ア デ イ ウ イ ナ ル 卜 博 士 ( 獣 医 学 ) AdiWinarto
学 位 論 文 題名
Involvement of KATP channels in development ・ ● ● I ●
and survival of pancreatlClSletCellSinmlCe
(マウスの膵島細胞の発達と生存におけるKATP チャネルの関与)
学 位 論 文 内 容 の 要旨
グ ルコ ー ス によ っ て イン シ ュ リン が 分 泌さ れ る 機 構に は 、ATP感 受性灯チ ャネル (以 下 、KATPチ ャネ ル)が重 要な役 割を担っ ている 。グルコ ースが 醉田胞内 で代謝さ れ、ATP が 産 生 され る と 、細 胞 膜 上のsulfonylurea受 容 体(SUR1) に 結 合す る。 その結 果、SUR1 と り ン クし て い る紺 チ ャ ネル 分 子 であ るKir6.2が閉じ るため 、脱分極 状態にな り、電 位 依 存性Ca+チ ャネル が開き、Cや← カ鉾田 胞内に流 入する。共同研究グル―プの千葉大の清 野 ら は 、KATPチ ャネルの 機能解 析を目的 に、両r6.2ノ ックア ウ卜マウ スを作製 した。 こ の マウスは グルコ ースやsulfonリurea剤で刺 激して も、イン シュリン を分泌できないが、
血 糖値はほ ぼ正常 であった 。しかし 、この マウスは 老齢に なると、 中程度 の肥満になり、
血 糖 値 も上 昇 し た。 本 研 究で は 、KATPチャ ネルを欠 損するKir612ノックア ウトマ ウスに お い て 、膵 島 の 形態 学 的 変化 を 検 索し 、KATPチャネ ル欠損が 膵島細 胞の分化 と生存 に与 え る影響を 明らか にした。
Kir6.2ノ ッ ク アウ ト マ ウス は 出 生時 、4種 類の 島 細 胞(Q、p、6、PP細胞 )の分 布に つ い て は正 常 で あっ た 。 しか し な がら 、 生 後14週 以 降に な る と、d佃胞の 数が増 加し、
島 中 心 部に も 出現し た。こ の傾向は 加齢に伴 って顕 著になっ た。― 方、B細胞は数 が減少 す る と とも に イ ンシ ュ リ ン抗 体 に 対す る 染色性 も滅弱し た。従 って、Q/細 胞の割 合も変 化 し、60週令 以降で は(湘胞が細胞より数が多く,なった。増加した錨田胞はPYY(peptide YY) を発 現 す るの が 特 徴的 で あ った 。glucagonとPYYを 同 時に 発 現 する細胞 は膵島 の発 生 初 期 にあ ら わ れる こ と から 、 す べて の 膵島細 胞のstemceIIと 目されて いる。 以上のこ と か ら 、KATPチ ャンネル はp細胞の生 存ばか りでなく 島細胞の 分化に 重要な役 割を演 じて い ることが 示唆さ れた。
KATPチ ャ ネ ル は瞬 田 胞 以外 に もa、6、PP細 胞 にも 発 現 し てい る 。KATPチャ ネ ル を欠 損 す る と、p細 胞のKATPチ ャ ネル が 閉 じた 状 態 に なる た め 、脱 分 極 状態が続 き、細 胞内 Ca.2+濃度が高い状態を招来する。この細胞内Ca2+濃度の上昇f辯田胞にとっては危険で、
し ばしば細 胞を傷 害する。 実際、こ のマウ スでは、 醉田胞 のアボト ―シス 像が頻繁に観察
さ れた 。一 方、a%[ll胞は 減少 する どころか、増加していた 。そこで次に、KATPチャネル 欠損により、 なぜQと醵田胞に異なる変化が現われるのかをcalciumーbinding protein(CaBP) の 存 在 と 結 び 付 け て 検 討 し た 。 なぜ なら 、CaBPが 存在 す れば 、細 胞内Ca+ の上 昇を 緩 衝 し て 、 そ の 値 を 正 常 化 す る こ とが 知ら れて いる から で ある 。膵 島に は数 種のCaBPが 存 在 す る が 、 c刮 bindin− D28kが 主 要 なCaBPで あ る と さ れ て い る 。 正常 マウ スとKir6.2ノックア ウトマウスで、c刮bindin−D28kの分布を免疫組織化学的 に 調べ たと ころ 、い ずれ で も、 辞田 胞にc刮bindinが限局し て存在することがわかった。
従って、KATPチャネル欠損マウスでは、蹄田胞は高濃度Ca.2+により傷害を受けるが、辞田 胞 はCaBPの 存在 によ りダ メ ―ジ を受 けず にす むこ とが 予想 され た。他のげっ歯類では、
ラットとモル モッ卜では、辞田胞が強く、細胞は―部のものカ渇ヨいc刮bindin免疫活性を 示した。ハム ス夕―は特殊で、辞田胞と勝田胞を含めてすべての島細 胞が抗c刮bindin抗体 によって強く 染色された。
KATPチャ ネル はイ ンシ ュ リン 分泌 の重 要な 調節 因子 であ るが 、一方で、細胞の分化に も関与するこ とが示された。また、加齢とともに、中程度の糖尿病を発症するこの動物は、
糖 尿 病 の 発 症 機 序 や 治 療 の 研 究 に は 有 用 な 動 物 モ テ シ レ に な る と 思 わ れ る 。
学 位 論 文 審 査の 要 旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 助教授
岩永 敏彦 梅 村 孝 司 葉 原 芳 昭 橋 本 善 春
学 位 論 文 題 名
Involvement of KATP channels in development and survival of pancreatic islet cells in mice
( マ ウ ス の 膵 島 細 胞 の 発 達 と 生 存 に お け るKATPチ ャ ネ ル の 関 与 )
グ ル コ ー ス に よ っ て イ ン シ ュ リ ン が 分 泌 さ れ る 機 構 に は 、surfonylurea受 容 体 と K+チ ャ ネ ルKir6.2に よ っ て 構 成 さ れ るATP感 受 性K+チ ャ ネ ル ( 以 下 、KATPチ ャ ネ ル ) が 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る 。 本 研 究 で は 、KATPチ ャ ネ ル の 機 能 解 析 を 目 的 に 作 製 さ れ た 、Kir6.2ノ ッ ク ア ウ 卜 マ ウ ス に お い て 、 膵 島 の 形 態 学 的 変 化 を 検 索 し 、KATP チ ャ ネ ル 欠 損 が 膵 島 細 胞 の 分 化 と 生 存 に 与 え る 影 響 を 明 ら か に し た 。 Kir6.2ノ ッ ク ア ウ 卜 マ ウ ス は 、 加 齢 と と も にQ細 胞 の 数 が 増 加 し 、 島 中 心 部 に も 出 現 し た 。 ― 方 、lp細 胞 は 数 が 減 少 す る と と も に イ ン シ ュ リ ン 抗 体 に 対 す る 染 色 性 も 減 弱 し た 。 著 し く 増 加 し たQ細 胞 はPYY(peptide YY)を 発 現 す る の が 特 徴 的 で あ っ た 。 glucagonとPYYを 共 発 現 す る 細 胞 は す ぺ て の 膵 島 細 胞 のstem cellと 目 さ れ て い る こ と か ら 、KATPチ ャ ン ネ ル は 、l3細 胞 の 生 存 ば か り で な く 島 細 胞 の 分 化 に 重 要 な 役 割 を 演 じ て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。
KATPチ ャ ネ ル はp細 胞 以 外 に もa、6、PP細 胞 に も 発 現 し て い る 。p細 胞 の 減 少 は 、 細 胞 内C a2+濃 度 の 上 昇 に よ っ て 説 明 さ れ る が 、 な ぜa細 胞 に は 高Ca2+濃 度 に よ る 細 胞 毒 性 が 生 じ な い か の 疑 問 が 生 じ た 。 そ こ で 、C a2‑‑濃 度 の 上 昇 に 対 し て 緩 衝 作 用 の あ るcalcium―binding protein(CaBP)の 存 在 を 検 討 し た 。 正 常 マ ウ ス とKir6.2ノ ッ ク ア ウ ト マ ウ ス に お い て 、 代 表 的 なCaBPで あ るcalbindin−D28kの 分 布 を 免 疫 組 織 化 学 的 に 調 ぺ た と こ ろ 、 両 群 に お い て 、Q細 胞 にcalbindinが 限 局 し て 存 在 す る こ と が わ か っ た 。 従 っ て 、KATPチ ャ ネ ル 欠 損 マ ウ ス で は 、l3細 胞 は 高 濃 度Caz゛ に よ り 傷 害 を 受 け る が 、Q細 胞 はCaBPの 存 在 に よ り ダ メ ― ジ を 受 け ず に す む こ と が 予 想 さ れ た 。 以 上 の 結 果 は 、KATPチ ャ ネ ル が 膵 島 細 胞 の 分 化 や 生 存 に も 関 与 す る こ と を 明 ら か に し た も の で 、 月 萃 島 の 形 成 機 序 や 糖 尿病 の発 症の 解明 に 大き く貢 献す ると 思わ れる 。