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2.イランの環境問題をめぐるイスラーム議論(テーマセッション2 現代アジアにおける宗教の役割と多様性―環境政策、移住民支援、社会運動、ウェルビーイング―)

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Academic year: 2021

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224 225 宗教と社会 Religion and Society 2019.06, Vol.25: 223–232

 神戸大学 た外国人移住民の数が増えてきている。例え ば、中国大陸・東南アジア・アフリカからの移 民が大量に韓国・台湾・香港に流入している。 現在、日本は外国人労働者の受け入れ拡大を模 索している。移住民の生活実態や、彼・彼女ら の地域社会との共生・統合・衝突が重要な課題 となっている。従来、アジア各国政府は社会福 祉ではなく、経済成長・開発に焦点を置いてき たために、移住民たちへのサポートが不足して いる。上記のような状況をふまえ、社会福祉に 関わってきた宗教団体による移民への支援の現 状と可能性を明らかにする必要がある。 ③「リスク社会」[Beck 1986]において現 出する宗教知と実践。アジア社会では、経済発 展や都市化の進展が自然環境に問題を引き起し ており、加えて領土紛争、経済格差、人権問 題など、リスクは多くの要因と複雑に絡み合っ ている。グローバル化による多様化するリスク への対応策が求められている中、宗教知と実践 は一つの可能性として考えられる。例えば、イ ランやトルコでは環境問題が深刻する中、政府 は諸問題の解決へ向けて、従来の「科学的アプ ローチ」に根ざした視点に加えて、イスラーム 伝統の見地から市民へ環境意識の改革を訴えて いる。そのため、近年のリスク認知に関する議 論や運動は、科学的合理性はもとより、宗教的 影響力のもとで展開している。動態する現代ア ジア社会を理解するための鍵として、リスクを めぐる宗教の社会文化的役割を検討したい。 参考文献 Appadurai, A. 1996 . University of Minnesota Press.

Durkheim, E. 1912 translated by Joseph Swain.

. London: George Allen & Unwin Ltd.

Geertz, C. 1973

. New York:

Basic Books. Beck, U. 1992

. New Delhi: Sage.

2.イランの環境問題をめぐるイスラー

ム議論

阿部 哲* 2-1 概要 本報告では、イランで深刻化する環境問題を 切り口として、同国の現代宗教社会の様相につ いて考察した。とりわけ、イラン政府が「リス ク」への対応にあたり、いかにイスラームの見 地から政策を講じ、いかなる社会文化的影響を 及ぼしているかについて検討した。 2-2 イラン政府による従来の環境対策 まず報告者は、大気汚染、水問題、土壌汚染 などイランで見られる代表的な環境問題を同国 の歴史政治的文脈から示すとともに、これまで の政府や自治体による主要な環境対策を概観し た。具体的には、政府・自治体が、市民へ公共 交通機関の利用を促しながら自家乗用車による 有害大気汚染物質排出量の抑制を試みたり、あ るいは、緑地(公園)造設によって計画的に CO2 レベルの削減を目指すなど、環境指標を 適用した科学的手法により「環境」の管理をお こなってきた点を明らかにした。 2-3 イスラーム視座に根ざした環境言説と政 策の展開 次に、科学的手法による環境対策とともに、 新しい視座を基底とした環境アプローチが近年 イランで見られる事実について論及した。とり わけ、イスラーム視座に根ざした環境言説や政 策が多角的に展開している。報告者の現地調査 によれば、2010年以降、環境とイスラームを テーマに扱った書籍が(物流の中心である)テ ヘラン大学周辺の書店群で顕著に販売され始 め、また、同テーマに関する横断幕やポスター が公共空間で遍在的に掲げられている。加え て、2015年 3 月に催された、最高指導者・ハー メネイ師による環境問題に関する公開説法も、

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224 225 テーマセッション 2:現代アジアにおける宗教の役割と多様性 * 東海大学 イスラーム的環境政策の一例として数えられ る。説法が行われた背景には、イスラーム体制 維持のための国家プロパガンダを発信する意図 が見え隠れするが、環境問題が国家レベルでの 議題となってきている実情を指摘した。 続いて、報告者はイランで発達し始めている このようなイスラーム的環境言説に関する特徴 について素描した。イスラーム法学者を中心と したこのアプローチの提唱者は、とくにイス ラームの世界観を基底としながら、内発的変 革に力点をおいて、環境意識の改善を訴えてい る。なぜなら、彼らは、環境問題などの外面 (地上)世界における問題は人間の道徳面(内 面)の秩序の乱れの現れであり、環境と人間の 内的世界とを連綿的で一体であると理解してい るからである。イスラーム的環境アプローチで 特徴的であるのは、彼らが、イスラーム教徒に とっての聖典であるクルアーンおよびハディー ス(預言者および十二イマーム派指導者の言行 録)から環境保全にまつわる章句を引用、解釈 して、環境倫理を打ち立てている点である。報 告では、彼らが、「世界のあらゆるものの存在 は、神の意志のしるしであり、人間に対する神 の恩寵である」とのイスラームの教えにより、 節度ある自然資源の利用を訓戒する事例を紹介 した。 さらに、「植樹の日」(ruz-e derakhtkari)と 呼ばれる、植樹活動を通して自然資源の大切さ を学ぶ年次行事での参与観察事例を通して、イ スラーム的環境アプローチが推奨されるイラン の社会文脈において、テヘラン市民が実際に環 境保全に携わる様子について報告を行った。参 与観察での興味深い特徴として、「植樹の日」 参画者が科学的手法による環境の管理の視座を 援用しながら植樹活動を企画、実施する一方 で、彼らはイスラーム倫理観からも環境問題に 対して理解を示すという、一見矛盾とも捉えら れる調査結果を提示した。一般的には、現代科 学とイスラームは互いに相容れない概念枠組み と認知される傾向にある。しかし、「植樹の日」 の参与観察を通して、両者は参画者にとっては 相反関係にあるというよりは、むしろ補完的関 係として理解されている様相を明らかにした。 2-4 おわりに 今後の研究課題について言及した。すなわ ち、米国主導の制裁による慢性的な経済苦境に 立たされているイランで、いかに国民が経済生 活とのバランスの中で環境意識を高め、さらに は、国民の支持を得ているとは言い難い政府 (イスラーム)機関を中心に発信されるイスラー ム的環境言説が彼らの間でどの程度発展しうる のかという問いである。これらの問いの背景に は、政府の宗教指導者層のイスラーム解釈に疑 問を呈す多くの国民が存在し、それゆえ、多様 なイスラーム言説と実践がイランで複雑に混在 しており、現代イランにおけるイスラーム的環 境言説および実践、広くは、イスラームの社会 的役割を理解するためには、社会変動の中で流 動的に変容するイスラーム解釈に留意する鋭敏 な洞察と見地が必要であることが示唆される。

3.移住民支援活動からみる現代韓国社

会における宗教の役割

李 賢京* 3-1 概要 グローバル化の中、韓国では90年代以降、移 住民 (外国人移住労働者、結婚移民者、脱北者 など)の増加に伴い、宗教団体による移住民支 援活動が活発化した。こうした移住民に対する 宗教団体の関心は、社会的弱者に対する宗教本 来の関心の延長線上にあると理解できる。本報 告では、韓国の宗教団体が実施する外国人移住 民支援活動の比較を通して、移住民支援に果た す韓国宗教の役割について検討する。 3-2 韓国における外国人住民の現状と関連法 律の整備 2017年現在、韓国における滞留外国人数は 218万498人で、人口に占める割合は4.21%であ り、年々増加している[出入国外国人政策本部 2018:38–47]。在留資格別には、外国人労働

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