自.動車利 用抑制策
総量抑制 の ための
「
マ イナ ス の動 機 」 の役 割
金
井 恵里可
Making
motor vehicles
inconvenient
the potential
role of disincentive
programs
Erika
Kanai
The paper is a comprehensive analysis of Japanese laws and public policy measures
designed to reduce the natural and social environmental damage effects caused by the use
of motor vehicles. I first examine traditional legal approaches, which conceptually focus on
reducing emissions per vehicle. It has now become clear, however, that despite Japan's
strict emission standards, the trend toward higher traffic densities creates insurmountable
limits to this approach. Accordingly, various new approaches which are reviewed, taken on
natural, regional, and local government levels, seek to enhance use of public transportation.
The limitations of such policy measures are also fully examined. The paper then introduces
the potential role of disincentive steps and programs, derived from government policy and
the author's recommendations,
to effectively reduce motor vehicle useage.
1.は じ め に 世 界 気 候 変 動 枠 組 み 条 約 に 関 す る京 都 会 議iの結 果,日 本 政 府 は2008年 か ら2012年 の 間 に,1990 年 実 績 比6パ ー セ ン トの温 室 効 果 ガ ス の 削 減 義 務 を負 う こ と とな っ た 。 しか し,こ の 義 務 を達 成 す る た め の 国 内 政 策 は未 だ確 定 し て お らず,産 業 界 の抵 抗 が 根 強 い た め に,義 務 履 行 が危 ぶ ま れ る と い う状 況 で あ る。 温 室 効 果 ガス の う ち主 要 な位 置 を 占 め る二 酸 化 炭 素(CO2)に つ い て わ が 国 の 排 出 状 況 を見 る と,産 業 部 門 の排 出 割 合 が 約50パ ー セ ン トを 占め る とは い う もの の,産 業 部 門 で は1970年 代 以 来 の公 害 規 制 が功 を奏 して排 出割 合 を下 げ 続 け て い る し,排 出 トン数 は ほ ぼ横 ば い で あ る 。 一 方, 運 輸 部 門 の排 出 量 は 増 加 の一 途 を た どっ て お り,運 輸 省 な どの試 算 に よ る と将 来 的 に は 更 な る増 加 が 見 込 ま れ る 。 運 輸 部 門 に は 船 舶 ・鉄 道 ・航 空 機 ・自動 車 が 含 ま れ るが,排 出量 増 加 の 原 因 は専 ら 自動 車 で あ る 。 個 人 的 な移 動 手 段 と して の 自家 用 乗 用 車 か ら長 距 離 輸 送 用 トラ ッ ク に至 る まで,自 動 車 利 用 そ の も のが 増 加 して い る のが そ の 原 因 で あ る 。 旅 客 輸 送 で は 昭和50年 以 来 ∫ 貨 物 輸 送 で も昭和62 年 以 来,自 動 車 の輸 送 分 担 比 は 国 内 全 輸 送 量 の50パ ー セ ン トを超 え て なお 上 昇 中 で あ る 。 この 自動 車 輸 送 に よ るCO2排 出 の 特 性 は,仕 事 量 に対 す る 汚 染 の率 が 非 常 に 高 い こ と に あ る 。 自動 車 は 人km(貨 物 輸 送 で は トンkm)あ た り鉄 道(電 力 分 を含 む)の お よそ10倍 を 排 出 す る。 結 果 と して,輸 送 部 門 全 体 に 占 め る 自動 車 のCO2排 出 割 合 は 約9割 に上 っ て い る。 も ち ろ ん,自 動 車 の 弊 害 は これ に と ど ま ら ない 。 浮 遊 粒 子 状 物 質(SPM)な どの排 出 ガ ス に よ る健 康 被 害,例 年1万 人 を超 え る 交 通 事 故 死.エ ネ ル ギ ー 効 率 の悪 さ,幹 線 道 路 沿 い で の騒 音 ・ 振 動 に よ る健 康 上 ・生 活 上 の 被 害,生 活 道 路 へ の 侵 入 に よ る生 活 空 間 の 侵 害 な ど,自 動 車 をめ ぐ る 問題 点 を挙 げ て い け ば 枚 挙 に暇 が な い程 で あ る。 本 稿 で は,自 動 車 に対 す る こ れ まで の規 制 そ の 他 の 政 策 の 在 り方 を 再 点 検 し,自 動 車 走 行 量 の 効 果 的 な抑 制 方 法 を検 討 す る。 2.規 制 そ の 他 の 政 策 の 状 況 (1)単 体 規 制 自動 車 公 害 に対 す る規 制 の 態 様 は,こ れ ま で 自動 車1台 あ た りの排 出 量 な ど を規 制 す る単 体 規 制 が 主 で あ った 。 (a)大 気 汚 染 防 止 法 大 気 汚 染 防 止 法19条1項 に基 づ い て 策 定 され た 厂自動 車 排 出 ガ ス の 量 の許 容 限 度 」(環 境 庁 告 示)別 紙 第 一 ・第 二 に は,同 法 施 行 令4条 に よ り 自動 車 排 出 ガス に指 定 され た 一 酸 化 炭 素 ・炭 化 水 素 ・鉛 化 合 物 ・窒 素 酸 化 物 ・粒 子 状 物 質 の そ れ ぞ れ につ い て,グ ラ ム表 示 に よ る具 体 的 な数 値 が 自動 車 の種 別 ご と に定 め られ て い る 。 ま た,大 気 汚 染 防 止 法19条2項 お よび 道 路 運 送 車 両 法41 条12号 に 基 づ く 「道 路 運 送 車 両 の 保 安 基 準 」(運 輸 省 令)31条 で は,一 酸 化 炭 素 ・炭 化 水 素 ・窒 素 酸 化 物 に つ い て 同 様 の数 値 が 定 め られ て い る 。 こ れ ら は,道 路 運 送 車 両 法58条 以 下 の 自動 車 検 査 証 交 付 の 要 件 と され て い る 。 た だ し,相 対 的 にデ ィ ー ゼ ル 車 の 規 制 が 緩 く,実 走 行 モ ー ドで は許 容 限度 を超 え た排 出 ガス が 測 定 され る な ど,様 々 の 難 点 が 指 摘 され て い る(参 考 文 献5.149∼155頁)。
(b)騒 音 規 制 法 騒 音 に つ い て は,騒 音 規 制 法16条1項 に 基 づ く 「自動 車 騒 音 の大 き さ の 許 容 限 度 」(環 境 庁 告 示)別 表 表 一 ・第 二 に は、 自動 車 の 種 別 ・車 両 総 重 量 ・最 高 出力 ご とに定 常 走 行 騒 音 ・近 接 排 気 騒 音 ・加 速 走 行 騒 音 そ れ ぞ れ の デ シベ ル数 の 許 容 限 度 が 定 め られ て い る 。 また,同 法16条2項 お よ び道 路 運 送 車 両 法41条11号 に基 づ く上 掲 保 安 基 準30条 で は,自 動 車の種別 ・車両総重量 ・最高 出力 ご と に走 行 態 様 た 応 じて 許 容 され る騒 音 ホ ン数 を定 め て い る 。 これ ら も排 出 ガス と同様 に, 、道 路 運 送 車 両 法58条 以 下 の 自動 車 検 査 証 交 付 の 要 件 と され て い る 。 (c)自 動 車NOx法 ま た,「 自動 車 か ら排 出 され る窒 素 酸 化 物 の 特 定 地 域 にお け る 総 量 の 削 減 等 に 関 す る特 別 措 置 法」(自 動 車NOx法)で は,排 出 ガ ス の う ち窒 素 酸 化 物 に限 って,よ り厳 しい規 制 を布 い て い る。 窒 素 酸 化 物 に よ る大 気 汚 染 は,昭 和48年 以 来 の 段 階 的 な規 制 強 化 に もか か わ らず ,全 く改善 の め どが 立 た な い 状 況 で あ っ た 。 特 に東 京 都 特 別 区 等 地 域 の 自動 車 排 出 ガ ス 測 定 局 にお い て は,環 境 基 準 法16条 に基 づ く環 境 基 準(0.06ppm)を 全 測 定 局 の 数 値 が 上 回 っ た年 も珍 し くな い 。 この 状 況 は,平 成4年 に 自動 車NOx法 が 施 行 さ れ て か ら多 少 は改 善 さ れ て い るが ,法7条1項 に基 づ く総 量 削 減 計 画 の 計 画 目標 を平 成13年 まで の期 間 内 に達 成 す る の は困 難 と見 られ て い る。 同法 の 目玉 は この 総 量 削 減 計 画 と と もに,10条 以 下 の 車 種 規 制 で 蠢 る。 法6条1項 とこ れ に基 づ く政 令 に よ り指 定 され た特 定 地 域 内 にお い て は,法10条 とこれ に 基 づ く同法 施 行 令3条 に よ っ て 指 定 され た 特 定 自動 車 は,法10条2項 とこ れ に基 づ く同 法 施 行 規 則 に定 め られ た排 出 基 準 を満 た さ な け れ ば な らな い,と い う の が そ の 内 容 で あ る 。特 定 地 域 に は特 別 区 の ほ か東 京 ・大 阪 周 辺 の 計138市33町2村 とい う広 汎 な 地域 が 指 定 され ,特 定 自動車 に は普通 貨物 自動 車 ・小型 貨物 自 動 車 ・大 型 バ ス ・マ イ ク ロバ ス お よ び8ナ ンバ ー の 特 殊 自動 車(乗 用 車 タ イ プ を 除 く)が 指 定 さ れ て い る。 ま た,排 出 基 準 は ガ ソ リ ン ・LPG車 とデ ィー ゼ ル 車 ,副 室式 と直 噴式 の別 な く単一 の 数値 が 設 定 され,11条 の 猶 予 期 間 は あ る が 使 用 経 過 車 に も一律 に適 用 され る点 が 従 来 の単 体 規 制 と異 な っ て い る。 とは い う もの の,手 法 と して は 従 来 の単 体 規 制 を改 善 した に と ど ま り,当 初検 討 され ていた工 場 ・事 業 所 ご との 総 量 規 制 に は 踏 み 込 め な か っ た 。 同 法13条 は,所 轄 大 臣が 事 業 者 に対 して 自動 車 使 用 の 合 理 化 に関 す る指 針 を 定 め た り指 導 ・助 言 をす る と定 め た 強 制 力 の な い規 定 に後 退 して い る。 ま た,乗 用 車 に は全 く規 制 の網 が か か っ て い な い の も問 題 で あ る 。 この 点 につ い て環 境 庁 は, 特 定 地 域 内 で 排 出 され るNOxの う ち乗 用 車 か らの 排 出量 の 占 め る 割 合 が2割 程 度 と相 対 的 に低 い こ と を理 由 に挙 げ て い る(参 考 文 献4 .99頁)。 しか し,道 路 交 通 セ ンサ ス に よ る と,自 動車 トリ ッ プ数 の 目的 別 構 成 比 で は,出 勤 ・登 校 ・帰 宅 ・家 事 買 物 を 目 的 と した 自動 車 利 用 の割 合 が 年 を追 って 増 加 して い る 。特 に最 近 のRV車 な ど大 型 の デ ィー ゼ ル 乗 用 車 の 急 増 がNOx削 減 の 阻害 要 因 と な って い る こ ≒ に鑑 み れ ば,乗 用 車 を規 制 対 象 か ら外 した こ とが 政 策 の 効 果 を減 殺 し て い る と考 え られ る。 さ ら に,特 定 地 域 の 外 か ら流 入 す る交 通 につ い て 全 く規 制 の手 段 を用 意 して い ない 点 も,不 充 分 で あ る 。 検 討 段 階 で は ス テ ッ カー 方 式(特 定 地 域 内 にお い て は,基 準 に適 合 した 自動 車 の み に 与 え られ るス テ ッ カー の 添 付 を義務 づ け る)に よ る 走 行 規 制 も提 案 され たが,採 用 され なか っ た 。 環 境 庁 は,流 入 交 通 に よるNOx排 出 の 割 合 が1、2割 程 度 と低 い こ と に並 ん で,監 視 の 必 要 を 生 じる た め に規 制 の 実 効 性 確 保 に は 人 手 と費 用 の 負 担 が 大 き くな る こ と を理 由 と して挙 げ て い る
(参 考 文 献4.99頁)。 しか し,こ れ で は特 定 の 地 域 の 外 で 車 両 登 録 を行 い さ えす れ ば,基 準 に適 合 しな い 自動 車 で も 自由 に特 定 地 域 内 を走 行 で き る とい う法 の 抜 け穴 を用 意 す る結 果 に もな り, 規 制 の実 効 性 確 保 には 却 っ てマ イ ナ ス と な る こ と も懸 念 され る 。 な お,乗 用 車 ・流 入 交 通 と も 「自動 車 排 出 窒 素 酸 化 物 の 総 量 の削 減 に 関 す る基 本 方 針 」(総 理 府 告 示)で は啓 発 活 動 の 対 象 と され て い る が,少 な く と も大 型 デ ィ ー ゼ ル乗 用 車 の 増 加 状 況 を見 るか ぎ り,こ の啓 発 の 効 果 は疑 問 で あ る。 (2)燃 料 規 制 平 成7年 の大 気 汚 染 防 止 法 改 正 に よ り19条 の2が 新 設 され た の を受 け て,同 年10月 「自動 車 の 燃 料 の 性 状 に関 す る許 容 限 度 及 び 自動 車 の 燃 料 に 含 ま れ る 物 質 の 量 の 許 容 限 度 」(環 境 庁 告 示) が 定 め ら れ た 。 こ れ は,ガ ソ リ ン に 含 まれ る 鉛 ・硫 黄 ・ベ ンゼ ン ・メ チ ル ター シ ャ リー ブ チ ル エ ー テ ル と軽 油 に 含 まれ る硫 黄 ・セ タ ン指 数90パ ー セ ン ト留 出 温 度 に 関 して,数 値 で 許 容 限 度 を 示 した もの で あ る 。 この う ち軽 油 中 の 鉛 に つ い て は,平 成9年3月 に規 制 が 強 化 され て い る 。 燃 料 規 制 は,自 動 車1台 あ た りの排 出 ガ ス を抑 制 す る とい う発 想 に立 つ 点 で,従 来 の 単 体 規 制 に連 な る もの と言 え よ う。 以 上 の よ う に様 々 な問 躑 まあ る もの の,わ が 国 の単 体 規 制 は 漸 次 強化 され,自 動 車 公 害 防止 に 一 定 の 成 果 を あ げ て き た。 しか し,自 動 車 の 走 行 量 自体 が 規 制 の 効 果 を上 回 る勢 い で 伸 び て い る 現 状 の も と で は,単 体 規 制 の み壷こ頼 っ て い て は改 善 は お ぼ つ か な い 。 (3)交 通 規 制 道 路 交 通 法(道 交 法)110条2で は,大 気 汚 染 防 止 法21条1項 ・同法23条2項 ・騒:音規 制 法17 条1項 ・振 動 規 制 法 ユ6条1項 に基 づ く都 道 府 県 知 事 の 「要 請 が あ っ た場 合 そ の他 交 通 公 害 が 発 生 した こ と を知 っ た 場 合 」 都 道 府 県 公 安 委 員 会 が 道 交 法4条1項 の 交 通 規 制 を行 う 旨 規 定 して い る。 この 交 通 規 制 に は 車 両 の 通 行 の禁 止 ま で含 まれ る こ とか ら,公 安 委 員 会 が 道 路 公 害 防 止 に 関 して 有 す る権 限 は か な り強 大 な もの と考 え ら れ る。 と こ ろ が 現 実 に ぽ都 道 府 県 知 事 の 要 請 は ほ と ん ど な く,住 民 の 訴 え を受 け て公 安 委 員 会 が 自主 的 に 交 通 規 制 を布 く場 合 で も比 較 的 緩 や か な規 制 に と ど ま っ て い る 。 多 く用 い られ る の は,騒 音 ・振 動 対 策 と して の 速 度 規 制 や住 宅 地 で の 大 型 車 両 の通 行 禁 止 で あ る。 他 に は,国 道43号 線 で 片 側4車 線 の う ち外 寄 りの2車 線 を夜 間通 行 禁 止 と した例 や,環 状7号 線 ・8号 線 で トラ ッ クな どの 大 型 車 両 に対 し,週 末 の 夜 間 の み 通 行 を禁 止 して い る 例 が あ る 。 騒 音 に関 して は 「騒 音 規 制 法 第17条 第1項 の規 定 に基 づ く指 定 地 域 内 に お け る 自動 車 騒 音 の 限 度 を定 め る命 令 」(総 理 府 ・ 厚 生 省 令)に お い て,デ シベ ル数 を用 い て 具 体 的 に要 請 限 度 が 定 め られ て い る の で,比 較 的 規 制 を行 い や す い と考 え られ る。 振 動 規 制 法16条 に基 づ く同法 施 行 規 則12条 も同 様 で あ る 。 そ れ で も, 要 請 限 度 を超 え る 地域 にお い て も交 通 規 制 に及 ぶ 割 合 は低 い(参 考 文 献ll.9頁)。 現 在 の 運 用 は,騒 音 ・振 動 に よる 沿 道 住 民 の 被 害 を軽 減 す る と い う観 点 か ら は一 定 の 効 果 を有 して い る が,地 域 全 体 の 大 気 汚 染 対 策 と して はあ ま り役 立 た な い 。 交 通 規 制 の 手 法 を用 い て 自然 環 境 ・生 活 環 境 の保 全 を図 る に は,よ り積 極 的 な運 用 が 必 要 で あ る 。 し か し一 方 で,厳 しい 交 通 規 制 を多 用 す れ ば社 会 ・経 済 に及 ぼ す 負 の 影 響 は大 き くな ら ざ る を得 な い 。 そ こ で,新 しい手 法 が と られ る よ う に な って き た。 こ れ に は,自 動 車 の利 用 態 様 に 環 境 保 全 の 観 点 か ら初 め て規 制 をか け た ス パ イ ク タ イ ヤ の 使 用 禁 止 や ア イ ド リ ン グ禁 止,交 通 需 要 マ ネ ジ メ
ン ト(TDM)や マ ル チ モ ー ダ ル の 考 え 方 に基 づ き公 共 交 通 機 関 の 利 用 を促 進 す る 誘 導 手 法,生 活 道 路 に お け る交 通 静 穏 化 対 策 な どが 含 ま れ る。 な お,沿 道 対 策 と して 「幹 線 道 路 の 沿 道 の 整 備 に 関 す る法 律 」(沿 道 法)に 基 づ く各 種 の 施 策 が行 わ れ て い るが,自 動 車 公 害 の発 生 そ の も の で は な くこ れ に起 因 す る 沿 道 騒 音 被 害 を軽 減 す る こ と を 目 的 と して お り視 点 を異 にす る の で ,本 稿 で は取 り上 げ な い 。 (4)ス パ イ ク タ イ ヤ の使 用 禁 止 平 成2年 に公 布 され た スパ イ ク タ イ ヤ粉 じん の発 生 の 防 止 に 関 す る法 律 は,7条 で 舗 装 道 路 の 「積 雪 また は凍 結 の状 態 に な い 部 分 」 に お け る ス パ イ ク タ イ ヤ の 使 用 を禁 じる と共 に ,8条 で 違 反 者 に10万 円以 下 の 罰 金 を科 して い る。 自動 車 の 利 用 態 様 に は様 々 の規 制 が 設 け られ て い る が,道 路 交 通 法 をは じめ 従 来 型 の 規 制 は ほ とん ど 「危 険 防 止 交 通 の安 全 と 円滑 」(道 交 法1条)と い う観 点 に立 つ もの で あ る。 これ に対 し て 本 法 は,専 ら環 境 保 全 を 目的 と して 自動 車 利 用 の 態 様 に規 制 を課 した 点 で 画 期 的 で あ る。 (5)ア イ ド リン グ の 禁 止 兵 庫 県 が 平 成7年 に公 布 した 「環 境 の保 全 と創 造 に関 す る条 例 」 は,そ の72条2項 で停 車 中 な ど不 必 要 な場 面 で は原 動 機iを停 止 す る こ と を 命 じる と共 に,164条2号 で違 反 者 は10万 円 以 下 の 罰 金 に処 す る と規 定 して い る(施 行 は平 成8年7月)。 厂条 例 別 紙 ・ア イ ドリ ン グ に関 す る罰 則 適 用 の 具体 例 」 に よ る と,こ の規 定 は,原 動 機 を保 冷 車 等 の 動 力 と して使 用 す る場 合 を除 き,人 が 乗 車 して い な い 時 の ア イ ドリ ン グ に適 用 す る こ とを想 定 した もの で あ る。 す な わ ち,全 く無 意 味 な ア イ ドリ ング は も ち ろ ん,車 内 環 境 を快 適 に保 っ て お くた め にエ ア コ ンの 動 力 源 と して 原 動 機 を作 動 させ る場 合 に も罰 則 は適 用 され る(た だ し,1997年 末 日現 在,罰 則 の 適 用 例 は まだ な い。)。 ア イ ドリ ン グ禁 止 は,ス パ イ ク タ イヤ の 使 用 禁 止 よ り明確 に,利 用 態 様 の 規 制 とい う性 格 を示 して い る 。利 用 態 様 の 規 制 は,平 成2年 の 大 気 汚 染 防止 法 改 正 に際 して 国民 の 努 力 義 務 に 関 す る 条 項 が 新 設 さ れ た こ と に も対 応 し て い る。 新 設 され た 法21条 の2は,以 下 の よ う に規 定 す る。 「何 人 も 自動 車 を 運 転 し ,若 し くは使 用 し,又 は交 通 機 関 を利 用 す る に 当 た っ て は,自 動 車 排 出 ガ ス が 抑 制 され る よ う に努 め な け れ ば な ら な い 。」 また,特 殊 自動 車 ・緊急 自動 車 に加 え て 乗 合 自動 車 を72条 の適 用 外 と して い る こ と も注 目 され る 。 そ の 理 由 は,上 掲 条 例 別 紙 に よ る と,公 共 交 通 機 関 た る乗 合 バ ス に は,停 車 中 もエ アコ ンを 作 動 させ て 車 内 の 快 適 性 を保 つ 必 要 が あ る とい う こ とで あ る。 乗 合 バ ス の 公 共 性 が環 境 保 全 の そ れ に勝 る,と い うわ け で は な い 。 マ イ カ ー の 使 用 自粛 に伴 う公 共 交 通 機 関 の 利 用 促 進 策 の 一 環 と して,両 者 に 求 め ら九 る快 適 性 に もお のず と差 が 生 じる の は当 然 で あ ろ う。 そ れ で も,ア イ ドリ ン グ ス トッ プ機 能 つ きの バ ス の導 入 が 各 地 で 進 んで い る 。 た だ,暖 気 運 転(運 転 前 に エ ンジ ン を暖 め るた め の ア イ ドリ ン グ)が 規 制 対 象 か ら外 れ て い る こ と に は疑 問 が 残 る 。 諸 外 国 の例 で は,運 転 の前後 を問わず ユ分 ない し5分 を超 えるアイ ドリン グ を 禁 止 す る 例 も見 ら れ る(ス ウ ェ ー デ ン ・デ ンマ ー ク ・ニ ュ ー ヨー ク州 な ど)。 上掲 条 例 別 紙 は,「 暖 気 運 転 は 自動 車 の 機 能 保 持 の た め に必 要 な行 為 とい う一 面 もあ り」 と説 明 す るが,レ ー ス の よ う に エ ン ジ ンの全 開 で ス タ ー トす る な ら と もか く,一 般道路 の走行 に5分 以上の暖気 を要 す る 車 両 が あ るの だ ろ うか 。 あ る とす れ ば そ の エ ン ジ ンの 適 合 性 こそ が 問 題 と され る べ きで あ ろ う。
また,車 内 に人 が い る場 合 に は カ ー エ ア コ ンの 動 力 源 と して 原 動 機 を作 動 させ る こ とが 認 め ら れ て い るの も,無 理 か らぬ 面 もあ る が 不 充 分 で あ る。 神 奈 川 県 で は,運 転 手 が 仮 眠 を要 す る場 合 に は 電 気 毛 布 を配 付 す る な ど して ア イ ド リ ン グ を止 め させ る よ う,パ ンフ レ ッ トな どで 各 事 業 所 に呼 び か け てい る(神 奈 川 県 環 境 部 大 気 保 全 課 「自動 車 利 用 合 理 化 マ ニ ュ ア ル 」)。罰 則 を適 用 す る の は 酷 で も,努 力 義務 や 啓 発 の対 象 に はす べ きで あ ろ う。 な お,上 述 の よ う にNOx法 で 見 送 られ た事 業 所 ご と の総 量 規 制 の 手 法 を,当 該 兵 庫 県 条 例 が と り入 れ て い る こ と を付 記 して お く。 こ れ は 罰 則 な しの努 力 義 務 に と ど ま る が(68条) ,業 界 の 合 意 が 得 られ ず,1997年 末 日現 在,規 制 対 象 とな る事 業 所 は 未 だ 指 定 さ れ て い ない 。 以 上 の 単 体 規 制,交 通 規 制 とア イ ドリ ン グ禁 止 が,自 動 車 公 害 に対 す る現 行 の 規 制 的 手 法 で あ る。 (6)モ ー ダ ル シ フ ト 運 輸 省 は 平 成6年 以 来,モ ー ダ ル シ フ トを推 進 して い る 。 モ ー ダ ル シ フ トと は,主 と して幹 線 貨 物 輸 送 を トラ ック か ら鉄 道 ま た は海 運 へ 転 換 し,ト ラ ッ ク との 複 合 一 貫 輸 送 を推 進 す る こ とを い う。 モ ー ダル シ フ トの 背 景 と して運 輸 省 は,環 境 保 全 と並 ん で トラ ック輸 送 の 労 働 力 不 足 ,道 路 混 雑 に よる 輸 送 効 率 の 低 下 を挙 げ て い る(参 考 文 献3.5頁)。 さ らに,モ ー ダ ル シ フ トの利 点 と して は,こ れ らの ほ か にエ ネ ル ギ ー の 節 約,夜 間運 転 業 務 の 削 減 に よる 交 通 事 故 防止 や 労 働 力 確 保,輸 送 手 段 の 多 様 化 に よ る輸 送 の 安 定 性 確 保 と コ ス トダ ウ ン を挙 げ る(参 考 文 献3.6∼ 7頁)。 モ ー ダ ル シ フ トを推 進 す る手 段 と して は,コ ンテ ナ ・ピ ギ ー バ ッ ク車 ・RORO船 ・一 貫 パ レ チ ゼ ー シ ョ ン シス テ ム な ど貨 物 の 積 み 卸 し を簡 便 化 す る工 夫 と,積 み 卸 し ・荷 捌 き施 設 の整 備 ,さ ら に オ ン レー ル ト レー ラ ー ・超 高 速 貨 物 船 テ ク ノ ス ーパ ー ライ ナ ー な ど新 技 術 の 導 入 が挙 げ ら れ て い る。 こ れ らは,ド ア ・ツー ・ ドアが 強 み の トラ ッ ク輸 送 に対 抗 しう る利 便 性 を鉄 道 ・船 舶 輸 送 に付 加 し よ う とす る試 み と して 評 価 で き る。 しか し,事 業 の 目的 が 労 働 力確 保 や 輸 送 効 率 を含 み,さ らに そ の 利 点 と して コス トダ ウ ン を挙 げ る な ど,荷 主 ・輸 送 業 者 の双 方 に と っ て利 便1生 ・経 済 性 を エ サ に し た誘 導 型 の 手 法 に と ど ま っ て い る。 す な わ ち,自 動 車 輸 送 へ の 過 度 の 依 存 に よ る環 境 へ の負 荷 ・社 会 的悪 影 響 を 防止 し よ う とす る 視 点 は,相 対 的 に弱 め られ て い る の で あ る 。 この よ う な視 点 の あ い ま い さが,政 策 の 効 果 を減 殺 す る場 合 もあ る。 例 え ば ,モ ー ダルシ フ ト の推 進 を政 策 と して 打 ち 出 した の と同 時 期 の 平 成5年ll月 に運 輸 省 は,輸 送 の効 率 化 と トラ ッ ク 運 転 手 不 足 に対 応 す るた め と して,道 路 運 送 車 両 法40条3∼5号 に 基 づ く保 安 基 準4条 の改 正 に よ り車 両 総 重 量 あ制 限 を緩 和 した 。 平 成6年 以 来 タ ン ク ロ ー リー に よ る石 油 の輸 送価 格 が 下 が り, 内 航 船 か ら タ ンク ロ ー リ ーへ と荷 が 流 れ て,タ ンク ロ ー リ ー に よる 輸 送 シ ェ ア が 上 昇 して い る の は,こ の結 果 と考 え ら れ る(参 考 文 献14,15参 照)。 運 輸 省 の 総 花 的 な政 策 に よ り,モ ー ダ ル シ フ トに逆 行 す る事 態 を招 い た とい え るで あ ろ う。 同様 の こ と は,自 動 車 交 通 に 関 す る他 の規 制 緩 和 に も当 て は ま る 。 現 在 進 め られ て い る有 人 セ ル フサ ー ビス に よ る給 油 取 扱 の導 入 な ど も,安 全 面 の 懸 念 もさ る こ とな が ら,ト ラ ッ ク に よる輸 送 コス トの 引 下 げ とそ れ に伴 う トラ ッ ク輸 送 の シ ェ ア め 拡 大 を招 くの で は な い か 。 また,旧 国鉄 操 車 場 の整 理 ・売 却,貨 物 路 線 の廃 線 区 間 や 内 航 船 の船 腹 調 整 規 制 な ど,モ ー ダ ル シ フ トの 受 け 皿 と な るべ き鉄 道 ・海 運 の 側 の体 制 も充 分 とは い え な い 。
な お,平 成7年 には 建 設 省 と共 同 で マ ル チ モ ー ダル 推 進 協 議 会 が組 織 され,貨 物 輸 送 にお け る モ ー ダ ル シ フ トと旅 客 輸 送 にお け る公 共 李 通 機 関 の利 用 促 進 とが 並 列 的 に扱 わ れ て い る 。 (7)旅 客 輸 送 に お け る マ ル チ モ ー ダ ル化 現 在,東 京 ・大 阪 ・名 古 屋 な ど わ が 国 の 主 要 都 市 に は 例 外 な く地 下 鉄 路 線 が 通 っ てお り,そ の 営 業 キ ロ数 は500キ ロ を超 え,ま た 輸 送 人 員 も50億 人 に 達 して 順 調 に右 肩 上 りで あ る 。一世 帯あ た りの 自家 用 車 の 保 有 台 数 が都 市 部 ほ ど低 い の も,公 共 交 通 機 関 の 整 備 状 況 を反 映 し た も の で あ ろ う。 さ らに,地 下 鉄 の延 伸 や新 線 の 開設 事 業 も進 ん で お り,都 市内交通 に占める公 共交通機 関 の役 割 が 重 視 され て い る。 た だ,地 下 鉄 の事 業 拡 大 に は莫 大 な労 力 と予 算 が か か り,経 済 活動 が活発で建物が密 集 してい る都 市 部 ほ ど難 事 業 と な るの が 問題 で あ る。 現 在 建 設 中 の都 営 地 下 鉄12号 線 も交 通 渋 滞 に阻 ま れ る な ど して 工 事 に手 間 取 り,当 初 予 定 され て い た 建 設 費(約6千8百 億 円)を 大 幅 に上 回 る見 込 み との こ とで あ る 。逆 に,地 方 都 市 で は充 分 な 需 要 が 確 保 で きず ,建 設 費の償 還が 自治体財 政 を 圧 迫 す る例 も見 られ る 。 ま た,わ が 国 の路 面 電 車 は 自動 車 交 通 の 阻 害 要 因 と見 な され た 結 果 ,現 在20路 線 にまで減 少 し て しま っ た 。 ヨ ー ロ ッパ な どの 諸 外 国 で は全 線 復 活 の例 も見 られ るが ,わ が国の道路事情 か ら し て,都 市 部 で 新 た に軌 道 を設 け れ ば交 通 渋 滞 に拍 車 を か け る の は 自明 と考 え られ て きた。 最 近 で は,建 設 中 の 平 成9年 度 重 点 施 策 に路 面 電 車 の 走 行 で きる 路 面 等 の 整 備 を行 う 厂路 面 電 車 走 行 空 間改 善 事 業 」 が 盛 り込 まれ,延 伸 計 画 に 国 の補 助 金 を投 入 す る な ど,少 しずつ見直 しの動 きも出 て い る が,路 面 電 車 が 都 市 交 通 に 大 き な役 割 を果 たせ る か 否 か は今 後 の 展 開 次 第 で あ る。 モ ノ レー ル な どの新 交 通 シ ス テ ム も各 地 で漸 次 導 入 さ れ て は い る が,地 下 鉄 ほ どで は な い に し て もや は り設 備 投 資 を要 す る し,大 地 震 な どの 災 害 時 の 安 全 性 に対 す る 懸念 もあ り,ま だ まだ 一 般 的 とは い え な い 。 これ らに対 して バ ス は,比 較 的 簡 単 に低 廉 な予 算 で事 業 拡 大 や サ ー ビス の改 善 が 図 れ る とあ っ て,わ が 国 にお け る注 目度 は 大 き い 。深 夜 バ ス の運 行 ,バ スロケー シ ョンシステムや シェル ター つ き停 留 所 に よ る待 ち 時 間 の 快 適 性 ア ッ プ,低 床(超 低 床)・ 広 ドア車両 に よる乗降 の際の安全 性 の 確 保 と車 イス ・ベ ビー カ ーへ の 配 慮 な どが 進 め ら れ て い る 。 特 に 低 床(超 低 床)・ 広 ドア化 は,交 通 弱 者 で あ る老 人 ・こ ど も ・障 害 者 に 目 を 向 け た改 善 で あ り,公 共交通機 関 としての役 割 に見 あ った 施 策 とい え よ う。 しか し,一 般 の利 用 者 に とっ て 都 市 部 に お け るバ ス 利 用 の 最 大 の 障 害 は,交 通 渋 滞 の影 響 で運 行 の 定 時 性 が 確 保 で き な い こ とで あ る。 道 路 交 通 法22条2項 ・20条 の2に 基 づ くバ ス 専 用 レー ン ・優洗 レー ン も増 え て きて は い る よ う だ が ,通 常 は片側3車 線以上 の道路 に しか設 け られ ない の で 限 界 が あ る。 また,片 側3車 線 以 上 で も一 般 車 両 に よ る 渋 滞 が 激 しい 道 路 で は ,道 路 管 理 者 もバ ス 専 用 レ ー ンの導 入 に躊 躇 す る で あ ろ う 。 以 上 の よ う に,自 動 車 の代 替 手 段 と して の公 共 交 通 機 関 の充 実 は重 要 な政 策 で あ る し,ア ル コ ロ ジ ー や ノ ー カ ー デ イ な どの 単 な る啓 発 手 法 よ りは効 果 も上 が りそ う で あ る 。 と ころ が,公 共 交 通 機 関 の 問 題 点 を挙 げ て い く と,自 動 車 交 通 そ の もの が 自動 車 利 用 か ら公 共 交 通 機 関 へ の 交 通 行 動 の転 換 を妨 げ て い る とい うジ レ ン マ に 気 づ か され る 。 地 下 鉄 建 設 ・路 面 電 車 の 軌 道 の 新 設 ・バ ス の 定 時 運 行 な ど を困 難 に して い る の は ,上 述 の とお り自動車交通 量の多 さに よる ところが大 き い 。 こ れ は,公 共 交 通 機 関 の利 用 促 進 が ,モ ー ダルシフ ト同様 の利 便性 ・快適性 に よる誘導手法
に と ど ま っ て い る た め と 考 え ら れ る 。 (8)生 活 進 路 に お け る 交 通 静 穏 化 対 策 自動 車 交 通 の 発 展 は,「 道 」 とい う もの の 機 能 に 大 き な変 化 を も た ら し た。 元 来 「道 」 の も っ て い た 多様 な機 能(コ ミュ ニ ケ ー シ ョンの 広 場 と して の道 ・遊 び場 と して の 道 ・休 息 の場 と して の 道 な ど)を 失 わせ,た だ 移 動 ・輸 送 の ため の施 設 と い う機 能 だ け を肥 大 化 させ た 。 自動 車 が 早 く快 適 に 走 れ る こ とが 最 優 先 さ れ,走 行 者 そ の他 の 生 活 者 は 片 隅 に追 い や られ て な お 危 険 と背 中 合 わせ で あ る(参 考 文 献6,7参 照)。 こ の よ う な状 況 は幹 線 道 路 に限 らず,幅 員 の 狭 い 生 活 道 路 で も 同様 で あ る 。 幅4メ ー トル に 満 た な い道 路 まで が 抜 け道 と して 使 わ れ,歩 道 ・ガ ー ド レー ル を設 置 す る空 間 的 余 裕 の な い道 路 は, ガー ドレー ル に守 られ た幹 線 道 路 の歩 道 を歩 くよ り も危 険 で す らあ る。 そ こ で,近 年 ハ ン プ ・シ ケ イ ン ・ク ラ ン ク な ど を利 用 した 交 通 静 穏 化 対 策 が 地 域 単 位 で 進 め ら れ て きたが,ま だ ま だ小 規 模 な も の に と ど ま っ て い た 。 こ れ に対 して,平 成8年 度 か ら建 設 省 と 警 察 庁 が 第 六 次 交 通 安 全 施 設 等 五 力年 計 画 の 一 環 と して 進 め て い る コ ミュ ニ テ ィ ゾ ー ン事 業 は, 全 国300個 所 とい う比 較 的 大 規 模 な展 開 で あ る 。 ま た,わ が 国 で は これ ま で 「線 」 で 捉 え ら れ が ち で あ っ た道 路 政 策 を,生 活 空 間 とい う 「面」 で 捉 え た とい う発 想 も画 期 的 で あ ろ う。 さ ら に,地 域 に よ って は通 過 交 通 を制 限 す る ため に 随 所 に 可動 式 の 車 止 め ポ ー ル を設 置 す る な どの新 しい工 夫 も見 られ る。 海 外 で は,都 市 計 画 の 段 階 か ら幹 線 道 路 と生 活 道 路 の 接 続 を複 雑 に して抜 け道 利 用 を 阻止 す る例 もあ り(参 考 文 献8参 照),今 後 の 参 考 に値 す る。 交通 静 穏 化 対 策 で注 目す べ き点 は,自 動 車 の快 適 性 とス ピー ドをあ る程 度 犠 牲 にす る とい う発 想 の転 換 が 見 られ る こ とで あ る 。 た だ,こ の政 策 は あ くま で も歩 車 共 存 と い う理 念 に基 づ い た も の で あ り,そ こ に 限界 が あ る。 歩 行 者 と自動 車 とで は ス ピ ー ドに も重 量 に もケ タ違 い の差 が あ る た め に,そ の 持 つ 破 壊 力 が と て も比 較 に耐 え る もの で は な い こ とは 周 知 の とお りで あ る。 一 説 に よ る と,両 者 が 安 全 に 共 存 す る た め に は,自 動 車 は 時 速0.1キ ロ以 下 で 走 ら な け れ ば な らな い と い う(参 考 文 献6.37∼38頁,同7.160∼161頁)。 した が っ て,歩 車 共 存 は本 来 共 存 可 能 な 性 質 の もの 同士 を無 理 や り同 一 平 面 上 に 置 こ う とす る 無 媒 な 試 み で あ る,と い う批 判 も成 り立 つ 。 確 か に,運 転 者 の 最 低 限 の 注 意 力 とモ ラル に対 す る信 頼 に 基 づ い た施 策 で あ る こ とは 否 め な い 。 幅 の 狭 い 雪 道 で ス リ ップ した 自動 車 と民 家 の 壁 の 問 に挾 まれ て,登 校 中 の小 学 生 が 圧 死 した とい う よ う な ニ ュ ー ス に接 す る た び に,歩 車 共 存 の 限界 を思 い 知 ら さ れ る。 ガ ー ドレー ル に守 られ た歩 道 を設 置 す る こ とが で き な い ほ ど幅 の狭 い道 路 に ま で,必 ず 四輪 の 自動 車 を通 さな け れ ば な らな い の だ ろ うか 。 あ る い は 両 方 向 の 車 線 を設 置 し な け れ ば な ら な い の だ ろ うか 。 現 在 の 生 活 道 路 対 策 は,な お 「道 」 の もつ 多 様 な 機 能 の うち 自動 車 に よ る 移 動 ・輸 送 の 施 設 と して の機 能 を偏 重 す る と い う前 提 か ら出 発 し て い る,と 言 わ ざ る を得 な い 。 3.自 動 車 利 用 の デ ィス イ ン セ ン テ ィ ブ 現 行 の 政 策 が,単 体 規 制 と他 の 輸 送 ・移 動 手 段 の 利 用 へ の イ ンセ ンテ ィブ を与 え る こ と を 中心 と して い る こ と を述 べ た が,そ れ だ け に頼 っ て い て は現 在 の過 度 の 自動 車 依 存 に歯 止 め を掛 け る こ とは で き ない の も上 述 の とお りで あ る。 なぜ な ら,ド ア ・ッ ー ・ドアの 利 便 性 や 密 室 が 保 た れ る車 内環 境 の 快 適 性 は 自動 車 固有 の もの で あ り,ど れ ほ ど工 夫 を重 ね よ う と鉄 道 ・船 舶 輸 送 や 公 共 交 通 機 関 が 太 刀 打 ち で き な い 要 素 と して,利 用 者 に対 す る 強 い 誘 因 を発 揮 す る か ら で あ る 。
そ こ に,自 動 車 の 所 持 ・利 用 自体 を規 制 す る手 法 や,自 動 車 の 取 得 に莫 大 な税 金 をか け る な ど の 一 見 過 激 な主 張 が展 開 さ れ る 余 地 も あ る 。 また 既 存 の 手 法 を用 い て も,上 述 の交 通規制 を最大 限 に 活 用 す れ ば,一 定 地 域 の 自動 車 交 通 をす べ て ス トッ プ させ る こ と さ え可 能 で あ る。 しか し両 者 の あ い だ に は,現 行 ほ ど ソ フ トで も な いが 包括 的 な規 制 ほ どハ ー ドで もない 中 間 的 な政 策 が 存 在 し う るの で は な い か 。 そ の ひ とつ と して 自動 車利 用 の デ ィス イ ンセ ンテ ィ ブ を高 め る こ とを提 案 した い 。 高 月研 究 に よ る と,都 市 部 に お け る 自家 用 自動 車利 用 者 の 約60パ ー セ ン トが 自家 用 車 を不 可 欠 品 と認 識 して い る。 こ れ は 冷 蔵 庫 や洗 濯 機 に比 べ る と は る か に低 いが,テ レ ビや ク ー ラ ー よ り高 い 数 字 で あ り,自 動 車 の必 要 度 ・生 活 へ の 密 着 度 の 高 さ を裏 付 け て い る 。 一 方 ,自 家用車 を不可 欠 品 と認 識 す る利 用 者(ア ンケ ー トに 「新 た に望 ま しい 」 と答 え た人 の半 数 を含 む)以 外 の 利 用 者 が そ の利 用 をや め る こ とに よ っ て削 減 され る廃 棄 物 ・エ ネ ル ギ ー の 量 は,他 の 家 電 製 品等 と比 較 し た場 合,共 に群 を抜 い て い る(参 考 文 献8参 照)。 さ ら に,自 家 用 車 を不 可 欠 晶 と認 識 す る利 用 者 の うち に も,必 要 に迫 られ て 自動車 を利 用 す る 場 合 と,そ うで ない 場 合 とが あ る。 こ れ を分 け て考 え れ ば,削 減 され る廃 棄 物 ・エ ネル ギ ー の 量 は よ り大 き くな るで あ ろ う 。加 えて,排 出 ガ ス ・騒 音 に よ る被 害 も当 然 減 少 す る し,事 故 の危 険 も相 対 的 に減 じる な ど,不 要 不 急 の 自動 車 利 用 を抑 制 す る こ とに よ る環境 保 全 の効 果 は ,自 然環 境 の面 で も生 活 環 境 の 面 で も著 しい 。 ζ の効 果 を得 る 手段 と して ふ さわ しい もの の ひ とつ に,自 動 車 利 用 の デ ィス イ ンセ ンテ ィ ブ を 高 め る こ とが 挙 げ られ る と考 え る(参 考 文 献10.198頁 は懐 疑 的)。 自動 車 利 用 が ど う して も必 要 な もの な らば,多 少 の不 便 ・不 経 済 が あ っ て も人 は 自動 車 を利 用 す る で あ ろ うか ら,デ ィス イ ン セ ン テ ィブ は 必 要 な 自動 車 利 用 を妨 げ な い 。 他 方,自 動 車 の 方 が 多 少 便 利 で快 適 で 経 済 的 だ か ら とい う程 度 の 動 機 な らば,そ の利 便 性 ・快 適 性 ・経 済 性 を 相 殺 す る程 度 の デ ィス イ ンセ ンテ ィ ブ を設 定 す れ ば,容 易 に 自動 車 利 用 を抑 制 す る こ とが で き る か らで あ る。 (1)自 然 発 生 的 なデ ィス イ ン セ ン テ ィ ブ 都 市 部 に お け る 自家 用 車 の所 持 率 が低 い こ と は既 に述 べ た が,こ れ は公 共 交 通 機 関 が 整 備 され て お り便 利 だ か ら とい う理 由 に よ る ば か りで も な い。 運 輸 経 済研 究 セ ン タ ーが 実 施 した地 下 鉄 利 用 者 か らの ア ンケ ー トに よる と,地 下 鉄 を利 用 す る理 由 の 多 くは,自 動 車 に よ る移 動 の 不 便 さ に つ な が っ て お り,道 路 混 雑 の 激 化 ・こ れ に伴 い 目的 地 到 着 時 間 が不 正確 で 時 間が か か る こ と ・駐 車 場 の確 保 の 困難 さ な どが 挙 げ られ る(参 考 文 献13.19頁)。 こ の 点 につ き,交 通 渋 滞 解 消 を 目的 と した 道 路 整 備 に よ っ て潜 在 的 な 道 路 需 要 が 表 面 化 し,交 通 量 が 増 加 して渋 滞 解 消 の 効 果 よ りも大 気 汚 染 な どの 逆 効 果 が 大 き く生 じる こ と もあ る,と い う 指 摘 が 従 来 か らな され て い る(参 考 文 献5.210∼211頁)。 民 意 の 動 向 と して も,地 方 では鉄道 路 線 の廃 線 な どの影 響 な ど もあ り道 路 新 設 の 要 請 が ま だ ま だ多 い よ うだ が ,逆 に都市部 と都 市周 辺 地 域 で は 道 路 建 設 の反 対 運 動 が 盛 ん に な っ て い る 点 に注 目す べ きで あ る 。 従 来 は道 路 の 反 対 運 動 とい え ば,拡 幅 ・伸 長 に よ っ て 立 ち退 き を迫 られ る住 民 と,騒 音 ・振 動 ・大 気 汚 染 等 に よる被 害 を直 接 に 受 け る沿 道 住 民 が 主 役 で あ っ た。 自然 環:境保 全 を 目的 とす る 運 動 は,希 少 な動 植 物 の生 息 地 や 生 態 系 を保 護 す る とい う観 点 か らい わ ゆ る 環:境保 護 団体 に よ っ て行 な わ れ,し ば しば 開発 を望 む地 元 住 民 と の対 立 の 構 図 を含 んで い た。 こ の う ち沿 道 被 害 につ い て は近 年,西 淀 川 公 害 訴 訟(2次 ∼4次)判 決(大 阪 地 判 平 成7年7
月5日,判 時1538号17頁)と 国 道43号 線 訴 訟 判 決(最 二 小 判 平 成7年7月7日,判 時1544号18 頁)に お い て,道 路 の 管 理 瑕 疵 に基 づ く国家 賠 償 責 任 が 認 め られ,現 在 継 続 中 の 裁 判 も複 数 あ る (国 道43号 線 訴 訟 は 平 成8年 に再 提 訴)。 なか で も平 成8年 に提 訴 さ れ た東 京 大 気 汚 染 公 害 訴 訟 は, 自動 車 メ ー カ ー を被 告 に加 え る な ど活 発 な動 きを見 せ て い る 。 とこ ろ が 現 在 で は従 来 型 の ほ か に,沿 道 に限 らな い 地 域 住 民 に よ る生 活 環 境 の 保 全 を 目 的 と し た 運 動 が 展 開 され て い る 。 圏 央 道 の建 設 反 対 運 動 な どは 自然 環 境 保 全 も月 的 の ひ とつ と して掲 げ て はい る が,住 民 は 自然 環 境 も住 環 境 の ひ とつ と捉 え て い る し,む しろ地域 の交通量 の増加 に伴 う全 般 的 な生 活 環 境 の 悪 化 に 焦 点 を 当 て て 運 動 して い る 団 体 が 多 い よ う に見 受 け られ る。 こ の よ うな 事 例 は,ど こか らで もア ク セ ス 可 能 とい う特 性 の 故 に,高 速 道 路 か ら市 町 村 道 ま で 程 度 の差 は あ る もの の 周辺 住 民 こ そ が最 大 の 受 益 者 と考 え ら れ が ち で あ った 道 路 が,都 市 部 の 住 民 に とっ て は 一 種 の迷 惑 施 設 と 目 さ れ て い る とい う事 実 を示 して い る。 また,古 くか らの 駅 前 商 店 街 な どの 中 には,自 動 車 利 用 を想 定 して お らず 道 幅 が 狭 い た め に天 然 の トラ ンジ ッ トモ ー ル を形 成 して い る例 が 少 な くな い 。 商 品 の搬 入 に は不 便 で あ ろ うが,買 物 客 の 自動 車 利 用 を抑 制 し,徒 歩 ・自転 車 に よる 落 ち着 い た 環 境 で の 買 物 を促 す 効 果 に注 目す る こ とが で き る。 さ らに,鎌 倉 市 や 金 沢 市 に見 られ る よ う に ,神 社 ・仏 閣 を含 めた町並 み その ものが 観 光 資 源 で あ る た め に 道 路 の 拡 幅 が 難 しい地 域 で,交 通 公 害 防 止 に パ ー ク ア ン ドライ ドな どの 先 進 的 な試 み を取 り入 れ て い る事 に も注 目す べ きで あ ろ う 。 以 上 か ら結 論 づ け られ るの は,道 路 の 伸 長 ・拡 幅 が 必 ず し も公 共 性 の 高 い 事 業 とは 言 え な い こ と で あ る 。 これ は レジ ャ ー客 の 運 転 す るRV車 の 他 に は利 用 者 の な い地 域 振 興 型 林 道 や ,過 疎 地 にお い て 国 道 と農 道 とが 並 行 して建 設 され る例 に 限 ら な い 。 従 来,克 服 す べ き課 題 と考 え られ て い た 都 市 部 の 渋 滞 に さ え,自 動 車 利 用 の デ ィ ス イ ンセ ン テ ィブ を高 め る効 能 が あ る とい う発 想 の 転 換 が 必 要 で あ る。 も ち ろ ん,慢 性 的 な渋 滞 に よ っ て一 日中 排 出 ガ ス に さ ら され る既 存 の道 路 の 沿 道 住 民 の 存 在 を 無 視 す る こ とは で き ない 。 しか し,交 通 流 対 策 に よっ て こ の 問 題 を解 決 し よ う とす れ ば,上 述 の とお り一 層 の道 路 需 要 を呼 び覚 ま した り新 た な沿 道 被 害 住 民 を つ くる危 険 を冒 す こ とに な る。 そ れ よ りは 沿 道 対 策 の 充 実 に加 え て,建 設 省 と運 輸 省 の 縦 割 り壁 を越 え た マ ル チ モ ー ダ ル施 策 を優 先 課 題 とす べ きで あ ろ う。 こ の 点 道 路 審 議 会 は,国 民 の意 見 を広 く聴 取 して 冊 子 に ま とめ た り(キ ック オ フ レ ポ ー ト ・ボ イ ス レポ ー ト)1997年3月 の 中 間報 告 で は ア カ ウ ン タ ビ リ テ ィ ー を と り入 れ る な ど,世 論 に基 づ い た道 路 行 政 の見 直 し を提 言 して い る。 ま た建 設 省 は ,1998年 度 か ら道路建設事 業の必 要度 を評 価 し,予 算 配 分 に優 先 順 位 を付 け る とい う政 策 を打 ち 出 し て い る 。 しか し一 方 で は;自 動 車 重 量 税 や ガ ソ リ ン税 な ど の道 路 特 定 財 源 に支 え られ て,公 共 事 業 費 に 占 め る 道 路 整 備 事 業 費 の シ ェ ァ が 伸 び て い る。 道 路 の伸 長 ・拡 幅 か ら沿 道 整 備 ・安 全 対 策 へ,さ らに は 公 共 交 通 機 関 の 整 備 へ と 重 点 を移 した 大 胆 な費 目 の見 直 しが 望 まれ る。 な お,国 道43号 線 で は上 述 判 決 を受 け,1997年12月 末 よ り兵 庫 県 内 の20.2キ ロ メ ー トル に わ た っ て 片 側4車 線 へ と車 線 を削 減 し騒 音 ・振 動 対 策 の緑 地 を設 け る予 定 で,現 在 工 事 中 で あ る。 車 線 削 減 に よ っ て 沿 道 対 策 の ス ペ ー ス を確 保 す る とい う発 想 は従 来 わが 国 で は 見 られ な か っ た もの で,最 高 裁 判 決 の 影 響 が 大 きか っ た とは い え特 筆 に値 す る。 た だ し,43号 線 の よ う に元 来 交 通 需 要 の高 い 道 路 で 車線 削 減 を行 え ば 迂 回路 の 交 通 量 の増 大 を招 く こ と は必 至 で あ り,こ の 問題 を放 置 す る な ら ば,43号 線 の 沿 道 対 策 は 更 な る提 訴 を防 ぐた め の ア リバ イ工 作 との 誹 りを免 れ ない で
あ ろ う 。 (2)現 行 の規 制 等 に よ る デ ィス イ ン セ ン テ ィブ 上 述 の 地 下 鉄 利 用 者 に よる ア ンケ ー ト結 果 で は,地 下鉄 を利用 す る理 由のひ とつ に駐車 場の確 保 の 困 難 さが 挙 げ られ て い た。 道 交 法 は,道 路 交 通 の安 全 と円滑 を立 法 目的 と して い る の だ か ら (1条)45条 以 下 の 駐 車 場 の 規 制 も第 一 義 的 に は そ の脈 絡 で捉 え るべ きだ が,駐 車 ス ペ ー ス の 不 足 して い る 都 市 部 に お い て は 自動 車 利 用 を抑 制 す る派 生 的 効 果 も大 きい 。同様 のこ とは,8条 に 基 づ く通 行 の 禁 止 な ど道 交 法 の 他 の規 制 につ い て も当 て は ま る。 た だ,現 在 の よ う に違 法 駐 車 の 取 締 が 不 充 分 で は ,こ の効 果 も半減す る。 レ ッカー移動 を前提: と し ない 車 輸 止 め に よ る取 締 な ど(参 考 文 献1 .663頁),規 制 の 実 効 性 確 保 が 必 要 で あ ろ う。 ま た,駐 車 場 法 等 に見 ら れ る都 市 部 商 業 地 域 で の駐 車 場 整 備 の 手 法 は,「 道 路 交 通 の 円 滑 化 を 図 り … 都 市 の機 能 の 維 持 お よ び増 進 に 寄 与 す る 」(同 法1条)と い う立 法 目的 か らす れ ば全 く逆 効 果 で は な い か 。 特 に 同 法20条 に定 め る 劇 場 ・デ パ ー トな ど にお け る駐 車 施 設 の 付 置 義 務 は ,買 物 客 な ど の 自動 車 利 用 を 奨励 す る よ う な もの で あ る 。 む しろ付 置 義 務 な ど課 さず,こ れ らの 建 物 の周 囲 で 重 点 的 に違 法 駐 車 の 取 締 りを行 う方 が 立 法 目的 に適 合 す る(同 旨,参 考 文 献2.19頁,同5. 370頁)Q そ の 他 の 交 通規 制 に 関 して は,金 沢 市 が パ ー ク ア ン ドラ イ ドに付 随 して行 っ た 試 み が 示 唆 に富 ん で い る 。 パ ー ク ア ン ドラ イ ド自体 は,郊 外 に安価 な大 型駐車場 を整備す る と共 に,都 市 内で は 路 線 バ ス や 鉄 道 の利 便 性 ・経 済性 を高 め 公 共 交 通 機 関 の利 用 を促 進 す る,と い う誘導 手法の 一種 で あ り,郊 外 の地 下 鉄 駅 に大 型 駐 車 場 を付 設 す る,と い う誘 導 手 法 の 一 種 で あ り,郊 外 の 地 下 鉄 駅 に大 型 駐 車 場 を付 設 す る こ とな ど も含 まれ る 。 ま た通 常 ,バ ス専用 レー ンは充分 な道路 容量 を 確 保 した うえ で 設 定 され が ちで あ る こ とは 上 述 の とお りで あ る。 この 点,金 沢 市 にお い て は,観 光 客 の殺 到 す る ゴ ー ル デ ン ウ ィー ク 中 の数 日,パ ー ク ア ン ドラ イ ドに付 随 して バ ス 専 用 レー ン を設 け る た め に交 通 規 制 を行 っ て い る。 特 に兼 六 園付 近 で は,片 側 ユ車 線 ず つ の 道 路 の 一 方 を バ ス 専 用 レー ン にす る こ と に伴 い一 方 通 行 の 規 制 を行 っ て お り,上 坂 付 近 な どで は バ ス ・タ ク シ ー ・指 定 車 両 ・許 可 車 両 以 外 の 車 両 の通 行 を禁 止 す る とい う厳 しい 規 制 を布 い て い る 。市 民 の 反 響 の 中 に は こ れ らの 規 制 に不 満 を表 す もの も見 ら れ る が,パ ー ク ア ン ドラ イ ド全 体 と して は概 ね 好 評 で あ り,こ れ らの規制 がパー クア ン ドライ ド実施 に不 可欠の要 素 で あ る こ とか ら10年 近 く続 け て行 な わ れ て い る 。 た だ し,規 制エ リアは ゴール デンウ ィー ク中 の観 光 客 の 減 少 に伴 う規 制 の 必 要 性 の低 下 な どの影 響 で ,年 々縮小 されつつ あ るとの こ とであ る。 こ れ は,本 来 誘 導 的 手 法 に と ど ま るパ ー ク ア ン ドラ イ ドで あ っ て も,こ れ に必 要 最 低 限 度 の 規 制 を組 み 合 わ せ る こ と に よ っ て,自 動 車 利 用 の デ ィ ス イ ン セ ンテ ィブ と公 共 交 通 機 関 へ の 誘 導 と を一 体 化 し,効 果 的 な交 通 行 動 の 変 化 を促 す こ とが 可 能 で あ る とい う例 で あ ろ う。 金 沢 市 の場 合 は ゴー ル デ ンウ ィー ク 中 とい う短 期 間 で ,し か も特 に道路混雑が激 しい地域 に限 定 され て い る が,こ れ を よ り一 般 化 す る こ とは で き な い だ ろ うか 。現行 の ように,公 共 交通機 関 の利 用促 進 と 自動 車 輸 送 の 効 率 化 の た め の 交 通 流 円 滑 化 対 策 とが 政 策 目的 と して 併 存 して い る状 況 の 下 で は難 しい か も しれ な い。 しか し,自 動 車 利 用 の デ ィス イ ン セ ンテ ィブ を高 め る こ と を メ ル ク マ ー ル の ひ とつ に置 け ば,都 市 部 に お い て は片 側1車 線 の 道 路 で も道 路 容 量 の 足 りな い 地 域 で も,バ ス の 定 時 運 行 の た め に一 般 車 両 の通 行 規 制 を強 化 して バ ス 専 用 レー ンを 設 け る こ とは , 政 策 と して の 合 理 性 を獲i得し う る はず で あ る 。
ま た,渋 滞 す る道 路 に バ ス専 用 レー ン を設 け る こ とは,緊 急 車 両 の ス ピー ドア ップ に も役 立 つ 。 緊 急 車 両 が し ば しば渋 滞 に 巻 き込 まれ た り違 法 駐 車 車 両 に 阻 まれ た り して手 遅 れ に な る,と い う わ が 国 の現 状 に鑑 み れ ば,政 策 の 合 理 性 は一 層 補 強 され る で あ ろ う。 金 沢 市 で は 片 側2車 線 で混 雑 しが ち な道 路 に 、 あ え て 通 年 の バ ス専 用 レ ー ン を設 け て い る との こ と で あ る 。 上 述 の道 交 法1条 の 目的 か ら見 て も,長 期 的視 野 に立 て ば法 の趣 旨 に反 す る 運 用 とは 言 い きれ ない 。 バ ス や 緊 急 自動 車 に と って は直 接 に交 通 の安 全 と 円滑 を もた らす こ とは 言 う に 及 ばず,自 動 車 利 用 の デ ィ ス イ ンセ ンテ ィ ブ を高 め る こ とに よ って 自動 車 利 用 自体 が 抑 制 され れ ば,一 般 車 両 に とっ て も結 局 は交 通 の 円 滑 に資 す る か ら で あ る 。 ま た,道 交 法 の も う一 つ の 立 法 目的 で あ る 「道 路 の交 通 に起 因 す る 障 害 の 防止 」 と の 関 係 か らす る と ,こ の 「障 害 」 に は 自 然 環 境 ・生 活 環 境 の 破 壊 が含 ま れ る の で,自 動 車 利 用 が 抑 制 さ れ れ ば 「障 害 の 防 止 」 に役 立 つ とい う こ とが で き る6さ ら に,バ ス や 緊 急 自動 車 な ど公 共 性 の高 い 自動 車 を優 先 す る と い う思 想 が,40条(緊 急 自 動 車 の 優 先)を は じめ 道 交 法 の 随 所 に既 に盛 り込 まれ て い る こ と に鑑 み れ ば,法 律 全 体 の 整 合 性 か ら して も問 題 は な い で あ ろ う。 逆 に交 通 流 円 滑 化 対 策 の 必 要 性 と効 果 の 面 か ら見 る と,自 動 車 輸 送 の効 率 化 とい う政 策 目 的 そ の もの が 両 刃 の 剣 で あ る こ とは 繰 り返 し述 べ た とお りで あ る 。 上 述 の車 両 総 重 量 の規 制 緩 和 で も, 従 来 よ り も少 な い車 両 台 数 で 同 じ重 量 の 貨 物 を輸 送 で きる とい う輸 送 効 率 ア ップ に よ っ て,環 境 保 全 に も資 す る こ とが効 果 の ひ とつ に数 え られ て い た 。 と ころ が,こ の た め に輸 送 コス トが 下 が り自動 車 輸 送 の シ ェ ア が 上 が っ た の で は 逆 効 果 と言 わ ざ る を得 ない 。 ま た,地 球 温暖 化 防 止 行 動 計 画 の 施 策 実 施 状 況 で は 総 額ll兆 円 の う ち8兆 円 以 上 が 道 路 整 備 費 との こ とだ が,道 路 整 備 が 道 路 需 要 を誘 引 す る面 が あ る の も上 述 の とお りで あ り,温 暖化 防 止 に役 立 つ と は到 底 認 め ら れ な い 。 (3)そ の他,考 え られ る デ ィ ス イ ン セ ン テ ィ ブ 自動 車 利 用 の デ ィス イ ンセ ン テ ィブ を高 め る 方 策 と して は,様 々 な可 能 性 が あ りえ よ う。 こ こ で は,現 在 爼 上 に上 っ て い る 環 境 税 な ど に代 表 され る経 済 的 手 法 と,ま ち づ く りを視 野 に入 れ た 手 法 を検 討 した い。 a.経 済 的 デ ィ ス イ ンセ ンテ イ ブ 環 境 庁 企 画 調 整 局 長 の 諮 問 機 関 で あ る 「環 境 に係 る税 ・課 徴 金 等 の経 済 的 手 法 研 究 会 」 が1997 年7月 に 出 した 最 終 報 告 で は,化 石 燃 料 に課 税 す る炭 素 税 と,炭 素 税 と発 熱 カ ロ リー に基 づ い た エ ネ ル ギ ー税 と を1対1の 割 合 で 配 分 す る炭 素 ・エ ネ ル ギ ー 税 とが 提 示 され た 。 こ れ ら は さ らに, 低 税 率 ・補 助 金 併 用 型 の 炭 素 税(1案),比 較 的高 税 率 の 北 欧 型 炭 素 税(2案),低 税 率 ・補 助 金 併 用 型 の 炭 素 ・エ ネ ル ギ ー税(3案),低 税 率 に は じ ま っ て 年 々税 率 を上 げ る 国 際 配 慮 型 の炭 素 ・エ ネ ル ギ ー 税(4案)に 分 け られ る 。 ガ ソ リ ン1リ ッ トル あ た りの 税 額 は,ユ 案 で 約2円, 2案 で 約20円,3案 で約1円,4案 で約1円 に 始 ま り10年 後 に は約10円 との こ とで あ る 。 税 収 の 使 途 は,1・3案 で は温暖 化 対 策 等 へ の 補 助 金 に限 定 さ れ る の に対 して,2・4案 で は 一 般 財 源 に繰 り入 れ られ る。 この4つ の 案 を比 較 す る と,1・3案 で は税 率 が 低 す ぎて 自動 車 利 用 の デ ィス イ ンセ ン テ ィ ブ の機 能 は ほ とん ど期 待 で きな い 。 補 助 金 の 財 源 確 保 の み を 目的 と して新 税 を創 設 す る の で あ れ ば, 既 存 の 政 策 の 延 長 線 上 に と ど ま り新 味 は な い 。財 源 確 保 に は,現 行 の 自動 車 重 量 税 ・揮 発 油 税 と い っ た 自動 車 関 連 諸 税 の うち 国 税 の 一 部 を温 暖 化 対 策 に振 向 け れ ば足 りる 。 特 に,道 路 特 定 財 源
の 使 途 に 上 述 の よ う な 問 題 が あ る の をそ の ま ま に新 税 導 入 に踏 み 切 る な ら ば,政 策 と して の正 当 性 は認 め難 い 。 そ の 点,2・4案 な らば,自 動 車 利 用 の デ ィス イ ン セ ンテ ィ ブ と して 機 能 す る に充分 で あ ろ う。 しか しデ ィー ゼ ル 機 関 は ガ ソ リ ン機 関 よ りも熱 効 率 が よ い の で,2案 で は 軽 油 の税 率 を上 げ る な どの措 置 を と らな けれ ば乗 用 車 の デ ィ ー ゼ ル 化 に拍 車 をか け る こ と に な りか ね な い。 また,将 来 的 に見 て も2案 には 不 安 が 残 る 。 と言 う の は,電 気 自動 車 や ハ イ ブ リ ッ ド車 な ど化 石 燃 料 の 消 費 を抑 え た 自動 車 の 開 発 が 進 ん で お り,政 府 も現 行 一 律3パ ー セ ン トの 自 動 車 取 得 税(地 方 税 法 699条 の8)の 税 率 設 定 に燃 費 を 反 映 させ る な ど新 型 自動 車 の 導 入 に積 極 姿 勢 を見 せ て い る か ら で あ る。 これ は,排 出 ガス を抑 え る とい う観 点 に 限 れ ば 非 常 に好 ま しい 傾 向 に ち が い な い。 しか し,電 気 自動 車 もエ ネ ル ギ ー効 率 の悪 さや 事 故 の 危 険 性,歩 行 者 の排 除 と い っ た 自動 車 の 負 の側 面 を もつ こ とに 変 わ りは な い(参 考 文 献7.91∼93頁)。2案 の 場 合 ,電 気 自動 車が普 及す る と 共 に原 子 力 発 電 等 に よっ て 化 石 燃 料 を消 費 しな い 電 力 の割 合 が 増 え れ ば(炭 素 税 が原 子 力 発 電 に 拍 車 をか け る の は 自 明 と され る),実 質 的 な税 率 ダ ウ ン に な っ て し ま う。 以 上 よ り,自 動 車 利 用 の デ ィス イ ンセ ンテ ィ ブ を将 来 に わ た って もっ と も高 め る の は,4案 と 考 え られ る。 しか も4案 は発 熱 カ ロ リ ー に よ る課 税 で あ る こ とか ら,近 年 大 型 化 の弊 害 の 著 しい 乗 用 車 を再 び小 型 化 す る効 果 も期 待 で きる の で は な い だ ろ う か 。 と こ ろが 経 済界 の 意 向等 もあ り 現 実 に は1案 が 最 有 力 と の こ とで,今 後 の展 開 が 気 に か か る とこ ろ で あ る。 経 済 的 デ ィ ス イ ンセ ン テ ィ ブ は 自動 車 の利 用 に応 じて か か る もの と,自 動車 の取得や所持 その もの に対 して か か る もの の2類 型 に 大 別 しう る 。 前 者 は上 記 の 環 境 税 や 現 行 の揮 発 油 税 な ど比 較 的 単 純 に燃 費 と走 行 距 離 を反 映 す る もの の ほ か,ロ ー ドプ ラ イ シ ング や 乗 入 れ 賦 課 金 制 度(参 考 文 献2・13∼14頁 ・16∼18頁)の よ うに 交 通 混 雑 の 激 しい特 定 地 域 に 限 って 課 す こ との で き る も の が 含 ま れ る 。 後 者 は,現 行 で も自動 車 税 や 自動 車 取 得 税 、 自動車重量税 な どが課 されてい るが, こ れ らの 税 率 を大 幅 に引 上 げ る こ とに よっ て 自動 車 交 通 か ら派 生 す る社 会 的 費 用(試 算 に よれ ば 自動 車1台 あ た り数 千 万 円 に上 る)を 完 全 に賄 い,併 せ て 自動 車 交 通 量 の増 加 を抑 制 す る とい う 主 張 が 夙 に な され て い る。 シ ン ガ ポ ー ル で は 自動 車 の 総 量 規 制 に付 随 して 自動 車 購 買 権 の入 札 制 が 実 施 され て お り,自 動 車 は庶 民 に と っ て は 高 嶺 の花 との こ とで あ る。 前2者 と後 者 とを 比 較 す る と,後 者 の 手 法 で は経 済 活 動 に及 ぼす 影響 が 大 きい こ と に加 え て, シ ン ガ ポ ー ル の 例 で も明 らか な よ う に 自家 用 車 の 所 有 が特 権 的 性 質 を帯 び,庶 民 は 自家用車 の利 用 可 能 性 自体 を絶 た れ て しま う。 また,前 者 の う ち燃 費 と走 行 距 離 を反 映 す る手 法 で は ,公 共交 通 機 関 が 整 備 され て お らず 走 行 距 離 も長 くな りが ち な過 疎 地 の 住 民 に もひ と し く負 担 を強 い る こ とに な る。 こ れ ら の手 法 は,業 務 用 車 だ け で な く 自家 用 車 に も一 定 の権 利 性 と公 共 性 が認 め られ る こ と(詳 細 は 別 稿 に譲 る)に 鑑 み れ ば,難 点 が あ る と言 わ ざ る を得 な い 。 し たが っ て経 済 的 デ ィ ス イ ンセ ンテ ィ ブ で は,ロ ー ドプ ラ イ シ ン グ や乗 入 れ 賦 課 金 制 度 が もっ と も優 れ た手 法 と考 え られ る 。 道 路 法25条 等 に基 づ く道 路 無 料 公 開 の 原 則 は ,こ の限 りで修正 されるべ きで あろ う(参 考 文 献1.296∼297頁,同2.18∼19頁)。 b.ま ち づ く りか ら考 え る 。 都 市 部 に お け る 自動 車 交 通 量 の抑 制 に都 市 の 成 長 管 理 の視 点 が 有 効 で あ る こ とは ,か ねて指摘 され る と こ ろ で あ る(参 考 文 献5.333∼339頁 参 照)。 しか し,国 土 全 体 か ら見 た 場 合,必 ず し も 自動 車 交 通 量 の 抑 制 に役 立 つ とは 限 ら な い。 一 つ ひ とつ の 都 市 を成 長 管 理 す れ ば お の ず と多 極
分 散 型 の 国土 形 成 が 促 進 され,都 市 間 を結 ぶ 交 通 需 要 が 増 大 す る 可 能 性 が あ る か らで あ る。 成 長 管 理 は,モ ー ダル シ フ トな ど他 の 施 策 との 組 み 合 わ せ を誤 れ ば,か え って 自動 車 交 通 量 の 増 大 に 直 結 しか ね な い 。 本 稿 で提 案 した い の は,よ り小 さな 視 点 か ら出発 した 生 活 道 路 対 策 で あ る。 自動 車 利 用 の 誘 因 の うち最 大 の もの の ひ とつ は,ド ア ツ ー ドア の利 便i生で あ ろ う 。 運 輸 経 済 研 究 セ ン ター の調 査 に よ る と,ド ア ッ ー ドア の 利 便 性 は 自動 車 利 用 の魅 力 と して は4位(複 数 回答 の23.9パ ー セ ン ト)に 留 ま っ て い るが(参 考 文 献13.3頁),通 勤 ・通 学 時 に 自動 車 を利 用 す る 理 由 の1位 が 「鉄 道 駅 や バ ス 停 が 遠 くて 不 便 」(東 京 で 複 数 回答 の48.9パ ー セ ン ト),3位 が 「鉄 道 駅 や バ ス停 まで 歩 くの が 面倒 」(同23.4パ ー セ ン ト)で あ る こ と と考 え 併 せ れ ば(参 考 文 献13. 5頁),自 家 用 自動 車 の利 便 性 の 最 大 の 要 素 と言 っ て も よい 。 上 述 した歩 車 共 存 な ど現行 の 生 活 道 路 対 策 の 限界 は,地 域 住 民 自身 が ドア ツ ー ドア の 利 便 性 を 享 受 しな が ら生 活 道 路 の安 全 を確 保 し,通 過 交 通 の み を排 除 し よ う とす る と こ ろ に あ る。 住 民 が 真 に安 全 で快 適 な生 活 環 境 を望 む な らば,地 域 の 生 活 道 路 全 体 を道 交 法8条 に基 づ く歩 行 者 用 道 路 にす る こ と も,検 討 に値 す る の で は な い だ ろ うか 。 例 え ば300メ ー トル 四 方 を 一 区 画 と して考 え,そ の 周 縁 部 を取 り巻 く よ う に駐 車 ス ペ ー ス を設 け た場 合,生 活 道 路 が 碁 盤 の 目状 で あ れ ば,駐 車 ス ペ ー ス の 一 辺 か ら区画 の 中心 まで の 最 短 距 離 は150メ ー トル,徒 歩2分 足 らず で あ る。 生 活 道 路 の 入 り口 に車 止 め ポ ー ル を設 置 す れ ば 四 輪 車 の 侵 入 を 防 ぐ こ とが で き る。 生 活 に不 可 欠 の 新 聞 配 達 車 ・郵 便 配 達 車 の み 許 可 車 両 とす るが,こ れ ら は通 常,原 動 機 つ き 自転 車 な どの 二 輪 車 だ か ら車 止 め ポ ー ル の 間 を通 り抜 け る こ とが で きる 。 さ ら に車 止 め ポ ー ル を 可 動 式 にす れ ば,緊 急 車 両 の 通 行 を妨 げ ない 。 歩 行 困 難 な傷 病 人 は駐 車 ス ペ ー ス ま で車 イ ス を利 用 す れ ば済 む し,荷 物 の 配 送 な ら大抵 の 場 合 は台 車 で 足 りる(宅 配 料 金 が 上 乗 せ され る か も しれ な いが,わ ず か な 額 で あ ろ う)。 大 き な荷 物 の 搬 入 ・搬 出 や 重 篤 な症 状 の 病 人 の通 院 な ど,特 に ドア ツ ー ドア の 必 要 性 の高 い 場 合 の み 例 外 を認 め れ ば よ い 。 この 場 合,道 交 法9条 ・13条の2が 適 用 され る の で,歩 行 者 が 自動 車 に 脅 か され る危 険性 は ほ とん ど な い で あ ろ う。 この よ うな ま ちづ く りは,土 地 区 画 整 理 事 業 の オ プ シ ョ ン と して位 置 づ けれ ば既 存 の 宅 地 で も 行 う こ とが で き る。 そ の 際,住 民 の意 向 が 最 重 視 され る こ とは 言 う ま で も ない が,従 来,住 民 が 区 画 整 理 に反 対 す る理 由 の ひ とつ に 「道 路 の 拡 幅 に よ っ て 通 過 交 通 量 が 増 え る弊 害 」 が 挙 げ られ て い る こ とに 鑑 み れ ば,こ の よ う な まち づ く り を希 望 す る 地 域 もあ る に違 い な い 。 この よ うな ま ちづ く りが行 われ た地 域 で は,公 共 交 通 機 関 が 整 備 さ れ て さ え い れ ば 住 民 の交 通 行 動 に変 化 が 生 じる の は必 然 で あ ろ う。 ドア ッ ー ドア とい う 自動 車 利 用 最 大 の イ ンセ ン テ ィ ブ が 減殺 さ れ る こ と に伴 い,公 共 交 通 機 関 の 利 便1生 ・経 済 性 に い や で も目が 向 くか らで あ る。 逆 に言 え ば,運 転 の煩 わ しさ ・出 先 で 駐 車 場 を確 保 す る 困 難 さ ・一 人 で 乗 車 した 場 合 の燃 料 費 や 駐 車 場 代 とい っ た コ ス トの 高 さな ど,自 動 車 が 本 来 有 して い る デ ィス イ ンセ ンテ ィ ブが 相 対 的 に ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ る こ と に な る 。 したが っ て,こ の よ う な ま ち づ く りを 自動 車 利 用 の デ ィス イ ン セ ン テ ィ ブ を高 め る 施 策 の 一 つ に位 置 づ け る こ とが で き る の で あ る。 実 は,こ の よ う な ま ち づ く りの 類 似 例 は,既 に あ る。 大 阪 市 港 湾 局 が 開発 した南 港 ポ ー トタ ウ ンで は,住 宅 地 の 全 域 を ノ ー カ ー ゾ ー ン と して車 両 の 進 入 が 可 能 な ル ー トを一 個 所 に 絞 り,そ の 入 り口 に は ゲ ー トを設 け て 管 理 人 を常 駐 させ,貨 物 車(4ナ ンバ ー)以 外 の ゲ ー ト通 過 を原 則 と して 禁 止 して い る 。 とこ ろ が 実 際 に は,ゲ ー トをす り抜 け て ドア ツ ー ドア で 自家 用 車 を利 用 す る 住 民 が 後 を絶 た な い とい う。 ま た,ゲ ー ト以 外 の 進 入 路 に は 車 止 め を設 け て い る が 二 輪 車 は事 実
上 フ リー パ ス で あ る。 南 港 ポ ー トタウ ンで 規 制 の実 が 上 が らな い 理 由 は ふ た つ 考 え られ る。 ひ とつ は ,ノ ーカー ゾー ン の 面 積 がll3ヘ ク ター ル と比 較 的 大 きい こ とで あ る 。 敷 地 内 に は ニ ュ ー トラム が 通 っ て い る と は い え終 日運 行 して い る わ けで は な く,と な れ ば歩 行 者 の 負 担 は少 々 重 い 。 ゲ ー トに管 理 人 を置 く方 式 で は,費 用 の点 で あ ま り進 入 禁 止 区 域 を細 分 化 で き ない の が 難 点 で あ る 。 よ り重 大 な 理 由 は,進 入 車 両 に対 して 道 路 交 通 法 上 の罰 則 を適 用 した 例 が20年 来1件 も な い こ とで あ る 。 あ ま りに悪 質 な住 民 に は車 庫 法(自 動 車 の 保 管 場 所 の 確 保 等 に関 す る法 律)11条2項 違 反 と して 同 法17条2項2号 で対 処 す る 場 合 もあ る(な お 道 交 法44∼45条 に基 づ く駐(停)車 禁 止 区 域 に は指 定 され て い な い)と の こ とだ が,こ れ は 道 路 上 の駐 車 に 限 られ るの で ,集 合住 宅の敷 地 内 に駐 車 して い る車 両 に は適 用 で き な い 。 道 路 交 通 法 の 解 釈 が こ の よ う な事 態 を招 来 して い る。 す な わ ち,同 法1条 にい う 「交 通 の 安 全 と円 滑 」 を専 ら 自動 車 交 通 に とっ て の安 全 ・円滑 と解 す る と,そ も そ も他 の 車 両 の通 行 をほ と ん ど予 定 して い な い ノ ー カ ー ゾ ー ン に お い て は罰 則 適 用 の 妥 当 性 に疑 問 が 生 じて し ま い,警 察 も取 締 りに消 極 的 に な ら ざ る を得 な い。 しか し,ノ ー カー ゾ ー ンに お け る車 両 進 入 禁 止 の趣 旨が 歩 行 者 保 護 に あ る こ と に鑑 み ,同 条 の 厂道路 にお ける危 険 防 止 ・交 通 の 安 全 と円 滑 」 は,専 ら歩 行 者 に と っ て の そ れ と解 す る の が 当 然 で あ ろ う。 道 路 上 で の 取 締 りが 適 切 に行 わ れ れ ばゲ ー トに管 理 人 を置 く必 要 も な く,規 制区域 を分割 して歩行距離 を 短 縮 す る こ と も可 能 で あ る。 4.お わ り に 以 上,現 行 の 政 策 の 限界 を も と に 自動 車 利 用 の デ ィス イ ンセ ン テ ィ ブ を高 め る とい う提 言 を行 っ た が,決 して 自動 車 交 通 そ の もの を排 除 す る意 図 に出 た もの で な い こ とは 上 述 の とお りで あ る。 む しろ,い た ず ら に規 制 を 強化 す る こ とな く国民 全 体 に 自動 車 利 用 の可 能 性 を確 保 した う え で , い か に し て不 要 不 急 の 自動 車 利 用 に よ る弊 害 を 防 ぐこ とが で きる か,が テ ー マ で あ った 。 こ の よ う な テ ー マ 設 定 は,自 動 車 の 恩 恵 を最 大 限享 受 し た い人 た ちか らは不 便 を強 い る と して 疎 ま れ,自 動 車 に よ る人 命 軽 視 ・環 境 破 壊 を真 剣 に憂 慮 す る人 た ち か ら は生 ぬ る い と批 判 され る か も しれ な い 。 しか し,社 会 ・経 済 に深 刻 な打 撃 を与 え る こ とな く現 行 の 制 度 を利 用 して 現 段 階 で 実 現 可 能 と思 わ れ る方 策 に絞 っ て考 察 して み た結 果 が こ れ で あ る 。 自動 車 が,製 造 時 には 多 大 な資 源 を 費 や し,走 れ ばエ ネ ル ギ ー を 喰 う と共 に排 出 ガ ス と騒 音 を ま き散 ら して 時 に は 人 を殺 傷 し,最 後 に は巨 大 な廃 棄 物 の 山 を築 く こ とは 周 知 の とお りで あ る。 しか し,自 動 車 に乗 れ な い 老 人(国 が 老 齢 ドラ イバ ー を排 除 した が っ て い るの は明 白 で あ り,ま た そ の 政 策 に は 相 応 の根 拠 もあ る)・ こ ど も ・障 害 者 な ど の 交 通 弱 者 が い る 一 方 ,自 動 車 のおか げ で社 会 生 活 を営 め る 障 害 者 も存 在 す る 。 こ の よ う な人 々 に とっ て 自動 車 に乗 る こ と は ま さ に生 存 権 の 一 部 で あ ろ う。 自動 車 利 用 の抑 制 策 に は,自 動 車 利 用 の 権 利 性 と公 共性 に応 じて きめ 細 か く,と い う視 点 が 欠 か せ な い 。 と同 時 に,自 動 車 利 用 者 と歩 行 者 ・道 路 周 辺 住 民(こ の 三 者 は しば しば 入 れ 替 わ り, 重 複 す る)と の平 等 ・権 利 利 益 の バ ラ ン ス とい う観 点 も欠 か せ な い 。 したが っ て ,次 の段 階 では 厂自動 車 利 用 の 差 別 化 」 を図 る必 要 が 出 て く る 。 ま た,既 に金 沢 市 の モ ー ダ ル シ フ トは業 務 用 車 両 優 先 の,大 阪 市 の 南 港 ポ ー トタ ウ ン にお け る車 両 進 入 禁 止 に は貨 物 車 両 優 先 の思 想 が組 み 込 ま れ て も い る 。 本 稿 で は この 点 を詳 し く述 べ る余 裕 が な か った の で,次 回 を期 した い 。