107∼110 宇 大 演 報
第 53 号(2017)資 料
宇都宮大学船生演習林に植栽されたスギコンテナ苗の生育状況(Ⅰ)
Growth situation of containerized seedlings planted of
Cryptomeria japonica
in University forest at Funyu in Utsunomiya University (I)
関向 仁志1・山嵜 丈生1・大島 潤一1・飯塚 和也1Hitoshi SEKIMUKAI1, Takeo YAMAZAKI1, Jyunichi OHSHIMA1, Kazuya IIZUKA1 1
宇都宮大学農学部 〒 321-8505 栃木県宇都宮市峰 350 1 Faculty of Agriculture, Utsunomiya University 321-8505, Japan
1. はじめに 森林・林業白書(林野庁 2016)ではコンテナ苗に ついて,「従来から生産されている裸苗に比べて育 苗期間が短く,床替え作業が不要で,育苗作業の効 率化や低コスト造林に資する「コンテナ苗」の生産 の拡大に取り組んでいる。コンテナ苗は裸苗と異な り,根に培地がついている状態で出荷できることか ら,植栽後の活着率が高く,通常の植栽適期以外で も植栽が可能であり,このため,伐採,地拵え,植 栽を同時期に一貫して行うことが可能となる。」と している。また,第 126 回日本森林学会大会(2015 春) において,「コンテナ苗研究の現在」と題した企画 シンピジウムが開催」され,この大会を受け,梶本 ら(2016)は,低コスト再造林の実現のコンテナ苗 をどう活用するかという,研究の現況と今後の課題 に関して報告している。このように,最近,林業界 では,コンテナ苗の活用による林業の新たな展開に 関して期待が高まっている。 宇都宮大学農学部附属演習林では,演習林内の約 0.5ha の皆伐区後の再造林として,2016 年 5 月にス ギのコンテナ苗を初めて導入し,対照として従来の 裸苗も事業的に植栽した。そこで,コンテナ苗の成 長等に関するデータを収集する目的で,造林地の一 部に調査区を設定した。 本報告は,植栽から 1 成長 期後の成長等を調査したものである。 2. 材料と方法 調査対象のスギ苗は,栃木県鹿沼市の種苗業者か ら購入した 2 年生のコンテナ苗,および対象として従来 から植栽されている 3 年生の裸苗である(図 -1)。 苗の形態調査は,コンテナ苗と裸苗、それぞれ 10 本を無造作に選び,以下に示す 4 項目、苗高(H), 根元径(D)および地上部(T)(枝葉と幹)と地下部(R) (根)の全乾燥重量を測定し,苗の指標となる比較苗 高(H/D),弱さ度(H/T),および T/R 率を算出した。 つぎに,造林木の特徴を調査する目的で,宇都宮 大学船生演習林 2 林班と小班(標高 280 m)において、 皆伐作業終了の翌年度,裸地状態の林地に 2016 年 5 ⯪⏕₇⩦ᯘ㻞ᯘ⌜䛸ᑠ⌜ 䠘ୖ㒊䠚 㻯㻝 ⦆ഴᩳ䚷㻟ᗘ స 䠘ୗ㒊䠚 㻞㻠ᮏ స 䠘ୗ㒊䠚 ᴗ ㊰ 䠄䝠䝜䜻〄ⱑ᳜᱂ᆅ䠅 㻯㻞 㻺㻝 㻟㻜ᮏ 䝁䞁䝔䝘ⱑ᳜᱂ 㻺㻞 㻟㻜ᮏ 䚷 㻯㻝䛛䜙㻯㻠䠖ྛ㻞㻠ᮏ䚷㻟ิ㻤⾜ 㻞㻠ᮏ 䠄䝇䜼〄ⱑ᳜᱂ᆅ䠅 㻯㻡䠖䚷㻟㻜ᮏ 㻝㻡ิ㻞⾜ 㻺㻟 㻟㻜ᮏ 〄ⱑ᳜᱂ 㻯㻟 㻞㻠ᮏ 㻺㻝䛛䜙㻺㻟䠖ྛ㻟㻜ᮏ䚷㻝㻜ิ㻟⾜ 㻯㻠 䠘ୖ㒊䠚 ഴᩳᆅ䚷㻟㻜ᗘ 㻞㻠ᮏ 㻞㻠ᮏ 㻯㻡 䠘ୗ㒊䠚 㻟㻜ᮏ 図− 1 コンテナ苗(左)と裸苗(右)の写真 1スパン: 20 cm 図 -2 調査区の位置の概略
Bull. Utsunomiya Univ. For.
108 宇都宮大学演習林報告第 53 号 2017 年3月 月中旬に、コンテナ苗と裸苗を植栽間隔 1.8m(3000 本 /ha)で造林した。調査区は図 -2 に示したように、 コンテナ苗の調査区は,C1 区から C5 区,1 区当た り 24 本(C1 から C4 区:3 列 8 行)と 30 本(C5 区: 15 列 2 行)の合計 126 本である。一方,裸苗は,作 業路を隔て西側の調査区 N1 区から N3 区で 1 区当た り 30 本(10 列 3 行)の合計 90 本である。緩斜面の 上部から下部に向けて C1 区から C3 区,また N1 区 から N3 区の下方の隣接地に C4 区を設定した。そし て,C5 区は C4 区の西方の傾斜面で,等高線上に横 長の矩形の調査区を設定した。地形は,C5 区は傾斜 面であるが,それ以外の調査区は緩斜面である。 現地調査は,1 成長期の 11 月中旬に,成長量と枯 損木調査を行った。樹高と当年成長量を測定し,そ こから植栽時の樹高を算出した。また,枯損木につ いては,その原因を,「植栽木の植穴からの引き抜 け」,「活着不良による立枯れ」,「植生による被圧」, 「獣害」,および「不明」として調査した。 3. 結果と考察 3.1 苗の形態 2 年生のコンテナ苗と 3 年生の裸苗の形態の概要 を表 -1 に示した。平均値について見ると,苗高,根 元径,および地上部と地下部の全乾重量は,それぞ れ 38cm と 63cm,0.5cm と 1.1cm,および 11.00g と 52.22 g,2.23g と 22.84g を示した。コンテナ苗と裸 苗の値の比は,それぞれ 0.60,0.5 および 0.21,0.10 であった。それらの比は,苗高と根元径の成長形質 と比べ,地上部と地下部の全乾重量は,より低い値 を示した。このことは,コンテナ苗は裸苗と比べ, 2 年生と 3 年生の違いはあるが,重量成長が遅いこ とが示唆された。比較苗高,弱さ度,および T/R 率 は,全ての測定値において,コンテナ苗は裸苗より も,1.4 ∼ 2.8 倍,高い値を示した。それらの 3 項目 の値は,苗の良否を示す指標で,一般的に,小さい 方が良い苗と言われている。石田(2016)は,栃木 県と同じ北関東育種区に属する群馬県での調査にお いて,2 年生のコンテナ苗の比較苗高,弱さ度,お よび T/R 率は,それぞれ 98,5.5,3.0 であり,3 年 生の裸苗では,それぞれ 60,1.5,2.2 と報告してい る。本調査では,コンテナ苗で 81,3.6,5.0,また, 裸苗で 58,1.3,2.3 の値を得た。両者の調査におけ る各指標は,ほぼ同様な値を示した。 つぎに,コンテナ苗と裸苗について,地上部と地 下部の全乾重量と苗高との関係を図 -3 に示した。コ ンテナ苗では,両全乾重量と苗高の間には,有意な 関係が認められなかった。一方,裸苗では,両全乾 重量と苗高の間に,有意な正の相関が認められた(地 㔜㔞 㻌㻌㻌㻌㻌㻌㔜㔞 ༊䚷䚷ศ ಶయᩘ 㻌ⱑ㻌㧗䚷 ᰿ඖᚄ ᆅୖ㒊 ᆅୗ㒊 ẚ㍑ⱑ㧗 ᙅ䛥ᗘ 㼀㻛㻾㻌⋡ 㻔ᮏ㻕 䠄㻴䠅㻔㼏㼙㻕 㻔㻰㻕㻌㻔㼏㼙㻕 㻔㼀㻕㻌㻔㼓㻕 㻔㻾㻕㻌㻔㼓㻕 㻔㻴㻛㻰㻕 㻔㻴㻛㼀㻕 䝁䞁䝔䝘ⱑ㻌㻔㻯㻕 㻝㻜 ᖹ䚷䚷ᆒ 㻟㻤 㻜㻚㻡 㻝㻝㻚㻜㻜 㻞㻚㻞㻟 㻤㻝 㻟㻚㻢 㻡㻚㻜 䠄㻞ᖺ⏕䠅 ᶆ‽೫ᕪ 㻠 㻜㻚㻝 㻞㻚㻠㻥 㻜㻚㻡㻠 㻝㻜 㻜㻚㻤 㻜㻚㻣 〄㻌㻌㻌ⱑ㻌㻌㻌㻌㻌㻔㻺㻕 㻝㻜 ᖹ䚷䚷ᆒ 㻢㻟 㻝㻚㻝 㻡㻞㻚㻞㻞 㻞㻞㻚㻤㻠 㻡㻤 㻝㻚㻟 㻞㻚㻟 䠄㻟ᖺ⏕䠅 ᶆ‽೫ᕪ 㻠 㻜㻚㻝 㻝㻟㻚㻝㻥 㻢㻚㻠㻣 㻠 㻜㻚㻟 㻜㻚㻡 㻞 㻚 㻞 㻤 㻚 㻞 㻠 㻚 㻝 㻜 㻝 㻚 㻜 㻝 㻞 㻚 㻜 㻡 㻚 㻜 㻜 㻢 㻚 㻜 㻺 㻛 㻯 表− 1 コンテナ苗と裸苗の測定結果 80 60 m) 40 㧗㧗 (c C HT C HR 20 ⱑ C-HT C-HR N-HT N-HR 0 0 20 40 60 80 㔜㔞 (g) 図− 3 コンテナ苗と裸苗における全乾重量と苗高の関係 略号:C-HT : コンテナ苗 ‐ 苗高と地上部全乾重量の関係 C-HR : コンテナ苗 ‐ 苗高と地下部全乾重量の関係 N-HT : 裸苗 ‐ 苗高と地上部全乾重量の関係 N-HR : コンテナ苗 ‐ 苗高と地下部全乾重量の関係 図− 4 コンテナ苗と裸苗における地下部と地上部の全乾重量の関係 140 y = 3.434x + 3.356 r = 0.74 ** 100 120 㔞㔞 (g ) 䝁䞁䝔䝘ⱑ 〄 ⱑ ⥺ᙧ (䝁䞁䝔䝘ⱑ) 60 80 䛾䛾 㔜 㔞 ⥺ᙧ (䝁䞁䝔䝘ⱑ) ⥺ᙧ (〄 ⱑ) y = 1.410x + 20.02 40 60 ᆅ ୖ 㒊 䠄T 䠅 y 1.410x 20.02 r = 0.69 * 0 20 0 10 20 30 40 ᆅୗ㒊 䠄R䠅䛾㔜㔞 (g) ᆅୗ㒊 䠄R䠅䛾㔜㔞 (g)
109 宇都宮大学船生演習林に植栽されたスギコンテナ苗の生育状況(Ⅰ) 上部と苗高;p<0.01。地下部と苗高;p<0.05。)。地 上部において,苗高と全乾重量の比は,弱さ度とい う指標であり,バランスのとれた苗では,両形質の 間には正の相関が認められると推察される。 また,T/R 率に関する全乾重量における地下部(根) (R)と地上部(枝葉と幹)(T)の関係を図 -4 に示した。 コンテナ苗と裸苗ともに,有意な正の相関(p<0.05) が認められた。また,コンテナ苗は裸苗と比べ,こ れらの関係のグラフの傾きが 2.4 倍高い値を示した。 このことは表 -1 で示したコンテナ苗と裸苗の比が 2.2(=5.0 / 2.3)という値を裏付けていた。 以上のことから,2 年生のコンテナ苗は,3 年生 の裸苗と比較し,比較苗高,弱さ度,T/R 率が高い 値を示したことから,形態的に細長く軽量であるこ とが示唆された。 3.2 植栽木の調査 設定した調査区は,2016 年 5 月中旬に 150cc の ディプルを用いた植穴に,コンテナ苗を差し込み植 栽し,同年の 11 月中旬に成長に関する調査を行った。 コンテナ苗の調査区は,C1 区から C5 区の 5 ブロッ ク計 126 本で設定した。対照の裸苗は,従来どおり 唐鍬を用い植栽し,N1 区から N3 区の 3 ブロック計 90 本の調査区を設定した(図 -2)。 調査結果の概要を表 -2 に示した。コンテナ苗の現 存率は 96%,裸苗は 92%であった。コンテナ苗で は 5 本が枯損木であったが,全て植穴からの引き抜 けであった。特に,C4 区 4 本が集中していた。原 因のひとつは,根茎が発達する過程の土壌緊縛力が 弱い時期に,風により引き抜かれたことが推察され るものの,植え方や土壌に問題あった可能性も考え られる。一方,裸苗の枯損木 7 個体は,各調査区に 存在し,全て活着不良による立枯れと推察され,引 き抜かれた個体は存在しなかった。なお、当調査区 では、11 月中旬現在において、ノウサギやシカによ る獣害の発生は観察されていない。 1 成長期後に現存していた個体について,植栽次 と 1 成長期後の樹高の関係を図 -5 に示した。コン テナ苗(n = 121)と裸苗(n = 83)の両方ともに, これらの関係の間に有意な正の相関が認められ,ま た,伸長率である回帰直線の傾きはほぼ同様な値を 示した。1 成長期間の伸長量は,コンテナ苗で 23 㻌㻌㻌㻌㻝ᡂ㛗ᮇᚋ ⌧Ꮡᮏᩘ䛾 䚷䚷㻝ᡂ㛗ᮇ䛾 䚷䚷㻝ᡂ㛗ᮇᚋ䛾 ༊ ศ 䝥䝻䝑䝖᳜᱂ᮏᩘ ᯤᦆᮌ ⌧Ꮡᮏᩘ ᳜᱂䛾ᶞ㧗 㻔㼏㼙㻕 ఙ㛗㔞 㻔㼏㼙㻕 ᶞ㧗 㻔㼏㼙㻕 ༊䚷䚷ศ ᯤᦆᮌ ⌧Ꮡᮏᩘ ᳜᱂䛾ᶞ㧗㻌㻔㼏㼙㻕 䚷䚷ఙ㛗㔞䚷㻌㻔㼏㼙㻕 㻌㻌㻌㻌ᶞ㧗㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻔㼏㼙㻕 㻔༊㻕 㻔ᮏ䠅 㻔ᮏ㻕 㻔ᮏ㻕 ᖹᆒ 㻌ᶆ‽೫ᕪ ᖹᆒ 㻌ᶆ‽೫ᕪ ᖹᆒ 㻌ᶆ‽೫ᕪ 㻯㻝 㻞㻠 㻜 㻞㻠 㻟㻣 㻣 㻞㻞 㻥 㻢㻜 㻝㻞 㻯㻞 㻞㻠 㻜 㻞㻠 㻟㻥 㻠 㻝㻤 㻤 㻡㻣 㻝㻠 㻯㻞 㻞㻠 㻜 㻞㻠 㻟㻥 㻠 㻝㻤 㻤 㻡㻣 㻝㻠 䝁䞁䝔䝘ⱑ 㻯㻟 㻞㻠 㻝 㻞㻟 㻟㻤 㻟 㻞㻝 㻢 㻡㻥 㻣 㻯㻠 㻞㻠 㻠 㻞㻜 㻟㻣 㻡 㻞㻝 㻢 㻡㻤 㻣 㻯㻡 㻟㻜 㻜 㻟㻜 㻟㻤 㻡 㻟㻞 㻝㻜 㻢㻥 㻝㻟 య 㻝㻞㻢 㻡 㻝㻞㻝 㻟㻤 㻡 㻞㻟 㻥 㻢㻞 㻝㻝 㻺㻝 㻟㻜 㻞 㻞㻤 㻡㻥 㻝㻜 㻠㻜 㻝㻜 㻥㻥 㻝㻣 〄䚷䚷ⱑ 㻺㻞 㻟㻜 㻞 㻞㻤 㻡㻞 㻥 㻠㻣 㻝㻢 㻥㻥 㻞㻝 㻺㻟 㻟㻜 㻟 㻞㻣 㻡㻣 㻤 㻡㻝 㻝㻞 㻝㻜㻤 㻝㻡 య 㻥㻜 㻣 㻤㻟 㻡㻢 㻝㻜 㻠㻢 㻝㻠 㻝㻜㻞 㻝㻡 表− 2 植栽された苗の生育状況 160 y = 1.24x + 32.29 r = 0.66 ** 120 140 (cm) 80 100 ᚋᚋ 䛾䛾 ᶞ 㧗 䝁䞁䝔䝘ⱑ 40 60 1 ᡂ 㛗 ᮇ ᚋ 䝔䝘ⱑ 〄 ⱑ y = 1.25x + 13.74 r = 0.55 ** 0 20 0 20 40 60 80 100 ᳜᱂䛾ᶞ㧗 (cm) 図− 5 コンテナ苗と裸苗の植栽時と1成長期後の樹高の関係 y = 1 77x + 2 67 120 y = 1.77x + 2.67 r = 0.64 ** 80 100 cm 䠅䠅 60 80 ᚋ 䛾 ᶞ 㧗 䠄c y = 1.16x + 14.15 40 1 ᡂ 㛗 ᮇ ᚋ C1䠉C4༊ C5༊ r = 0.62 ** 0 20 C5༊ 20 30 40 50 60 ᳜᱂䛾ᶞ㧗 䠄cm䠅 図− 6 コンテナ苗の C 区における植栽時と1成長期後の樹高の関係
110 宇都宮大学演習林報告第 53 号 2017 年3月 (±9)cm,裸苗で 46(±14)cm であり,その結果, 樹高はコンテナ苗で 62(±11)cm,裸苗で 102(±15) cm であった。八木橋ら(2016)は,コンテナ苗の 樹高成長は,植栽時の苗の形状比が平均 60 程度の 集団であれば,裸苗と同等以上であると指摘してい る。本調査のコンテナ苗の比較苗高(形状比)は平 均値で 81(±10)(表 -1)であり,1 成長期間におい てコンテナ苗は裸苗の半分の伸長量であったが,伸 長率はほぼ同様な値を示した。このため,きめ細か く調査するためには,集団の平均値の比較でなく, 個体ごとに検討する必要がある。 つぎに,各調査区に関して検討した。コンテナ苗 について,植栽時の樹高は,平均 38cm であり,C1 区から C5 区のブロック間には,分散分析の結果, 有意差は認めなかった。しかしながら,1 成長期後 の樹高には統計処理的な有意差が認められ,C1 区 から C4 区の 4 ブロック間に有意差が存在しなかっ たが,C5 区では,前述した 4 ブロックの間に有意 差が認められた。図 -5 に示したコンテナ苗について, C1 区から C4 区の 91 本と C5 区の 30 本に区分して 植栽次と 1 成長期後の樹高との関係を図 -6 に示し た。両方とも有意な正の相関(p<0.01)が認められた。 1 成長期後の平均伸長量は,C5 区で 32cm,他の 4 区で 21cm であり,伸長率を示す回帰直線の傾きが, C5 区では他の 4 区の集団と比べ,高い値を示した。 伸長率の相違の要因のひとつは,地形による風の影 響と推察される。C1 区から C4 区は,緩斜面のため, 風の吹きさらしとなり,直接植栽木に影響の推察さ れる苗の引き抜けによる枯損木が 5 本存在した。一 方,C5 区では,苗の枯損木が存在しなかった要因 のひとつは,傾斜地であり風下ならば,風の影響が 緩和されたことが推察される。さらに,C1 区から C4 区に比べて,礫が少なく土壌 A 層が厚かった可 能性も推察された。 以上のことから,1 成長期間のコンテナ苗と裸苗 の集団でみると,伸長率はほぼ同様な値を示した。 また、コンテナ苗の生育は、風の影響を受ける可能 性が推察された。さらに,土壌の礫の存在や A 層厚 さにも関係する可能性が推察された。 4. おわりに 本報告は,宇都宮大学演習林で 2016 年 5 月に, 初めてスギコンテナ苗を植栽し,裸苗を対照とした 調査区における,1 成長期後の 11 月に諸形質を調査 した結果である。現存本は,獣害や雪害が懸念され る越冬期以前の本数であるため,来年 4 月以降生育 状況の調査をする必要がある。その後,植生との競 争や下刈りによる損傷等の調査,コンテナ苗の生育 状況の把握には必須である。今後,コンテナ苗と裸 苗の成長等諸形質に関する生育状況のデータの蓄積 を図るため,モニタリングを進めることにしている。 引用文献 石 田 敏 之(2016) ス ギ コ ン テ ナ 苗 木 の 形 質 と 植 裁 当 年 の 成 長 量 . http://www.pref.gunma.jp/07/ p13700545.html (2016 年 11 月 15 日アクセス) 梶本卓也・宇津木 玄・田中 浩(2016)低コスト 再造林の実現にコンテナ苗をどう活用するか−研 究の現状と今後の課題−.日本森林学会誌 98: 135–138. 林野庁(2016)造林等に要する経費の縮減に向けた 取組.平成 28 年度 森林・林業白書.全国林業 改良普及協会:19–21. 八木橋 勉・中谷友樹・中原健一・那須野 俊・櫃 間 岳・野口麻穂子・八木貴信・齋藤智之・松本 和馬・山田 健・落合幸仁(2016)スギコンテナ 苗と裸苗の成長と形状比の関係.日本森林学会誌 98:139–145.