-5
00
万
円
500
-8
00
万
円
800
-1
30
0万
円
130
0万
円以
上
(%)全国消費実態調査
国民生活基礎調査
図表10-2 世帯主年齢別の世帯数分布
70歳以上の割合
9.5%
14.9%
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
OECD試算
全国消費実態調査
図表10-1 我が国の相対的貧困率
(%) (日本は国民生活基礎調査ベース)○貧困率に関するデータ分析は、使用する統計によって対象者の分布等が異なるため、
幅をもって解釈する必要がある。
(%)24.8%
18.0%
19.0%
0
5
10
15
20
25
30
(
参
考
)
国
勢
調
査
全
国
消
費
実
態
調
査
国
民
生
活
基
礎
調
査
○米英加では、1970年代以降、
富裕層
(所得ランキング最上位0.1%の人々)
の全
所得に占めるシェア
が急激に上昇した。
○これに対し、
日本では大きな上昇はみられない
。
11
(備考)1.Piketty, Thomas and Emmanuel Saez. 2006. "The Evolution of Top Incomes: A Historical and International Perspective." American Economic Review Papers and Proceedings, 96(2), 2006, pp.200-205. (NBER Working Paper No. 11955 version)。データはhttp://elsa.berkeley.edu/~saez/より入手。
2.英国は1981年の値。 3.米国、カナダは2000年、英国、フランスは1998年の値。