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事業継続計画(BCP)と相互に連関した生活継続計画(LCP)策定に係る実践的研究

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1.はじめに

1.1.研究の背景  企業を経営していく上で必要となる経営資源は一般的に「ヒト・モノ・カネ・ 情報」と言われる。大規模災害発生時においてもこれら経営資源について代替手 段も含め失わない、あるいは最小限の被害にとどめ企業運営をできるだけ早く平 常時に回復するための方策が事業継続計画(以下、BCP)であると換言できる。  筆者はこの経営資源のうち「ヒト」については、業務遂行能力という観点も必 要であるが、「生き残る」という能力が災害時においては最も重視すべきである と考える。しかし残念ながら企業内教育においてそのような能力開発は実施され ていない状況である。  東京商工会議所(2018)が2018年6月に同所会員企業に対し行った家庭での防 災対策支援状況についてのアンケート結果によると(n=1,022)、『従業員に対 して、その家族との安否確認だけではなく、「家庭での防災対策」を支援してい ますか』という設問について、「家庭での防災対策は支援していない:89.1%」「同 支援している:10.9%」という結果となっており、防災に係る企業内教育が浸透 していないことを裏付けている。  一方、個人・家庭においては従前より「防災・減災」という意識、さらに防災・ 減災のため何らかの準備は必要であることの認識は浸透しているものの、企業に おける事業継続計画と同様に被災後自分や家族が生き残り、かつ普段の生活水準 を取り戻すための計画、すなわち「生活継続計画」という考え方は全く普及して

事業継続計画(BCP)と相互に連関した

生活継続計画(LCP)策定に係る実践的研究

久 保 俊一郎

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いない。

1.2.研究の目的

 大規模地震等災害発生時に企業が事業継続を図るためには「BCP」の整備だけ でも、あるいは「生活継続計画(LCP Life Continuity Plan)」の整備だけでも不 十分であると考える。なぜなら「企業」が形だけ存続したとしても「ヒト(従業 員)」がいなければ事業継続はあり得ないし、「ヒト」が生き残っても「企業」が 存続しなければ、ヒトは経済的に破たんしてしまう恐れがあるからだ。  そこで筆者は事業継続計画(BCP)と相互に連関した生活継続計画(LCP)の あり方について研究することとした。  個人・家庭レベルでの防災・減災意識の浸透をBCPと連関させることでどのよ うな効果が生じるのか、LCPの策定手順とともに明らかにすることが本研究の目 的である。

2.LCPの定義

 先行研究におけるLCPの定義をまとめる。  松井(2014)は 「LCPとは、①可能な限り、大災害や大事故などの災禍に遭 遇しないように行動する(避災)とともに、②第一のLCP(具体的な備え)によって、 もし遭遇しても決して命をなくしたり、精神的にめげたりしない(減災)、③そ して、各人がその被害状況に応じて、次の人生を柔軟に選択し、設計していくこ とである」と述べている。  中野(2015)は「家庭においてLCPを作成する事は、人命を失う最悪の状況を 免れ、家庭生活を早期に再開し、居住環境の復旧を迅速に行う事にも繋がる。そ の為にも、なるべく早めに各家庭においてBCPの概念を導入したLCPの作成を行 う必要がある」と述べている。  横田・正木・倉橋ほか(2018)はLCP作成の意義について、以下のように述べ ている。『企業防災を考えるにあたっては、まずは、従業員とその家族の安全・ 安心を図ることを第一とし、それも併せて企業としてBCPの策定を検討すること とする。地震時には、各人が家族と一緒に地域での安全を確保し、被災後も、避 難生活も含め、地域の中でより早く普段の生活に戻れるようにするためにも「生 活継続計画」(Life Continuity Plan: LCP)を作成することが重要となる。』

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3.BCPの課題

 木全・小池・正木・内藤(2011)によれば、平成22年11月に愛知県でBCPに係 る一般市民対象アンケート調査を実施し、そのアンケート結果から ① 回答者の7割がBCP(事業継続計画)という言葉を知らない ② 回答者の4割が地震発生時の家族間の安否確認方法を決めていない ③ BCPを知る回答者の9割が被災後3日以内の出社要請に理解を示し、BCPを 知らない回答者は一週間程度の家庭の復旧活動を重視している ④ 回答者の7割が勤務先または自宅に出社・帰宅に関して無事に辿りつけるか 不安である ⑤ BCPを知っているほど緊急地震速報の導入に前向きな考え方をしている の5つの結果を得たと述べている。  このアンケート結果のうち「③BCPを知る回答者の9割が被災後3日以内の出 社要請に理解を示し、BCPを知らない回答者は一週間程度の家庭の復旧活動を重 視している」という結果は特に興味深く、「BCPの課題」を示唆するものと考える。  例えば、内閣府 防災担当(2013)で示す「事業継続ガイドライン」は我が国 におけるBCPの標準形を示していると考えるが、その中で「家族に対し自分の勤 務先の災害等非常時の業務体制、あるいはBCPを説明し、理解を得る」といった 類のBCP項目はない。  1.1において経営資源のうち「ヒト」の重要性を示したが、これを補完する ためにも「家族に対し、災害等非常時の業務体制や会社のBCPを説明し理解して もらうこと」を企業側が平常時の業務として取り組むことがより実効性の高い BCPを構築するためのキー・サクセス・ファクターとなり、「BCPの課題」は「災 害等非常時において従業員の家族に対し事業継続上必要となる従業員自身の行動 の事前周知あるいは防災知識の啓もうを企業側が行っていない」ことにあると考 える。

4.被害想定・様相タイムライン総合表の作成手順

4.1.概要  LCPを策定するにあたって「災害イマジネーション」は重要なファクターの一 つであると考える。  「災害イマジネーション」について目黒・村尾(2016)では ・ 災害イマジネーションとは、発災からの時間経過の中で自分の周辺で起こる災 害状況を具体的にイメージできる能力である

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・ 効果的な防災対策は、「災害状況の進展を適切にイメージできる能力」に基づ いた「現状に対する理解力」と「発災前後の各時点において適切なアクション をとるための状況判断力と対応力」があって初めて実現する ・ 人間は、イメージなくして、ある状況に対する適切な心がけや準備などは絶対 できない と述べている。  そこで、「災害イマジネーション」能力を醸成するため、過去に発生した主に 地震の被害様相、証言記録をデータベース化し、共通点を見出したうえ分類作業 を行い、「被害想定・様相タイムライン総合表」を作成することとした。  4.2以降で詳述するが、作成の順序は次のとおりである。 ① 過去の被害様相、被災証言記録および被害想定のデータベース化 ② 「教訓・要対応事項」の導出 ③ 「重要業務」による分類 ④ 「生活継続戦略」の策定 ⑤ 「LCP策定用分類項目」の策定 ⑥ 被害想定・様相タイムライン総合表の完成 4.2.過去の被害様相、被災証言記録および被害想定のデータベース化 4.2.1.被害等の様相の抽出  内閣府あるいは地方公共団体が策定している地震被害想定、および主に大規模 地震被災時の被害様相、体験記録、証言記録(以下、被害等の様相と記述する。) が掲載されている論文、書籍、ホームページ等合わせて15件の文献等から被害等 の様相を抽出、データベースを作成した。データベースの件数は1,189件となった。 15件の文献等の内訳は次のとおりである。 A 日本弁護士連合会(2013)『東日本大震災無料法律相談事例集』 B NHK東日本大震災プロジェクト『証言記録 東日本大震災Ⅰ~Ⅲ』NHK出 版 C 内閣府 中央防災会議(2013)『首都直下地震の被害想定と対策について(最 終報告)』 D 土屋依子・中林一樹・小田切利栄(2014)「被災者の復興感からみた東日本 大震災の生活復興過程-大船渡・気仙沼・新地の3ヵ年の被災者調査から-」『地

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F 小林秀行・石川俊之・村木宏壽・田中淳(2013)「東日本大震災からの復興 とはなにか-傾聴面接調査における被災者の物語をめぐって」『関西学院大学 災害復興制度研究所研究紀要 災害復興研究』第5号 G 千葉県(2016)『平成26・27年度千葉県地震被害想定調査 報告書』 H 神奈川県地震被害想定調査委員会(2015)『神奈川県地震被害想定調査報告書』 I 茨城県(2018)『茨城県地震被害想定調査 詳細報告書』 J 静岡県(2013)『静岡県第4次地震被害想定/被害・対応シナリオ』 K 内閣府ホームページ 防災情報 一日前プロジェクトホームページ   http://www.bousai.go.jp/kyoiku/keigen/ichinitimae/ L 奈良由美子(2012)「東日本大震災とリスクマネジメント」『危険と管理  RM双書』 M 藤本一雄・戸塚唯氏(2015)「東日本大震災被災者の後悔に関する証言に 対するドキュメント分析から考える防災活動の目的」『地域安全学会論文集』 No.27 N 熊本市市民局市民生活部男女共同参画課(2019)『平成28年熊本地震 熊本 市女性職員50の証言』 O NHKホームページ 東日本大震災アーカイブズ 震災の記録 あの日の証 言https://www9.nhk.or.jp/archives/311shogen/evidence/  表4-1においてAからOの各文献から抽出した「被害等の様相」を例示する。  本項の一連の作業は災害エスノグラフィーと同様の効果を企図したものであ る。常葉大学ホームページ Digital Disaster Museum(2019/11/20確認)によ ると、「災害エスノグラフィー」とは災害対応にかかわる知恵の体系化に関する 研究であり、「暗黙知を共同化・共出化」することであるとしている。被害等の 様相を抽出、データベース化する作業は4.1で述べた災害イマジネーション能 力の醸成のためにも効果があると筆者は考える。

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4.2.2.被害等の様相の分類  次に、内閣府 中央防災会議(2013)『首都直下地震の被害想定と対策につい て(最終報告)~人的・物的被害(定量的な被害)~』に記載のある「被害想定 項目 一覧」を参考にし、被害等の様相を表4-2のとおり大分類、中分類、小 分類項目で分類した。また被害等の様相の分類結果例を表4-3に示す。 表4−1 被害想定・様相タイムライン総合表 作成過程 その1 資料 区分 被害等の様相 A 息子名義の定期預金証書が流されてしまったが、息子は行方不明。定期預金を引き出すにはどうしたらよいか。 B 自宅避難には大きな問題があった。食料は避難所ごとに届くため、自宅避難者には割り当てがなかった。そこで同じように自宅避難をしてい る人に声をかけ、食料を持ち寄り分け合うことを提案した。同人の家には情報を求めて人が集まり、自然と助け合うようになっていった。人と 人とのつながりが震災を乗り越える大きな力となった。今回の震災は本当に皆で支え合わないと毎日の生活ができませんでした。 C 物資が不足している避難所や、生活環境が劣悪な避難所等において、避難者同士又は避難者と支援者(行政職員やボランティア等)の暴 力事件が発生 D 住宅再建の目途が立たない E 避難命令が出なかったという理由のほか、家の中の方が安全、避難場所を知らなかった、住まいを守りたかったという理由が多かった。 F 仮設住宅はありがたいが、あくまで仮の家なので、自宅・復興公営住宅・アパート、どんな形にせよ自分の住まいを持てたら、落ち着くと思 う。 G 指定避難所以外にできたテント村等が当初認知されず、食料や救援物資等が配給されない事態が発生する。 H 帰宅困難者の一部が避難所や 一時滞在場所に集まり始める I 要配慮者が避難所内で適切に生活するための場所を確保することが困難 J 生活不活発病の発生:(冬の)寒さ、(夏の)暑さ、固い床、狭小スペース等、生活環境の悪化による高齢者、障害者、傷病者等の罹病、病 状の悪化が深刻化する。 K 震災の2日前の3月9日に三陸沖で地震が発生し、津波注意報が出されました。宮古の沿岸に住む80歳を超える私の叔母は、その注意報 を聞いて逃げた。しかし、そのとき津波は50センチしか来なかった。私が一番ショックなのは、9日に逃げているのに、11日には逃げなかった という事実。「この間とは違うから」と言っても、頑として言うことを聞かず、説得していたお嫁さんともども亡くなってしまったのです。海の近く で大きな揺れを感じたら、何度でも逃げてほしかったなと思っています。 L 自分の家も津波で流された。でも職場の市役所にずっと詰めて住民の対応に追われた M 船をつないだ後、自宅に戻ったが、当然逃げてくれると考えたので、「避難しろよ」とは言わなかった。その後、再び浜辺に戻ったところ津波に 襲われ、家族であらかじめ決めていて避難場所に向かったが、妻(38歳)・父(79歳)・母(79歳)とは会えなかった。/“おじいさん、おばあさ んに関しては、これまでも子どもたちも含めてみんなで大事にしてきたところもあるので、悔いはないんですけど、やっぱり妻だけは、いまだ に悔やんでも悔やみきれないところがあります。妻父母死亡 N 自宅では自立してトイレに行けていた方が大人用の紙おむつを利用するようになったということも聞き、避難所の生活は人間本来の生理的 な活動も我慢を強いられることが多いと感じた。 O 慢性疾患の患者さんたち、人工肛門をつけている方が、人工肛門のパックを持って避難してこなかったとか。あとは糖尿病の方が、インシュ リンの注射を置いてきてしまったとか。用意がなかったので、せっかく訴えてきてくださる方たちに対応できなかった。 NA(ナレーション):翌朝、校庭に出てみると、およそ100人が車の中で一夜を明かしていました。 佐伯さんが心配したのは、エコノミークラス症候群でした。 佐伯:「寒くても、時々定期的に外に出て、手足を動かして下さいね」、「車の中にいる時も、足を適宜動かしてください」と声をかけて。 NA:2日間の活動中、重い症状に陥る人はいませんでした。佐伯さんたちは、現地の情報を次の班に引き継いで帰路につきました。しかし、 もどかしさを感じていました。

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表4−2 被害等の様相 分類項目および件数 大分類 中分類 小分類 件数 交通施設被害 人的被害 ライフライン被害 生活への影響 空港 高速・一般道路 鉄道 火災 災害時要援護者 震災関連死 液状化・地盤被害 地下街・ターミナル駅 鉄道 道路 閉じ込め関係 避難 屋内転倒・落下物 大規模集客施設等 長周期地震動 津波 下水道 ゴミ・トイレ 上水道 電力 電話等通信 都市ガス 分類なし 帰宅困難者 健康不安 (精神的含む) 災害時要援護者 就業制約 なし なし 道路閉塞 落石 なし なし 通電火災 なし なし なし なし なし なし エレベータ内 建物等 なし 避難所避難 なし なし なし なし なし なし なし なし インターネット 固定電話 携帯電話 なし なし   なし なし 避難所避難 屋外避難 なし なし 5 3 6 2 7 0 11 6 8 2 3 4 11 6 12 140 3 23 5 4 18 15 22 15 11 1 9 8 25 18 4 42 10 7 1 15 62

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建物等被害 生活再建 生活物資 その他 避難 医療 分類なし 屋外落下物 火災 地下街・ターミナル駅 津波 文化財 液状化・地盤被害 大規模集客施設等 長周期地震動 分類なし なし 公的助成等 生活復興調査等 BCP・災害対策 なし 食料・水 毛布・衣類 物流 燃料 なし 教育制約 治安 遺体処理 なし 避難所避難 在宅避難 屋外避難 広域避難 なし   なし なし 通電火災 なし なし なし なし 急傾斜地 ため池 なし なし 合計 36 23 87 17 36 25 4 13 11 2 8 4 4 45 147 43 11 9 9 28 2 16 3 4 1 1 20 5 1 3 5 22 1,189

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4.2.3.フェーズによる分類  林(2003)によると、被災後の時間経過は被災者の心理状態により、第1段階: 応急対応期、第2段階:復旧・復興期の2つの段階に分かれ、さらに応急対応期 は3つの段階に分かれ、結果地震発生から復興までの時間経過にて「フェーズ0」 から「フェーズ3」の4段階に分類されるという。表4-4に時間経過と被災後 のフェーズ毎の被災者状況を示した。 表4−3 被害想定・様相タイムライン総合表 作成過程 その2 資料 区分 大分類項目 中分類 小分類 被害等の様相 A 生活への影響 生活再建 息子名義の定期預金証書が流されてしまったが、息子は行方不明。定期預金を引き出すにはどうしたらよい か。 B 生活への影響 避難 在宅避難 自宅避難には大きな問題があった。食料は避難所ごとに届くため、自宅避難者には割り当てがなかった。そこ で同じように自宅避難をしている人に声をかけ、食料を持ち寄り分け合うことを提案した。同人の家には情報を 求めて人が集まり、自然と助け合うようになっていった。人と人とのつながりが震災を乗り越える大きな力と なった。今回の震災は本当に皆で支え合わないと毎日の生活ができませんでした。 C 生活への影響 その他 治安 物資が不足している避難所や、生活環境が劣悪な避難所等において、避難者同士又は避難者と支援者(行 政職員やボランティア等)の暴力事件が発生 D 生活への影響 生活再建 公的助成等 住宅再建の目途が立たない E 生活への影響 避難 避難命令が出なかったという理由のほか、家の中の方が安全、避難場所を知らなかった、住まいを守りたかっ たという理由が多かった。 F 生活への影響 生活再建 生活復興調査等 仮設住宅はありがたいが、あくまで仮の家なので、自宅・復興公営住宅・アパート、どんな形にせよ自分の住 まいを持てたら、落ち着くと思う。 G 生活への影響 避難 屋外避難 指定避難所以外にできたテント村等が当初認知されず、食料や救援物資等が配給されない事態が発生す る。 H 生活への影響 避難 避難所避難 帰宅困難者の一部が避難所や 一時滞在場所に集まり始める I 生活への影響 避難 避難所避難 要配慮者が避難所内で適切に生活するための場所を確保することが困難 J 生活への影響 健康不安 避難所避難 生活不活発病の発生:(冬の)寒さ、(夏の)暑さ、固い床、狭小スペース等、生活環境の悪化による高齢者、 障害者、傷病者等の罹病、病状の悪化が深刻化する。 K 人的被害 避難 震災の2日前の3月9日に三陸沖で地震が発生し、津波注意報が出されました。宮古の沿岸に住む80歳を超 える私の叔母は、その注意報を聞いて逃げた。しかし、そのとき津波は50センチしか来なかった。私が一番 ショックなのは、9日に逃げているのに、11日には逃げなかったという事実。「この間とは違うから」と言っても、 頑として言うことを聞かず、説得していたお嫁さんともども亡くなってしまったのです。海の近くで大きな揺れを 感じたら、何度でも逃げてほしかったなと思っています。 L 生活への影響 生活再建 BCP・災害対策 自分の家も津波で流された。でも職場の市役所にずっと詰めて住民の対応に追われた M 人的被害 避難 船をつないだ後、自宅に戻ったが、当然逃げてくれると考えたので、「避難しろよ」とは言わなかった。その後、 再び浜辺に戻ったところ津波に襲われ、家族であらかじめ決めていて避難場所に向かったが、妻(38歳)・父 (79歳)・母(79歳)とは会えなかった。/“おじいさん、おばあさんに関しては、これまでも子どもたちも含めて みんなで大事にしてきたところもあるので、悔いはないんですけど、やっぱり妻だけは、いまだに悔やんでも悔 やみきれないところがあります。妻父母死亡 N 生活への影響 避難 避難所避難 自宅では自立してトイレに行けていた方が大人用の紙おむつを利用するようになったということも聞き、避難所 の生活は人間本来の生理的な活動も我慢を強いられることが多いと感じた。 O 生活への影響 災害時要援護者 慢性疾患の患者さんたち、人工肛門をつけている方が、人工肛門のパックを持って避難してこなかったとか。 あとは糖尿病の方が、インシュリンの注射を置いてきてしまったとか。用意がなかったので、せっかく訴えてき てくださる方たちに対応できなかった。 NA(ナレーション):翌朝、校庭に出てみると、およそ100人が車の中で一夜を明かしていました。 佐伯さんが心配したのは、エコノミークラス症候群でした。 佐伯:「寒くても、時々定期的に外に出て、手足を動かして下さいね」、「車の中にいる時も、足を適宜動かしてく ださい」と声をかけて。 NA:2日間の活動中、重い症状に陥る人はいませんでした。佐伯さんたちは、現地の情報を次の班に引き継 いで帰路につきました。しかし、もどかしさを感じていました。

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 被害等の様相を認識するためには時間的概念を採り入れることで、いつ、何が 起こり、何をするべきかがよりイメージしやすくなると考える。そこで被害等の 様相をフェーズ0~3に分類することとした(表4-4)。なお、分類の過程で フェーズ0~3のいずれに該当するか不明な項目はフェーズZとして分類した。  被害等の様相をフェーズ毎に分類した結果を表4-5に例示する。  また、奈良(2014)では生活者にとっての防災のポイントとして、それぞれの フェーズに対応した3つのポイントを挙げている(表4-4)。後述するが、筆 者は「死なないこと・生き延びること、及び最低限の生活維持を達成する」ため のLCPを策定することとしている。従って、フェーズ0~2に該当する被害等の 様相がLCP策定の対象となる。 表4−4 時間経過と被災後状況の関係等 時間経過と被災後状況の関係 防災におけるポイント 応急対応期 復旧・ 復興期 フェーズ 0 フェーズ 1 フェーズ 2 フェーズ 3 失見当期 被災地社会 の成立期 災害ユート ピア期 復旧・復興 期 地震発生 ∼10時間 10時間 ∼100時間 (4日程度) 100時間 ∼1,000時間 (1.5月程度) 1,000時間 以降 被災者は自分の力だけ で生き延びなくてはな らない。 組織的な災害対応がで きない。 被災者の命を救う活動 が中心。災害情報が入 手可能になる。組織的 な災害対応活動がはじ まる。 助け合いの精神が顕著 になる。社会機能の回 復とともに、生活の支 障が徐々に改善されて いく。 人生と生活を再建する。 破壊された街の復興、 経済の立て直しがはじ まる。 ともかく死なな い 生き延びる 生活を早く回復 させる 出所:林(2003)p.61および堀井・奈良(2014)p.186をもとに一部加筆

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4.3.「教訓・要対応事項」の導出  被害等の様相から「教訓・要対応事項」を導出する。これは「被害等の様相」 は証言記録等を文献等から実際の記述のとおり抽出しているため長文も多く、こ のままではLCP策定上必要な情報の習得に時間を要する。このため、被害等の様 相からLCP策定上必要な情報をできるだけ容易に把握できるようにするため「教 訓・要対応事項」を導出することとした。表4-6に「教訓・要対応事項」導出 例を示す。 表4−5 被害想定・様相タイムライン総合表 作成過程 その3 資料 区分 大分類項目 中分類 小分類 フェーズ 被害等の様相 A 生活への影響 生活再建 2 息子名義の定期預金証書が流されてしまったが、息子は行方不明。定期預金を引き出すにはどうしたらよい か。 B 生活への影響 避難 在宅避難 2 自宅避難には大きな問題があった。食料は避難所ごとに届くため、自宅避難者には割り当てがなかった。そこ で同じように自宅避難をしている人に声をかけ、食料を持ち寄り分け合うことを提案した。同人の家には情報を 求めて人が集まり、自然と助け合うようになっていった。人と人とのつながりが震災を乗り越える大きな力と なった。今回の震災は本当に皆で支え合わないと毎日の生活ができませんでした。 C 生活への影響 その他 治安 1 物資が不足している避難所や、生活環境が劣悪な避難所等において、避難者同士又は避難者と支援者(行 政職員やボランティア等)の暴力事件が発生 D 生活への影響 生活再建 公的助成等 3 住宅再建の目途が立たない E 生活への影響 避難 1 避難命令が出なかったという理由のほか、家の中の方が安全、避難場所を知らなかった、住まいを守りたかっ たという理由が多かった。 F 生活への影響 生活再建 生活復興調査等 3 仮設住宅はありがたいが、あくまで仮の家なので、自宅・復興公営住宅・アパート、どんな形にせよ自分の住 まいを持てたら、落ち着くと思う。 G 生活への影響 避難 屋外避難 1 指定避難所以外にできたテント村等が当初認知されず、食料や救援物資等が配給されない事態が発生す る。 H 生活への影響 避難 避難所避難 1 帰宅困難者の一部が避難所や 一時滞在場所に集まり始める I 生活への影響 避難 避難所避難 1 要配慮者が避難所内で適切に生活するための場所を確保することが困難 J 生活への影響 健康不安 避難所避難 0 生活不活発病の発生:(冬の)寒さ、(夏の)暑さ、固い床、狭小スペース等、生活環境の悪化による高齢者、 障害者、傷病者等の罹病、病状の悪化が深刻化する。 K 人的被害 避難 0 震災の2日前の3月9日に三陸沖で地震が発生し、津波注意報が出されました。宮古の沿岸に住む80歳を超 える私の叔母は、その注意報を聞いて逃げた。しかし、そのとき津波は50センチしか来なかった。私が一番 ショックなのは、9日に逃げているのに、11日には逃げなかったという事実。「この間とは違うから」と言っても、 頑として言うことを聞かず、説得していたお嫁さんともども亡くなってしまったのです。海の近くで大きな揺れを 感じたら、何度でも逃げてほしかったなと思っています。 L 生活への影響 生活再建 BCP・災害対策 1 自分の家も津波で流された。でも職場の市役所にずっと詰めて住民の対応に追われた M 人的被害 避難 0 船をつないだ後、自宅に戻ったが、当然逃げてくれると考えたので、「避難しろよ」とは言わなかった。その後、 再び浜辺に戻ったところ津波に襲われ、家族であらかじめ決めていて避難場所に向かったが、妻(38歳)・父 (79歳)・母(79歳)とは会えなかった。/“おじいさん、おばあさんに関しては、これまでも子どもたちも含めて みんなで大事にしてきたところもあるので、悔いはないんですけど、やっぱり妻だけは、いまだに悔やんでも悔 やみきれないところがあります。妻父母死亡 N 生活への影響 避難 避難所避難 Z 自宅では自立してトイレに行けていた方が大人用の紙おむつを利用するようになったということも聞き、避難所 の生活は人間本来の生理的な活動も我慢を強いられることが多いと感じた。 O 生活への影響 災害時要援護者 1 慢性疾患の患者さんたち、人工肛門をつけている方が、人工肛門のパックを持って避難してこなかったとか。 あとは糖尿病の方が、インシュリンの注射を置いてきてしまったとか。用意がなかったので、せっかく訴えてき てくださる方たちに対応できなかった。 NA(ナレーション):翌朝、校庭に出てみると、およそ100人が車の中で一夜を明かしていました。 佐伯さんが心配したのは、エコノミークラス症候群でした。 佐伯:「寒くても、時々定期的に外に出て、手足を動かして下さいね」、「車の中にいる時も、足を適宜動かしてく ださい」と声をかけて。 NA:2日間の活動中、重い症状に陥る人はいませんでした。佐伯さんたちは、現地の情報を次の班に引き継 いで帰路につきました。しかし、もどかしさを感じていました。

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4.4.「重要業務」による分類  高知県(2014)では、BCP作成時における中核事業(会社の存続に関わるもの として、優先的に継続・復旧すべき事業)の実施に必要な業務を「重要業務」と 呼ぶ、とある。重要業務は業種によりさまざまであるが、例えば製造業であれば 「最も売上の高い商品の製造再開」、銀行業であれば「預金払い出し業務再開」、サー ビス業であれば「従業員の確保」などが考えられる。  本論文で論じるLCP作成時における「重要業務」は『「死なないこと、生き延 びること、及び最低限の生活維持を達成する」ために克服すべき、あるいは克服 していくために必要な行動』とし、林(2003)において定義している「4つの被 災者レベル(生命・財産・生活支障・恐怖心)」と置く。 表4−6 「教訓・要対応事項」導出例 フェーズ 被害等の様相 様相から導出した「教訓・要対応事項」 0 もっと家族で話し合って、津波が来たときはこうしようと決めておけば両 親は助かったかもしれない。 ・平時より地震等災害発生時の家族の行 動を決め周知する。 0 “3月11日、妹は自宅に戻る途中、車ごと流されて命を落としました。津 波の際、車で避難してはいけません。北海道の奥尻島では、裏山に駆 け上がって逃げた人が助かりました。奥尻の教訓をもっと話しておけば よかったと、悔いが残ります。”妹死亡 ・過去の被災体験は伝承していくべき 1 たまたま私たちは2階で寝ていたから助かったけど、下で寝ていたら完 全にやられていたと思います。1階の天井が完全に落ちて、2階部分が1 階のようになっていましたから。背の高いタンスは山側に倒れてくれたの で、運良く、下敷きにならずにすみました。その夜、難を逃れた妹の家で お風呂に入ろうとしたら、服がくっついて脱げないのです。おかしいなと 思ってみると、太もものあたりが切れて血が固まっていました。地震で落 ちた人形ケースのガラスがふとんに突き刺さり、中の羽毛が空中に舞い 上がって前が良く見えないほどでしたので、それで切ったのでしょう。割 れたガラスは本当に怖いものだと思います。 ・割れたガラスは凶器となるので、割れ やすい物の置き場所に注意する。 2 地元では多くの人が津波の犠牲になった。海上さんは「安全なところへ 逃げろ」と一声かけられなかったを後悔している。 頭の隅にもなかったですよ。「声かけたか」「かけてない」「俺もかけてな い」、そんな感じです。人間って普段していないとできないんですよ。だ から連携して逃げる、それが一番でしょうね。 ・津波避難は周囲に声をかけながら。 2 (震災後)防災意識が高かったあそこの被害が一番大きかった(階上地 区)というのは、我々が示していた数字が逆に作用してしまったかもしれ ない、という思いでした。例えば津波の高さ8メートルという数字が「それ 以上は津波は来ないのだ」という思いにつながってしまったのではない だろうか。逆に安心情報になってしまった可能性がありますよね。 ・ハザードマップの数字は被害上限を示 したものではないと認識すること。 2 やはり日頃の積み重ね、訓練の積み重ねって言うのが大事だと思いま す。職員間での共通理解をもって、どう行動するかを日々の訓練で身に 付けられていたのがよかったなと。また子供も、その時急に行動すると いうことはできません。子供たちは入所した時から避難訓練をやってい て、体で覚えていたので慌てることなく避難できたのではないかと思いま す。 ・定期的に訓練実施しておくことが、実 災害時の速やかな対応につながる。特に 子供には体で覚えさせることが必要だ。

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 教訓・要対応事項を重要業務で分類しておくことにより、例えば「死なないこ と、生き延びること」にフォーカスしたLCPを検討していく場合、重要業務のう ち「生命」に分類される項目を抽出すれば効果的かつ効率的な作業が可能となる。 教訓・要対応事項の重要業務分類例を表4-8で例示する。 表4−7 被災者レベル毎の状況 レベル 状況 生  命 財  産 生活支障 恐 怖 心 出所:林(2003)および『復興の教科書』を参考に筆者作成 最も厳しい被災体験で、生命に関わる脅威や被害を受けた被災者層。命を落 とした人はもちろんのこと、大怪我や後遺症に悩まされるような人たちもこ こに含まれる 住宅や自動車など、大きな金銭面の被害に加えて、お位牌や形見、思い出の 品や写真など被災者自身にとってかけがえのない「財産」を失った被災者層 水道やガスなどのライフラインの長期にわたる遮断により、通常の生活に支 障をきたしている被災者層 身体的・物理的な被害はないものの、精神的に恐怖心を覚えた被災者層 表4−8 「教訓・要対応事項」の重要業務分類例 フェーズ 被害等の様相 様相から導出した教訓・要対応事項 重要業務 0 もっと家族で話し合って、津波が来たときはこうしようと決めておけば両親は助 かったかもしれない。 ・平時より地震等災害発生時の家族の行動を 決め周知する。 生命 0 “3月11日、妹は自宅に戻る途中、車ごと流されて命を落としました。津波の際、 車で避難してはいけません。北海道の奥尻島では、裏山に駆け上がって逃げ た人が助かりました。奥尻の教訓をもっと話しておけばよかったと、悔いが残り ます。”妹死亡 ・過去の被災体験は伝承していくべき 生命 1 たまたま私たちは2階で寝ていたから助かったけど、下で寝ていたら完全にや られていたと思います。1階の天井が完全に落ちて、2階部分が1階のように なっていましたから。背の高いタンスは山側に倒れてくれたので、運良く、下敷 きにならずにすみました。その夜、難を逃れた妹の家でお風呂に入ろうとした ら、服がくっついて脱げないのです。おかしいなと思ってみると、太もものあたり が切れて血が固まっていました。地震で落ちた人形ケースのガラスがふとんに 突き刺さり、中の羽毛が空中に舞い上がって前が良く見えないほどでしたの で、それで切ったのでしょう。割れたガラスは本当に怖いものだと思います。 ・割れたガラスは凶器となるので、割れやす い物の置き場所に注意する。 生活支障 2 地元では多くの人が津波の犠牲になった。海上さんは「安全なところへ逃げろ」 と一声かけられなかったを後悔している。 頭の隅にもなかったですよ。「声かけたか」「かけてない」「俺もかけてない」、そ んな感じです。人間って普段していないとできないんですよ。だから連携して逃 げる、それが一番でしょうね。 ・津波避難は周囲に声をかけながら。 生命 2 (震災後)防災意識が高かったあそこの被害が一番大きかった(階上地区)と いうのは、我々が示していた数字が逆に作用してしまったかもしれない、という 思いでした。例えば津波の高さ8メートルという数字が「それ以上は津波は来な いのだ」という思いにつながってしまったのではないだろうか。逆に安心情報に なってしまった可能性がありますよね。 ・ハザードマップの数字は被害上限を示した ものではないと認識すること。 生命 2 やはり日頃の積み重ね、訓練の積み重ねって言うのが大事だと思います。職 員間での共通理解をもって、どう行動するかを日々の訓練で身に付けられてい たのがよかったなと。また子供も、その時急に行動するということはできませ ん。子供たちは入所した時から避難訓練をやっていて、体で覚えていたので慌 ・定期的に訓練実施しておくことが、実災害 時の速やかな対応につながる。特に子供には 体で覚えさせることが必要だ。 生命

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4.5.「生活継続戦略」の策定  次に、「LCP版重要業務」(生命・財産・生活支障・恐怖心)を克服・実行・達成するた めに自ら、あるいは家族で対応策を検討すべき事項、「生活継続戦略」を策定する。  策定手順は次のとおりである。 ① 4.3で導出した「教訓・要対応事項」を生活継続戦略策定の元資料とする。 ② 「教訓・要対応事項」の各記述を次の3項目に再整理する。  1.MUST 悪い結果の回避、あるいは良い結果を受容するために「何をすべ きだったのか」あるいは「何を行ったのか」  2.ACTUAL MUSTで提起した事項について、結果的に「どう対応したのか」 あるいは「何をしなかったのか」  3.LOSS MUST+ACTUALの結果、「何を守れたか(守れたかもしれなかっ たか)」、「何を失ったのか」 ③ LOSSは4.4で分類した「重要業務(生命・財産・生活支障・恐怖心)」と一致 する。従って、生活継続戦略策定作業においてLOSSは所与の事項となる。 ④ 「MUST」とした事項は一旦「仮:生活継続戦略」として順次策定を進め、 最終的に「仮:生活継続戦略」について類似事項をまとめる作業を行い、最終 的に「生活継続戦略」とした。  表4-9に「生活継続戦略」策定過程例を示す。 表4−9 「生活継続戦略」策定過程例 フェー 被害等の様相 様相から見出される教訓・要対応事項 生活継続戦略 検討過程 M U ST A CTU A L LOSS 0 もっと家族で話し合って、津波が来たときはこうしようと決めてお けば両親は助かったかもしれない。 ・平時より地震等災害発生時の家族の行動を決め周知する。事前に津波が来た時の避難方法を話し合っていなかったので両親は亡くなっ た。 安否確認・避難 方法の決定 未実施 生命 0 “3月11日、妹は自宅に戻る途中、車ごと流されて命を落としまし た。津波の際、車で避難してはいけません。北海道の奥尻島で は、裏山に駆け上がって逃げた人が助かりました。奥尻の教訓を もっと話しておけばよかったと、悔いが残ります。”妹死亡 ・過去の被災体験は伝承して いくべき 奥尻島災害の教訓を伝えていなかったので妹は死亡した。 過去災害被害・被災体験を正 しく認識 伝承せず 生命 1 たまたま私たちは2階で寝ていたから助かったけど、下で寝てい たら完全にやられていたと思います。1階の天井が完全に落ち て、2階部分が1階のようになっていましたから。背の高いタンス は山側に倒れてくれたので、運良く、下敷きにならずにすみまし た。その夜、難を逃れた妹の家でお風呂に入ろうとしたら、服が くっついて脱げないのです。おかしいなと思ってみると、太ももの あたりが切れて血が固まっていました。地震で落ちた人形ケース のガラスがふとんに突き刺さり、中の羽毛が空中に舞い上がって 前が良く見えないほどでしたので、それで切ったのでしょう。割れ たガラスは本当に怖いものだと思います。 ・割れたガラスは凶器となる ので、割れやすい物の置き場 所に注意する。 ガラスの人形ケースの置き場所が悪 かったため、ケースが転倒、ガラスが 散乱した。 家具等の安全 対策実施 対応不十分(自宅) 生活支障 2 地元では多くの人が津波の犠牲になった。海上さんは「安全なと ころへ逃げろ」と一声かけられなかったを後悔している。 頭の隅にもなかったですよ。「声かけたか」「かけてない」「俺もか けてない」、そんな感じです。人間って普段していないとできない んですよ。だから連携して逃げる、それが一番でしょうね。 ・津波避難は周囲に声をかけ ながら。 自分が周囲に声をかけなかったことで、津波犠牲者が増えてしまった。 災害関連情報の受信・収集・ 共有 必要情報共 有なし 生命 2 (震災後)防災意識が高かったあそこの被害が一番大きかった (階上地区)というのは、我々が示していた数字が逆に作用してし まったかもしれない、という思いでした。例えば津波の高さ8メート ルという数字が「それ以上は津波は来ないのだ」という思いにつ ながってしまったのではないだろうか。逆に安心情報になってし まった可能性がありますよね。 ・ハザードマップの数字は被 害上限を示したものではない と認識すること。 過去の津波最大高を信じてしまったた め、避難が遅れ地域住民の多くが命を 落とした。 過去災害被害・ 被災体験を正 しく認識 過信等による 誤判断 生命

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 以上の結果「生活継続戦略」は次の14項目に分類されることとなった。この分 類は本研究独自の分類である。  1 平常時の(避難)訓練  2 避難生活の継続  3 避難・徒歩帰宅経路の確認  4 被災状況に応じた適切な行動判断を行う  5 生活再建への取組  6 事業継続体制の整備  7 災害発生時をイメージし、最悪の事態も想定する  8 災害対応・事業継続を優先すべき場合の事前準備・心構え  9 災害時生活物資の事前準備  10 災害関連情報の受信・収集・共有  11 共助体制の構築  12 過去災害被害・被災体験を正しく認識  13 家具等の安全対策実施  14 安否確認・避難方法の決定  表4-10は「教訓・要対応事項」465項目が生活継続戦略のどの分類に該当す るかを集計した表である。LCP策定対象となるフェーズ0からフェーズ2につい て項目数の多い上位3戦略は「#12過去災害被害・被災体験を正しく認識する」「# 7災害発生時をイメージし、最悪の事態も想定する」「# 4被災状況に応じた適 切な行動判断を行う」となった。『防災対策の基本として「災害イマジネーション」 が重要』である、と4.1にて述べたが、その点を適確に反映しているものと筆 者は考える。  次に「生活継続戦略」を「教訓・要対応事項」を参照したうえで、「発災前に対応」 する項目と「発災後に対応」する項目に区分を行った。この区分は5.3にて「BCP と相互に連関したLCP」を策定する段階で、「発災後に対応」する項目について は会社によるバックアップが可能かどうかを検討・判断することとなるため実施 するものである。  表4-11に「発災前・発災後」の分類例を示す。

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表4−10 「生活継続戦略」項目数 0 1 2 3 Z 総計 1 平常時の(避難)訓練 7 - 4 - 4 15 2 避難生活の継続 - 7 7 - 19 33 3 避難・徒歩帰宅経路の確認 2 1 2 - 4 9 4 被災状況に応じた適切な行動判断を行う 23 4 3 - 5 35 5 生活再建への取組 2 - 8 47 72 129 6 事業継続体制の整備 - 1 3 - 17 21 7 災害発生時をイメージし、最悪の事態も想定する 24 6 8 - 5 43 8 災害対応・事業継続を優先すべき場合の事前準備・心構え 5 3 3 - 5 16 9 災害時生活物資の事前準備 4 7 6 - 13 30 10災害関連情報の受信・収集・共有 7 1 3 - 2 13 11共助体制の構築 - 3 5 - 12 20 12過去災害被害・被災体験を正しく認識 17 1 16 - 18 52 13家具等の安全対策実施 4 1 - 16 21 14安否確認・避難方法の決定 7 10 6 - 5 28 総計 102 45 74 47 197 465 フェーズ 表4−11 「発災前・発災後」分類例 フェー 被害等の様相 様相から見出される教訓・要対応事項 生活継続戦略 検討過程 M U ST A CTU A L LOSS 対応時期 0 もっと家族で話し合って、津波が来たときはこうしようと決めてお けば両親は助かったかもしれない。 ・平時より地震等災害発生時の家族の行動を決め周知する。事前に津波が来た時の避難方法を話し合っていなかったので両親は亡くなっ た。 安否確認・避難 方法の決定 未実施 生命 発災前 0 “3月11日、妹は自宅に戻る途中、車ごと流されて命を落としまし た。津波の際、車で避難してはいけません。北海道の奥尻島で は、裏山に駆け上がって逃げた人が助かりました。奥尻の教訓を もっと話しておけばよかったと、悔いが残ります。”妹死亡 ・過去の被災体験は伝承して いくべき 奥尻島災害の教訓を伝えていなかったので妹は死亡した。 過去災害被害・被災体験を正 しく認識 伝承せず 生命 発災前 1 たまたま私たちは2階で寝ていたから助かったけど、下で寝てい たら完全にやられていたと思います。1階の天井が完全に落ち て、2階部分が1階のようになっていましたから。背の高いタンス は山側に倒れてくれたので、運良く、下敷きにならずにすみまし た。その夜、難を逃れた妹の家でお風呂に入ろうとしたら、服が くっついて脱げないのです。おかしいなと思ってみると、太ももの あたりが切れて血が固まっていました。地震で落ちた人形ケース のガラスがふとんに突き刺さり、中の羽毛が空中に舞い上がって 前が良く見えないほどでしたので、それで切ったのでしょう。割れ たガラスは本当に怖いものだと思います。 ・割れたガラスは凶器となる、 ので割れやすい物の置き場所 に注意する。 ガラスの人形ケースの置き場所が悪 かったため、ケースが転倒、ガラスが 散乱した。 家具等の安全 対策実施 対応不十分(自 宅) 生活支障 発災前 2 地元では多くの人が津波の犠牲になった。海上さんは「安全なと ころへ逃げろ」と一声かけられなかったを後悔している。 頭の隅にもなかったですよ。「声かけたか」「かけてない」「俺もか けてない」、そんな感じです。人間って普段していないとできない んですよ。だから連携して逃げる、それが一番でしょうね。 ・津波避難は周囲に声をかけ ながら。 自分が周囲に声をかけなかったことで、津波犠牲者が増えてしまった。 災害関連情報の受信・収集・ 共有 必要情報 共有なし 生命 発災後 2 (震災後)防災意識が高かったあそこの被害が一番大きかった (階上地区)というのは、我々が示していた数字が逆に作用してし まったかもしれない、という思いでした。例えば津波の高さ8メート ルという数字が「それ以上は津波は来ないのだ」という思いにつ ながってしまったのではないだろうか。逆に安心情報になってし まった可能性がありますよね。 ・ハザードマップの数字は被 害上限を示したものではない と認識すること。 過去の津波最大高を信じてしまったた め、避難が遅れ地域住民の多くが命を 落とした。 過去災害被害・ 被災体験を正 しく認識 過信等によ る誤判断 生命 発災前 2 やはり日頃の積み重ね、訓練の積み重ねって言うのが大事だと 思います。職員間での共通理解をもって、どう行動するかを日々 の訓練で身に付けられていたのがよかったなと。また子供も、そ の時急に行動するということはできません。子供たちは入所した 時から避難訓練をやっていて、体で覚えていたので慌てることな く避難できたのではないかと思います。 ・定期的に訓練実施しておく ことが、実災害時の速やかな 対応につながる。特に子供に は体で覚えさせることが必要 だ。 日頃の訓練の積み重ねが、実災害時に 奏功し命を守ることが出来た。 平常時の(避難)訓練 適切な選択(運用・ 行動) 生命 発災前

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4.6.「LCP策定用分類項目」の設定  4.2.2において内閣府 中央防災会議(2013)に記載のある「被害想定項目  一覧」を参考にし、大・中・小レベルで分類を行ったが、より直感的に項目を理 解できるよう「LCP策定用分類項目」を設定することとした。具体的には、中・ 小分類をさらにイメージしやすく纏め、同種の内容項目については組み直しを 行った。表4-12にて「LCP策定用分類項目」の設定過程を示す。  表4-13にて被害等の様相を「LCP策定用分類項目」で再分類した結果(項目 数)を示す。 表4−12 「LCP策定用分類項目」の設定 大分類 中分類 # 小分類 →LCP策定用分類項目 大分類 中分類 # 小分類 →LCP策定用分類項目 交通施設被害 空港 1なし →空港 生活への影響 その他 37なし →生活再建への道すじ 高速・一般道路 2なし →道路 38教育制約 →学校の再開 3道路閉塞 →道路 39治安 →治安の悪化 4落石 →道路 40遺体処理 →死亡者への弔い 鉄道 5なし →鉄道 避難 41なし →心理的な不安感 人的被害 火災 6なし →火災 →避難方法 7通電火災 →火災 →帰宅困難者の状況 災害時要援護者 8なし →援護が必要な被災者 →避難生活(共通) 震災関連死 9なし →災害以外による死亡 →生活再建への道すじ 液状化・地盤被害 10なし →地盤・建物崩壊・液状化 42避難所避難 →避難生活(避難所) 地下街・ターミナル駅11なし →たくさんの人が集まる場所 →ペットの避難 鉄道 12なし →鉄道 43在宅避難 →避難生活(自宅) 道路 13なし →道路 44屋外避難 →避難生活(屋外) 閉じ込め関係 14エレベータ内 →閉じ込め事故 45広域避難 →避難生活(居住地外) 15建物等 →閉じ込め事故 →ペットの避難 避難 16なし →避難方法 →心理的な不安感 17避難所避難 →避難生活(避難所) 医療 46なし →医療 屋内転倒・落下物 18なし →自宅の被害 ライフライン 被害 下水道 47なし →トイレ・下水道 大規模集客施設等 19なし →たくさんの人が集まる場所 ゴミ・トイレ 48なし →ゴミ 長周期地震動 20なし →高層建物の被害 →トイレ・下水道 津波 21なし →津波の被害 上水道 49なし →水 生活への影響 帰宅困難者 22なし →帰宅困難者の状況 電力 50なし →電気 健康不安 23なし →心理的な不安感 電話等通信 51インターネット→インターネット 24避難所避難 →避難生活(避難所) 52固定電話 →固定電話 (精神的含む) 25屋外避難 →避難生活(屋外) 53携帯電話 →携帯電話 災害時要援護者 26なし →援護が必要な被災者 54なし →電話全般 就業制約 27なし →働く環境 都市ガス 55なし →都市ガス 生活再建 28なし →生活再建への道すじ 建物等被害 屋外落下物 56なし →屋外落下物 29公的助成等 →生活再建への道すじ 火災 57なし →火災 →資金繰り 58通電火災 →火災 30生活復興調査等→生活再建への道すじ 地下街・ターミナル駅59なし →たくさんの人が集まる場所 31BCP・災害対策→BCP・災害対策 津波 60なし →津波の被害 生活物資 32なし →必要品の調達 文化財 61なし →文化財 →資金繰り 液状化・地盤被害 62なし →地盤・建物崩壊・液状化 →避難方法 63急傾斜地 →地盤・建物崩壊・液状化 33食料・水 →食料 64ため池 →地盤・建物崩壊・液状化 →水 大規模集客施設等 65なし →たくさんの人が集まる場所 34毛布・衣類 →衣類 長周期地震動 66なし →高層建物の被害 35物流 →物流 36燃料 →燃料

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 表4-14にて生活継続戦略を「LCP策定用分類項目」で再分類した結果(項目 数)を示す。 表4−13 「LCP策定用分類項目」別分類項目数 1医療 9 23鉄道 11 2衣類 4 24電気 11 3インターネット 1 25電話全般 25 4屋外落下物 2 26トイレ・下水道 40 5火災 30 27道路 21 6学校の再開 8 28都市ガス 18 7帰宅困難者の状況 50 29閉じ込め事故 18 8空港 5 30燃料 11 9携帯電話 8 31働く環境 62 10高層建物の被害 9 32BCP・災害対策 14 11固定電話 9 33必要品の調達 13 12ゴミ 7 34避難生活(屋外) 11 13災害以外による死亡 8 35避難生活(共通) 22 14資金繰り 6 36避難生活(居住地外) 7 15自宅の被害 26 37避難生活(自宅) 43 16死亡者への弔い 4 38避難生活(避難所) 147 17食料 16 39避難方法 175 18心理的な不安感 15 40物流 13 19生活再建への道すじ 179 41文化財 1 20たくさんの人が集まる場所 15 42ペットの避難 5 21治安の悪化 4 43水 26 22津波の被害 19 44援護が必要な被災者 21 45地盤・建物崩壊・液状化 40 1,189 表4−14 「生活継続戦略」別分類項目数 【LCP策定用分類】 【生活継続戦略】 BCP・ 災害対策 下水道 援護 必要な 被災者 火災 帰宅困難者 状況 死亡者 弔い 資金繰り 自宅 被害 食料 心理的な 不安感 生活再建 への 地盤 建物崩 液状化 津波 被害 環境 道路 避難生活 (屋外) 避難生活 (共通) 避難生活 (自宅) 避難生活 (避難所) 避難方法 必要品の 調達 総計 安否確認・避難方法の決定 2 3 1 22 28 家具等の安全対策実施 19 2 21 過去災害被害・被災体験を正 しく認識 2 2 1 1 1 1 5 1 38 52 共助体制の構築 3 9 3 2 2 1 20 災害関連情報の受信・収集・ 共有 1 2 1 2 7 13 災害時生活物資の事前準備 1 1 1 4 1 2 2 4 13 1 30 災害対応・事業継続を優先す べき場合の事前準備・心構え 1 3 1 11 16 災害発生時をイメージし、最 悪の事態も想定する 1 1 1 4 2 8 26 43 事業継続体制の整備 7 2 1 1 6 1 3 21 生活再建への取組 1 1 6 3 86 29 1 1 1 129 被災状況に応じた適切な行動 判断を行う 1 3 3 2 1 1 1 1 22 35 避難・徒歩帰宅経路の確認 1 2 1 5 9

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 表4-14からLCP策定用分類に対応する生活継続戦略の項目数が多岐にわたっ ているということが分かる。特に「避難方法」の列を見るとほぼすべての生活継 続戦略に該当している。LCP策定用分類の項目となっている被災時に対応すべき 1つ1つの行動がさまざまな生活継続戦略、LCP版重要業務(生命・財産・生活 支障・恐怖心)を支えていくのである。

5.LCPの策定

 本章では、「被害想定・様相タイムライン総合表」に基づき従業員の各家庭で 行う「LCPⅠ」、および各企業において策定済のBCPと相互に連関するLCP、「LCP Ⅱ」の策定手順を述べる。 5.1.策定方針 5.1.1.企業の業務の一環として実施すること  本章で述べるLCPⅠもLCPⅡも、個人のみあるいは家庭のみでなく企業の業務 の一環として実施することが必要不可欠な条件である。  綜合警備保障株式会社は2018年3月に「防災と防災教育に関する意識調査」を 実施し、その中で「あなたが防災に関する訓練や教育、学習をするきっかけは何 でしたか」と問うたところ、表5-1の結果となった。  ①の設問は、高校生の約8割が防災教育を受ける機会があったと回答している に対し、若手社会人(東日本大震災以降に社会人になった人)は6割、ベテラン 社会人(東日本大震災以前から社会人だった人)に至っては5割を大きく下回る 結果となっている。  文部科学省(2013)では幼稚園児から高校生まで、児童生徒等の発達の段階に 表5−1 防災に関する訓練や教育、学習をするきっかけ ①学校や会社、町内会など で学ぶ機会があった ②子供が学校で教わってき て、教えてもらった ③家族で防災に関して話し 合い、学ぶ必要を感じた 64.4% 10.9% 10.2% 78.7% − 6.7% 44.9% 15.0% 14.0% 62.6% 9.9% 11.5% 全体 高校生 ベテラン社会人 若手社会人 出所:綜合警備保障株式会社(2018)を参考に作成

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合わせた防災教育の目標が設定され、校種ごとの年間計画例、授業展開例で示さ れており、表5-1での高校生、若手社会人など若年層ではある程度防災知識を 体系的かつ強制的に学ぶ機会があったものと考えられる。一方、表5-1でのベ テラン社会人など中年層以上はそのような機会は自らが能動的に動かない限り、 得られなかったのではないかと考えられる。  従って、筆者が論じるLCPの策定は「企業の業務の一環」として実施すること を前提とし、後述する「BCPと相互に連関したLCPの策定」にも期するため、従 業員に対しある程度の強制力をもって防災知識の浸透を図るべきと考える。 5.1.2.「BCPとLCPが相互に連関」することの意義  本研究は「事業継続計画(BCP)と相互に連関した生活継続計画(LCP)の策 定に係る実践的研究」を試みることであるが、筆者が考える「事業継続計画と相 互に連関する」ことは次のとおりである。 ① 従業員が企業の業務の一環として行うとともに、家庭で家族の話し合いのも とLCP策定に取り組み、 ② 被災後最低限の生活維持ができるよう企業側が従業員家族をバックアップで きるよう制度を整備することで、 ③ 大規模地震発生等非常時においても家族の安全を担保し ④ 従業員自身が被災後出社可能となる状況を確立することで、 ⑤ 結果的に早期の事業継続を図ることができる  3において、「BCPの課題」は「災害等非常時において従業員の家族に対し事 業継続上必要となる従業員自身の行動の事前周知あるいは防災知識の啓もうを企 業側が行っていない」ことにあると述べたが、上述①から⑤の過程を経るなかで、 このBCPの課題も克服することができる。  まとめれば、『「LCPがBCPと相互に連関する」こととは、「従業員およびその 家族がLCPを策定することで、結果的にBCPを強固なものとし、早期の事業継続 をも図ることができる」ということ』である。 5.1.3.策定方針  まず、本研究におけるLCPの定義を『大地震発生時においても、本人あるいは 家族が「死なない、そして生き延びる、及び最低限の生活維持を達成する」ため

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を述べる。 ① 首都直下地震、南海トラフ地震等大規模地震発生を想定条件とする。 ② フェーズ0からフェーズ2に該当するデータ項目をLCP策定の対象とする。 (4.2.3参照) ③ 企業の業務の一環として実施することを原則とし、従業員自身が家族ととも に策定する。 ④ 「被害想定・様相タイムライン総合表」を基に、原則として「フェーズ毎」 に大規模地震発生時に自ら、あるいは家族が置かれる状況をイメージする。 ⑤ フェーズ毎に「教訓・要対応事項」を確認。各家庭での現状認識を行った上、 家庭での大規模地震に対する発災前・発災後の対応策を立案する。ここまでが 「LCPⅠ」となる。 ⑥ 「LCPⅠ」のうち発災後に係る部分について、企業側でバックアップするた めの代替策を示し、家庭毎の対応策に連携させ、BCPと相互に連関したLCPを 策定する。これが「LCPⅡ」となる。 5.2.LCPⅠ策定手順 5.2.1.STEP1 ⑴ 目的  各家庭における大規模地震発生時の様相を的確にイメージし、準備・対応状 況を確認する。 ⑵ 実施形態   社内でのワークショップ、セミナー等会社業務の一環として実施する。 ⑶ 対象者   希望する従業員全員 ⑷ 講師  従業員のうち一定の防災知識がありかつ自社事業継続計画に精通した者から 選任することを推奨する。(例えば防災士、BCAO認定事業継続管理者などの 資格保有者が有用) ⑸ ワークショップ実施手順  ① 被害想定・様相タイムライン総合表暫定モデルから被害想定をフェーズ毎 に抽出した『被害想定イメージ確認表』(抜粋版 表5-2)を用いて大規 模地震発生時にフェーズ毎に起こる事態、被害想定を従業員自らがイメージ する。

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 ② フェーズ毎に基礎的な防災知識を習得する。別途ツールにより参加者によ る事前学習またはワークショップにて講義形式で実施する。  ③ 被害想定・様相タイムライン総合表をフェーズ別かつ(原則)重要業務→ 生活継続戦略→LCP策定用分類→LCP確認事項の順でソート、整理し抽出し た「LCP策定検討シート」(抜粋版、表5-3)を配付する。  ④ 「LCP策定検討シート」(表5-3)に記載してある「LCP確認事項」(列D) の問いについて「YES / NO /(自分には)該当せず」(列F)を判断し記 入する。必要に応じ『被害想定イメージ確認表』(表5-2)の「LCP策定 用分類項目」と「LCP策定検討シート」(表5-3)の同項目を対比し災害 時イメージ情報を補強する。また、LCP確認事項の問いが分かりにくい場合 は「被害等の様相」(列E、実災害の事例を記載)を参照する。  ⑤ 「LCP策定検討シート」(表5-3)の列Gに「YES」とした項目は家庭で の対応済内容を記入する。「NO」とした項目は何が不足しているのか、今 後どう対応していくかをまずワークショップに参加している従業員自身が考 え、記入する。またどう対応すべきか不明の場合は、列K「被害等の様相か ら見出される教訓・要対応事項例」を参考とする。 表5−2 被害想定イメージ確認表(フェーズ1) 被害想定イメージ確認表(フェーズ1)(地震発生後10時間~100時間・4日) LCP 策定用 分類項目 重要業務 被害等の様相 火災 生命 ・初期消火活動中に住民が火災に巻き込まれ被災 ・(広域)避難場所への移動時に誘導等がない場合、混乱が拡大 ・延焼による避難困難(逃げ惑い)により火災に巻き込まれ被災 ・火災旋風により屋外で移動中の人が多数焼死する ・東京湾沿岸等の危険物施設において火災により爆発や有毒ガス等が発生 ・避難所までの経路や、避難所において延焼火災により人的被害が発生する。 ・熱傷患者が出始める 火災 生活支障 ・延焼地区からの避難者が増加 ・火災等で、さらに避難が必要な避難所がある ・鎮火した地区に避難者が戻り始める ・消防機関による消火を継続するが、さらに延焼。 ・直後に発生した火災は概ね鎮火。 ・電力の復旧により、新たに通電時の電気機器や電気配線のショート等による通電火災が発生するおそれ。 ・消防運用で消し止められなかった火点において延焼が拡大 ・延焼火災が鎮火する 火災 財産 ・住民等による初期消火活動や消防活動により多くが消火されるが、100~600箇所で木造建物からの延焼火点が残り、消防隊の消火活動及び焼け止まりによる鎮 火まで1日~2日間火災が継続。 避難生活(共通) 生活支障 ・停電や通信状態の不調、マンパワーの不足などにより、被災者の物資ニーズの把握が困難となる。 ・ライフライン断絶による生活支障が発生。 ・災害対策本部や病院等におけるライフラインのバックアップ機能が限界を超え、様々な活動支障が発生。 ・停電、断水、ガス供給停止により、調理が困難となる。 避難生活(自宅) 生活支障 ・オフィスビルでは、非常用発電機の無給油連続運転時間は最長3日間程度であり、系統電力の供給停止が長期化した場合、事業継続が困難となる。 ・マンションでは、停電・断水等によりいわゆる「高層難民」となる上層階居住者が多数発生。特に階段の昇降に必要な体力が低下している高齢者等にとって、 生活継続が困難に ・災害により住居を失わないものの、生活必需品等の不足が生じる。いわゆる在宅避難者が多数発生する。 ・在宅の避難行動要支援者の安否確認等のための人員が不足・暖房・冷房機能の停止(停電、都市ガスの供給停止) ・照明機能の停止(停電) ・飲水不能(断水、停電による揚水ポンプの停止) ・調理不能(断水、都市ガスの供給停止) ・生鮮食品の貯蔵困難(停電) ・水洗トイレの使用不能(断水、設備の破損) ・入浴不能(断水、都市ガスの供給停止) ・洗いもの、洗濯等不能(断水) ・高層マンション等におけるエレベーターの使用不能(停電) ・家具等屋内収容物の転倒、落下、滑動等による生活支障 ・出入口のドア、窓等の変形、破損等によるプライバシー、安全確保の困難、風雨の進入 避難生活(避難所) 生命 ・避難者の中には負傷者も多く、避難者でもある医療関係者による看護や、医師の派遣による応急手当が実施される。 ・避難所に避難した高齢者・身体障害者等の災害時要援護者に必要な医療・介護面のケアが行き渡らない事態が発生する。 ・膨大な数の避難所避難者には特別なケアを必要とする災害時要援護者が多数存在すると想定

参照

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