文学を読むことの言語活動に関する一考察 ~単元を貫く言語活動を位置付けた授業改善の充実に向けて~
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(2) 文学を読むことの言語活動に関する一考察 ~単元を貫く言語活動を位置付けた授業改善の充実に向けて~ 渥 美 伸 彦 1.研究の目的 本稿では、文学的な文章教材を読む指導において単元を貫く言語活動を位置付け た授業改善を一層充実させていくための方策を検討することをねらいとする。 昨今、単元を貫く言語活動を位置付けた授業改善が求められているが、学校現場 における実施状況は十分ではない。例えば、平成26年度全国学力・学習状況調査に おける児童質問紙調査のうち、「国語の授業で目的に応じて資料を読み、自分の考 えを話したり、書いたりしていますか。」という項目を見ると、 「当てはまる」と回 答している北海道の児童の割合は18.5%であり、平成19年度の15.9%と比べると 2.6%向上しているものの、2割程度にとどまっている。*1 このことは、単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりが、これまで場面ごと に人物の心情を読み取る授業を繰り返してきた教師にとって自身の授業観や単元 観、言語活動観の大きな転換を求めるものであること、そして、それが現場レベル で実現していないことに原因があるのではないかと考える。 とりわけ、学級担任制を基本とする小学校では、一人の教師が国語のみならず様々 な教科の授業を担当しなければならない環境にあり、単元を貫く言語活動を位置付 けた授業のような大がかりな授業改善を行うことは簡単ではない。 そこで、本稿では、単元を貫く言語活動を位置付けた授業改善を充実させるため に重視すべき言語活動について明らかにした上で、平成26年度現在、北海道で採択 されているK社及びM社の2社の国語教科書を対象とし、その効果的な活用方法や 授業改善への視点を明らかにしたい。 2.単元を貫く言語活動を位置付けた授業改善において重視すべき言語活動 2.1 小学校学習指導要領・国語における言語活動例の検討 単元を貫く言語活動を位置付けた授業改善を充実させるためにはどのような言語 活動を重視すればよいのだろうか。現行と平成10年版の小学校学習指導要領・国語 を比較しながら検討していく。 現行小学校学習指導要領・国語(以下「現行」とする)では、文学を読むことに 関わる言語活動として、1・2年はア、イ、エ、オの4例、3・4年はア、エ、オ の3例、5・6年はア、エの2例が示されている。. - - 1.
(3) 1・2年 ア 本や文章を楽しんだり、想像を広げたりしながら読むこと。 イ 物語の読み聞かせを聞いたり、物語を演じたりすること。 エ 物語や、科学的なことについて書いた本や文章を読んで、感想を書くこと。 オ 読んだ本について、好きなところを紹介すること。 3・4年 ア 物語や詩を読み、感想を述べ合うこと。 エ 紹介したい本を取り上げて説明すること。 オ 必要な情報を得るために、読んだ内容に関連した他の本や文章などを読む こと。 5・6年 ア 伝記を読み、自分の生き方について考えること。 エ 本を読んで推薦の文章を書くこと。. (波線は稿者). 一方、平成10年版小学校学習指導要領・国語(以下「10年版」とする)では、 1・ 2年はア、イ、ウの3例、3・4年及び5・6年はそれぞれアの1例ずつが示され ている。 1・2年 ア 昔話や童話などの読み聞かせを聞くこと イ 絵や写真などを見て想像を膨らませながら読むこと ウ 自分の読みたい本を探して読むこと 3・4年 ア 読んだ内容などに関連した他の文章を読むこと 5・6年 ア 読書発表会を行うこと. (波線は稿者). 波線部のとおり、10年版では「聞くこと」「読むこと」という文末で言語活動が 示されていたが、現行では「物語を演じること」「感想を書くこと」 「好きなところ を紹介すること」 「感想を述べ合うこと」 「紹介したい本を取り上げて説明すること」 「推薦の文章を書くこと」という文末となっている。このような変化は、言語活動 例が一層具体化されたことにも原因があるが、重視すべき言語活動自体が変化して いると受け止めることもできるだろう。つまり、文学を読むことに関わる言語活動 が、「聞くこと」「読むこと」という文末で例示されている言語活動のように受信的 な行為としての理解活動にとどまるものだけでなく、発信的な行為としての表現活 動にシフトされたのである。このことは、OECDのPISA型読解力が「自らの目標 を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書か れたテキストを理解し、利用し、熟考し、これに取り組む能力」とあるように、 「テ キストを理解」するだけではなく、「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を - - 2.
(4) 発達させ、効果的に社会に参加するために」、テキストを「利用」 、さらには「これ に取り組む能力」まで求めていることも影響していると考える。 文学を読む授業において、理解活動としての言語活動ではなく、表現活動として の言語活動を位置付けることは、その行為の主体としての学習者を受動的な立場か ら能動的な立場へと転換させることにつながっていく。例えば、「友達にお気に入 りの場面を紹介するために読む」という言語活動を位置付けることで、児童は目的 意識を明確にもち、主体的に学習活動に取り組むことができるだろう。 単元を貫く言語活動を位置付けた授業においては、児童自身が単元を通して活動 目標としての言語活動に対して目的意識や見通しをもちながら、主体的に学習活動 に取り組んでいくことが求められている。そのため、授業構想の際には文学的な文 章の内容を理解するという目的意識に基づく言語活動ではなく、演じたり、感想を 書いたり述べ合ったり、好きなところを紹介し合ったり、推薦の文章を書いたりす るために読むという、より主体的な目的意識をもちやすい言語活動を位置付けた方 が授業を具体化しやすい。この傾向は、小学生という発達段階の児童を対象とした 場合により一層顕著だろう。例えば、 「想像を膨らませながら読もう」 というよりは、 「物語を簡単な劇で発表するために読もう」とした方が児童にとっては具体的な行 動が明確で見通しももちやすい。このように考えると、実践化が十分でない現状に おいては、これらの言語活動例の特徴を十分に意識し、積極的に具体化していくこ とが効果的である。 2.2 「紹介」や「推薦」という言語活動の有効性 本節では、前節で取り上げた能動的で発信的な性格をもつ言語活動のうち、低中 高学年の全てに位置付けられた「紹介」 「推薦」という言語活動について考察する。 「紹介」 「推薦」という言語活動については、現行では、1・2年「オ 読んだ本 について、好きなところを紹介すること。」、3・4年「エ 紹介したい本を取り上 げて説明すること。」、5・6年「エ 本を読んで推薦の文章を書くこと。」が例示 されている。1・2年では読んだ本の好きなところを紹介すること、3・4年では 複数の本を読んだ上で自分が紹介したい本を決めて説明すること、5・6年では本 を読んで推薦の文章を書くことと構成されており、学年段階が上がるにしたがって 発展している。これらの言語活動は表現活動であり、文学的な文章を読んで理解す るという行為にとどまるものではなく、理解した上で文章を評価したり利用したり することに至るところに特徴がある。したがって、これらの言語活動は、前節で述 べたとおり単元を貫く言語活動を位置付けた授業との親和性が高く、さらには PISA型読解力の育成にも対応可能なものである。 小久保美子(2013)は、「自ら本に手を伸ばす子どもを育てること」を実現する ためには子どもたちに読む喜びを味わわせることが重要であるとする立場から、現 行にも例示されている「大好きな○○を紹介しよう」という言語活動の有効性につ - - 3.
(5) いて、次のように述べている。*2 学習指導要領・国語にも例示しているこの言語活動は、作品のよさを見いだす 行為であると同時に、自分にとっての作品の意味を見いだす行為である。「この 作品のよい(おもしろい)ところはどこだろう。」 「どうしてこの場面(お話)が 好きなのだろう」という問いの下に行われる一種の探索活動である。さらに、 「紹 介」という双方向性の表現活動が目的として据えられていることから、他者理解 につながるコミュニケーション過程も含まれる。誰もが優劣を気にすることなく 参加できるコミュニケーション行為であるところに、前項で述べた正しい解釈を 求め正当性を主張し合うコミュニケーション過程との絶対的な相違がある。 このように、 「大好きな○○を紹介しよう」という言語活動は、作品のよさを見 いだす行為であると同時に自分にとっての作品の意味を見いだす行為であり、一種 の探索活動であること、さらには双方向性の表現活動が目的として据えられている ため、他者理解につながるコミュニケーション過程も含まれていると述べている。 桑原隆(2009)は、言語教育・国語教育論として言語活動の充実の重要性を指摘 する文脈において、言語活動を「主体的で能動的な意味の創造、あるいは意味の構 築」*3過程として位置付けることが重要であることを言及しているが、小久保が取 り上げた「大好きな○○を紹介しよう」という言語活動は、その条件を備えている と考えることができる。学習者である読者は、自らの読む行為によって得られた自 己の感情や感想を対象化し価値づけるメタ認知的な思考活動、例えば、「大好きな ところはどこか。 」 「どうしてそこが好きなのか。」などという探索活動としての思 考活動を行うことによって作品の意味を見いだすことになる。さらには、その思考 活動は、 「紹介」するという双方向性のある表現活動を目的としていることから、 より一層主体的で能動的な活動となり、その意味生成機能を高めるのである。この ような言説に着目すると、 「紹介」 「推薦」という言語活動の重要性が高まってくる。 単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりが十分ではない状況下で授業改善を進 めていくためには、現行の言語活動例を参考に効果的な言語活動を具体化すること が大切である。その際には、能動的で発信的な行為としての「紹介」「推薦」とい う言語活動を重視することが望ましいであろう。 一方、現行で示されている言語活動例のうち、1・2年の「ア 本や文章を楽し んだり、想像を広げたりしながら読むこと。」や3・4年の「オ 必要な情報を得 るために、読んだ内容に関連した他の本や文章などを読むこと。 」 、5・6年の「ア 伝記を読み、自分の生き方について考えること。」という言語活動例は、 「読むこと」 「考えること」の文末となっており、児童にとっては目的意識をもつことが難しい 言語活動である。したがって、これらの言語活動を位置付けた単元を構想する際に は、目的意識を明確にし、児童が見通しをもって学習活動に取り組むことができる ような具体的な手立てを工夫する必要がある。例えば、言語活動を双方向的な活動 - - 4.
(6) へと仕立てたり、言語活動の過程や結果を視覚化するリーフレットや本のポップな どのいわゆる言語活動ツールを工夫したりすることも有効な方法だろう。 3.小学校国語科教科書に見られる言語活動 本章では、2社の教科書に見られる言語活動を調査し、 その傾向を整理した上で、 単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりの推進に向けた留意点を明らかにする。 3.1 1・2年の傾向と留意すべき点 両社の低学年における文学を読むことの単元は、合計21ある。各単元における言 語活動は、アが12(57.1%)、エが6(28.6%)、オが5(23.8%) 、イが4(19.0%) であった。最も多く位置付けられている言語活動例「ア 本や文章を楽しんだり、 想像を広げたりしながら読むこと。」は、先述した目的意識を明確化しにくいもの である。言語活動例アに関わる単元を指導する際にはこの点に留意する必要がある。 では、言語活動例アに該当する単元の中から、K社2年「場面の様子を思いうか べて読む」 (わにのおじいさんのたからもの)を取り上げて考察する。本単元では、 1・2年「C 読むこと」の指導事項「ア 語のまとまりや言葉の響きなどに気を 付けて音読すること。」、「ウ 場面の様子について、登場人物の行動を中心に想像 を広げながら読むこと。」、〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の「イ 言葉の特徴や決まりに関する事項」における「言葉の働きや特徴に関する事項」の 「(ウ)言葉には、意味による語句のまとまりがあることに気付くこと。 」について、 「本や文章を楽しんだり、想像を広げたりしながら読むこと。」という言語活動を 通して指導することが意図されている。 教科書会社が作成した指導計画例における学習活動は次のとおりである。*4 ①全文を通読して、おもしろいと思ったところを話し合う。 〔3時間〕 ②第一の場面をおにの子の行動と気持ちを確かめながら読む。 〔1時間〕 ③第二・第三の場面を、二人の対話を確かめながら読む。 〔2時間〕 ④第四の場面を、おにの子の行動と気持ちを確かめながら読む。 〔1時間〕 ⑤第四の場面のおにの子の気持ちを想像し、宝物について話し合う。 〔1時間〕 ⑥おにの子になったつもりで手紙を書く。 〔1時間〕 (※番号は稿者による。 ) 教科書に掲載されている「学習のてびき」は次のとおりである。 1 「おにの子」と「わにのおじいさん」の様子を考えながら、声に出して読ん でみましょう。 2 「わにのおじいさん」が、「おにの子」にたからもののかくし場所を教えた のは、なぜだと思いますか。次のことに気をつけて、自分の考えをノートに書 いてから、話し合ってみましょう。 ・「おにの子」のしたこと ・「おにの子」と「わにのおじいさん」の会話 - - 5.
(7) 3 「おにの子」と「わにのおじいさん」にとって、たからものとはどのような ものでしょうか。考えてはっぴょうしましょう。 「おにの子」 書く が見つけたたからものがどのようなものだったか、 「おにの子」 になったつもりで、「わにのおじいさん」に知らせる手紙を書きましょう。 これらを見ると、指導計画例の学習活動では、①~⑤において音読を位置付ける とともに、②~⑤において「おにの子」の行動や「わにのおじいさん」との対話に 着目しながら、場面の様子を想像する活動を展開しようとする意図が窺える。そし て、⑤や⑥において、作品のテーマを考えさせることに結び付けている。特に最後 の「『おにの子』になったつもりで、『わにのおじいさん』に(宝物がどのようなも のだったか)知らせる手紙を書く」は、児童一人一人の感想を表現させることによっ て、効果的に学習のまとめを行うことを意図するものだろう。本事例は、これまで 我が国の国語教室で実践されてきた典型的な単元構想であり、いわゆる三読法に基 づいた指導として一般化しているものである。 本事例を単元を貫く言語活動を位置付けた授業という観点から見ると、児童が目 的意識や学習の見通しをもち、主体的に言語活動を遂行できるものであるとは言い 難い。とりわけ、②~⑤については無目的に場面ごとに平板に読み取る学習になる 可能性が高い。そこで、実際に指導を行う際には、児童が目的意識を明確にもつこ とができるような改善や工夫を加える必要があるだろう。例えば、単元の冒頭にお いて、「手紙を書く」という活動ではなく、「手紙を書いて友達と交流し合う」とい う双方向的なコミュニケーション行為を促すような言語活動を提示した上で、その 目的のために自分が好きなところやお気に入りのところ、友達に伝えたいところを 探しながら読むという目的意識をもてるように工夫することが重要である。 3.2 3・4年の傾向と留意すべき点 両者の教科書に掲載されている文学を読む単元は、合計22である。各単元におけ る言語活動を整理すると、アは14(63.6%)、エは6(27.3%) 、オは5(22.7%) となり、いずれの言語活動例にも該当しないもの(以下「例外」とする)が6(27.3%) あった。前節では、児童の目的意識を明確化しにくい言語活動例であるアに着目し たため、本節では、2章2節で取り上げた、児童の目的意識を明確化しやすいと思 われる「紹介」という言語活動に当たる「エ 紹介したい本を取り上げて説明する こと。 」という言語活動を位置付けた単元を考察する。事例として、M社4年「物 語を読んでしょうかいしよう」(一つの花)を取り上げる。 教科書会社が作成している指導計画から学習活動に該当する部分を引用する。*5 ①「 『平和』をテーマにした本を読んで、友達に紹介しよう」という学習課題を 設定し、学習計画を立てる。 ②題名「一つの花」から、内容について想像する。 ③教師の範読を聞き、初発の感想をもつ。 - - 6.
(8) ④全文を読む。 ⑤物語の設定を確かめ、人物の行動や会話に着目して、人物の気持ち、世の中の 様子や出来事を読み取る。 ⑥「一つだけ」という言葉に着目して読み、題名に込められた作者の思いについ て考える。 ⑦「言葉」の学習をする。 ⑧着目した事柄について、どのように伝えるかを考え、 「一つの花」 を紹介し合う。 ⑨「平和」をテーマにした本を紹介し合う。 ⑩「一つの花」の学習や、物語を紹介するという活動などについて、自分の考え を書き、友達と交流する。 ⑪学習を振り返り、まとめる。 この指導計画を単元を貫くという目的意識の一貫性から見ると、上記①と⑨がポ イントとなる。①により児童は、単元の導入部において、 「 『平和』をテーマにした 本を読んで、友達に紹介しよう」という学習課題を解決しようとする目的意識をも つとともに、学習計画を立てるという学習活動を行うことによって学習の見通しを もつことができるようにするという意図が窺える。その際には⑨「『平和』をテー マにした本を紹介し合う」という言語活動を例示し、それに向かって一貫して学習 を進めていこうとする意識を醸成することになろう。 ところで、 「平和」をテーマにした本を紹介し合うという言語活動に向けて一貫 して学習過程を構成する際に問題になるのは、いわゆる第2次の教材文を読む学習 活動である。本単元では「一つの花」という教材文を読む場面であり、②~⑧に相 当する。これらの学習活動、言い換えると「一つの花」を読むという言語活動の目 的意識が、 「平和」をテーマにした本を紹介し合うという言語活動と結び付いてい ることが重要である。その意識が窺えるのは⑧である。第2次の言語活動について も「紹介する」という目的意識を一貫して重視しながら、⑤~⑦までの教材文を読 む言語活動で学んだ「着目した事柄」を紹介する内容とし、それらを相手に「どの ように伝えるか」を考えさせながら、「一つの花」を紹介し合う言語活動となって いる。これは、⑨のリハーサルとも言える言語活動であろう。したがって、児童は 「『平和』をテーマにした本を紹介する言語活動に向けて、その観点や方法を学ぶ ために「一つの花」を読むのであり、⑨の言語活動に向かってその過程における言 語活動が一貫した目的意識の下に取り組むことができるようになっている。 まさに、 本単元の学習活動は、単元名のとおり「物語を読んでしょうかいしよう」という目 的意識で貫かれており、⑨が単元を貫く言語活動となるように構成されているので ある。 このように、本事例は単元を貫く言語活動を位置付けた授業という観点から評価 できる構成になっている。このことは、本単元に位置付けられている「紹介」とい - - 7.
(9) う言語活動が能動的で発信的な活動であり主体的な目的意識をもたせやすいもので あることと無関係ではないであろう。 3.3 5・6年の傾向と留意すべき点 該当する16単元のうち、ア、エがともに3(18.8%)、例外が11(68.8%)であっ た。高学年では多様な言語活動が可能になるため、例外の割合が多くなっていると 考えられる。また、アが伝記を読むというように文種を限定していることの影響も あるだろう。本節では、高学年で最も多い例外の言語活動が位置付けられている単 元を考察する。事例の考察については、紙幅の関係上K社のみを対象とする。 5年 ①心を見つめて読む(五月になれば) ②生き方を見つめて読む(大造じいさんとがん) ③生き方を考えながら読む(みすゞさがしの旅) 6年 ①表現のよさを味わって読む(薫風、迷う) ②本の世界を深める(きつねの窓) このようにK社の単元名は、「読む」「深める」という文末表現で示されている。 先述のように、受動的で受信的な言語活動になる傾向があるため、児童にとって目 的意識を具体化しにくいと考えられる。実践に当たっては、児童が目的意識をもち やすいように言語活動が想起できる単元名を工夫することが重要である。 では、上記5年の②「生き方を見つめて読む(大造じいさんとがん) 」を対象とし、 言語活動の特徴を見ていく。なお、教科書に示されている本単元のめあては、「中 心人物の行動と心情を、場面の移り変わりに気をつけて読みましょう」である。教 科書に示されている「学習のてびき」は次のとおりである。 1 大造じいさんが残雪をとらえるために、どのような方法をとったかをノート に整理し、発表しましょう。 2 大造じいさんは、残雪に対してどのような思いをもっていましたか。そして、 それは、どの場面で、どのように変わっていきましたか。また、その変わって いった理由を話し合ってみましょう。 3 この物語には、「東の空が真っ赤に燃えて、朝が来た。 」などのように、効果 的な情景描写があります。このような表現を見つけて、どのような効果がある と考えられるか、話し合ってみましょう。また、そのような効果的にえがかれ ている場面を音読してみましょう。 書く あれほどいまいましく思っていた残雪を、 「また、堂々と戦おうじゃあな いか。 」と言ってにがした大造じいさんについて、あなたはどう思いますか。 大造じいさんの心情にふれながら、自分の考えをノートに書きましょう。 このように、本単元では、中心人物である大造じいさんの行動と心情を、場面の 移り変わりに気をつけて読むための学習活動が示されている。 これらの学習活動は、 めあてと整合性があるとともに、児童にとっても理解しやすいように示されたもの - - 8.
(10) であろう。例えば、学習の手引きの2や3及び「書く」活動については、指導事項 「ア 自分の思いや考えが伝わるように音読や朗読をすること。」、「エ 登場人物 の相互関係や心情、場面についての描写をとらえ、優れた叙述について自分の考え をまとめること。 」 、「オ 本や文章を読んで考えたことを発表し合い、自分の考え を広げたり深めたりすること。」を具体化したものであると受け止められる。いわ ゆる指導事項一体型ともいえるものとなっている。 ところで、本単元における単元を貫く言語活動といえるものは何であろうか。上 記の学習の手引きから把握できる学習展開は、最初に大造じいさんが残雪をとらえ るためにしたことを読み、次に人物の相互関係や心情について読む。そして、優れ た叙述について自分の考えをまとめた上で、それに基づいて音読する。最後に人物 の心情の変化を踏まえて主題を考えるというものだろう。 この展開では、 児童にとっ ては、それぞれの学習活動の関連が把握しにくく、単元を通して一貫した目的意識 をもつことは難しい。目的意識をもたせるとするならば、単元名を基にして、「生 き方を見つめて読もう」として、その目的を達成するためにそれぞれの学習活動の 関連性を説明することになるだろう。 複数の指導事項が言語活動として具体化されて位置付けられた単元では、児童に 単元を貫く言語活動への目的意識をもたせるのは難しい。 したがって、 実践に当たっ ては、児童が目的意識をもちやすく、学習の見通しをもって学習を進めることがで きるような具体的な手立てを工夫することが重要である。その際には、例えば、2 章で指摘したような言語活動ツールなどの活用が効果的である。. 4.まとめ 本稿では、現在国語科の授業改善として求められている単元を貫く言語活動を位 置付けた授業の実践を推進するという観点から、重視すべき言語活動や教科書及び 指導計画例に位置付けられている言語活動について考察を行った。その結果明らか にできたことは次の3点である。 ①単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりの際には、文学的な文章の内容を理 解するという言語活動よりは、演じたり、感想を書いたり述べ合ったり、好きな ところを紹介し合ったり、推薦の文章を書いたりするために読むという言語活動 を位置付けた方が、主体的で能動的な目的意識をもたせやすい。実践化が十分で ない状況においては、これらの言語活動の特徴を十分に意識し、積極的に具体化 していくことが効果的である。 ②1・2年の「ア 本や文章を楽しんだり、想像を広げたりしながら読むこと。」 や3・4年の「オ 必要な情報を得るために、読んだ内容に関連した他の本や文 章などを読むこと。」、5・6年の「ア 伝記を読み、自分の生き方について考え ること。 」という言語活動例は、児童の目的意識を明確化しにくい。そのため、 - - 9.
(11) これらの言語活動を位置付けた単元では、言語活動を双方向的な活動へと仕立て たり、言語活動の過程や結果を視覚化するリーフレットや本のポップなどのいわ ゆる言語活動ツールを工夫したりすることが重要である。 ③北海道で採択されている教科書を調査した結果、低学年ではア、中学年ではア、 イ、高学年では例外の言語活動が多い状況であった。低学年及び高学年について は、受動的で受信的な行為としての言語活動にとどまる可能性があるため、能動 的で発信的な行為としての言語活動に仕立てたり、言語活動ツールを工夫したり する必要がある。中学年については、ア(感想を述べ合う)、イ(紹介する)と いう能動的で発信的な行為である言語活動が多いため、その特徴をより一層生か すことができるように、目的意識を明確化したり学習の見通しをもたせたりする 場面における具体的な手立てを検討しながら実践することが大切である。. 注 *1 文部科学省『平成26年度全国学力・学習状況調査結果【小学校】報告書』 *2 小久保美子 2013「 『紹介する、 批評する』は、 言語活動の充実をもたらす『知の行為』 である」 『初等教育資料』No.901、p.10 東洋館出版社 *3 桑原隆 2009「言語活動の充実-『意味』の創造過程-」 『月刊国語教育研究』 No.444、p.5 日本国語教育学会 *4 教育出版「平成23年度版 年間指導計画・評価計画案(国語) 第2学年」 (http://www.kyoiku-shuppan.co.jp/view.rbz?cd=2016) *5 光村図書「年間指導計画資料・評価計画資料 4年 年間指導計画例」 (http://www.mitsumura-tosho.co.jp/material/23skyokasho/pdf/kokugo/plan/93n.pdf). 参考文献 小久保美子 2013「 『紹介する、批評する』は、言語活動の充実をもたらす『知の行為』であ る」 『初等教育資料』No.901、東洋館出版社 桑原隆 2009「言語活動の充実-『意味』の創造過程-」 『月刊国語教育研究』No.444、日本 国語教育学会. - - 10.
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