Ⅰ.はじめに 約30年前に筆者は知的障害養護学校の嘱託医 をしていた。その際に保護者や教員から児童・ 生徒の問題に関してさまざまな相談を受けるの であるが,てんかんの相談以外明確に自信をも って返答できることはなかった。夜尿はどうす ればよいか,指吸いは自然にまかせておいてよ いのか,偏食は無理にでも食べさせるべきかな どの質問に根拠をもって返答することはできな かった。それどころか,親や教師が不適応行動 として捉えているものが,治療を必要とするも のか,発達過程における一時的な行動なのかを 判断することも容易ではなかった。定型発達児 の不適応行動については阿部(1982)の名著 「子どもの心と問題行動」 に詳細に記載されて いるが,重度の知的発達症に関する研究はきわ めて乏しかった。 そこで筆者は重度の知的発達症児童・生徒に ついて,不適応行動に関する何らかの指針とな るものを探求する目的で研究を始めた。 Ⅱ.定型発達児の不適応行動 上記に述べたように,定型発達児の不適応行 動については阿部の詳細な縦断的研究がある。 阿部は大阪市阿倍野区における 3 歳児健診を受 けた子どものくせや問題行動について調査して いる。昭和50年代の健診で, 3 歳, 4 歳, 5 歳, 6 歳, 8 歳,12歳と追跡し,くせや問題行動の 割合がどのように変化するかを,発達テスト, 質問紙記入,精神科医による面接・診察によっ て調査した。その結果,夜泣き,夜尿,遺糞, 遺糞などは幼児期を過ぎれば減少し,逆に頭痛 や爪かみなどは成長とともに増加することを示 した。またかんしゃく発作,嘘つき,盗み,多 動,チック,睡眠障害などは小児期の間持続す る傾向があることを明らかにした(表 1)。 Ⅲ.知的発達症(DSM-₅)の概念と状態像 DSM-5(American Psychiatric Association, 2013)では知的発達症は発達期に発症し,概念 的,社会的,および実用的な領域における知的 機能と適応機能両面の欠陥を含む障害であり, A.全般的知能の欠陥,B.個人の自立や社会 的責任において発達的および社会文化的な水準 を満たすことができなくなるという適応機能の 欠陥,C.知的および適応機能の欠陥は発達期 の間に発症するという A.B.C.の 3 つが満 たされていなければならない。そして重症度は B 項目にある①概念的領域,②社会的領域,③ 実用的領域の社会における適応度によって決め られている。つまり知能指数によって決められ ているわけではないことに注目すべきである。 また知的発達症の有病率は一般人口全体の約 1 %であり,重度知的発達症の有病率は,おお むね1,000人につき 6 人の割合である。出生前 の病因として,遺伝子症候群,先天性代謝異常,
〈教育講演〉
飯田 順三*
発達障害の行動上の問題**
─知的発達症を伴う場合を中心に─
児童青年精神医学とその近接領域 60( 3 );306─314(2019) **奈良県立医科大学看護学科人間発達学 **〒634-8524 奈良県橿原市四条町840 **e-mail: [email protected] ** 2018年10月11日,東京大学本郷キャンパス内において開催 された第59回日本児童青年精神医学会総会 「教育講演」 で ある。Phenylketone 尿症,Tourette 症候群,Prader- Willy 症候群などがあげられる(中島,2012)。 2 )対人関係の問題では,威圧的な対応,過大 な期待,共感性のない関わりや満足感の欠如な どが考えられる。 3 )環境要因では安全感の得 られない環境,日課やプログラム内容の問題, 物理的環境などがあげられる。これらの要因が 複雑に絡み合い,周囲の対応がさらに不適切な 行動を維持させたり,より強化して行動を増悪 させる。 またそれらの不適応行動には何らかの意味が あると考えることも重要である。その意味とし ては 1 )自己刺激行動, 2 )意志表現手段, 3 )注意喚起行動などがあり, 1 )自己刺激行 動では,常同行為や自傷行為の中にはその行動 が彼らにとって快的刺激をもたらすものとなっ て繰り返される場合がある。 2 )意志表現手段 では,自罰的行動,拒否的行動,快感や嫌悪感 の表出のなどの意味で,自傷行為,他害行為, 常同行為,失禁,拒食などがみられる。歯痛や 腹痛などの身体の苦痛が自傷行為やパニックな どとして表現されることもある。 3 )注意喚起 行動では,相手の気を引こうとして,自傷行為, 他害行為,失禁や拒食などがみられることがあ る。普段は放置され,不適応行動がみられると きしか周囲の者が関心を払わないような不適切 な対応によって二次的に疾病利得が形成される こともある。 脳形成異常,母体疾患,および環境の影響があ げられる。周産期の要因には新生児脳症を引き 起こすような分娩や出産に関連したさまざまな 出来事がある。出生後の要因には,低酸素性虚 血性障害,外傷性脳損傷,感染,脱随性疾患, けいれん性疾患が含まれる。最も多いのは染色 体異常で原因疾患の約20%を含める。染色体異 常のなかでは Down 症候群の頻度が高い(宮本, 2008)。知的発達症は精神的,神経発達的,医 学的および身体疾患の併存がしばしばみられ, 一般人口よりも 3 ~ 4 倍ほど高率にみられる疾 患もある。最もよく併存する精神および神経発 達症は,注意欠如・多動症,抑うつ障害群と双 極性障害群,不安症群,自閉スペクトラム症, 常同運動症,衝動制御障害,および認知症であ る。てんかんの合併率は重度知的障害で50%, 中等度知的障害で40%,軽度知的障害で10%程 度である。 Ⅳ.知的発達症の不適応行動の要因とその意味 不適応行動の要因としては, 1 )生物学的基 盤, 2 )対人関係, 3 )環境要因, 4 )過去の 情緒的(挫折)体験などが考えられる。 1 )生 物学的基盤では発達水準に関連のある行動上の 問題があり,①知的判断力の低さ,②認知能力 の障害,③言語による表現の困難,④感情統制 不全などが考えられる。また基礎疾患や脳障害 症 候 群 に 特 異 的 な 行 動 上 の 問 題 が あ り, Lesch-Nyhan 症候群,Cornelia de lange 症候群,
幼児期を過ぎれば減少するもの 成長とともに増加するもの 小児期の間持続する傾向のもの 夜泣き 頭痛 爪かみ 食べ物の好き嫌い 夜尿 遺糞 手足のふるえ 少食 指吸 気を失いそうになる発作 かんしゃく発作 食欲不振 嘔吐 破壊的傾向 言語の問題 うそつき 盗み 暗闇・犬・サイレン恐怖 多動 チック 睡眠障害 恥ずかしがり 引っ込み思案 易刺激性 表1 年齢と関連する定型発達児の不適切行動
れるものの大部分は正常な小児の発達段階の一 定の時期に出現し,成長するに従い消失するも ので,一過性であると述べている。筆者も知的 発達症においても同様に不適応行動が成長とと もに消失する一過性のものとして捉えられない かと考えた。 そこで筆者が嘱託医となっている 2 カ所の養 護学校における小学 1 年から高等部 3 年までの 全児童・生徒を対象にその保護者にアンケート 調査を行った。回答数は男子103名,女子57名 で全体で160名であり,回収率は90%であった。 対象児を小学 1 年~ 3 年,小学 4 年~ 6 年,中 学 1 年~ 3 年,高校 1 年~ 3 年の 4 群に区別し て不適応行動の出現率を比較した。 その結果,食事に関する問題では偏食,食欲 のむら,異食は高学年になるにつれて減少する 傾向がみられたが,かまないで食べる,反芻, 嘔吐,空気嚥下は 4 群による差はなかった。排 泄に関する問題では遺尿や夜尿や遺糞は高学年 になるにつれて減少傾向を示し,特に中等部で 減少が著しく認められた。便秘,下痢,頻尿は 4 群で差はなかった。睡眠に関する問題では, 中途覚醒が高学年になるにつれて減少し,夢中 遊行は中等部まで増加傾向がみられるが,高等 部では減少した。起床困難や寝つきの悪さは 4 群間で差はなかった。 運動に関する問題では,多動が高学年になる につれて減少し,逆に動作が鈍いは高学年にな るにつれて増加した。集中困難は 4 群間で差は Ⅴ.不適応行動の症状評価 不適応行動をどのように客観的に評価するか は重要な問題である。その症状評価として異常 行動チェックリスト日本語版(ABC-J)(小野, 2006)が存在する。これはもともと精神遅滞の 人たちの治療効果を評価するために開発された もので, 0 (問題なし)~ 3 (問題の程度は著 しい)までの 4 段階で評価される58項目の評価 尺度である。これらの項目はⅠ)興奮性,Ⅱ) 無気力,Ⅲ)常同行動,Ⅳ)多動,Ⅴ)不適切 な言語の 5 つのサブスケールのスコアとして表 現される。この異常行動チェックリスト(Ab-errant Behavior Checklist)は1980年代の初め から,Aman と Singh(1988)がニュージーラ ンドの知的障害者施設で,行動上の問題に対す る抗精神病薬による薬物療法に関する研究の中 で開発され,その心理測定特性に関する基礎的 な研究が行われるとともに,ピモジド,イミプ ラン,チオリダジン,ハロペリドールなどの向 精神薬の行動障害に対する薬物評価の研究にも 用いられ,臨床に応用されるようになった。日 本語版については,Ono(1996)が十分に信頼 性を検討している。 Ⅵ.知的発達症の不適応行動と年齢の関係 前述したように定型発達児の問題行動につい て,阿部が年齢との関係を明らかにしていた。 Macfarlane(1954)らは小児の問題行動といわ 年齢とともに減少する行動 年齢とともに増加する行動 年齢と関連のない行動 食事に関する問題 偏食,異食,食欲のむら 反芻,嘔吐,かまないで 食べる 排泄に関する問題 夜尿,遺尿,遺糞(中等部 より減少) 頻尿 睡眠に関する問題 中途覚醒,夢中遊行(高等 部より減少 寝つきの悪さ,起床困難 運動に関する問題 多動(中等部より減少) 動作が鈍い 集中困難 常同的行為 物なめ,つば吐き,頭たた き,指吸 爪かみ 強迫行為と周期的興奮 周期的興奮 強迫行為 表2 年齢と関連する知的発達症児の不適応行動
構造による発達段階を評定したものである(太 田・永井,1982)。Stage 評価から子どもの認 知構造が的確に把握でき,療育の大枠の方針を 立てることができる。また子どもの行動を理解 するのに役立ち,何より評価法が簡便であり, 客観性,再現性が高いことが保証されている。 太田の Stage では認知の発達段階別に StageⅠ ~Ⅳまで区分されていて,表に示すように各発 達段階の意味がある。物に名前があることに気 づいていないシンボル機能が認められない段階 が StageⅠである。物に名前があることがわか りかけているシンボル機能の芽生えの段階が StageⅡであり,物に名前のあることがはっき りと理解できるシンボル機能がはっきりと認め られる段階が StageⅢ-1 である。そして基本的 な比較の概念ができ始める概念形成の芽生えの 段階が StageⅢ-2 であり,空間関係などの物と 物との関係が言語で理解できる基本的な関係の 概念が形成された段階が StageⅣである(表 3)。 また太田の Stage の評価法はきわめて簡便で あり,「猫はどれですか」 との問いに絵を指さ して答えられれば StageⅡであり,答えられな ければ StageⅠである。また,用途で 「飲むも のはどれですか」 との問いに絵の中のコップを 指さしできれば StageⅢ-1 である。さらに 3 つ のまるの比較で 「どっちが大きいか」 との問い に正解できれば StageⅢ-2 である。またボタン なかった。常同的運動では,指吸いが高等部で 減少し,物なめとつば吐きが中等部より減少し ていた。頭叩きは高学年になるにつれて減少す る傾向がみられた。逆に爪かみは中等部になり 増加した。強迫行為は学年別では有意差はなく, 周期的興奮は中等部より増加した(飯田ら, 1993)(表 2)。 Ⅶ.知的発達症の不適応行動と認知発達 (太田の Stage)との関係 その後1991年から1993年まで不適応行動とそ の要因について縦断的な研究を行い,岩坂 (1995)が不適応行動と関連する生物学的要因 と環境要因について報告した。それらの中で発 達指数や表出言語などの発達段階と不適応行動 とが関連することが示唆されたため,筆者は認 知発達が不適応行動と関連するのではないかと 考えた。 1 .太田の Stage 当時,養護学校に在籍している児童・生徒の 発達レベルは平均 DQ が約20程度の重度の知 的発達症であり,それらの子どもたちの発達段 階をどのように区分すべきかを検討した。そし て太田の Stage による認知発達段階の評価尺度 が最もふさわしいと考えた。太田の Stage は Piaget による発達理論を参考にしつつ,認知 発達段階 テスト Stage Ⅰ ~1.5歳 シンボル機能が認められない段階。感覚運動期。 物に名前があることに気づいていない 猫はどれかと言う問いに絵を指さして答えられ ない Stage Ⅱ 1.5~2.5歳 シンボル機能の芽生えの段階。物に名前がある ことがわかり始めているが物の理解はまだ一義 的な理解 猫はどれかという問いに絵を指さして答えられ る Stage Ⅲ-1 2.5~3.0歳 シンボル機能がはっきりと認められる段階。物 に名前のあることがはっきりと理解できる 飲むものはどれかと用途別の質問でコップを指 さすことができる Stage Ⅲ-2 3.0~4.0歳 概念形成の芽生えの段階 基本的な比較の概念ができ始めた段階 丸を比較してどちらが大きいかと言う問いに答 えられる Stage Ⅳ 4 ~ 7 歳 基本的な関係の概念が形成された段階 空間関係などの物と物との関係が言語で理解で きる ボタンを箱の上に置くという空間の位置関係が 理解できる 表₃ 太田の Stage 別発達段階
途覚醒は StageⅠとⅡにのみみられた。入眠困 難と中途覚醒は Stage と有意な関係を有してお り,Stage がⅢ-1 以上では認められなかった。 運動に関して多動は StageⅡ以上では少なく なり,寡動と常同行動は StageⅢ-1 以上ではみ られなかった。しかし自傷行為やパニックや儀 式的・強迫的行動では Stage との相関はみられ なかった(図 2)(Hashino et al., 1997)。 つまり,不適応行動の中には認知発達段階が 高くなるにつれて減少するものと,そうでない ものが存在することが示唆された。太田の Stage と関連のある不適切行動は食事,睡眠, 排泄および睡眠に関する行動が多く,Stage が 高くなるにつれて減少した。特に StageⅡと Ⅲ-1 の間で頻度に著明な差があり,異食,遺尿, 夜 尿,遺 糞,中 途 覚 醒,多 動,寡 動 な ど は StageⅠとⅡの児童・生徒に多く,StageⅢ-1 と Ⅲ-2 の児童・生徒にはほとんど認められなか った。 Ⅷ.不適応行動への対応 不適応行動に対しては治療よりも予防的対処 が優先する。早期発見と早期療育が最も重要で ある。療育が十分に行われていなかった1970年 代以前と療育が盛んになった1980年代以降では パニックなどの不適応行動は顕著に減少してい る。また療育においても本人の認知発達段階に 合った働きかけが重要である。療育方法には TEACH やポーテージプログラムなどさまざま なものがあるが,どの療育においても目標は生 活の質の向上と社会的自立であり,地域社会で 安全で快適に生活できるようになり,必要な支 援を自発的に要求できるようになることである。 を箱の上に置くという空間の位置関係が理解で きれば StageⅣである。 2 .知的発達症の不適応行動と太田の Stage と の関係 筆者が嘱託医をしている養護学校に在籍して いる小学部 1 年から高等部 3 年までの男子48名, 女子23名の計71名を対象に不適応行動と太田の Stage との関係を調査した。表 4 に示すように 対象児全体の DQ は平均20.6であり,小学部 22.2,中学部20.9,高等部17.1であった。その 71名全員に太田の Stage 評価を行った。Stage Ⅰ が 33.8%,StageⅡ が 16.9%StageⅢ-1 が 14.1%,StageⅢ-2 が35.2%であり,年齢が上 がるにつれて Stage も上がっていく傾向がみら れた。 その太田の Stage と不適応行動の関連性を調 べた結果,食事に関する行動では,かまないで 食べる行動は StageⅠ~Ⅲ-1 では40~65%にみ られたが,StageⅢ-2 では 5 %しかみられなく なった。異食は StageⅠでは25%にみられたが, StageⅡ以上ではまったく認められなかった。 偏食は Stage との関係はみられなかった(図 1)。 遺尿や夜尿は全児童・生徒の21%にみられた が,StageⅢ-1 以上では少数にのみ認められた。 遺糞については StageⅠで30%,StageⅡで 8 % にみられたが,StageⅢ-1 以上では認められな かった。遺尿,夜尿,遺糞では Stage と有意な 関係を有しており,Stage が高くなるにつれて その頻度は減少した。 睡眠に関しては,入眠困難は StageⅠのみに みられ,StageⅡ以上ではみられなかった。中 7 -12歳(小学部)(n=19) 13-15歳(中学部)(n=17) 16-18歳(高等部)(n=35) 計(n=71) 男 12 9 27 48 女 7 8 8 23 自閉症 3 2 14 19 非自閉症 16 15 21 52 DQ 平均 22.2 20.9 17.1 20.6 表₄ 対象児の特性
図1 太田の Stage と関連が認められた行動 0 10 20 30 40 50 60 Ⅰ Ⅱ Ⅲ-1 Ⅲ-2 遺尿(n=13) 65 40 50 5 Ⅰ Ⅱ Ⅲ-1 Ⅲ-2 かまないで食べる % (n=20) 0 10 20 30 40 50 Ⅰ Ⅱ Ⅲ-1 Ⅲ-2 夜尿(n=13) % 0 5 10 15 20 25 30 35 40 Ⅰ Ⅱ Ⅲ-1 Ⅲ-2 遺糞(n=8) 0 5 10 15 20 25 30 35 Ⅰ Ⅱ Ⅲ-1 Ⅲ-2 入眠困難(n=6) 0 5 10 15 20 25 30 Ⅰ Ⅱ Ⅲ-1 Ⅲ-2 中途覚醒(n=6)
0 5 10 15 20 25 30 35 Ⅰ Ⅱ Ⅲ-1 Ⅲ-2 多動(n=7) 0 5 10 15 20 25 30 35 Ⅰ Ⅱ Ⅲ-1 Ⅲ-2 常同行動(n=8) 0 10 20 30 40 50 Ⅰ Ⅱ Ⅲ-1 Ⅲ-2 自傷行為(n=20) 0 5 10 15 20 25 Ⅰ Ⅱ Ⅲ-1 Ⅲ-2 物なめ(n=7) 0 5 10 15 20 25 30 Ⅰ Ⅱ Ⅲ-1 Ⅲ-2 異食(n=6) 0 5 10 15 20 Ⅰ Ⅱ Ⅲ-1 Ⅲ-2 寡動(n=6)
って返答できることはなかった。そこで何か指 標となるものはないかと考えた結果,年齢との 関係や認知発達段階との関係があるのではない かと研究を始め,上記のような結果を得た。年 齢を重ね,認知発達が進むことで不適応行動が 減少する場合があることがわかり,保護者から の相談に見通しを持てるようになった。 重度の知的発達症の不適応行動に関する相談 がある場合,児の年齢や認知発達段階を一つの 指標として提示できるようになり,そのことが 保護者や教師にも安心感を持って子どもと接す ることができる一助となるのではないかと考え ている。 倫理的配慮ならびに COI 開示 講演中の研究はすでに掲載済みのものであり,新 たな倫理的配慮を要するものではない。 また演題発表に関連し,開示すべき COI はない。 あくまで治癒や奇跡を求めるのではなく,当事 者にとって生活の質を高めることである。 その療育方法の一つに太田の Stage 別認知発 達治療がある。この治療には 2 つの側面があり, 1 つは表象機能の遅滞と障害に働きかけること によって,認知障害を克服し,改善し,さらに 情緒障害をも改善しようとするねらいであり, 具体的には各 Stage 別にねらいと課題を系統化 して作成された 「Stage 別発達課題」 に基づい てプログラムを作成する認知発達学習が中心と なる。 2 つ目は子どもの認知発達に合った働き かけにより,適応行動を獲得させると同時に, 不適応行動を予防したり減弱したりすることで ある。 Ⅷ.おわりに 筆者は養護学校の嘱託医をしているときに, 保護者や教師から児のさまざまな不適応行動に ついて相談を受けていたが,ほとんど自信をも 認知発達との関連性(+) 認知発達との関連性(-) 食事 かまない,異食 偏食 排泄 遺尿,夜尿,遺糞 睡眠 入眠困難,中途覚醒 運動 多動,寡動 集中困難,動作緩慢 その他 常同行動,奇声,自傷行為,物なめ 儀式的・強迫的行動,爪かみ,暴力・攻撃 性,情動不安定,パニック,性的な問題 表₅ 認知発達と不適応行動 図2 自閉症児に多く認められた不適応行動 儀式的・強迫的行動(n=25) 0 20 40 60 80 100 (%) Ⅰ Ⅱ Ⅲ-1 Ⅲ-2 自閉症児 非自閉症児
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