犯罪被害者等の刑事公判手続への参加 - その憲法上の根拠と限界 -
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(2) 犯罪被害者等の刑事公判子続への参加. 関する意見陳述人を行う途が聞かれた。そして,同年 12月12日には,銀"路地 方裁判所で参加許可決定がなされたという. 70. 今回のこの改正は,公判手続に大きな変容をもたらすものである O 学界・法 曹界でも大きな関心が向けられ,この改正をめぐる解説・評論も,数多く公表. 4 裁判所は,証人を尋問する場合において,被害者参加人等から,その者がその証人を尋問するこ との申出があるときは,被告人又は弁護人の意見を聴き,審理の状況・申出に係る尋問事項の内'各・ 申出をした者の数その他の事情を考慮、し,相当と認めるときは,情状に関する事項(犯罪事実に関 するものを除く)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について,申出をした者 がその証人を尋問することを許す(刑訴法 3 1 6条の 3 6第 l項)。 証人尋問の申出は,検察官の尋問が終わった後直ちに,尋問事項を明らかにして,検察宵にしな ければならず,この場合において,検察官は,申出があった事頃について自ら尋問する場合を除き, ) 。 意見を付して申出を裁判所に通知する(同条第 2項 裁判長は,重複その他相当でない場合等のほか,被害者参加人等のする尋問が情状に関する事項 (犯罪事実に関するものを除く)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項以外の事 ) 。 項にわたるときは,これを制限することができる(同条第 3項. 5 裁判所は,被害者参加人等から,その者が被告人に対して質問を発することの申出があるときは, 被告人又は弁護人の意見を聴き,被害者参加人等が刑事訴訟法の規定による意見の陳述をするため に必要があると認める場合であって,審理の状況・申出に係る質問をする事項の内容・申出をした 者の数その他の事情を考慮し,相当と認めるときは,申出をした者が被告人に対してその質問を発. 1 6条の 3 7第 1項)。 することを許す(刑訴法3 被告人質問の申出は,あらかじめ,質問をする事項を明らかにして,検察官にしなければならず, この場合において,検察官は,申出があった事項について自ら質問する場合を除き,意見を付して 申出を裁判所に通知する(同条第 2項 ) 。 裁判長は,重複その他相当でない場合等のほか,被害者参加人等のする質問が意見の陳述をする ために必要がある事項に関係のない事項にわたるときは,これを制限することができる(同条第 3 項 ) 。. 6 裁判所は,被害者参加人等から,事実父は法律の適用について意見を陳述することの申出がある 場合において,審理の状況・申出をした者の数その他の事情を考慮し,相当と認めるときは,公判 期日において,検察官の意見の陳述の後に,訴因として特定された事実の範岡内で,申出をした者 がその意見を陳述することを許す(刑訴法 3 1 6条のお第 l項 ) 。 意見陳述の申出は,あらかじめ,陳述する意見の要旨を明らかにして,検察官にしなければなら ず,この場合において,検察宵は,意見を付して申出を裁判所に通知する(同条第 2項 ) 。 裁判長は,重複その他相当でない場合等のほか,被害者参加人等の意見の陳述が訴因として特定 ) 。 された事実の範闘を超えるときは,これを制限することができる(同条第 3項 なお,従前から認められている,被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述(刑訴 法2 9 2条の 2)も,そのまま存続している。. 7 2 0 0 8年 1 2月 1 3日日本経済新聞朝刊 192.
(3) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. されている 8。ただ,そこでの議論は,刑事訴訟法のレベルにおけるものがほ とんどであり,憲法との関係に言及するものは多くない。しかし,刑事手続に 関する最高規範は L、うまでもなく憲法であり,憲法は全体の約 l割の条文を刑 -r手続の当事者』的な『特別の地位』がなぜ 事手続関係に割いている。また, i 犯罪被害者等に認められるのか,その理論的根拠はなお明確にはされていな L、 J 9 という指摘もなされているところである O これに答えておく必要がある. と考えられる O そして,その作業は,被害者の公判手続への参加について,憲 法上の根拠と限界とを探るものであるから,そこから,今般の改正刑事訴訟法 の解釈・新制度の運用上の指針が得られると考えられる。それによって,すで に数多く公表された解説・評論に,何がしかを付け加えることはできないだろ うか。本稿は,これを試みるものである O. 2 被害者参加の憲法上の根拠 それでは,このような被害者等の公判への参加は,憲法上の根拠を見いだす ことができるだろうか。被害者等の公判に参加する権利が,憲法上認められる といえるだろうか。あるいは,被害者参加制度が,憲法上義務づけないし要請. 8 立案tF!当者による解説として,白木功ほか r -r犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事. Hの解説(1)(2) (3・完 )J 法曹時報 60巻 9号. 訴訟法等の一部を改 Aする法律(平成 1 9 年法律第 9 5号. ( 2 0 0 8 年) 3 3頁以下, 6 0巻 1 0号 ( 2 0 0 8年) 2 5頁以下, 6 0巻 1 1号 ( 2 0 0 8年) 95 頁以下,酒巻匡編 ~Q & A 半成 19年犯罪被害者のための刑事手続関連法改正~ (有斐閣, 2 0 0 8年)などがある。法律雑 7巻 3号 ( 2 0 0 8年),法学セミナ -645号 ( 2 0 0 8年),刑事法ジャーナル 誌の特集として,刑法雑誌 4 No. 9 ( 2 0 0 7年),ジュリスト 1 3 3 8号 ( 2 0 0 7 年),法律のひろ l i 2 0 0 7 1 1,季刊j 刑事弁護 N o.5 0( 2 0 0 7 年),法律時報 7 9巻 5号 , 1 ' ; ]7号 ( 2 0 0 7 ) などがある O 研究者の論稿として,堀江慎司「刑事裁判 への被害者参加の制度についての覚書. 被害者等による証人尋問・被告人質問を中心に. 」法学論. 6 2巻 1~ 6号 ( 2 0 0 8 年) 2 4 3頁以下などがあり,今回の法改正に大きな影響を与えた被害者団体 叢1 (あすの会)の顧問弁護士の共著による解説として,岡村勲監修「犯罪被害者のための新しい刑事 司法解説. 犯罪被害者参加制度と損害賠償命令制度~ (明伝書庖, 2 0 0 7年)がある。. 9 1 1 1崎英明「刑事裁判への被害者参加制度の批判的検討」季刊刑事弁護 No.5 0( 2 0 0 7 年) 9 0頁 -193.
(4) 犯罪被害者等の刑事公明l 手続への参加. されるといえるだろうか。さらには,. ドイツでは, I 被害者の権利は,刑事訴. 訟法レベルのものではなく,被疑者・被告人の権利と同じ基本法レベルのもの であり,. したがって,両者が衝突するときは,あらゆる事件において,その間. の利益衡量が予定されている」という考え方 10 があるが,わが国においても, 被害者等の公判への参加に関して,憲法レベルで,同じように考えることがで きるだろうか。. ( 1) 憲法 1 3条(幸福追求権) ア内容 被害者等に対する支援一般について,その憲法上の基礎を,憲法 1 3条の幸福 追求権に求める見解が,有力に主張されている O その lつを,公判への参加に 憲法 1 3条後段は幸福追求 焦点をあてて要約すると,以下のとおりである 110 I 権を保障している O これは人格的存在に不可欠な権利・自由を包摂する包括的 な権利であり,個別の人権規定では救済しきれない新しい侵害を人権侵害とし て捉え,保障しようとするものである O 犯罪はそれ自体として重大な人権侵害 であり,その救済は個別的な人権の侵害として刑罰や損害賠償によって救済さ れるべきであるが,それによって救済されない場合は,これを幸福追求権の侵 害として捉え,新たな救済ないし支援の手段を講じるべきである O 幸福追求権 については立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とするが,公共の福祉に よる制限がある。したがって,犯罪被害者支援が被疑者等の人権を侵害したり 表現の白由を侵害したりするような場合には,利益衡量が必要となり,前者が 後者を上回る場合にはじめて権利として認められる O また,幸福追求権の性質 (一般原理か具体的権利か)については議論があるところ,情報の提供を受け. 1 0 ディーター・エッぺンシュタイン「ドイツの刑事手続における被害者保護」自由と正義4 9巻 8号 0998 年) 2 0頁 1 1 大谷賓「犯罪被害者対策の理念」ジュリスト 1 1 6 3号(19 9 9年)7頁以下. 1 9 4.
(5) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. る権利やすでに警察が実施している支援については具体的権利と考えられるが, 人格権としての内実を超えた権利,たとえば裁判に出席する権利や公判におい て意見を述べる権利などの刑事手続上の権利は,立法的・行政的措置によって はじめて実現されるべき権利である。刑事手続上の権利については,事案の真 相の解明と適正手続という刑事訴訟法の目的に反しない限度で,被害者の権利 が認められる O そこでは,単に被疑者・被告人の刑事手続における人権保障と の均衡を図るといった観点からではなく,あくまでも幸福追求権の侵害の回復・ 軽減を図るのに必要な措置か否かという観点から,刑事手続の目的と調和する 限度が探られるべきである。」 憲法 1 3条の幸福追求権……から導き出される権利 この考え方については, I は,人一般の享有するような権利であって,特別のグループの特別の人権につ いてはさらに別の根拠が必要となる……刑事手続への関与権……は,被害者に 対して特別に認められるべき特別の権利であって,このような被害者の個別的 権利を幸福追求権から直接導き出すことは困難である J12 という問題が指摘さ. 4条によって解決できると れている。そして,その論者は,この問題点を憲法 1 憲法 1 4条の平等原則が,各人を平等に扱うという形式的平等 する O いわく, I を超えて,各人の能力や状況の違いを前提にして,とりわけ社会的・経済的弱 者に厚い保護を与えるという実質的平等をも規範的に要請していると解される……. 4条は特定のグループの人権保障を根拠づける機能をもって この意味で,憲法 1 いるということができる。特定のグループが特別の人権欠損状況に置かれ,一 般国民との対比で厳しい生活環境にあり,. しかも,その救済の必要性が社会的. に合意されているような場合には,当該グループに特別の保護が根拠づけられ るO 犯罪被害者の場合にも,被害者の救済の必要性と国民の合意の存在は推認. 4条から特別の保護を許容性と必要性とを肯定することがで できるので,憲法 1. 1 2 戸波江二「被害者の人権のための人権論からのアプロ一千」被害者学研究第 1 5号 ( 2 0 0 5年)9頁 υ w. にけ. ハ.
(6) 犯罪被害者等の刑事公判子続への参加. きょう O ……憲法 1 3条前段の「個人の尊重」の原理は,・…・・個人主義思想、に基 づいて個人の自立と多様性を尊重する個人の尊厳と,人聞を価値ある存在とと らえて尊厳をもって扱うことを要求する人間の尊厳の原理……をもあわせもっ ていると一般に解されている。このように考えると,……憲法 1 3条のうちに人 権を保護すべき国の義務を見出すことは可能であり,かつ,必要なことである O 一般に,国は個人を尊重し,個人を人間として扱う義務を負い,国が個人に対 して非人間的な処遇をした場合には,その措置は人間の尊厳を傷つけるもので あって憲法違反の国家行為と評価される。……被害者の処遇においても,被害 者を尊厳をもって遇すること,被害者の人間としての尊厳を尊重することは, 憲法上要求されているとみることができる J130 I 憲法 1 4条の実質的平等の要請 に基づいて被害者には特別に救済が与えられるべきこと,被害者を尊厳をもっ. 3条の『個人の尊重』およびそれを具体化した て処遇することを要求する憲法 1 犯罪被害者等基本法 3条の『個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい 処遇を保障される権利」が特に保障されていること,このような被害者の人権 の保護のために国は積極的な措置をとるべき義務を負っていること,という個 別的権利を支える憲法上の基礎がある J140 イ検討. このような考え方には,いくつかの問題がある。 ( ア ) 幸福追求権と公判への参加との関係. まず,論者自身が「幸福追求権」から直接「公判に参加する権利」を導き出 幸福追求権」と「公判に参加する権 していないことからも明らかなように , I 経済的被害の回復や精神的苦痛か 利」との関係が,問題である。たとえば, I らの解放などについては幸福追求権の内容として捕捉できるが,刑事司法手続. 1 3 戸波江二「被害者の人権のための人権論からのアプロ一千」被害者学研究第 1 5号 ( 2 0 0 5fド) 101 1頁. 1 4 戸波江二「被害者の人権のための人権論からのアプローチ J被害者学研究第 1 5号 ( 2 0 0 5年) 1 8頁. 1 9 6.
(7) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. への積極的な参入については幸福追求権との関係は間接的ではないか」という 旨の指摘がなされている 150 幸福追求権に被害者支援の憲法上の基礎を見いだ す論者も,すでにみたように, I 裁判に出席する権利や公判において意見を述 べる権利などの刑事手続上の権利」は「人格権としての内実を超えた権利」 「個人の尊厳すなわち個人の平等かっ独立の人格価値に直結する権利ではない」 から「立法的・行政的措置によってはじめて実現されるべき権利である」とし 人格的存在に不可欠な権 ていた。ここでは,公判に参加する権利について, I 利・自由を包摂する包括的な権利」としての幸福追求権には含まれないとされ ているのである O ( イ ) 平等権の内容・法的性質. 憲法 1 4条を援用して被害者に対する特別の保護を基礎つnfることについては,. 2つの点で問題がある。 1つは,憲法 1 4条が「形式的平等=機会の平等」を超 えて「実質的平等=結果の平等」まで保障しているのかという点である。この 点については消極説も多 L、。例えば, I 憲法 1 4条の規定は,なによりも近代的 意味の平等原則,すなわち形式的平等を保障したものと解するのが妥当である。 結果の不平等を完全に解消することは,少なくとも自由の理念と両立しないが. 6 7頁),近代立憲主義の延長線にある日本国憲法は (佐藤幸・憲法〈第三版> 4 自由の理念と調和する平等の理念に基づいていると考えられるからである。実質的平等……の実現は,なにが実質的平等と呼ばれるにふさわしいかという 問題を含めて,第一義的には社会権条項に託された課題であり,結局は立法に よって実現されるべきものであろう O それは,少なくとも裁判規範の意味にお. 4条の規定から直接に導かれる性質のものではない…・・。実質的 いては,憲法 1 平等の要求と形式的平等の要求は同一次元では両立しないから,そのように解. 1 5 小暮得雄「犯罪被害者の復権 集. c r. 被害者の法的地位に関する覚書き J 渡部保夫先生古稀記念論文. 誤判救済と刑事司法の課題.1 C 日本評論社. 2 0 0 0 年)) 5 9 6頁 Aud. i 円.
(8) 犯罪被害者等の刑事公判子続への参加. さないと,形式的平等の要求が,不明確な内容の要求によって相対化され,か えって無内容なものにおちいるおそれがある。結論的にいうと憲法 1 4条は,第 一義的に形式的平等を保障しており,ただ実質的平等の理念からくるこの相対 化の要請を相当の程度まで受容することを予定した規定だと解される。 J16 と 説かれている。. 2つ目の問題点は,憲法 1 4条によって実質的平等が要請されているとしても, それは義務づけられてまでは L、ない(したがってそれに対応する権利も認めら. 4条が実質的平等を要請している れな L、)のではな L、かという点である O 憲法 1 実質的平等を実現する国の法的義務が憲法の保障す とする説も,たとえば, i る「法の下の平等」原則から直ちに生ずる,という趣旨ではな L、。法的な義務 は,社会権(生存権,教育を受ける権利,労働基本権など)の保障にかかわる 問題であり,それを通じて具体化されることを憲法は予定しており,平等原則 との関係では実質的平等の実現は国の政治的義務にとどまる,と解するのが妥 当であろう J17 としている O ウ小括 このように,憲法 1 3条の幸福追求権(及び憲法 1 4条の平等権)から,直接に, 被害者等の公判への参加という個別的なかっ国家に対する請求権的な権利を導 き出すことは,困難である。幸福追求権を根拠とするためには,まず,公判に 参加する権利が個人の人格的自律にとって不可欠であることを,論証しなけれ ばならない。しかしそれが困難と考えられるからである O. 1 6 野中俊彦ほか「憲法 1 C 第 4版 H C 有斐閣, 2 0 0 6年) 2 7 4頁。同旨として,たとえば,伊藤正巳 9 9 5年) 2 4 2頁,樋日陽ーほか『憲法 1j (青林書続, 1 9 9 4年) 3 1 3頁 「憲法〈第 3版 )j (弘文堂, 1 l : : l 本 [ 1 i [ 憲 法 第 3版 j (宥斐閣, 2 0 0 7年) 3 7 7頁。 (浦部法穂執筆),松井茂記 r 1 7 芦部信喜『憲法学皿人権各論1 1 1 [増補版 H (有斐閣, 2 0 0 0年)7頁 1 9 8.
(9) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. ( 2 ) 憲法3 1条(適正手続) 1条によって根拠づけることができ 被害者の刑事司法手続への参加を,憲法3 憲法3 1条は, るという考え方がある O 大要,以下のように論じる 180 I. r 適正な. 実体刑法』を「適正な訴訟手続』を通じて実現することを内容としている。実 体刑法上,被害者は犯罪の分類体系(個人的法益,社会的法益,国家的法益) を支えるかなめであり,成立すべき犯罪構成要件を特定し個別化する中核的要 素であり,さらには法益侵害に対する被害者の意思的関連が犯罪の成否そのも のを左右する効果を持つ(被害者の承諾により法益としての要保護性が失われ る)。また,国家は被害者から復讐を奪って刑罰権を独占的に掌握したが,そ の行使にあたっては被害者の処罰感情を合理的に吸収しそれに答えなければな らな L、。このように,犯罪概念の基本構造の中に,公刑罰の性格の中に,被害 者の刑事手続への参入を要請する十分な実体法的根拠がある。さらに,手続の 観点からも,事案の真相を明らかにし,刑罰法令を適正・迅速に適用し実現す る(刑訴法 l条)ためには,生の犯罪の当事者ともいうべき被害者の積極的な 協力が必要不可欠である O 犯罪の成否を明らかにし,被害の程度や被害者の意 思を確認するために,司法手続の過程で,被害法益の担い手である被害者につ いて,たとえば情報を提供し,その発言機会を確保する場が求められる O こう して,実体法学上の罪刑法定主義と手続法学上のデュー・プロセスとの融合と もいうべき適正手続条項に,犯罪被害者の手続参入を正当化する憲法的基礎が 認められる。」 憲法3 1条の適正手続原則は,刑事手続において捜 この考え方に対しては, I 査機関に対して適正な捜査を義務づけ,被疑者・被告人の手続的権利を保障す. 1 8 小暮得雄「犯罪被害者の復権 被害者の法的地位に関する覚書き JC f渡部保夫先生古稀記念論文 集. 誤判救済と刑事司法の課題 j C 日本評論社, 2 0 0 0年)) 591~609 頁。さらに, I B宮裕「刑事訴訟. 法 j (有斐閣, 1 9 9 2年) 3 7頁にも, I 被告人・被疑者の場合と平灰を合わせて, f 被害者のデュー・ プロセス」の保障ということも考えてよ Lづという記載がある。. 1 9 9.
(10) 犯罪被害者等の刑事公判手続への参加. るものであるが,そこから刑事手続への関与権という被害者の,. しかも積極的. 憲法 3 1条以下の刑事手続条項 な権利を導き出すことは困難である J19 とか, I は国家対被告人という関係において権利主体たる地位を被告人に付与するとい う構造になっており,国家との関係における権利主体性の保障というのが憲法 の想定する刑事訴訟の基本構造だと考えられ,その中に犯罪被害者の権利保障 0 がなされて がどのように整合的に入り得るのか疑問である」といった指摘 2. いる O たしかに,憲法 3 1条は,文理上も,国家によって「生命若しくは自由を 奪はれ,又はその他の刑罰を科せられ」る者について権利を保障した規定であ るO 刑事事件において,それは被疑者・被告人である O 被疑者・被告人の権利 を保障した規定の中に,場合によってはその主体(被疑者・被告人)の権利と 対立・緊張する被害者の権利を読み込むことは,疑問である O また,実体法における被害者の重要性や,公刑罰の性質を援用することにつ いては,公判手続の性格との整合性という点で注意を要する O すなわち,公判 手続は, I 被告人が一定の犯罪を行った」という検察官の主張が証拠によって 起訴状に被害者と記載された者が 認められるかどうかを審判する場であり, I 実体的に被害者である」というのも,検察官の主張(公判手続で審判する対象) その者が被害者であること」 の一部である。したがって,公判手続において, I を前提にすることはできな L、。被害者参加の根拠づけは,そこでいう「被害者」. 1 9 戸波江二「被害者の人権のための人権論からのアプローチ」被害者学研究第 1 5弓 ( 2 0 0 5年)9頁 。 法律によって被害者の刑事手続への関与権が創設された ただし,同論文は,それに引き続いて, I 1条の適正手続の要請に反すると判断されることはありうるが, のちに,当該法律の定め方が憲法 3 しかし,被害者に関する権利付与の規定がない段階で,被害者の具体的な権利を導出することは難 しいといわなければならない。もっとも,憲法3 1条は,刑事手続全般にわたって適正な手続を要求 しており,. したがって,刑事手続に必然的に関係を持つ『被害者」の処遇についても適正な手続を. 要求していると解することができる。したがって,後述するように,被害者の権利について配慮す. 1条を挙げることは可能である。」 べき立法者の義務を肯定する場合に,その根拠の lっとして憲法3 としている。. 2 0 浅田和茂・川崎英明・山下幸夫・高田昭正「座談会 犯罪被害者と刑事訴訟」法律時報 7 9巻 7号 ( 2 0 0 7年) 97-98頁(川崎発言).
(11) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. が「起訴状に被害者と記載された者」であり「実体的に被害者であるかどうか は未確定の者」であることを前提に,なされなくてはならない。. ( 3 ) 憲法 1 3条(適正な手続的処遇をうける権利) 1条ではなく)憲法 1 3条の幸福追 適正な手続的処遇をうける権利は, (憲法 3 公権力が法律に基づい 求権のー内容として認められるという考え方がある o I て一定の措置をとる場合,その措置によって重大な損失を蒙る個人は,その措 置がとられる過程において適正な手続的処遇をうける権利(告知および聴聞の 機会を得る権利)を有する」とし,これは「人格の尊厳原理の主観的権利化」 1 0 この考え方によれば,犯罪被害者等が公判手続によって だというのである 2. 「重大な損害」を蒙るといえれば,公判手続において告知聴聞の機会を得る権 利を肯定することもできそうである O しかし,この説が適正な手続処遇をうける権利の関係で想定しているのは, 主として行政処分であり,そこで「重大な損害」として考えられているのは, (行政庁の措置によって)一定の職業を行えなかったり財産権の行使が制限さ れたりすることである。公判手続において被害者が蒙るいわゆる二次被害が, ここにいう「重大な損害」にあたるかは,程度(~、わゆる二次被害は常に生じ. るとも限らず,生じる場合の程度も事案によってまちまちである)や直接性 (公判手続は被告人に刑罰という「重大な損害」を与えるかどうかが決せられ る場であって,被害者のいわゆる二次被害は直接予定されたものではない,い. 3条の適 わば派生的なものである)という点で,問題がある O こうして,憲法 1 正な手続的処遇をうける権利によって被害者の公判に参加する権利を根拠づけ ることも,困難である。. 2 1 佐藤幸治『憲法(第三版lJ(青林書院, 1 9 9 5年) 4 6 2頁. 2 0 1.
(12) 犯罪被害者等の刑事公判手続への参加. ( 4 ) 憲法 3 2条(裁判を受ける権利) 2条の「裁判を受ける権利」によって保 被害者の公判手続への参加を,憲法 3 障されていると考えることはできないか。これに関して,被害者による公判手 続への参加は,被害者が有している訴追権の行使だという見解がある O 大要, 次のように説く 2 2 0i 危害を加えられた者には反撃する権利がある O しかしそ れでは復讐の連鎖となり社会の平和が乱れるので,刑罰権を国家に信託譲渡し た(社会契約説)。被害者は刑罰権を国家に譲渡したが,訴追権まで譲渡した わけではな L、。裁判所に対して被害を訴え訴追を求める権利は,自然権として 被害者に残っている O そうはいっても,実際問題として,被害者が捜査を行う ことは技術的・経済的・時間的に不可能だから,国家機関にそれを肩代わりし てもらっている。したがって,検察官が訴追した手続の中に被害者が参加する ことは,潜在的に有している権利の回復であるから,できるだけ広く参加を認 めるべきである」。この見解は, i 自然権」というのみで憲法上の位置づけを示 裁判所に訴え訴追を求める権利は被害者に残っている」とし していないが, i. 2条の裁判を受ける権利と親和的だといえよう O ているので,憲法 3 これについては, i 憲法 3 2条の裁判を受ける権利についても,さしあたり事 件の当事者ではない被害者に対して,刑事手続ないし公判への参加権を一般に 保障しているとは解しがたい J 2 3。最高裁も,憲法 3 2条は「刑事においては, 訴追に基いて被告人として裁判所の審判を受ける権利を奪われないことをいう ものであって,国家機関でない私人である被害者又は一般に訴追の権利を享有 行使せしめる,いわゆる,被害者訴追主義又は一般訴追主義を保障した規定で. 2 2 岡村勲聡修「犯罪被害者のための新しい刑事司法解説 被害者参加制度と損害賠償命令制度」 (明石書!占. 2 0 0 7年) 1 8 4頁 2 3 戸波江て「被害者の人権のための人権論からのアプロ一千」被害者学研究第1. S号 ( 2 0 0 5 年) 1 0頁 。 ただし,同論文は,引き続いて「とは L、ぇ,被害者の権利救済のための個別的措置の導出について,. 2条は一般的な恨拠となる'といえよう」としている O 憲法 3 202.
(13) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. はない J24 としている O. ( 5 ) 憲法2 1条(知る権利)・憲法 1 3条(自己情報コントロール権) 4条に被害者の個別的権利を支える憲法上の基礎を見いだ 幸福追求権と憲法 1 す前述の見解は,個別的権利として公判への参加権を挙げ,次のように論じて 個別の権利として,加害者である被告人の刑事手続・公判への関与権 いる o I がある。出廷・傍聴の権利や意見陳述権は,被害者の『知る権利」の裁判過程 への適用として構成することができる O また,犯罪を解明する際の被害者の性 格や態度の立証では,被害者の個人情報が扱われるのであるから,被害者の 「自己情報コントロール権』としてのプライパシー権という観点からも,意見 陳述権,傍聴権が認められるべきである J25。このように,公判への参加の憲. 1条の知る権利や憲法 1 3条の自己情報コントロール権に求 法上の根拠を,憲法 2 めることは,できないだろうか。 「知る権利」に関しては,憲法 2 1条によって情報発信・情報受領・情報収集 6。しかし,被害者について,当該被害 の各権利が保障されると解されている 2. にかかる刑事事件に関して. (一般人に認められる)傍聴とは区別された特別 の形で(たとえばパーの内側に在廷して)情報を受領・収集する権利や,公判 という特別の場において意見陳述という特定の形式で情報を発信する権利まで が,憲法 2 1条によってあるいは「知る権利」として. (しかも具体的権利とし て)保障されているとは,一般に解されていな L、。被害者について,一般人に. 2 4 最判昭和 2 7年 1 2月 2 4日民集 6巻 1 1号 1 2 1 4頁 2 5 戸波江~ I 被害者の人権のための人権論からのアプローチ J被害者学研究第 1 5号 ( 2 0 0 5年) 18~ 1 9頁。同論文は,引き続いて,その権利の性質について, I これらは法律によって具体化されるべ きであるが,実際の捜査・裁判過程で正当な理由なく被害者の関与の要求が否定された場合には, その措債は,違憲・違法なものとなると解される。 Jと論じている。. 2 6 たとえば,佐藤幸治「憲法〔第三版l.I (青林書院, 1 9 9 5年) 515~516頁,樋口陽ゐほか『憲Jよ IU (青林書院, 1 9 9 7年) 70~71 頁(浦部法穂、執筆),野中俊彦ほか『憲法 1 ( 第 4版 H (有斐閣, 2 0 0 6 年) 337~339 頁. 203.
(14) 犯罪被害者等の刑事公判手続への参加. 認められる傍聴とは異なる形で公判において情報を受領・収集する権利を根拠 づけるためには,また,公判というもともと関与者・発言者・発言形式・発言 内容が限定されている場において,特定の形式・内容の発言(情報発信)をす る権利を根拠づけるためには,一般的な表現の自由や「知る権利」というだけ. 3条の幸福追求権と では,足りないと考えられる(それゆえに,論者は,憲法 1 4条の平等権によって,犯罪被害者に対する特別のしかも固による積極的 憲法 1 な行為義務を肯定しようとする O しかしそれら自体に問題がある。これらにつ いては,すでに述べた)。 たしかに,被害者(と起訴状に記載された者)については,公判手続に関し て,一般人と区別された(より手厚 L、)情報受領・収集・発信の機会を与える のが妥当と考えられる O それはなぜか。被害者は一般人とどこが違うのか。そ れは,当該公判手続において当該被害者に関する情報が不可避的に扱われると いうことであろう O この点で,被害者と一般人とに決定的な違いがある O その. 3条の「自己情報コント 違いに着目した根拠づけとして考えられるのが,憲法 1 3条は,個人の人格的生存に不可欠な利益 ロール権」である。すなわち,憲法 1 を包括する「幸福追求権」を保障するものであり,そこには「自己情報コント ロール権Jが含まれると,一般に解されている O そして, i 自己情報」や「コ 個人の道徳的自律の存在 ントロール」の内容については議論があるものの, i 人の精神過程とか内部的な身体状況等にかかわる高度 に直接かかわる情報Ji にコンフィデンシャルな性質の情報」については,円、っ,どのように, どの アクセスし, 程度まで,他者に伝達するかを自ら決定する」権利が認められ, i 点検し,不当不正確な情報の訂正ないし削除を要求し,利用関係を知りかっ統 制することができる」という見解が有力である 270 ここで,犯罪被害に関する. 2 7 たとえば,樋口陽. A. ほか『憲法 1~ C 青林書院, 1 9 9 4年) 2 8 1~288 頁(佐藤幸治執筆),佐藤幸治. 『憲法〔第三版 HC 育林書院, 1 9 9 5年) 453~457 貞,芦部信喜『憲法学 H 人権総論~ 年) 378~382 頁。. 2 0 4. C 有斐閣,. 1 9 9 9.
(15) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. 情報は,基本的には,. この「個人の道徳的自律の存在に直接かかわる情報」. 「コンフィデンシャルな情報」に該当するであろう。そして,公判手続におい ては, I 被害者Jの「被害に関する情報」が,当事者の主張・書証の取調・証 人尋問・被告人質問などの過程で,公開の法廷において顕出され,裁判所の事 実認定の基礎とされるという形で使用される O このような被害者に関する情報 の収集・使用は,公判手続において類型的に不可避なものとして予定されてい るO したがって,公判手続は,被害者による自己情報コントロール権の典型的 な発現場面ということができる O もっとも,情報コントロール権のうちの積極的な請求権的側面,すなわち, 自己情報の閲覧・訂正・抹消を求める権利や,利用・伝播の抑制を求める権利 については,法令の裏づけがあってはじめて具体的権利となるものであり,法 令の根拠なしに憲法 1 3条によって当然に認められるものではないとされている 280 そうすると,被害者の公判手続への参加は,それが法律によって具体化され た場合に,自己情報の閲覧・訂正・抹消,利用・伝播の抑制と結びつく限度で,. 3条の自己情報コントロール権の具体化として,憲法上の根拠に基づくも 憲法 1 のということができる O. ( 6 ) 今次の立法における考え方 次に,今般の被害者参加制度の導入にあたって,憲法上の根拠づけに関して どのように考えられたのかを,立法に至る経過に即して確認する O ア. 犯罪被害者等基本法(平成 1 6年法律第 1 6 1号). 今回の被害者参加制度は, I 犯罪被害者等基本法J(平成 1 6年法律第 1 6 1号) に基づいて導入されたものであるが,同法は,被害者保護全般に関する憲法上. 3条の幸福追求権に求める考え方に立脚したものといえる O の基礎を憲法 1. 2 8. 芦部信喜『憲法学 H 人権総論~. (有斐閣, 1 9 9 9年) 382~383 頁 HU QF白. F h a ハ.
(16) 犯罪被害者等の刑事公判手続への参加. すなわち,同法は, I 犯罪被害者等のための施策に関し,基本理念を定め, 並びに国,地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに,犯罪被害者 等のための施策の基本となる事項を定めること等により,犯罪被害者等のため の施策を総合的かっ計画的に推進し,. もって犯罪被害者等の権利利益の保護を. 図ることを目的とする J(1条)ものとされ,基本理念として「すべて犯罪被 害者等は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される 国は,前条の基本理念……にのっと 権利を有する J (3条 1項)としたうえ, I り,犯罪被害者等のための施策を総合的に策定し,及び実施する責務を有する」. ( 4条)とし, I 犯罪被害者等のための施策」には「犯罪被害者等が,その受け た被害を回復し,又は軽減し,再び平穏な生活を営むことができるよう支援… するための施策」とともに, I 犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手 続に適切に関与することがで、きるようにするための施策」が含まれるとし(2 条3 項),後者の基本的施策として,. I 国及び地方公共団体は,犯罪被害者等が. その被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにするた め,刑事に関する手続の進捗状況等に関する情報の提供,刑事に関する手続へ の参加の機会を拡充するための制度の整備等必要な施策を講ずるものとする」. 08条)と定めた 290. そして,. I 政府は,犯罪被害者等のための施策の総合的か. っ計画的な推進を図るため,犯罪被害者等のための施策に関する基本的な計両. 8条 l項)とした。 を定めなければならない J( ここで,同法 3条 l項については,幸福追求権によって被害者に何らかの具 体的権利が認められることを意味するものではないと解されている O すなわち, 「この規定は,直ちに犯罪被害者等についての具体的な権利・義務関係に影響 2 9 同法が規定したその他の基本的施策は,①相談及び情報の提供等cl1条),②損害賠償の請求につ. 02条),③給付金の支給に係る制度の充実等 03条),④保健灰療サービス及び福祉 04条),⑤安全の確保 05条),⑥居住の安定 06条),⑦雇用の安定cl7条),⑧ 保護,捜査,公判等の過程における配慮等 0 9条),⑨国民の理解の増進 ( 2 0条),⑩調査研究の推 いての援助等. サービスの提供. 2 1条),⑪民間の団体に対する援助 ( 2 2条),⑫意見の反映及び透明性の確保 ( 2 3条),である。 進等 (. 2 0 6.
(17) 法科大学院論集第. 5号. を与えるものではないが,国・地方公共団体・国民の各々が犯罪被害者等のた めにとるべき行動の方向性が明確になり,個別法令の整備や個別の施策の充実 を推進する上での指針となるものと考えられる。 J30 と説明されている O また,同法 1 8条の立法趣旨については,次のように説明されており,被害者 参加制度の導入が憲法上の要請だとまでは考えられていな L、。「犯罪被害者等 は,犯罪により被害を受けたという意味においては『事件の当事者』であり, その被害に係る刑事に関する手続の帰趨に深い関心を持つのが通常てーある。本 条は,こうした犯罪被害者等の心情を踏まえ,犯罪被害者等が刑事に関する手 続に適切に関与できるようにするため,情報の提供を望む犯罪被害者等の要望 にこたえ,犯罪被害者等の意見をより反映させるべく施策を講じていくことが 必要であるとの認識の下,刑事に関する子続の進捗状況に関する情報等の提供, 刑事に関する手続への参加の機会の拡充といった施策を講ずることを規定した ものである J310 イ. 2 0 0 5年 1 2月閣議決定 )32 犯罪被害者等基本計画 (. 犯罪被害者等基本法(8条 l項)を受けて策定された犯罪被害者等基本計画 は,被害者等の公判手続への参加に関して,次のような内容を含むものであっ た(下線は引用者)。. Il l I 重点課題 J33 の「⑧ 刑事手続への関与拡充への取組」の項目 「犯罪被害者等が,捜査や刑事裁判等に関し, ~事件の当事者』として,事件の. 3 0 井川良「犯罪被害者等基本法」ジュリスト 1 2 8 5号 ( 2 0 0 5年) 40-41頁 。 3 1 井川良「犯罪被害者等基本法」ジュリスト 1 2 8 5号 ( 2 0 0 5年) 42-43頁 3 2 内閣府政策統括官(共生社会政策但当)ホームページ h t t p : / / w w w 8 . c a o . g o . j p / h a n z ai !basic p l a n . p d f 基本計画についての被害者保護推進の立場からの解説として,番敦チほか『犯罪被害者等某本計. 回i の解説J (ぎょうせい, 2 0 0 6年)がある。. 3 3 重点課題は,①鎖害同復・経済的支援等への取組,②精神的・身体的被害の同復・防止への取組, ③刑事手続への関与拡充への取組,④支援等のための体制整備への取組,⑤国民の理解の増進と配 慮・協力の篠保への取組,の 5つである。. 2 0 7.
(18) 犯罪被害者等の刑事公判手続への参加. 真相を知りたい,善悪と責任を明らかにしてもらい,自己の,あるいは家族の 名誉を回復したい,適正な処罰により自らの正義を回復してほしいなどと願う ことは当然である O 事件の正当な解決は,犯罪被害者等にとって最大の希望で あり,その回復にとって不可欠であるともいえる O また,解決に至る過程につ いても,遺族がこれに関与することでその責任を果たせたと感じるなど,犯罪 被害者等の精神的被害の回復に資する面もある。しかしながら,現状について, 犯罪被害者等からは,捜査や刑事裁判等は,加害者及び弁護士と,警察,検察, 裁判所のみを主体として行われ,犯罪被害者等に認められた権利は貧弱であり, 十分な情報も与えられず疎外され,証拠として扱われているに過ぎないという 批判があり,刑事司法について社会の秩序維持という公益を図る目的が強調さ れ過ぎているという指摘や,犯罪被害者等に信頼されない刑事司法は国民全体 から信頼されないという指摘もなされている O 犯罪等には,社会の秩序を侵害 するという面と個人の具体的な権利利益を侵害するという面があるが,人が被 害者となる犯罪等の場合,一般的な感覚からは,両者は裁然と区別されるもの ではな L、。社会が個人によって成り立っているように個人もまた社会の中にあ るのであって,刑事裁判等において違法性と責任が明らかになり,適正な処罰 が行われることは,社会の秩序を回復するというだけでなく,当該犯罪等によ る被害を受けた個人の社会における正当な立場を回復する意味も持ち,このこ とは,現実の問題として,偶人の権利利益の回復に重要な意義を有している O 刑事司法は,社会の秩序の維持を図るという目的に加え,それが『事件の当事 者」である生身の犯罪被害者等の権利利益の回復に重要な意義を有することも 認識された上で,その手続が進められるべきである。この意味において,. r 刑. 事司法は犯罪被害者等のためにもある」ということもできょう O また,このこ とは,少年保護事件であっても何ら変わりはな L、。もとより,刑事に関する手 続や少年保護事件に関する手続は,国家,社会,個人に関する様々な価値観の 相克・変化を踏まえた歴史の所産でもあり,国家及び社会の秩序維持,個人の AU. OO.
(19) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. 人権の保障,少年の健全育成等の時として衝突し,考量困難な種々の要請に応 えるものでなければならな L、。そのことを前提としつつ,. r 事件の当事者』で. ある犯罪被害者等が,刑事に関する手続や少年保護事件に関する手続に適切に 関与できるよう,その機会を拡充する取組を行わなければならな L、 。 」. IV 重点課題に係る具体的施策」の「第 3 刑事子続への関与拡充への取組」. 1 1 . 刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等(基本 法1 8条関係 ) J. [現状認識]として,. I r事件の当事者』である犯罪被害者等が,被害を受けた. 事件の捜査・公判等の刑事に関する手続や,少年保護事件の調査・審判等の手 続に対し,それを通じて事件の真相を知ることができ,名誉が回復され正義が 実現されるものと期待し,その推移及び結果に重大な関心を持つのは当然であ るO 刑事に関する手続や少年保護事件の手続についての情報提供を欲するのみ ならず,加害者側に偏向した結果となることを心配し,自ら手続に関与するこ 。 、 情報の提供に関しては,警察,検察庁, とを望む犯罪被害者等も少なくな L 海上保安庁による各種情報の通知制度が実施されている。また,刑事に関する. 2年に行われた刑事訴訟法 手続への参加の機会を拡充する制度としては,平成 1 3年法律第 1 3 1号)の改正により,被害者等の意見陳述制度が導入された (昭和 2 ほか,検察審査会への申立権者の範囲が拡大されるなどしている。少年保護事 件の手続に関しては,同年の少年法(昭和 2 3年法律第 1 6 8号)の改正により家 庭裁判所による被害者等の意見聴取の制度が導入されるなどしている O しかし ながら,犯罪被害者等からは,現状について,犯罪被害者等は証拠として扱わ れているに過ぎず『事件の当事者」にふさわしい扱いを受けていないという批 判があり,刑事に閲する手続及び少年保護事件の手続に関し,一層の情報提供 と参加する権利を認めるよう要望する声が多 L、。」と記載し, [今後講じていく 施策]として,. 1 犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度の. 検討及び施策の実施Jを掲げ,. 1 法務省において,刑事裁判に犯罪被害者等の 2 0 9.
(20) 犯罪被害者等の刑事公判子続への参加. 意見をより反映させるべく,公訴参加制度を含め,犯罪被害者等が刑事裁判手 続に直接関与することのできる制度について,我が国にふさわしいものを新た に導入する方向で必要な検討を行い. 2年以内を目途に結論を出し,その結論. に従った施策を実施する」とした 3 4 0 基本計画も,基本法を受けて策定されたものだから当然ではあるが,被害者 等の公判への参加が憲法上の要請だという考え方に立つものではな L、。被害者 の幸福追求権に配慮、した総合的な被害者支援のー内容として,被害者の公判へ の直接関与を導入する方向で検討し,その結論に従った施策を実施するとして いる。ただ,上記下線部は,公判への参加と幸福追求権との関係に関する記述 といえる。ただ,それを意図していないのだから当然であるが,公判へ参加が 個人の尊厳にとって不可欠だという論証には,なっていな L、。「事件の正当な 解決 J ,I 適正な処罰が行われること」については,それが直ちに被害者等の公. 事案の真相や手続の内容を知りたい」 判への参加を要請するとはいえないし, I 「加害者に偏向した結果とならないように自ら参加した L、」という要望につい ても,公判への参加によらなければ実現できないとは考えられない。また, 「手続に関与したことによって責任を果たしたと感じて精神的損害の同復に資 精神的 する」という点も,そのような効果がありうるというものであって, I 損害の回復のために公判手続に関与することが不可欠だ」と述べているわけで はな L、。また,自己情報コントロール権という観点・発想はみられな L 。 、 ウ. 被害者等参加制度の立法趣旨. 今回の被害者等参加制度全体の趣旨について,立案担当者は次のように説明 0I ……そもそも,犯罪被害者等基本法においては, している(下線は引用者 ). 『すべて犯罪被害者等は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処. 3 4 基本法 1 8条関係で[今後講じていく施策]としては,このほかに, I 冒頭陳述等の内容を記載し 公判記録の閲覧・謄写の範囲拡大に向けた検討及 た書而の交付についての検討及び施策の実施 JI. 8があげられている。 び施策の実施等」など,合計 2. 2 1 0.
(21) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. 遇を保障される権利を有する。』との基本理念が定められており(第 3条),そ の尊厳にふさわしい処遇を保障されることが重要である。また,被害者等が, 自らが被害を受けた「事件の当事者』として,その被害に係る刑事事件の裁判 の推移や結果に重大な関心を持つことは当然のことであって,刑事裁判の推移 や結果を見守るとともに,これに適切に関与したいとの被害者等の心情は,十 分に尊重されるべきである。さらに,被害者等が刑事裁判に適切に関与するこ とは,その名誉の回復や被害からの立ち直りにも資するものと考えられる o そして,被害者参加制度が導入されることにより,刑事裁判が被害者等の心情 や意見をも十分に踏まえた上でなされることがより明確となり,刑事司法に対 する被害者をはじめとする国民一般の信頼を一層確保するとともに,刑事訴訟 法の目的である,刑罰法令の適正な適用実現にも資することとなるものと考え られる。また,被害者等の意見を直接聞くこと等により,被告人の理解や反省 が深まり,その更生に資する効果が生ずる場合もあると考えられる。 J35 ここでも,基本法・基本計画における考え方(公判参加制度は,憲法上要請 されているものではないが,被害者の幸福追求権に配慮した総合的な被害者支 援の一貫として,これを導入するという考え方)が基本的に承継されている。 下線部は,今般導入された制度全般と被害者の幸福追求権の関係についての記 載と読むことができる。しかし,それは,今般導入された制度が被害者の尊厳 にとって不可欠だという論証には,なっていな L、。自己情報コントロール権と 。 、 いう観点・発想は,ここでもみられな L. 3 5 白木功ほか r -r犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の・部を改正する法律 (平成 1 9年法律第 9 5 号. Hの解説 1 21J法曹時報 6 0巻 10号. ( 2 0 0 8 年) 26~27頁. の'h ︼.
(22) 犯罪被害者等の刑事公判手続への参加. 3 被害者参加の憲法上の限界 前項では,被害者参加制度の憲法上の根拠づけを検討した。そこでの結論は, 法律によって認められた内容が,自己情報コントロール権の具体化といえる限 度で,憲法上の根拠を有するというものであった。これを前提として,本項で は,被害者等の公判への参加に関して,憲法上の限界はないのかという観点か ら,若干の検討を行う。現行憲法は,旧憲法下における刑事手続への反省をふ まえて,全体の約 l割の条文を刑事手続関係に割 L、て,刑事手続の適正化・被 疑者被告人の権利保障を図っているが,被害者参加制度はこれらの規定との関 係で問題をはらむものではないか。. ( 1 ) 憲法 3 1条ないし 3 8条. 1項(無罪推定原則). 1条以下の刑事手続に関する条項には,無罪推定原則を直接規定したも 憲法3 、。しかし,無罪推定原則は,憲法上の要請と考えられている O 憲法 3 1 のはな L 条によって保障されているとする説は,たとえば次のように説明する o 1 人権 尊重の基本原理からすれば,有罪推定の原則をとることは許されず,無罪推定 の原則によらざるをえない J36 し , 1 3 1条以外の条項によって明示的に保障さ れては L、ないが,とくに被疑者・被告人の人権侵害を必要最小限に食い止める ために不可欠のものであり,手続的適正の内容として歴史的にも確立されてい るものといいうる J370 また,無罪推定原則は憲法 3 8条 1項によって保障され ているという,次のような説明もなされている。「起訴二告発事実を法律上及 び証拠上支える義務が訴追者にあるとの自己負罪拒否特権に由来する原理は, 訴追と証明について「無罪の仮定ニ前提=推定』の原則を要件とする O ……起 36 芦部信喜編「憲法 E. 人権(2)~ (有斐閣,. 1 9 8 1年) 1 1 4頁(杉原泰雄執筆). 3 7 芦部信喜編『憲法 E 人権( 21 J (有斐閣, 1 9 8 1年) 97頁(杉原泰雄執筆). “ , 。.
(23) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. 訴により,公判審理に入り,立証段階に入るときの大前提は,起訴事実は存在 しないとの仮定である O その仮定に基づいて,起訴事実が存在すると事実認定. r. 者に認定させる立証上の義務は一切訴追側にあるというのが. 無罪推定(仮 定 )J の原則なのである。この原則は,公判審理の出発段階での大前提,憲法. J 泊。そして. I 無 上の前提であって,単なる証拠上の事実推論の原則ではな L、 罪推定原則」の内容としては. I 訴追側が犯罪の成立について合理的な疑いを 超える証明をしないかきり有罪判決をすることは許されない」という証明責任 訴訟手続の全過程において,有罪判 に関する法則のみではなく,より広く. I 決が確定するまでは有罪でないものとして,できるかぎり自由な市民と同じよ うに扱われなければならな l¥J ということをも含むといわれている 390 もっと も,犯罪の嫌疑を前提として身柄を拘束されるなど,被疑者・被告人は一般市 民と異なる種々の不利益を受けさるを得ないことから,このような広義の無罪 推定原則については,政策原理 4 0 ないし立法者に対するむしろ訓示的な規範 4 1 だともいわれる O しかし,被告人について訴因とされた犯罪事実が認められ るかどうかが審理されているまさにその公判手続において. (被告人がそれを 争っているにもかかわらず)裁判所が被告人の有罪を前提とする行動をとるこ と4 2 は,裁判所が公判審理において「起訴事実が存在する」という仮定に立 つものであるから,無罪推定原則との関係で問題であろう 430. 2 0 0 6年)7-8頁 1 9 5 8 年) 1 8 9頁 , 松 尾 浩 也 『 刑 事 訴 訟 法 上 新 版 』 (弘文堂, 1 9 9 9年) 226-227頁,旧宮裕『刑事訴訟法[新版 HC 有斐閣, 1 9 9 6年) 3 0 2頁,鈴木茂嗣 『刑事訴訟法[改訂版 HC 青林書院, 1 9 9 0年) 4 4頁 4 0 r 1 1宮裕「刑事訴訟法[新版 HC 有斐閣, 1 9 9 6年) 3 0 2頁 4 1 松尾浩也『刑事訴訟法 卜.新版~ (弘文堂, 1 9 9 9年) 2 2 7頁 4 2 なお,勾留などは, I 一定の嫌疑」等の独自の要件を充足することによって認められるものであ 被告人の有罪を前提とする行動」をとることにはな るから,裁判所がそのような処分をしても, I 泌尿美東洋「全訂刑事訴訟法~ C 有斐閣,. 3 9. たとえば,平野龍会「刑事訴訟法~ (有斐閣,. らない。. 4 3 広義の無罪推定原則まで憲法3 1条によって要請されているのかという点,要請されているとして も政策原理ないし訓示的規範であり立法裁量が認められるのではないかという点などから,直ちに. 213.
(24) 犯罪被害者等の刑事公判手続への参加. ( 2 ) 憲法3 7条 1項(公平な裁判所の裁判を受ける権利) 7条 1項は, I 被告人は,公平な裁判所の……裁判を受ける権利を有す 憲法 3 裁判所の構成上の公平を要請するのみな る」としている O これについては, I らず,訴訟手続の構成についても裁判所の公正さを担保するものであることを 要請する……後者の要請は,具体的には,まず,裁判官に事件について予断と 本条が専ら裁判所の構成上の公 偏見をもたせない手続を要請する。 J44 とか, I 正さにのみかかわると解するのは妥当ではなく,それは訴訟手続のあり方をも 射程に入れた要請であることが留意されるべきであろう J 4 5 といわれている 4 6 0 最高裁も, I 同僚の『公平なる裁判所の裁判』というのは構成其他において 偏頗の慎なき裁判所の裁判という意味である,かかる裁判所の裁判である以上 個々の事件において法律の誤解又は事賓の誤認等により偶被告人に不利益な裁 判がなされてもそれが一々同僚に嫡れる違憲の裁判になるというものではない, されば本件判決裁判所が構成其他において偏頗の倶ある裁判所であったことが 主張(論旨においても此主張はな L、)立証せられない限り仮令原判決に所論の 様な法律の誤解,事賓の誤認又は記録調査の不充分(論旨第二貼所論)等があ ったと暇定しでも同僚違反の裁判とは L、えな Lリ4 7 と述べており,公平が裁判 8 0 所の構成上のそれに限定されないことを示唆している 4. このように,憲法 3 7条 1項が「裁判所の公平を担保する手続」をも要請して. 無罪推定原則の関係で憲法違反だとまではいえないとしても。. 4 4 芦部信喜編『憲法皿 人権( 2 U (有斐閣, 1 9 8 1年) 1 8 6頁(杉原泰雄執筆) 4 5 樋口陽今ほか『憲法 n~ (青林書院, 1 9 9 7年) 3 4 4頁(佐藤幸治執筆) 4 6 ただし,公平な裁判所の具体的なあり方は相当広範な立法政策に委ねられていると解すべきであ り,起訴状一本主義を欠いたり職権主義を一部採用したりしても前ちに憲法3 7条 I項に反するわけ ではないという主張(野中俊彦ほか「憲法 1 C 第 4版 HC 有斐閣, 2 0 0 6年) 4 2 1頁)もある。 4 7 最大判昭和 2 3年 5月 5日用l 集 2巻 5号 4 7頁 4 8 ただし,段高裁は,①逮捕状を発し,起訴前の勾留に関する処分に関与し,起訴後第 l回公判期 5年 日までに保釈請求却卜の決定をした裁判官が,その被告事件を審理判決すること(最大判昭和 2 4月 1 2日刑集 4巻 4号 5 3 5頁),②他の共犯者の公判l 審理によって被告事件の内容を知っていた裁判 214.
(25) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. いるとすると,第 l回公判期日(冒頭手続終了)前の段階で裁判所が一方当事 者から事案の内容に踏み込んだ情報を得るような制度は,裁判所に予断を抱か せ得るから,問題である。また, (とりわけ被告人が否認している事件におい て , )裁判所が,被告人の有罪(被害者参加人が被害者であり被告人が加害者 であること)を前提にした行動をとることになるような制度も,裁判所が訴追 側に偏った行動をとることになるから,問題である O. 4 改正法の解釈・新制度の運用に関する若干の帰結 こうしてみてくると,被害者等の公判への参加について,憲法上援用可能な. 3条に基づく自己情報コントロール権である(ただしそれは,法律に 根拠は, 1 よって制度化されたときに,自己情報の閲覧,訂正と結びつく限度で,自己情 報コントロール権の具体化として,憲法上の根拠に基づくものといえる,とい. 1条以下の刑事手続に関する憲法の条項との関係 うものである)。他方,憲法 3 被害者参加人が被害者であり被告人が加害者であること」 では,裁判所が, I. 1条・ 3 7条 l項・ 3 8条 l項との関 を前提にした行動をとるような制度は,憲法 3 係で問題であり,冒頭手続終了前の段階で裁判所が一方当事者から事案の内容 に踏み込んだ情報を得るような制度は,憲法 3 7条 l項との関係で問題である O このような憲法上の根拠・限界という観点から,今般導入された被害者参加制 度について,以下のことが L、える。. 官が審判すること(最判昭和 2 8年 1 0月 6I : : l 汗J I 集 7巻 1 0号 1 8 8 8頁),③被告人に対する背任の公訴事 実と社会的事実関係を同じくする民事事件の審判に関与した裁判官が,当該背打:事件の審判l に関与. 1年 9月2 5日刑集 1 0巻 9号1 3 8 2頁),などについて,いずれも憲法 3 7条 I項に すること(最判昭和 3 反しないとしており,裁判所の構成に関する公正に関して,比較的緩やかに合意だとしている。 にd.
(26) 犯罪被害者等の刑事公判手続への参加. ( 1 ) 被害者等にいわゆるパーの内側への在席を認めることの意味. 当該公判においては,当該被害者の被害事実に関する審理・判決が行われる のであり,そこでは,不可避的に被害者に閲する(しかも被害に関わる事実と いうセンシティブな)情報が扱われる O したがって,被害者等 4 9 に当該公判 に常時在廷する機会を与えて被害情報がどのように扱われるかを確認する機会 を保障することは,情報コントロール権(の内容としての自己情報閲覧権)の 具体化として,憲法上の基礎を有するものということができる O ただし,この 自己情報閲覧権の具体化は,いわゆるパーの内側に在席させるという形ではな し今回の改正で拡充された公判記録の閲覧・謄写切や,傍聴の機会を保障 する方法(に加えて,今回の改正で導入された,検察官に対する意見申述権及 びそれに対応する検察官の説明義務 51) によっても,可能と考えられる O また, 情報コントロール権が立法によってはじめて具体化される権利であることから, 被害者参加制度の対象事件を限定している点や,参加を裁判所の許可にかから しめている点が,憲法違反になることはな L 。 、 他方,被害者等にいわゆるパーの内側での在席を認めることは, (広義の). 4 9 I 被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者,直系の 親族若しくは兄弟姉妹」及び「当該被害者の法定代理人」に,被害者本人と同じような自己情報コ jに居住しているなどし ントロール権による憲法上の基礎づけが可能であるかは,問題である。遠 }. て,事件臼体にもその後の折衝にもまったく関わっていないような者については,臼己情報コント ロール権による基礎づけは困難でユあろう。. 5 0 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事子続に付随する措置に関する法律(平成 1 2年法 5号)第 3条。改正前は,①損害賠償請求のために必要であるなどの正当理由があり,かっ, 律第 7 ②相当と認められるとき,に裁判所が閲覧謄写させることができる,とされていたが,改正によっ て,裁判所は原則として閲覧謄写を許可するものとされ,例外的に「閲覧又は謄写を求める理由が 正当でないと認める場合j 及び「犯罪の性質,審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写を させることが相当でないと認める場合」に限ってその閲覧謄写を認めないこととされた。. 5 1 被害者参加人等は,検察官に対し,当該被告事件についての刑事訴訟法の規定による検察官の権 限の行使に関し,意見を述べることができる。この場合において,検察宵は,当該権限を行使し又 は行使しないこととしたときは,必要に応じ,当該意見を述べた者に対し,その理由を説明しなけ ればならない(刑訴法第 3 1 6条の 3 5 )。 ρhu. η. “ ,.
(27) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. 無罪推定原則や公平な裁判所の裁判を受ける権利と,抵触するものではな L 。 、 被害者等の在廷は,その憲法上の基礎が「その者に閲する情報が審理の過程で 被害者参加人が実 扱われること」に見いだされることから明らかなように, I 体的に被害者であること(さらには被告人が加害者であること ) J を前提にし ているわけではな L、からである。. ( 2 ) 参加申出手続 検察官及び被告人又は弁護人は,参加申出に関する意見を裁判所に述べる場 合,それが冒頭手続終了前であるときは,結論のみを述べるべきであり,理由 を付すべきではな L、。裁判所は,その段階で不相当意見が出た場合には,参加 を許すべきでな L、。冒頭手続終了までの聞における被害者の自己情報コントロー ル権(閲覧権)の保障は,傍聴への配慮によって図るべきである O その段階で は,被害者等の自己情報訂正権(の具体化としての証人尋問,被告人質問,意 見陳述)が問題になることはな L、。他方で,この段階で裁判所が参加の許否に 2 をすると, ついて実質的な調査・判断 5. 予断排除・公平な裁判所の観点で問. 題だからである 530 裁判所が参加の許否について実質的な調査・判断を行うの は,目頭手続終了後にすべきである O. 5 2 参加の許否を判断する際の考慮要素については.. i r犯罪の性質』とは,当該被告事件の犯罪事実. 同性,組織性,被害の結果等を L 寸。具体的には,例えば,暴 に係る犯行の動機,態様,手段,計 l 力同の対立抗争事件などは,被害者が参加することにより,法廷の秩序が乱されるおそれがある場 合もある. ・また,例えば,被告人と被害者が暴力団の組織内の「ト関係にある場合などは,被害. 者が参加することにより,被告人が萎縮して言いたいことが言えなくなるなど,被告人の防御に不 利益を生ずるおそれがある場合もある J(白木功ほか. i r犯罪被害者等の権利利益の保護を図るため. 9年法律第 9 5号H の解説( 2)J法嘗時報6 0巻 1 0号 ( 2 0 0 8 の刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成 1 年) 49~50頁)などと説明されている。 53 なお,胃頑 F 続終了前に受訴裁判所が事案の内谷'に踏み込んだ情報に接する場合として,公判断I. 整理手続がある O しかしそこでは,両当事者が関与することから裁判所が一方当事者からのみ情報 (予断)を得ることはな L、。これに対して,参加申出に関しては,裁判所は被告人又は弁護人から も意見を聞くことになっているが,検察官も被告人・弁護人も,相互に相手} jの意見を了知し得な い。双点関与のもとで進められる公判前整理手続とは,この点で恨本的に異なる。.
(28) 犯罪被害者等の刑事公判手続への参加. ( 3 ) 被害者参加人等による証人尋問・被告人質問の内容. 裁判所は,被害者参加入等が直接証人に尋問ないし被告人に質問することの 許可を求められた場合,それが否認事件である場合には,被害者参加入自身の 情報に関わる内容か,起訴事実の認定(被告人質問のみ 5 4 ) ないし量刑に影響 する内容に限って,許可すべきである(なお,ここでの「量刑への影響」は, 「尋問・質問によって明らかになる事実が量刑に影響すること」であって,. 1 尋. 問・質問すること自体によって被害感情が宥和してその結果量刑が軽くなるこ と」は含まな L、。被告人が無罪を主張している場合には, 1 被害感情の宥和に よって量刑が軽くなる」といった被告人の利益を想定することは,そもそもで きな L、。また,被告人は否認を前提とした対応をすることになるから,それに ) 。 よって被害者参加人の感情が宥和することもあり得な L、 そのように解すべき理由は,次のとおりである O まず,被害者参加人自身の 情報に関する事項についての尋問・質問は,自己情報訂正権の具体化として, 憲法上の基礎を持つものといえる O 次に,起訴事実の認定及び量刑に影響する内容についての尋問・質問は,事 案の真相を解明して刑罰法令を適正に適用実現するという刑事訴訟の目的に資 するものであるから,内容として当然許されるものであり(ただし,. 1 精密司. 起訴事実の認定及び量刑に影響す 法」から「核心司法」への転換によって, 1 る(として許容される尋問)事項Jの範囲は狭まることになろう), これを被 害者参加人に行わせることは,被害者参加入が実体的に被害者等であることを 前提とするものではないから,法律がそれを認めたとき,憲法違反ということ 1起訴状に「被害者』と記載された者」等に,検察官が行うこ にはならない (. 5 4 証人尋問については,改正法がその内容を今般情状に関する証言の弾劾に限定しているから, 「起訴事実の認定に影響する事項」についての尋問は許されな L、。これは,検察官立証を阻害しな いようにという考慮、から盛り込まれたものである。しかし,このような限定は,憲法レベルで要請 されるものではな L 。 、. 2 1 8.
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