• 検索結果がありません。

急性胆管炎におけるProcalcitoninの有用性の検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "急性胆管炎におけるProcalcitoninの有用性の検討"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)日本腹部救急医学会雑誌 40(7) :809〜816,2020. 原 著 急性胆管炎における Procalcitonin の有用性の検討 八戸市立市民病院消化器科. 是川 海,沖 元二,國光 敦 要旨:当院で経験した急性胆管炎 122 例を対象に,procalcitonin(以下,PCT)の有用性を後方視的に検討した。 PCT は重症度の悪化に伴い有意に上昇した。PCT・WBC・CRP 3 因子の ROC ─ AUC は,各マーカー間に有意 差を認め(P<0.0001),PCT が最も高い診断能を示した(PCT:0.89,WBC:0.78,CRP:0.73) 。また,血液 培養陽性患者の PCT は陰性患者に比し有意に高く,血液培養陽性を選別する ROC ─ AUC は 0.65,陽性を疑う cut off 値は 1.3ng/mL であり,PCT 1.3ng/mL を区切りに血小板数を比較すると 1.3ng/mL 以上の患者で有意に 減少していた。PCT は緊急胆管ドレナージを要する患者の選別や潜在性重症化患者を推定できる可能性があり, 新たなバイオマーカーとなり得ると考えられた。 【索引用語】急性胆管炎,procalcitonin,血液培養. 間に急性胆管炎の診断で当院入院となった患者は 240. はじめに. 例で,そのうち PCT を測定していた患者は 157 例で. 急性胆管炎は「胆管内に著明に増殖した細菌の存在. あった。解析対象とする条件として,まず PCT 測定. (胆汁感染) 」および「細菌またはエンドトキシンが血. のタイミングが抗生剤や内視鏡治療など何らかの治療. 流内に逆流するような胆管内圧の上昇(胆道閉塞また. 介入をする前,すなわち初療の時点であることを前提. は胆汁うっ滞) 」の 2 つの因子が存在することで胆管. とし,前医ですでに治療介入がなされ当科紹介となっ. 内に急性炎症が発症した病態であり,抗生剤のみで治. た症例は今回の解析対象から除外した。また,PCT. 癒するものから胆道ドレナージ術や集中治療室での全. 偽陽性をきたす病態(重症外傷,手術直後,心原性. 1)2). 。本邦に. ショック時,生後 48 時間以内の新生児,深在性真菌. おける急性胆管炎の致命率は 2.5 〜 11.0%であると報. 感染,多臓器不全,甲状腺 C 細胞癌および胆管炎以. 告されており 1)〜 3),診断や治療の遅れはショックや. 外の感染症)を併発している症例は解析対象外とした. 身管理を要するものまでさまざまである. (表 1)。122 例の臨床的背景を表 2 に示す。. 播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:以下,DIC) ,ひいては多臓器不全を引 き起こし致命的になることがあるため重症度に応じた 適切な治療が求められる。 近年,細菌感染症の鋭敏なバイオマーカーとして procalcitonin(以下,PCT)が注目を集めている 4)。 急性胆管炎は敗血症の原因疾患として重要な細菌感染. 除外(n=35) ・初療時の測定ではないため(n=18) ・他院で既に治療開始済のため(n=10) ・他の感染症合併があるため(n=7). 症の 1 つであるが,急性胆管炎と PCT の関連につい てはいまだエビデンスが少なく急性胆管炎・胆囊炎診 療ガイドライン 2018(Tokyo Guideline 2018:以下, TG18)5) においても「重症度判定に有用なパラメー ターとなる可能性が示唆される(レベル D) 」との文 言に留まっている。そこでわれわれは,PCT が急性. 図 1 患者選別のフローチャート 対象期間中急性胆管炎の診断となった 患者は 240 例で,そのうち PCT を測 定した患者は 157 例であった。条件を 満たす 122 例を解析対象とし,患者数 はそれぞれ軽症 57 例,中等症 58 例, 重症 7 例であった。重症度は急性胆管 炎・胆囊炎診療ガイドライン 2013/2018 に準拠した。. 胆管炎の診断,治療において有用なバイオマーカーと なりうるかを後方視的に検討した。. Ⅰ.対象と方法 下記の条件を満たし解析対象となった症例数は 122 例であり,図 1 に示す通りに選別した。 2017 年 4 月 1 日から 2018 年 10 月 31 日の 19 ヵ月の 809.

(2) 日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 40(7)2020 表 1 除外となった 35 症例の詳細 初療時の測定ではない. 18 例 . 前医で加療済み. 10 例 . 他の感染症合併. 7 例 . ・肺炎. 4例. ・尿路感染症 ・急性胆囊炎. 2例 ※. 1例. 合計. 35 例 . ※. 悪性腫瘍による下部胆管閉塞に伴う胆管炎ではときに 急性胆囊炎との鑑別が困難なことがあるため除外した。. 表 2 患者背景(median and interquartile range で表記) 平均年齢(歳) 男性:女性 PCT(ng/mL) WBC(/μL). total(n=122). 軽症(n=57). 中等症(n=58). 重症(n=7). 76.9(70.8 〜 85.0). 71.6(64.0 〜 80.5). 81.5(78.8 〜 87.0). 82.1(76.0 〜 85.3). 78:44. 35:22. 39:19. 4:3. 7.3(0.3 〜 7.9). 0.9(0.1 〜 1.1). 9.9(1.2 〜 15.9). 37.8(20.3 〜 54.9). 11,216(7,700 〜 14,000) 8,765(6,550 〜 10,400) 13,402(8,950 〜 16,275). 14,000(9,650 〜 16,200). CRP(mg/L). 8.2(1.5 〜 12). 5.9(0.7 〜 9.2). 9.7(2.9 〜 14.9). 12.3(9.9 〜 15.7). 体温(℃). 38.0(37 〜 39). 37.2(36.6 〜 37.8). 38.0(36.8 〜 39.0). 38.4(37.8 〜 39.1). アルブミン(g/dL). 3.3(2.9 〜 3.7). 3.6(3.2 〜 3.9). 3.2(2.8 〜 3.7). 2.8(2.4 〜 3.0). 総ビリルビン (mg/dL). 3.3(1.3 〜 4.2). 2.5(1.2 〜 3.5). 3.4(1.4 〜 4.7). 2.6(1.3 〜 3.9). クレアチニン (mg/dL). 0.9(0.7 〜 1.1). 0.8(0.7 〜 1.0). 0.9(0.7 〜 1.2). 1.5(0.8 〜 1.9). 19.9(14.5 〜 22.2). 21.5(16.4 〜 24.1). 19.5(13.7 〜 21.2). 9.0(6.5 〜 13.0). Platelet(×104/μL) FDP(μg/mL). 12.0(3.9 〜 14). 9.2(3.3 〜 9.7). 12.2(4.7 〜 15.4). 29.2(3.7 〜 56.9). PT ─ INR. 1.2(1.0 〜 1.2). 1.1(0.9 〜 1.1). 1.2(1.1 〜 1.3). 1.6(1.1 〜 1.4). DIC 合併※ 1. 3/122(2.5%). 0/57(0%). 0/58(0%). DIC の内訳 菌血症※ 2 緊急 ERCP 施行例※ 3 (施行率:%) 急性胆管炎の原因※ 4. 死亡数. 左記の重症欄に記載 41.3%(45/109). 31.9%(15/47). 45.5%(25/55). 71.4%(5/7). 115/122(94.3%). 53/57(93%). 55/58(94.8%). 7/7(100%). 胆石性 80(65.6%). 胆石性 36(63.2%). 胆石性 35(60.3%). 胆石性 6(85.7%). 悪性腫瘍※ 5 14 (11.5%) 悪性腫瘍 8(14%). 悪性腫瘍 8(13.8%). 悪性腫瘍 1(14.3%). 外的圧排※ 6 8(6.6%) 外的圧排 7(12.3%). 外的圧排 2(3.4%). 良性狭窄 10(8.2%). 良性狭窄 9(15.5%). 良性狭窄 2(3.5%). 術後※ 7 3(2.5%). 術後 2(3.5%). 術後 1(1.7%). 原因不明 7(5.7%). 原因不明 2(3.5%). 原因不明 3(5.2%). 1(0.8 %). 0(0%). 備考. 1(1.7%). ※2. 0(0%). 死亡例は胆管炎治癒後の 重症例(7)の内訳は,循環障害(1) ,Platelete 肺炎で死亡したため胆管 <120,000(5) ,クレアチニン<2.0 および INR> 炎は死因と判断せず。. ※1. 3/7(42.9%) ・Case1…DIC score 6(plt 3+FDP 3) ・Case2…DIC score 5(plt 1+SIRS 1+FDP 3) ・Case3…DIC score 7(plt 3+FDP 3+SIRS 1). 1.5(1)。. DIC は「急性期 DIC 診断基準」に基づき診断した。 血液培養施行例のみで算出。. ※3. 緊急 ERCP 施行例とは,当院入院後 24 時間以内に治療を行ったものを指す。 原因の分類は TG18 に準拠した。 ※5 本検討では悪性腫瘍(胆管癌や膵癌)による胆管閉塞→急性胆管炎の病態を指す。 ※6 悪性腫瘍の胆管周囲リンパ節転移巣や肝囊胞による胆管外圧排を指す。 ※7 いずれの症例でも膵胆道系手術の際に胆管空腸吻合を行っており,吻合部狭窄や胆石など何らかの胆汁うっ滞を惹起する病態は推定されず逆行性 胆管炎の診断となった。 ※4. 810.

(3) 日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 40(7)2020 表 3 中等症判定 5 項目の各重症度間の比較. *. PCT(ng/mL). 軽症 vs 中等症 中等症 vs 重症 軽症 vs 重症. *. *. 80 70 60 50. P<0.05. n.s. n.s. アルブミン. P<0.05. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. 年齢. P<0.0001. n.s. n.s. WBC. P<0.05. n.s. P<0.0001. 総ビリルビン. 40 30 20 10 0. 発熱. 軽症. 中等症. 重症度. 重症. 発熱・アルブミン・年齢・WBC は Kruskal ─ Wallis 検定,総ビ リルビンは One ─ way ANOVA で解析した。. *:P<0.0001. 図 2 重症度間での PCT 値の比較(one ─ way ANOVA) PCT 値は,重症度の悪化に伴い有意 に上昇した。. 別に軽症 0.9(0.1 〜 1.1)ng/mL,中等症 9.9(1.2 〜 15.9)ng/mL,重症 37.8(20.3 〜 54.9)ng/mL となり, 重症度の悪化に伴い PCT は有意に上昇した(図 2)。 また,中等症判定項目であるアルブミン,年齢,発熱,. 評価項目は①急性胆管炎重症度と PCT,②急性胆. 総ビリルビン,WBC の 5 項目を各重症度間で比較し. 管炎重症度と WBC・CRP・PCT の比較,③血液培養. たが,すべての重症度間で統計学的有意差を認めた項. と PCT の関連,④ PCT と血小板数との関連をあげ後. 目は PCT のみであった(表 3)。. 方視的に解析を行った。急性胆管炎の重症度は TG13/ 2.急性胆管炎重症度と WBC・CRP・PCT の比較. 18 に準拠し判定した。血液培養検査,WBC,CRP およ. 感染症のみならず非特異的な炎症マーカーとして広. び PCT の測定は当院の臨床検査室において行われた。 血液培養検査は好気性ボトル(Bact/ALERT. Ⓡ. Biomèrieux 社)と嫌気性ボトル(Bact/ALERT. Ⓡ. SA,. く用いられている WBC および CRP は,部分的に重. SN,. 症度間で統計学的有意差を認めるものの,すべての重. Biomèrieux 社)2 セットをそれぞれ異なる部位より採取. 症度間では有意差は示されなかった(図 3)。PCT・. し,1 本でも菌が検出されたものを血液培養陽性とした。. WBC・CRP の 3 因子での ROC ─ AUC(95%CI)を,. 陽性症例については,臨床状況や発育した菌種,陽性. 緊急または早期胆管ドレナージを考慮する中等症以上. となったセット数,採取した状況,発育時間を総合評. を区切りに評価したところ(中等症 58 例+重症 7 例. 価し真の菌血症もしくはコンタミネーション (偽陽性). vs 軽 症 57 例 ),PCT が 0.89(95% CI:0.84 ─ 0.95) ,. の判別をした。PCT は 0.02 〜 75ng/mL を測定範囲. WBC が 0.78(0.70 ─ 0.87),CRP が 0.73(0.64 ─ 0.82). とし,血液培養を含む評価対象となる血液検体は初療. で各マーカー間に有意差を認め(P<0.0001),PCT. 時に採取されたものとした。. が最も高い診断能を示した(図 4)。. 統計ソフトは Graph Pad Prism 7 を使用し,3 群間 3.血液培養と PCT の関連. の 比 較 は one ─ way ANOVA お よ び Kruskal ─ Wallis 検定で,2 群間の比較は Mann ─ Whitney U 検定によ. 解析対象となった 122 例のうち血液培養を採取した. る解析を行った。相関の評価は Spearman の順位相関. のは 109 例(89.3%)で,そのうち 45 例(41.2%)で. 係数を用いた。統計学的検定はいずれも P<0.05 を有. 陽性となった。重症度別に見ると軽症 31.9%(15/47. 意差ありとした。. 例),中等症 45.5%(25/55 例) ,重症 71.4%(5/7 例) であり,カイ二乗検定では各重症度間の陽性率に統計. 本研究は八戸市立市民病院倫理委員会の承認を得て. 学的有意差は認めなかったものの,重症度の悪化に伴. 行った(承認番号 1813) 。. い陽性率も上昇する傾向にあった。また,PCT 値の. Ⅱ.結 果. median(interquartile range)は血液培養陽性患者で 12.7(0.45 〜 19.8)ng/mL,陰性患者で 4.6(0.2 〜 4.9). 解析した 122 例の重症度の内訳は,軽症(GradeⅠ) 57 例,中等症(GradeⅡ)58 例,重症(GradeⅢ)7 例. ng/mL と陽性患者の PCT は陰性患者の濃度に比し有. であった。. 意(P<0.05)に高値を示した(図 5) 。なお,血液培 養陽性患者から検出された菌体はいずれの重症度にお. 1.急性胆管炎重症度と PCT. いても Escherichia coli が最多であった(表 4)。 血液培養陽性患者か否かで ROC 曲線を描くと AUC. PCT 値の median(interquartile range)は重症度 811.

(4) 日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 40(7)2020 WBC. a. * 40. *. CRP(mg/dL). WBC(/μL). 40,000 30,000 20,000 10,000 0. 軽症. CRP. b. **. 中等症. 30 20 10 0. 重症. 軽症. **:P<0.05 *:P<0.0001. 重症度. 中等症. 重症. 重症度 *:P<0.0001. 図 3 a:重症度間での WBC の比較(Kruskal ─ Wallis 検定) 。軽症─中等症,軽症─重症度 間で WBC は統計学的有意差を認めるものの,中等症─重症間で有意差は示され なかった。 b:重症度間での CRP の比較(one ─ way ANOVA) 。軽症─中等症間で CRP は統計 学的有意差を認めるものの,それ以外の重症度間では有意差は示されなかった。. 重症(n=7)+中等症(n=58)vs 軽症(n=57) PCT WBC CRP. 50. 0. 0. 50. ** 80. PCT(ng/mL). Sensitivity(%). 100. 100. 100%─Specificity(%) AUC. 95%Cl. P value. PCT. 0.89. 0.84 ─ 0.95. <0.0001. WBC. 0.78. 0.70 ─ 0.87. <0.0001. CRP. 0.73. 0.64 ─ 0.82. <0.0001. 70 60 50 40 30 20 10 0. 血液培養陰性 (n=64). 血液培養陽性 (n=45) **:P<0.05. 図 4 PCT・WBC・CRP の ROC 曲線 PCT,WBC,CRP の 3 因子の ROC ─ AUC を,緊急または早期胆管ドレナージを要 する中等症,重症と軽症で区分し評価し たところ,各因子間で統計学的有意差を 認めた。また,PCT がもっとも高い診断 能を示した。. 図 5 血液培養陰性患者と陽性患者の PCT の比較(Mann ─ Whitney U 検定) PCT 値は血液培養陽性者で有意に高 値を示した。. 表 4 各重症度の血液培養検出菌の内訳 軽症(n=16). 中等症(n=33). 重症(n=9). Escherichia coli. 6. Escherichia coli. 12. Escherichia coli. 4. Klebsiella oxytoca. 2. Klebsiella pneumoniae. 4. Klebsiella pneumoniae. 1. Aeromonas caviae. 2. Klebsiella oxytoca. 3. Klebsiella oxytoca. 1. Klebsiella pneumoniae. 1. Enterococcus faecium. 3. Citrobacter freundii. 1. Aeromonas hydrophilia. 1. Enterobacter clocae. 3. Enterococcus casseliflavus. 1. Enterobacter clocae. 1. Aeromonas hydrophilia. 2. Streptococcus bovis. 1. Enterobacter gergoviae. 1. Citrobacter freundii. 2. Enterobacter aerogenes. 1. Fusobacterium necrophorum. 1. Enterococcus faecalis. 1. Enterococcus gallinarum. 1. Staphylococcus hominis. 1. Enterococcus casseliflavus. 1. 812.

(5) 日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 40(7)2020 **. AUC:0.65 95%Cl:0.54─0.75 cut off値:1.3ng/mL 感度:0.67 特異度:0.55. 50. 0. platelet(×104/μL). Sensitivity(%). 100. 0. 50. 100. 100%─Specificity(%). 図 6 血液培養と PCT の ROC 曲線 血液培養陽性か否かで解析した ROC 曲線。AUC は 0.65 で,血液培養陽性 者を推定する PCT の cut off 値は 1.3ng/ mL であった。. **. 100 80 60 40 20 0. 軽症. 中等症. 重症. 重症度. **:P<0.05. 図 7 重症度間での血小板数の比較(one ─ way ANOVA) 血小板数は,軽症─重症間,中等症─ 重症間の比較において重症群で有意 に低値を示した。. は 0.65(95% CI:0.54 ─ 0.75,P<0.05)となり,Youden index によって算出された血液培養陽性患者を推定す る PCT cut off 値は 1.3ng/mL(感度 0.67, 特異度 0.55). *. であった(図 6) 。 4.PCT と血小板数との関連 敗血症性 DIC との関連が特に密接である血小板数 と PCT との関連を検証した。まず,本検討でも血小 板数は軽症 vs 重症,中等症 vs 重症群の比較におい. 40 30 20 10 0. の 2 群に血小板数を分けて比較すると後者で血小板数. ab T. PC. T. mL と 算 出 さ れ,PCT<1.3ng/mL,PCT≧1.3ng/mL. PC. be. lo. ov. w. 液培養陽性患者を推定する PCT の cut off 値は 1.3ng/. e. 1.. 1.. 3n. 3n. g/. 7) 。前述した「3.血液培養と PCT の関連」では血. g/. dL. ていずれも重症群で有意(P<0.05)に減少していた(図. 50. dL. platelet(×104/μL). 60. *:P<0.0001. 図 8 PCT と 血 小 板 数 の 関 連(Mann ─ Whitney U 検定) 血小板数を,血液培養陽性を推定す る PCT の cut off 値である 1.3ng/mL で分け比較すると PCT 1.3ng/mL 以 上の群で有意に低値を示した。. は有意(P<0.0001)に減少していた(図 8) 。さらに, PCT≧1.3ng/mL の 症 例 で 軽 症,中 等 症 そ れ ぞ れ の PCT と血小板数の相関を評価した。その結果,軽症, 中等症ともに PCT と血小板数の間に負の相関(軽症: rs=−0.67,P<0.05,中等症:rs=−0.83,P<0.0001)を 認めた(図 9) 。. 別の感染症で PCT の有用性が検証されている臨床研 究は少なく,殊に急性胆管炎においては本邦で 3 編の. Ⅲ.考 察. 報告のみである 9)〜 11)。急性胆管炎は既述の通り本邦. PCT はアミノ酸 116 個からなる分子量約 13kDa の. での致命率が 2.5 〜 11.0%といわれており,治療介入. ペプチドで,正常ではカルシトニンの前駆体として甲. の遅れを可能な限り少なくするためにより鋭敏なバイ. 状腺 C 細胞より合成される。ウイルス感染では IFN ─. オマーカーの証明が望まれる。. γによって産生抑制を受けるのに対し,細菌感染が生. 今回われわれはまず,既報の 3 編と同様に「急性胆. じると TNF ─αなどの炎症性サイトカインの刺激に. 管炎の重症度の悪化に伴い PCT は上昇する」ことが. より全身臓器から産生され血中に分泌されるという特. 成立するか否かを検証した結果,本検討においても. 徴を有する 6)。そのため,細菌性敗血症の診断におい. PCT は有用なバイオマーカーとなり得るという前提. て有用性の高いバイオマーカーとしての報告が多数な. が成立した。. されている. 4)7). 次に,PCT が急性胆管炎に対する緊急胆管ドレナー. 。さらに昨今の報告によると PCT は診. 断のみならず治療においても有用性が示唆されており,. ジ術施行判断の一助となるか,という観点で WBC,. 例えば PCT 値で抗生剤終了判定を行う procalcitonin. CRP,PCT の 3 因子を ROC ─ AUC を用いて比較した. 8). guidance も検討されている 。しかしながら,臓器. ところ,PCT の AUC は 0.89 であり,PCT が最も診 813.

(6) 日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 40(7)2020 b 25. platelet(×104/μL). platelet(×104/μL). a 20 15 10. rs=-0.67. y=-1.874x + 23.91. 5 0. R2=0.54 0. 2. 50. rs=-0.83. y=-0.2988x + 22.62. 40. R2=0.31. 30 20 10 0. 4 6 PCT(ng/mL). 8. 0. 20 40 PCT(ng/mL). 60. 図 9 a:軽症の PCT と血小板数の散布図および近似曲線(Spearman の順位相関係数)。 軽症で PCT≧1.3ng/mL を満たした 12 例に対し,PCT と血小板数(Plt)の散 布図を作成し Spearman の順位相関係数を用いて評価した。rs=−0.67 (P<0.05) となり,負の相関を認めた。 b:中等症の PCT と血小板数の散布図および近似曲線 (Spearman の順位相関係数) 。 中等症で PCT≧1.3ng/mL を満たした 40 例に対し,PCT と血小板数(Plt)の散布 図を作成し Spearman の順位相関係数を用いて評価した。rs=−0.83 (P<0.0001) となり,強い負の相関を認めた。. 断能が高く PCT 単独でも診断能に優れていることが. 接な関係があることが報告されている 13)14)。血小板. 推定された。Umefune ら 10)の報告では,急性胆管炎. 数は急性胆管炎の重症度判定項目にも採用されてお. 重症例の診断能は PCT の cut off 値を 2.2ng/mL とす. り,本検討でも血小板数は軽症,中等症と比較して重. ると感度 0.97, 特異度 0.73 であった。以上のことから,. 症で有意に低値を示した。また,PCT 1.3ng/mL を区. さらなる症例の蓄積,検討を要するが,PCT が急性. 切りに血小板数を比較したところ,1.3ng/mL 以上の. 胆管炎の重症度判定項目の 1 つとして有用である可能. 患者群では有意に低値であった。加えて,軽症,中等. 性が示唆された。. 症ではほとんどの症例で血小板数は正常範囲内にある ものの,いずれの重症度でも PCT 1.3ng/mL 以上の患. 今 回 の 検 討 で は, 血 液 培 養 を 採 取 し た 109 例 の 41.2%にあたる 45 例で陽性となった。急性胆管炎に. 者群では PCT と血小板数に負の相関が認められた。. おける血液培養陽性率は近年の報告では 34 〜 40%と. これらの結果からも,1.3ng/mL をもとに潜在性重症. 3). 患者を推定できる可能性が示唆された。. されており , 本検討の陽性率は妥当な結果と思われた。 12). 重症急性胆管炎の治療方針は,全身状態の安定と並. 検出された菌種にはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌を代. 行し緊急胆管ドレナージを行うよう TG18 でも明確に. 表とするコンタミネーションの際に高頻度でみられる. 示されており 15)治療介入の判断に迷うことはないが,. ものは同定できなかった。したがって,今回の検討で. 中等症の急性胆管炎に関しては「早期の胆道ドレナー. はコンタミネーションを疑う症例はないものと判断し. ジ」を考慮するとの記載があり,ドレナージを行うタ. ている。. イミングについては各施設の判断(当直医が消化器内. また,分離菌の頻度も既知の報告に類似しており. ,. 血液培養は結果が判明するまでに 1 〜 3 日程度要し,. 科かどうか,さらには胆膵専門医であるかどうかや休. 菌種の同定となるとさらに時間を要する場合が多い。. 日夜間にドレナージが可能な環境か,など)に任され. 血液培養陽性は潜在的な重症化リスクを有するという. ている部分が多い 16)。今回の検討を踏まえ,PCT<. ことであり,軽症や中等症から重症,多臓器不全に進. 1.3ng/mL で中等症の 18 例に関し再検討を行った。. 展する患者をより早期に推定することで治療介入の遅. 18 例中 17 例(94.4%)に 4 時間以内の緊急 ERCP が. れを防ぐことができる。本検討では血液培養陽性患者. 行われていたが,後方視的に検討すると実際に胆管ド. で PCT は陰性患者に比し有意に上昇しており,PCT. レナージが必要であった症例は 10 例,緊急ドレナー. 1.3ng/mL を cut off 値とすることで陽性患者推定の一. ジの必要性は低いと思われた症例(ドレナージの成功. 助となる可能性が示唆された。しかし,本検討では. 率や予想される有効性よりも,ERCP 後膵炎など ERCP. AUC が 0.65 と ROC 単独では診断能が高いとはいえ. 関連合併症のリスクのほうが高いと判断された症例). ない結果であったため, 血小板数と PCT の比較も行っ. は 8 例と考えられた。内訳は,ドレナージが必要な症. た。多臓器不全の原因として DIC は非常に重要であ. 例 10 例のうち 3 例が急性胆管炎および胆石性膵炎合. り,特に敗血症性 DIC は線溶抑制型で血小板数と密. 併例で,7 例が胆管癌による胆管狭窄のため留置して 814.

(7) 日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 40(7)2020. いたステント閉塞例であった。緊急ドレナージの必要. 参考文献. 性が低いと思われた 8 例はすべて原疾患が PSC や. 1) Tsujino T, Sugita R, Yoshida H, et al: Risk factors for acute suppurative cholangitis caused by bile duct stones. Eur J Gastroenterol Hepatol 2007; 19: 585─588. 2) Murata A, Matsuda S, Kuwabara K, et al: Evaluation of compliance with the Tokyo Guidelines for the management of acute cholangitis based on the Japanese administrative database associated with the Diagnosis Procedure Combination system. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2011; 18: 53 ─ 59. 3) Gomi H, Takada T, Hwang TL, et al: Updated comprehensive epidemiology, microbiology, and outcomes among patients with acute cholangitis. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2017; 24: 310 ─ 318. 4) Aikawa N, Fujishima S, Endo S, et al: Multicenter prospective study of procalcitonin as an indicator of sepsis. J Infect Chemother 2005; 11: 152 ─ 159. 5) 急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン改訂出版委員会, 日本肝胆膵外科学会,日本腹部救急医学会,ほか:急性 胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン 2018 [第 3 版].東京, 医学図書出版,2018:77 ─ 78. 6) Linscheid P, Seboek D, Nylen ES, et al: In vitro and vivo calcitonin I gene expression in parenchymal cells: a novel product of human adipose tissue. Endocrinology 2003; 144: 5578 ─ 5584. 7) Assiscot M, Gendrel D, Carsin H, et al: High serum procalcitonin concentrations in patients with sepsis and infection. Lancet 1993; 341: 515 ─ 518. 8) De Jong E, van Oers JA, Beishuizen A, et al: Efficacy and safety of procalcitonin guidance in reducing the duration of antibiotic treatment in critically ill patients: a randomized, controlled, open ─ label trial. Lancet Infect Dis 2016; 16: 819 ─ 827. 9) Shinya S, Sasaki T, Yamashita Y, et al: Procalcitonin as a useful biomarker for determining the need to perform emergency biliary drainage in cases of acute cholangitis. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2014; 21: 777 ─ 785. 10) Umefune G, Kogure H, Hamada T, et al: Procalcitonin is a useful biomarker to predict severe acute cholangitis: a single ─ center prospective study. J Gastroenterol 2017; 52: 734 ─ 745. 11) Hamano K, Noguchi O, Matsumoto Y, et al: Usefulness of procalcitonin for severity assessment in patients with acute cholangitis. Clin Lab 2013; 59: 177 ─ 183. 12) 急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン改訂出版委員会, 日本肝胆膵外科学会,日本腹部救急医学会,ほか:急性 胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン 2018[第 3 版] .東京, 医学図書出版,2018:129 ─ 131. 13) 宮下知治:敗血症性臓器障害の病態を科学的に再考す る.十全医会誌 2015;124:24 ─ 28. 14) 菅 元泰,西野隆義,橋本佳恵,ほか:急性胆管炎に おける凝固異常に関する検討.胆道 2017;31:787 ─ 792. 15) 急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン改訂出版委員会, 日本肝胆膵外科学会,日本腹部救急医学会,ほか:急性. IgG4 ─ SC であり,肝内胆管の微細胆管に至るまで非 連続的な胆管閉塞をきたしているため有効なドレナー ジが難しい症例と考えられた。また,菌血症は 18 例 中 3 例(16.7%)で,PCT≧1.3ng/mL の中等症患者 の菌血症が 37 例中 22 例(59.5%)と比して検出の割 合は低い結果であった。これらの結果からも,PCT 1.3ng/mL は治療方針決定の判断材料として有用であ ると考えられた。 また,急性胆管炎には初療の時点で軽症となり保存 的加療を選択したものの重症化し多臓器不全へ増悪す る症例が少なからず存在するため,治療介入の判断が 遅れることはときに致死的な結果となる危険性が高 い。そのため,より明確に胆管ドレナージの適応を判 断するバイオマーカーが不可欠である。PCT は ROC 曲線での評価に加え,中等症判定項目 5 つと比較し唯 一各重症度間で統計学的有意差を証明できた項目でも あるため,全身状態や TG18 の重症度判定と合わせて 緊急ドレナージを行う判断要素の 1 つになり得る可能 性が示唆された。 今回のわれわれの検討では,PCT は急性胆管炎の 胆管ドレナージ適応患者をより明確に判断できる因子 となり得ることや,軽症および中等症で重症化リスク を有する患者を推定できる可能性があり,有用なバイ オマーカーとなり得ると考えられた。しかし,今回の 検討では血液培養陽性患者を予測する AUC は 0.65 と 診断能は低い結果であり,今後さらに症例を蓄積した うえでの検討が必要である。 また,本検討は単施設での後方視的な研究であるこ と,解析対象となった重症胆管炎は 7 例と少数であっ たことなど,小規模な症例蓄積研究であることが限界 であり,今後の課題と考えられた。. 結 語 今回の検討では,PCT は現在の重症度判定項目や これまで用いられてきた炎症マーカーに加え,急性胆 管炎の診断および治療方針の決定に有用なバイオマー カーになりうる可能性が示唆された。 本論文の要旨は第 61 回日本消化器病学会大会(2019 年 11 月,神戸)で発表した。 本論文内容に関連する著者の利益相反:なし 謝辞:沖 元二先生には,本臨床研究,論文作成に あたり corresponding author としてご指導,ご鞭撻 を賜りました。心より感謝申し上げます。. 815.

(8) 日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 40(7)2020 解析.Prog Dig Endosc 2008;73:97 ─ 102.. 胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン 2018[第 3 版].東京, 医学図書出版,2018:54 ─ 55. 16) 水出雅文,田中良樹,小畑 力,ほか:当施設におけ る緊急 ERCP の現状と急性胆管炎中等症判定項目の. 論文受付 2020 年 6 月 8 日 同 受理 2020 年 8 月 20 日. Evaluation of the Usefulness of Procalcitonin as a Biomarker for the Diagnosis of Acute Cholangitis: A Single ─ center Retrospective Study Kai Korekawa, Motoji Oki, Atsushi Kunimitsu Department of Gastroenterology, Hachinohe City Hospital Serum procalcitonin(PCT)is a commonly used biomarker for the diagnosis of bacterial infections. We performed a single ─ center retrospective analysis of 122 patients diagnosed as having with acute cholangitis at our hospital to evaluate the usefulness of serum PCT for early diagnosis of acute severe cholangitis. The results of our statistical analyses revealed that the serum PCT level increased significantly as the severity grade of the cholangitis increased. The area under the curve(AUC)of the serum PCT was significantly greater than that of the white blood cell count or the serum C ─ reactive protein level. The serum PCT level was significantly higher in the case with bacteremia than in the cases without bacteremia. The ROC ─ AUC of the serum PCT level for discriminating between cases with and without bacteremia was 0.65(P<0.05), and the optimal cutoff value for the diagnosis of cases with bacteremia was 1.3 ng/mL. The blood platelet counts of the patients with serum PCT levels of over 1.3 ng/mL were significantly lower those of patients with serum PCT levels of under 1.3 ng/mL. A negative correlation was observed between the serum PCT level and the platelet count in both cases with mild and moderate cholangitis. Furthermore, our analyses also suggested that the optimal cutoff value of the serum PCT for predicting the need for emergency biliary drainage was 1.3 ng/mL. In conclusion, these findings suggest that the serum PCT could be a useful biomarker for early diagnosis of severe acute cholangitis.. 816.

(9)

表 2  患者背景(median and interquartile range で表記) total(n=122) 軽症(n=57) 中等症(n=58) 重症(n=7) 平均年齢(歳) 76.9(70.8 〜 85.0) 71.6(64.0 〜 80.5) 81.5(78.8 〜 87.0) 82.1(76.0 〜 85.3) 男性:女性 78:44 35:22 39:19 4:3 PCT(ng/mL) 7.3(0.3 〜 7.9) 0.9(0.1 〜 1.1) 9.9(1.2 〜 15.9) 37.8(

参照

関連したドキュメント

Finally, we give an example to show how the generalized zeta function can be applied to graphs to distinguish non-isomorphic graphs with the same Ihara-Selberg zeta

Let X be a smooth projective variety defined over an algebraically closed field k of positive characteristic.. By our assumption the image of f contains

She reviews the status of a number of interrelated problems on diameters of graphs, including: (i) degree/diameter problem, (ii) order/degree problem, (iii) given n, D, D 0 ,

It is suggested by our method that most of the quadratic algebras for all St¨ ackel equivalence classes of 3D second order quantum superintegrable systems on conformally flat

We show that a discrete fixed point theorem of Eilenberg is equivalent to the restriction of the contraction principle to the class of non-Archimedean bounded metric spaces.. We

Reynolds, “Sharp conditions for boundedness in linear discrete Volterra equations,” Journal of Difference Equations and Applications, vol.. Kolmanovskii, “Asymptotic properties of

It turns out that the symbol which is defined in a probabilistic way coincides with the analytic (in the sense of pseudo-differential operators) symbol for the class of Feller

We give a Dehn–Nielsen type theorem for the homology cobordism group of homol- ogy cylinders by considering its action on the acyclic closure, which was defined by Levine in [12]