「あの時代」に想いをはせて-証言者達からのメッセージ-:2.情報化時代の幕開け-みんながコンピュータに熱中した時代からのメッセージ
4
0
0
全文
(2) 小. 特. 集. • • 「. あ. の. 時. ハードウェアプラットフォーム PC. 年 代. Intel (68) Intel 4004(71). 70-. Microsoft (75) App I (76) NEC 75- Apple (77) TK-80 (76) NEC PC 8001 (79) IBM PC (81) 80- Macintosh (84) 東芝ラップ MS-DOS (85) 85-. トップ(85). 90-. 代. 」. に. UNIX (70). C (72). BSD 1.0(77). を. は. せ. て. • •. ARPANET (69) E-mail (71) FTP (73) TCP/IP (73-75). K& R C (78) UNIX V (83). Sun (82). SunOS 1.0 (83) [BSD 4.1ベース]. C++ (84). ANSI C (89). Cisco (84) Cisco AGS(86) [ユニプロセッサルータ]. HTTP 0.9(89) HTML (91) Mosaic (92)[ブラウザ] ] Netscape (94) Java (95). Linux (91) Windows95 (95). Amazon, Yahoo (95) XML 1.0 (98) Google (98). 95Windows XP (01) Windows Vista (06). 00-. 凡例. い. ソフトウェアプラットフォーム ネットワークプラットフォーム Internet UNIX/C. Intel 80386 (86) [32bitプロセッサ]. Pentium (93). 想. 起業. 要素技術・製品. Webサービス(WSDL, UDDI) (00). C# (01). システム. Web 2.0 (04). 概念. クラウド(06). 図 -2 情報化時代を拓いた 3 つの技術の共進化. か? その意味で,石田先生は,技術に対する鋭敏な感. た. 9),10). .Intel と Microsoft の驚異的な成長に見られる. 性をもって,稀有な役割を果たされたと言えよう.. ように,ここから,PC のハードウェアとパッケージソ. 特筆すべきは,これらの技術がすべて基盤技術であり,. フトウェア産業の発展が始まった.. そこから生まれる関連技術やビジネスへのインパクトに. 一方,我が国のコンピュータメーカは IBM に追い. 加え,現在に至る社会へのインパクトがきわめて大きい. つくことを目標に研究開発に邁進し,1980 年初頭には,. ことである.. IBM に伍すると言われる大型コンピュータを開発する までになった.しかし,大型コンピュータはオープン化. 1980 年代:PC 革命とオープン化がも たらすソフトウェア産業発展の光と影. と逆行した.IBM 互換を目指していた我が国のコンピ. 1980 年のベストセラー PC は Apple II であった.だ. 図 -3 に示すように,メインフレームよりはるかに安. ュータメーカは,1982 年に起きた,いわゆる IBM 事 件により技術戦略の転換を迫られた.. が,それはマニア向けであった.一方,IBM は PC 革. 価な PC の生産額が 80 年代後半にはメインフレームと. 命に乗り遅れ,PC 製品を持たなかった.. 拮抗し,やがて,メインフレームは減少の一途をたど. 1980 年 7 月,メインフレームコンピュータ文化に縛. った.. られない反逆者 13 名が,本社のあるニューヨーク州か. さらに,80 年代を通して,オブジェクト指向やソフ. ら遠く離れたフロリダ州ボカラトンにある IBM に集め. トウェアアーキテクチャなどのソフトウェア技術が発展. られた.彼らは,従来の IBM のやり方にはこだわらず,. した.しかし,1982 年から始まった「第 5 世代コンピ. 1 年間で IBM PC を開発し,1981 年に世に出した.こ. ュータ」などの我が国の情報処理分野の研究プロジェク. の開発をボカラトンで進めたのは,本社からの干渉を避. トは,世界のトレンドと異なる方向へ舵をきった.この. けるためであったと言われている. 11). .. 原因として, 「このようなプロジェクトが小さなグルー. IBM PC は,PC を,それまでのホビィツールからオ. プの閉じた 『信念』 から出て,広い情報処理の歴史的文脈. フィスの中心で使われるビジネスツールとして位置づけ. の下で深く検証されないまま走りだした」との指摘があ. た.さらに,Apple II をはじめ,当時の PC はソフトウ. る. ェアや外部インタフェースの互換性がなく,公開もさ. 情報システムもハードウェアのダウンサイジング,ア. れていなかったが,IBM PC は MS-DOS を標準 OS と. ーキテクチャのオープン化とともに,アプリケーション. し,インタフェースを公開することにより PC の標準を. ソフトウェアもハードウェアと独立したパッケージソフ. 確立した.これにより,多くのハードウェア,ソフトウ. トウェアへシフトした.しかし,現在に至るも,我が国. ェア企業が新規参入できるプラットフォームが形成され. のソフトウェア開発の主流は国内ユーザからの受託開発. 648. 情報処理 Vol.50 No.7 July 2009. 12). ..
(3) •••. ❷. 図 -4 世界で最初の Web ブラウザ Mosaic を公開し たサーバ (1995 年 イ リ ノ イ 大 学 の スーパーコンピュータ応 用センター(NCSA)にて. 青山撮影). 図 -3 パソコンとメインフレームの国内生産額推移 9) (著者の許諾を得て転載). にとどまり,「グローバルな競争力を持つソフトウェア. 著である.この理由はいくつか考えられるが,少なくと. 産業の育成に成功しているとは言えない」と指摘されて. も,次の 3 種類の外部性の効果を挙げることができる.. 13). いる. (1)ネットワーク外部性:文書を電子メールで交換する. .. ようになると,同一ワードプロセッサで作成した文. 1990 年代:Web が加速するソフトウェ アの価値連鎖 1991 年にスイスにある欧州原子核機構 (CERN) で. 書であると便利であるので,ユーザの多いワードプ ロセッサの価値が高まる.この結果,シェアの高い ワードプロセッサがますますシェアを高めるという 正のフィードバック,すなわち,増幅作用が働く.. Tim-Berners Lee が HTTP と HTML な ど の 一 連 の 技術を開発し,WWW(World-Wide Web)と名づけ, Web が誕生した. 翌,1992 年 に,CERN か ら 遠 く 離 れ た 米 国 中 西. (2)プラットフォーム外部性:広く普及しているハード. 部のイリノイ大学スーパーコンピュータ応用セン. (3)機能統合がもたらす外部性:ワードプロセッサの日. タ ー (NCSA) で ア ル バ イ ト を し て い た 学 生,Marc. 本語入力プロセッサはあらゆる入力で必要となるこ. Andreessen は HTTP と HTML を使えば,画像を含む. とから,よく使うアプリケーションがワードプロセ. さまざまな情報を容易に表現できる面白さに気づいた.. ッサと連携できると便利であるので,統合されたソ. ウェアや OS で使えるソフトウェアは利用機会が多 く,便利であるので,PC 上では,Windows 上で稼 働するソフトウェアの価値が高まる.. 彼は同僚の Eric Bina とともに Web ブラウザ Mosaic. フトウェアの価値が高まる.ワードプロセッサと表. の開発に熱中した.1991 年 12 月から始めた Mosaic. 計算,プレゼンテーションソフトウェアが統合され,. の開発は,1992 年 4 月に最初の版を NCSA のサーバ. いわゆる,パッケージのスイート化が進展した.. (図 -4) で公開するや,瞬く間に世界を席巻した. 14). .. これらの外部性は特定のソフトウェア製品が市場で一. Web は,情報システムがもたらす価値のルールを変. 人勝ち (Winner-takes-all) する効果をもたらす.. えた.その原理は,19 世紀の経済学者 Marshall が提唱. 1990 年,Microsoft は Windows 上で Office Suite を. した外部性(Externality)にある.彼は,製品本来の機. 提供し,外部性の効果を最大に活用した.. 能などによる価値を内部性(Internality)と呼び,それに. これに対して,Web は Windows のプラットフォー. 対し,製品を取り巻く外部の特性によって変動する価. ム外部性を無力化する一方でネットワーク外部性をグロ. 17). 値を外部性と定義した. .特に,ネットワークによっ. てもたらされる外部性をネットワーク外部性(Network. ーバルに展開する.Google, Amazon, e-Bay,あるいは,. と呼ぶ. Externality). Salesforce.com などの SaaS(Software as a Service)など, Web 上のサービスプロバイダは,グローバルなネット. 身近な例として,日本語ワードプロセッサソフトウ. ワーク外部性を活用し,急成長を遂げた.. ェアを挙げよう.80 年代,ジャストシステムの一太. 一方,我が国では,Web は高速データ通信のパイプ. 郎は高いシェアを占めていたが,現在は,Microsoft. としての認識が主であり,製品開発戦略においてグロー. の Word が 圧 倒 的 な シ ェ ア を 占 め て い る. 16). . 特 に,. Windows95 が発売された 95 年以降,シェアの差は顕. バルなネットワーク外部性を活用するビジョンはうかが えない. 情報処理 Vol.50 No.7 July 2009. 649.
(4) 小. 特. 集. • • 「. あ. の. 時. 代. 」. に. 想. い. を. は. せ. て. • •. Web が新たなプラットフォームとなった現在,Web 上でのサービス提供では,グローバルなネットワーク外 部性がもたらす価値をいかに捉えるかがビジネスの成否 を決めると言っても過言ではない.. 2009 年 : ガラパゴス化を超えて 2008 年 1 月 6 日の日本経済新聞は社説で,我が国の 情報産業が「ガラパゴス化」に陥っていると指摘し, 「IT 産業は世界を目指せ」と訴えた.これ以後, 「ガラパゴス 化」 は情報産業を象徴するキーワードとなった.しかし, グローバルな視点から見ると,我が国の情報技術の研究 も深刻な問題を抱えている.トップレベルのソフトウェ ア関係の国際会議では,近年,中国などが台頭する反面, 我が国からの論文の採択や参加が減っている.Web や. 図 -5 New Software Industry Conference(青山撮影) 中 央 は ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ リ ス ト と し て 著 名 な SpikeSource CEO の Kim Polese,右端はソフトウェア工学が専門の Carnegie Mellon 大学の Tony Wasserman. ディジタルライブラリの普及で海外からの情報の入手が 容易になっていることを考えると,我が国の情報技術の 研究開発は 「ブラックホール化」 しているのではないか? 情報技術は一層多様化し,トレンドも 1 つではない. 一方,2008 年秋からの世界経済激変に象徴されるよう に,グローバル化の中で,世界と日本の結びつきは,技 術と経済の両面でますます強まっている.これまで,石 田先生が尽力されてきたグローバルな視点からの技術の 位置づけや社会へのメッセージの発信が,現在ほど重要 な時代はないであろう. 今,まさに,ソフトウェアのサービス化やクラウドコ ンピュータティングなど,新たな情報化時代の幕開けを 迎えている. 8),15). .世界に目を向け,挑戦することが石. 田先生のメッセージを活かすことではないだろうか?. エピローグ : ソフトウェア産業の未来 2007 年 4 月 30 日,シリコンバレーにある Microsoft. Research を会場として,The New Software Industry Conference が開催された.ほぼ一日,ソフトウェアの サービス化など,次世代のソフトウェア産業の姿につい て,パネル討論形式で白熱した議論が戦わされた.興味 深かったのは参加者の構成である.講演者の中でソフト ウェア工学などの研究者は 1/3 で,その他は,経営学者 とシリコンバレーの著名ベンチャーキャピタリストであ った (図 -5) . 情報技術は社会に浸透し,社会活動と不可分となって いる.情報技術の研究には,技術にとどまらず,経営学. 参考文献 1)石 田 晴 久: マ イ ク ロ プ ロ セ ッ サ( ワ ン チ ッ プ CPU), 情 報 処 理,. Vol.15, No.9, pp.702-709 (Sep. 1974). 2)石田晴久:コンピュータ・ネットワークにおける通信制御用コンピュ ータ,情報処理,Vol.16, No.7, pp.622-628 (July 1975). 3)石田晴久:ベル研究所の軽装 OS̶UNIIX,情報処理,Vol.18, No.9, pp.942-949 (Sep. 1977). 4)嶋 正利,西村恕彦,石田晴久:座談会:マイクロコンピュータの誕 生,bit, Vol.11, No.11, pp.4-14 (Nov. 1979). 5 )Kernighan, B. W. and Ritchie, D. M. : The C Programming Language, Prentice Hall (1978). [ 石田晴久(訳):プログラミング言 語 C, 共立出版 (1981)]. 6)相田 洋,大橋 敦:ソフトウェア帝国の誕生,新・電子立国,Vol.1, NHK 出版 (1996). 7)青山幹雄:コンピュータが消える日:インターネット時代のソフトウ ェア,情報処理,Vol.41, No.5, pp.523-527 (May 2000). 8)青山幹雄:サービス指向アーキテクチャの誕生と進化,ソフトウェア エンジニアリング最前線 2008, 近代科学社 , pp.9-16 (Sep. 2008). 9)浅井澄子:情報産業の統合とモジュール化,日本評論社 (2004). 10)Gawer, A. and Cusumano, M. A. : Platform Leadership, Harvard Business School Press (2002). [ 小林敏男(監訳):プラットフォーム リーダーシップ,有斐閣 (2005)]. 11)Chposky, J. and Leonsis, T. : The Blue Magic: The People, Power and Politics behind the IBM Personal Computer, Facts on File (1988). [ 近藤純夫(訳):ブルーマジック,経済界 (1989)]. 12)木村英紀,ものつくり敗戦,日本経済新聞社 (2009). 13)National Research Council : Assessing the Impacts of Changes in the Information Technology R&D Ecosystem, National Academy Press (2009). 14)Reid, R. H. : Architects of the Web, John Wiley & Sons (1997). [ 山 岡洋一(訳): インターネット激動の 1000 日(上)(下),日経 BP 社 (1997)]. 15)玉置亮太,中田 敦:さらば,ビル・ゲイツ,日経コンピュータ, 2008 年 6 月 15 日号 , pp.36-53. 16)田中辰雄ほか:ネットワーク外部性の経済分析,競争政策研究セン ター共同研究報告書,No.CR 01-03 (Sep. 2003), http://www.jftc. go.jp/cprc/ 17)Varian, H. R. : Intermediate Microeconomics, 7th ed., W. N. Norton & Co. (2005). [ 佐藤隆三(監訳),入門ミクロ経済学,勁草書 房 (2007)]. (平成 21 年 5 月 7 日受付). などの視点,実務の視点も交え,かつ,グローバルな視. 青山 幹雄(正会員) [email protected]. 点から議論を深める必要があるのではないだろうか.. 1980 年岡山大学大学院工学研究科電子工学専攻修了.富士通などを 経て,現在,南山大学情報理工学部ソフトウェア工学科教授.要求工学, サービス指向アーキテクチャ(SOA ),自動車などの組込みソフトウェ アの研究に従事.. 650. 情報処理 Vol.50 No.7 July 2009.
(5)
図
関連したドキュメント
音楽は古くから親しまれ,私たちの生活に密着したも
トルコ石がいつの頃から人々の装飾品とし て利用され始めたのかはよく分かっていない が、考古資料をみると、古代中国では
関係委員会のお力で次第に盛り上がりを見せ ているが,その時だけのお祭りで終わらせて
わからない その他 がん検診を受けても見落としがあると思っているから がん検診そのものを知らないから
その後、時計の MODE ボタン(C)を約 2 秒間 押し続けて時刻モードにしてから、時計の CONNECT ボタン(D)を約 2 秒間押し続けて
しかしながら、世の中には相当情報がはんらんしておりまして、中には怪しいような情 報もあります。先ほど芳住先生からお話があったのは
★代 代表 表者 者か から らの のメ メッ ッセ セー ージ ジ 子どもたちと共に学ぶ時間を共有し、.
1に、直接応募の比率がほぼ一貫して上昇してい る。6 0年代から7 0年代後半にかけて比率が上昇