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バラタナゴ属(タナゴ亜科魚類)3種・亜種におけるC-バンド核型とゲノムサイズの比較

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(1)

バラタナゴ属 (タナゴ亜科魚類) 3 種 ・ 亜種における

C- バンド核型とゲノムサイズの比較

The parallel between the C-banding karyotypeand the genome size of

three species and subspecies in Rhodeus (Teleostei: Acheilognathinae)

上田 高嘉

UEDA Takayoshi

  The C-banding karyotype and the genome size of three species and subspecies in Rhodeus (Teleostei: Acheilognathinae) were paralleled. R. sinensis and R. ocellatus ocellatus have M- and SM-chromosome-rich karyotype (2n=48: 8M + 20SM + 20ST). It is characteristic of R. atremius fangi to have ST-chromosome-rich karyotype (2n=46: 4SM + 42ST). The C-banding heterochromatin of R. atremius fangi was larger than that of other two bitterlings. The genome size of R. atremius fangi was bigger (R. sinensis, 2.1pg; R. ocellatus

ocellatus, 2.2pg; R. a. fangi, 2.4pg). It is supposed that the difference of the genome size has strongly

correlation with that of the C-banding heterochromatin, and the conspicuous karyotype change on the bitterling with 2n=46 is concerned with the C-banding heterochromatin.

キーワード: タナゴ亜科魚類,ゲノムサイズ,C- バンド核型,ヘテロクロマチン,核型進化

 タナゴ類(コイ科タナゴ亜科魚類)は東アジアを中心に世界に約60 種・亜種が生息するとさ

れる (Froese and Pauly,2008)1).グループの分類には議論があるが,Arai and Akai (1988) 2)による

Acheilognathus,Tanakia および Rhodeus の 3 属に整理される方向にあると考える.日本産,韓国産お

よび中国産タナゴ類の染色体数の報告は多くの種・亜種でなされており,Acheilognathus では 2n=42, Tanakia では 2n=48,Rhodeus では 42n=46,48 である (Ojima et al., 1972 3); 小島ら , 1973 4); Lee et al.,

1982 5); 1983 6); Ueno and Ojima, 1984 7); Yu et al., 1987 8); Arai et al., 1988 9);1992 10); Ueda et al., 1996 11); 1997 12); 2001 13); 上田 , 2009 14)).スイゲンゼニタナゴ R. atremius suigensis など 2n=46 の染色体 数を持つ仲間は,他のタナゴ類ではメタセントリック(M)およびサブメタセントリック(SM)染 色体主体の核型であるのに対して,サブテロセントリック(ST) 染色体主体の核型である.中国で は 1996 年に初めてこの n=23 の仲間が確認されたが (Ueda et al., 1996)11),その後中国各地で生息す ることが明らかになった (Ueda et al., 2001; 上田ら , 2007) 15).これまでのところ、いずれの個体もST 染色体主体の類似の核型(4SM + 42ST)を示した.この際立った染色体変化は,縦列結合による 2 本の染色体数の減少と連続的な逆位によるST染色体数の増加を伴う核型進化と推論された (Ueda et al, 2001)13)  2n=46 のタナゴ類は C- バンドが他の Rhodeus の仲間に比べて明瞭で,C- バンドヘテロクロマチン の増加が核型を大きく変化させる要因になったものと推論された (Ueda et al, 2001)13).この推論を裏 付けることを主目的として,本論では,Rhodeus 2 種・亜種について C- バンド核型とゲノムサイズ の比較を行った.

(2)

材料および方法

試験魚

 中国黒竜江省産の R. sinensis,R. ocellatus ocellatus,中国福建省産の R. atremius fangi について比較 分析を行った。

C- バンド核型

 原腸胚および成魚の腎臓の細胞を用いて染色体標本を作製し (Ueda et al., 199116); 199712)),Sumner

(1972)17) の方法に従って C- バンド染色を施して,核型分析を行った. ゲノムサイズ相対値  次の方法で測定用資料の作製およびコイ Cyprinus carpio に対する各タナゴ類のゲノムサイズの相 対値を求めた. ①ヘパリンで処理した注射器で尾部血管より血液を採取した. ②氷冷した99% 以上のエタノールの入った遠沈管の中に勢いよく噴射し,その後すばやく攪拌した. ③氷冷したまま30 分以上静置した. ④ 1000rpm で 5 分 間 遠 心 後,pH6.8 の 燐 酸 緩 衝 液 で 2 回 洗 浄 し,50μg/ml の PI (Propidium Iodide, Sigma 社 ) 水溶液に 10 分間細胞を浮遊させた. ⑤ 1000rpm で 5 分間遠心後,105107/ml の濃度になるように緩衝液に浮遊させ,40μg/ml のナイロ ンメッシュでこしたものを試料管に移した. ⑥コイと各タナゴ類の試料を細胞濃度がほぼ同程度になるように混ぜ,コイを基準にコイに対する各 タナゴ類のゲノムサイズの相対値を求めた. ⑦作製された試料をフローサイトメーター (EPICS-ELITE, Coulter 社 ) を用いて,アルゴンイオンレ ーザー ( 波長 488nm) を細胞に照射して測定を行った. ⑧ 1 個体につき同試料を続けて 10 回測定し,3 個体分の平均値をその種・亜種の相対値とした.

結果および考察

C- バンド核型  R. sinensis は 2n=48 (8M + 20SM + 20ST) で,C- バンド染色において,すべての染色体の動原体部 のほか,いくつかの染色体の末端部に濃染が観察された (Fig. 1).R. ocellatus ocellatus ではほぼ同様 であった (Fig. 2).一方,R. atremius fangi は 2n=46 (4SM + 42ST) で,すべての染色体の動原体部が 濃染されたほか,短腕および長腕末端にも多くのバンドが認められた (Fig. 3).また,ST 染色体の 9 番目と12 番目の中間部にもバンドが認められ,他の 2 種・亜種に比べて明らかに濃染部が多い結果 であった.

ゲノムサイズ

 コイの平均値を1としたときの各タナゴ類のゲノムサイズの相対値は,R. sinensis で 0.522 ± 0.018, R. ocellatus ocellatus で 0.530 ± 0.016,R. atremius fangi で 0.589 ± 0.028 であった.コイのゲノムサイ

ズを 4.1pg とすると (Gregory, 2001)18),各タナゴ類のおよそのゲノムサイズは,R. sinensis で 2.1pg,R.

(3)

Fig. 1. C-banding karyotype of Rhodeus sinensis.

Fig. 2. C-banding karyotype of Rhodeus ocellatus ocellatus.

(4)

 ゲノムサイズの差は,C- バンドヘテロクロマチン量の差と大きく関係するものと考えられた.C-バンドで濃く染まる部位は構成的ヘテロクロマチンとされ,反復DNA からなり,一般的に転写活性 を示さず,遺伝的には不活性であるとされている.John and Miklos (1979)19) は,構成的ヘテロクロ

マチンが染色体変化に重要に働くと提言したが,大きく核型を変化させた R. atremius fangi に C- バ ンドヘテロクロマチン量の変化に関わるゲノムサイズの増加が認められたことは,このことを支持 するものと考えられる.同様に,近縁種と大きく異なる核型を持つ Salmo salar (Ueda and Kobayashi, 1990)22) および Chrysiptera hemicyanea (Takai and Ojima, 1999)23) にもやはり,多くの染色体の端部お

よび中間部にC- バンドヘテロクロマチンが観察されている.2n=46 のタナゴ類の大きな核型変化は C- バンドヘテロクロマチンの増加と関わることが推定される.2n=46 の染色体数を持つ仲間の起源 と考えられる,染色体数が2n=48 で C- バンド濃染部が多い(R. atremius fangi と同等に持つ)タナゴ 類が存在するかもしれない,あるいは過去に存在したかもしれない.

 また,染色体の変化に介在性のテロメア配列が関与するとの指摘があり(Meyne et al., 1990)20)

Salmo salar では,テロメア配列が異質染色質の端部に存在することが知られている (Abuin et al.,

1996)21).染色体に散在するテロメア配列が染色体変化に重要に働き,ヘテロクロマチンがテロメア 配列の散在を可能にすると考えることはできないだろうか.散在性テロメア配列を含むヘテロクロ マチンの形成が,染色体の再構成を容易にすると考えることもできるであろう.C- バンドヘテロク ロマチン部には,テロメア配列に限らない,染色体変化を助ける他の繰り返し配列が存在するかも しれず,核型進化機構の解明には,ヘテロクロマチン部の構成要素についてさらに詳細な検討が必 要であろう.

謝辞

 本研究のゲノムサイズの比較に用いたフローサイトメーター (EPICS-ELITE, Coulter 社 ) は,平 成5 年度の特別設備費により整備された.本研究の一部は,「科学研究費補助金 (B2)10041156, B(1)12575009」および「重点推進研究(宇都宮大学)」の経費により行いました。ここに厚く御礼申 し上げます。

要約

 バラタナゴ属(タナゴ亜科魚類)3 種・亜種,R. sinensis,R. ocellatus ocellatus および R. atremius

fangi, について C- バンド核型とゲノムサイズの比較を行った.R. sinensis および R. ocellatus ocellatus

では M および SM 染色体主体の核型 (2n=48: 8M + 20SM + 20ST) であるのに対し,R. atremius fangi では,極めて特徴的に,ST 染色体主体の核型 (2n=46: 4SM + 42ST) であった.C- バンド核型では,

R. atremius fangi は他の 2 種・亜種に比べて明らかに濃染部が多く観察された.ゲノムサイズは R. atremius fangi で 大 き い 結 果 で あ っ た (R. sinensis,2.1pg;R. ocellatus ocellatus,2.2pg;R. atremius fangi,2.4pg).今回明らかになったゲノムサイズの差は,C- バンドヘテロクロマチン量の差と大き

く関係し,2n=46 のタナゴ類の大きな核型変化は C- バンドヘテロクロマチンの増加と関わるものと 考えられた.

文献

(5)

12)R. Arai and Y. Akai, Bull. Nat. Sci. Mus. Tokyo (A) 14: 199-213 (1988). 13)Y. Ojima, M. Hayashi and K. Ueno, Japan. J. Genet. 47: 431-440 (1972). 14)小島吉雄・上野紘一・林真,動物学会誌 82: 171-177 (1973).

15)G. Y. Lee, J. N. So and S. J. Kim, Ann. Rep. Biol. Res., Jeonbug Nat. Univ. 3: 19-24 (1982).   (in Koreanwith English abstract)

16)H. Y. Lee, C. H. Yu, S. K. Jeon and H. S. Lee, Bull. Inst. Basic Sci., Inha Univ. 4: 79-86 (1983).   (in Korean with English abstract)

7)K. Ueno and Y. Ojima, Japan. J. Ichthyol. 31: 338-344 (1984).

8)X. Yu, T. Zhou, K. Li, Y. Li and M. Zhou, Genetica 72: 225-236 (1987).

9)R. Arai, A. Suzuki and Y. Akai, Bull. Natl. Sci. Mus., Tokyo, (A) 14: 43-46 (1988). 10)R. Arai, Y. Akai and N. Suzuki, Bull. Natl. Sci. Mus., Tokyo, (A) 18: 73-77 (1992). 11)T. Ueda, R. Arai, Y. Akai, T. Ishinabe and H. Wu, Cytobios 86: 265-268 (1996).

12)T. Ueda, N. Mashiko, H. Takizawa, Y. Akai, T. Ishinabe, R. Arai and H. Wu, Ichthyol. Res. 44: 302-305 (1997).

13)T. Ueda, H. Naoi and R. Arai, Genetica 111: 423-432 (2001). 14)上田高嘉,宇都宮大教育学部紀要 59 Ⅱ : 27-31 (2009).

15)上田高嘉・飯島幸次・石鍋壽寛,宇都宮大教育学部紀要 57 Ⅱ : 19-25 (2009).

16)T. Ueda, M. Hayashi, N. Koide, T. Sofuni and J. Kobayashi, Chrom. Inf. Serv. 51: 12-14 (1991). 17)A. T. Sumner, Exp. Cell. Res. 75: 304-306 (1972).

18)T. R. Gregory, hppt://www.genomesize.com (2001).

19)B. John and G. L. G. Miklos, Ins. Rev. Cytol. 58: 1-114 (1979).

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21)M. Abuin, P. Martinez and L. Sanchez, Genome 39: 1035-1038 (1996). 22)T. Ueda and J. Kobayashi, La Kromosomo 58: 1967-1972 (1990). 23)A. Takai and Y. Ojima, Cytologia 64: 87-91 (1999).

Fig. 2.  C-banding karyotype of Rhodeus ocellatus ocellatus.

参照

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