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SOZAI (工業素材) こそ日本の活力源

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Academic year: 2021

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同時発表: 筑波研究学園都市記者会(資料配布) 文部科学記者会(資料配布) 科学記者会(資料配布) 1

SOZAI(工業素材)こそ日本の活力源

― 近年の国際物質フローから分析― 2009 年 2 月 27 日 独立行政法人物質・材料研究機構 概要 1.独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄)、材料ラボの原田 幸明ラ ボ長は、貿易による国際的な物質フローの近年の状況をまとめて、分析した結果 をこの 3 月に出版される日本金属学会誌に発表する。 2.分析の結果、世界の物質フローが急速に変化している中で、日本は各種金属な ど殆どの工業素材において基軸的な位置を依然として占めており、最大の素材貿 易国となっている。 3.世界全体では、物質フローは従来の米欧日の三軸構造から東・南・北ヨーロッ パ、中央・東アジアへと広まりを見せており、最大の鉄スクラップ輸入国はトル コ、中国は鉄製品の輸出国になっているなど従来の理解とは異なった状況が生じ ている。 4.そのような中で日本の輸出に対する工業素材の割合は 1990 年代から急速に伸び ており、現在では 20%を超えて、機械製品、電子製品を上回る割合となり、工業素 材産業は日本の国際競争力を支える産業になってきている。 5. Engineering Material として総称される鉄鋼、非鉄金属、化学製品、プラスチ ック等の工業素材は、日本では個別分野で統計処理がされるため総体としてその 伸長を把握することができてなかったが、今後は”SOZAI”として戦略的に世界に 打ち出していくべきだと提言している。 15.00 20.00 25.00 1988 1992 1996 2000 2004 machine electric equipment engineering materials vehicle 産業機械 電子機器 工業素材 輸送機械 日本の輸出シ ェア (%)

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研究の背景 物質・材料研究機構が 2007 年初頭に「2050 年までの資源消費予測」を発表したよ うに世界の資源需要は急速に拡大しており、金融経済の危機の中においても、これま で物的発展の圏外にあった 80%の人々がその豊かさを求めて資源を消費していく構造 は基本的に変わりはない。 このような中で、世界の物質フローの構造も変化してきており、その中での日本の 位置も的確に把握して置くべきである。 本研究では、国連の貿易統計である Comtrade のデータをもとに、各種素材のトレー ドフロー(貿易にともなう物質フロー)をビジュアライズしつつ整理し、世界全体の中 での関係をとらえやすくすると共に、その分析を行った。

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3 成果の内容 1.トレードフロー図の作成 図 1 に鉄のトレードフローの図を示す。図中の橙丸に白抜きの数字が上位 20 位に 入った輸出超過国であり、数字はその輸出超過分の金額を示している。一方で緑色の 丸に赤の数字は輸入超過国である。国名は国連の国名コード(二文字)を使用した。各 国の位置は極力地図に近づけることを目指したが、フローの線を描きやすくするため にヨーロッパを肥大化させるなどかなりのデフォルメを行っている。矢印は二国間の 貿易の流れである。矢印がありながら数字の入っていない国があるが、それらは輸出 入の上位 20 カ国に無かった国々である。二国間の貿易の金額は矢印に即して記載し線 の太さもそれに比例させた。双方向で大量の取引がある場合には、金額の多い流れを 示し、数値としては両者を矢印の向きに合うほうを上にして二段に記載した。 このように整理することで、世界の中の日本の位置が見えてくる。 このデータは、鉄だけでなく、アルミ、銅、ニッケル、金、白金、コバルト、タン グステン、タンタルおよびプラスチック、化学製品についてフロー図が作成されてい る。 なお、同様のデータは鉄合金のレアメタル原料である各種フェロアロイについて、 日本鉄鋼協会 196・197 西山記念講座「鉄鋼原料の動向と製鉄技術の新展開」に記載し ている、 AU CN CH BE CZ DE ES FR HK IT JP KR MX PH RU US ZA GB CA PL AT LX NO CO MY SG SA DM IE SE ND NG PT LB LT DK NZ SV GT KZ FI EE IS RO MK SI BA KW BR IL TH BY HU GR TK PK UA MA IQ AE DZ YE MD SY SK CL IN ID AR PE PG SR MN TZ GH MZ VE CU ZM BW BG NC AL IR HR 72 Fe 2007 1,000,000,000$ BN EZ ZW 16.9 8.32 2.51 1.6 9.9 0.2 2.5 2.4 0.6 7.4 6.69 9.5 12.2 15.4 12.1 2.54 3.2 4.62 7.06 1.56 1.77 1.65 4.34 4.30 2.26. 3.74 3.08 3.06 2.95 2.39 2.16. 2.85 2.30 7.953.43 1.55 1.66 1.29 4.92 21.8 1.60 3.95 2.88 4.0 2.24 2 1.65 6.9 4.1 1.5 7.5 4.1 1.6 5.74 3.28 2.83 2.78 2,37 2,32 2,30 2.11 1.60. 1.98 1.84 1.92 1.90 1.83 1.54 1.48 1.38 1.27 図1 鉄のトレードフロー図 (2007年、価格基準)

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2.日本は最大の工業素材貿易国 マテリアルフローの中で、日本は必ずといってよいように重要な位置を占めている。 世界各国の貿易輸出入の金額を、それぞれの素材に対して積み上げてみたのが図 2 で ある。縦軸に素材貿易金額の多い代表的な国々を配し、横軸のゼロから左側が輸入超 過分、右側が輸出超過分の金額であり、素材ごとに積み上げて表示している。 日本は、輸出、輸入ともに最大級の国に位置している。特に、最大と三位の輸出 国は最近の価格上昇の大きいニッケルを算出・輸出しているロシアとカナダであり、 総合的には実質素材輸出一位の位置にいるといってよいだろう。また、輸出量の多い 国で、ドイツはプラスチック、中国は鉄と比較的特化しており、日本、アメリカ、ベ ルギーがプラスチック、鉄、銅、原料素材などを総合的に輸出している。 輸入額の上位 5 か国はイタリア、アメリカ、日本、中国、韓国である。中国はプ ラスチックの輸入が多くの位置を占め、イタリア、韓国、アメリカは鉄が輸入になっ ている。これらの国々は相対的に安価な普遍性高い素材を輸入し、それを加工した製 品を製造していく傾向が強いものと考えられる。この上位 5 カ国に次ぐトルコとタイ ではよりこの傾向が強い。それに対して日本は、ニッケル、アルミニウム、白金の輸 入額が大きく、より付加価値の高い部材などの製造を指向していると考えられる。

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5 3.崩れている米独日の三極構造 図 3 に 1992 年の鉄の国際トレードフローを示した。このフローは、典型的な米日欧 の 3 極構造をなしており、アメリカ(US)、日本(JP)、ドイツ(DE)を核としたハブ状の フローが形成されている。これが前に示した図 1 の 2007 年になるとアメリカの相対的 位置は弱まり、アジアでは日本、韓国(KR)、中国(CN)の鼎立状態が成立し、その重心 は日本から中国に移動してきている。ヨーロッパでもドイツを軸とした動きから、フ ランス(FR)、ベルギー(BE)、イタリア(IT)のネットワーク型に変化してきている。さ らには、輸入国としてのイタリア、チェコ(CZ)、輸出国としてのクロアチア(SI)、オ ーストリア(AT)、スウェーデン(SE)、フィンランド(FI)など南東北欧諸国の比重が強 まってきている。著しい変化はロシア(RU)およびウクライナ(UA)、トルコ(TK)などユ ーラシア大陸中央部でのトレードフローの増大であり、1992 年段階で顕著であったア メリカへの流れおよび東南アジア諸国への流れを凌いでしまっている。なお、鉄スク ラップ最大の輸出国はトルコである。国としては韓国が輸出型から輸入型に変わり、 それ以上の変化として 1992 年にはアメリカに次ぐ二位の輸入国だった中国が、日本に 迫る二位の輸出国に変化を遂げていることである。このような流れの変化を良く捉え ておく必要がある。 AU CN CH BE CZ DE ES FR HK IT JP KR MX PH RU US ZA GB CA PL AT LX NO CO MY SG SA DM IE SE ND NG PT LB LT DK NZ SV GT KZ FI EE IS RO MK SI BA KW BR IL TH BY HU GR TK PK UA MA IQ AE DZ YE MD SY SK CL IN ID AR PE PG SR MN TZ GH MZ VE CU ZW BW BG NC AL IR HR 72 Fe 1992 1,000,000$ 2500 1340 BN EZ 6560 3900 1500 1340 1330 1330 924 592 558 438 358 5000 3300 1400 1300 1100 980 790 760 750 710 710 450 380 270 0 1730 937 1730 1620 1280 1190 1150 1140 629 1110 1030 832 708 670 642 625 612 598 580 568 552 512 497 502 497 497 366 376 365 327 520 317 314 314 303 274 US 図3 1992年時点での鉄のフロー 日独の輸出と米の輸入の三極構造になり、そこから欧州、東南アジアへの流れが派生していた。

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4. 機械製品貿易では「普通の国」になった日本 各国での貿易の中における、特定の品目の位置を比較する方法として、貿易特化係 数を用いる方法を適用した。貿易特化係数とは、貿易総額(輸出+輸入)に占める貿 易収支(輸出-輸入)の割合を表した(1)式であらわされる指標であり、-1 から 1 の 値をとる係数であり、-1 は、輸入特化を示し、1 は輸出特化、0 は輸出入拮抗を示す ことになる。 (貿易特化係数 :TSC)=(輸出量-輸入量)/(輸出量+輸入量) (1)

それを、縦軸に貿易特化係数 (Trade Specialization Coefficient :TSC)をとり、横 軸には当該品目の輸出額の全輸出額に対する占有率をプロットすると品目ごとの各国 の状況が比較できる。論文には鉄鋼、鉄鋼加工製品、電子機器などを紹介し、ドイツ、 イタリア、アメリカ、中国などの状況を、素材立国、加工立国の視点から特徴付け、 トルコ、チェコなどが素材立国型から加工立国型へと代わって言っていることを示し てある。その中で加工立国と思われていた日本の位置の変化として図 4 には機械製品 の例を示すと、日本は機械製品に対して 1994 年には他国に無い高い輸出特化と輸出中 の占有率を示していたが、2006 年にはドイツ、イタリアさらには中国とほぼ同等の位 置関係になっており、チェコやフィンランドなども近づいている。(電子機器も同様の 傾向である)日本の国際競争力を牽引してきた機械や電子機器は、ほぼ他国も取りうる 国内的位置へと変化してきており、(電子機器も同様の傾向である)すなわち、電子機 器、機械、鉄鋼加工製品については、一国の国際競争力を見るうえで特殊な位置であ った時代を日本は終了し、いわゆる「普通の」工業貿易国になりつつある。

84 machinery

-0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 0 5 10 15 20 25 Austria Japan Turkey USA Italy Germany China Finland Czech Rep. 94 94 94 94 94 94 94 94 94 06 06 06 00 06

Share in the export of the country (%)

Tr ad e S pe cia liz at io n Co ef fic ie nt 図 4 各国の機械製品の貿易特化係数の変化

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7 5.SOZAI(工業素材)こそ伸長するちから 2000 年前後の日本の国際競争力はなににより得られているのか。図 5 は、輸出の中 の占有率の推移を、輸送機械、産業機械、電子機器、工業素材に対してみたものであ る。輸送機械は、COMTRADE 輸出コードの 86 鉄道車両,87 車両,88 航空機,89 船舶を足 したもの、産業機械は同コードで 84 機械、電子機器は 85 電子機械を用い、工業素材 は、化学製品(28-40)と陶器・ガラス(68-70)および金属(71-83)を足したものである。 図からわかるように、現時点で輸出を牽引しているものは輸送機械でありその占有率 は 25%程度であるが、一時期牽引車となっていた機械および電子機器はこの 10 年で低 落し 20%を切るに至っている。他方で伸張しているのが工業素材である。しかも、こ の伸長は 10 年以上前から着実に起こっており、日本の国際競争力を支える重要な柱と なっている。 15.00 20.00 25.00 1988 1992 1996 2000 2004 machine electric equipment engineering materials vehicle 産業機械 電子機器 工業素材 輸送機械 日本の輸出シ ェ ア (% ) 図5 工業素材、輸送機械、産業機械、電子機器の日本での輸出占有率の推移 工業素材の中で輸出占有率が高いものは、半導体(8541: semiconductor)、ウエハー 類(3818:doped elements for electric device)、光ファイバー(9001:optical fiber)、 環式炭化水素(2902: Cyclic hydrocarbons)、プラスチックシート、鋼管、熱延鋼板な どであり、さらに、注目すべきは金や精製銅といった原材料素材も伸長してきている ことである。これは、世界の素材のトレードフローの中で日本が常にその中心のひと つに位置していることと密接に結びついていると思われる。すなわち、世界の工業が 拡散し、工業貿易が原材料供給から製品へと指向していく中で、日本はその製品製造 のための質のよい工業素材を提供していく位置と役割を果たしており、今後も期待さ れているということである。わが国の材料技術としても Engineering Material を日本 語で SOZAI と呼ばせることができるようになるくらいの国際的に積極的で責任ある取 り組みが求められているといえる。

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問い合わせ先: 〒305-0047 茨城県つくば市千現 1-2-1 独立行政法人物質・材料研究機構 企画部 広報室 TEL:029-859-2026 研究内容に関すること: 独立行政法人物質・材料研究機構 材料ラボ 片桐 望(かたぎり のぞむ) Tel:03-5768-7627 E-mail [email protected] 原田 幸明 (はらだ こうめい) Tel:029-859-2602 Fax:029-859-2601 E-mail HALADA.Kohmei.go.jp ※参考: 社団法人日本金属学会 〒980-8544 仙台市青葉区一番町一丁目 14 番 32 号 フライハイトビル 2F Tel: (022)223-3685 Fax: (022)223-6312

図 4 各国の機械製品の貿易特化係数の変化

参照

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