博士論文審査結果の要旨
学位申請者
安 池 理 紗
主論文 1 編The role of toll-like receptor 3 in chronic contact hypersensitivity induced by repeated elicitation. Journal of Dermatological Science(掲載予定)
審 査 結 果 の 要 旨
Toll-like receptor 3(TLR3)は 2 本鎖 RNA を認識し,ウイルスに対する自然免疫に関与すること が知られている.最近 TLR3 がアレルギー炎症においても重要な役割を果たしていることがわかっ てきているが,アトピー性皮膚炎(AD)のような皮膚の慢性アレルギー炎症における TLR3 の役割 はまだ解明されていない.
申請者は AD において TLR3 が深く関与している可能性を検討するため,AD のモデルであるハ プテン繰り返し塗布による慢性接触皮膚炎マウスを用いて実験を行った.TLR3 ノックアウトマウ ス(Tlr3 KO)と,Wild Type マウス(WT)の腹部をハプテン(2,4,6-trinitro-1-chlorobenzene : TNCB) で感作した後,耳介に 2 日毎に TNCB を反復塗布して慢性接触皮膚炎を誘発した.両群マウスの耳 介厚の経日変化を day 30 まで測定した.また,day 0,8,14,20,28 には誘発後の耳介腫脹厚の経 時変化を測定した.そして,day 8,30 に耳介組織と血清を採取し,耳介の組織所見,浸潤細胞数, 血清総 IgE 値,組織中のサイトカインの発現を評価した. マウスの耳介厚の経日変化を比較したところ,WT で著しく増加したのに対し,Tlr3 KO では増加 が有意に減弱していた.また,day 0,8,14,20,28 における経時的な耳介の腫脹パターンを比較 したところ,Tlr3 KO では遅延型(Th1 優位型)から即時型(Th2 優位型)への移行が WT よりも遅 かった.腫脹パターンの差は day 8 において顕著であった.また,day 8,30 における耳介組織の病 理所見を比較すると,いずれの時点においても WT に比べ Tlr3 KO では表皮の肥厚が減弱し,組織 の浸潤細胞数も減少していた.また,Tlr3 KO では day 8 において血清総 IgE 値が減少し,組織中の interferon-ɤ,interleukin(IL)-4,IL-10,IL-33 等の炎症性サイトカインの mRNA 発現が減弱した. さらに,IL-33 の耳介組織における蛋白量を ELISA で測定したところ,Tlr3KO では WT に比較し減 弱していた.また,Poly(I:C)を用いて培養ヒト表皮角化細胞の TLR3 を刺激したところ,IL-33 の mRNA 発現が増強した.以上の結果より,TLR3 のシグナルは皮膚からの IL-33 産生を介して AD で見られるような慢性アレルギー炎症の進展に関与している可能性が推察され,TLR3 は AD の新 たな治療標的となり得る可能性があると考えられた. 以上が本論文の要旨であるが,慢性アレルギー炎症における TLR3 の役割を明らかにした点で, 医学上価値ある研究と認める. 平成29年10月19日 審査委員 教授 八木田 和 弘 ㊞ 審査委員 教授 矢 部 千 尋 ㊞ 審査委員 教授 松 田 修 ㊞