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安価でアレルギー性の低い歯科部材の共同開発を開始

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Academic year: 2021

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安価でアレルギー性の低い歯科部材の共同開発を開始

− ニッケルフリーステンレス鋼製の歯科部材の実用化に着手 − 平成15年12月4日 独立行政法人物質・材料研究機構 【概要】 独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄)生体材料研究センター(センタ ー長:田中順三)機能再建材料グループの塙 隆夫ディレクター、黒田大介研究員とデン ツプライ三金株式会社(代表取締役社長:谷口 譲、本社:東京都文京区湯島 3-14-9)の 研究開発チームは、高い力学的強度と耐食性を有するニッケルフリーステンレス鋼を素材 とする歯科部材の共同開発を開始した。 近年、歯列矯正ワイヤやブラケットなどの素材として、Ti-Ni(チタン−ニッケル)合金 1)やオーステナイト型ステンレス鋼2)が使用されているが、それら合金には金属アレルギ ー3)の原因物質として問題視されているニッケルが含まれている。また、ニッケルの代わ りに窒素を添加したニッケルフリーステンレス鋼は、耐食性の高い材料として注目されて いるが、成形や機械加工の条件によっては素材自体が非常に硬くなるため、ニッケルフリ ーステンレス鋼製の歯科部材・器具やニッケルフリーステンレス鋼から小型で複雑な形状 の歯科部材・器具を製造する技術は実用化されていない。 共同開発では、物質・材料研究機構が開発した窒素吸収処理を利用したニッケルフリー ステンレス鋼の製造技術とデンツプライ三金株式会社の優れた歯科部材製造技術とを融合 させ、ニッケルフリーステンレス鋼から小型で複雑な形状の歯科部材を安価に製造する技 術の開発を行う。2002 年 11 月に共同研究契約を締結し、これまでにデンツプライ三金株 式会社において製品加工や歯科部材としての特性評価を行い、物質・材料研究機構におい て窒素吸収処理した製品の力学的特性の評価などを行ってきたところ、新しい製造技術を 歯科部材・器具の製造に適用できることがわかった。最終的には、窒素を含まない柔らか い状態で精密な歯科部材の製品形状に加工し、その後製品に窒素吸収させることで、力学 的強度、耐食性や生体適合性を高める新しい歯科部材製造技術を確立し、2004 年度中のニ ッケルフリーステンレス鋼製の歯科部材・器具の販売を目指す。 窒素の吸収により従来のオーステナイト型ステンレス鋼よりも引張やねじり強度が高く なるため、製品の小型化が可能となる。また、素材製造コストは従来のニッケルフリース テンレス鋼の半分以下であり、歯科部材のような小型製品であれば、1回の処理で大量の 製品に窒素吸収させることができるため、製品1つあたりの製造コストをさらに低く抑え ることも可能になる。 なお、平成16年1月16日(金)に物質・材料研究機構(茨城県つくば市)で開催さ れる第2回生体材料企業説明会において、ニッケルフリーステンレス鋼の加工製品技術に 関する紹介を行う予定になっている。

(2)

1.研究の背景 歯科部材や歯科治療器具の素材として、Ti-Ni 合金や 316L ステンレス鋼に代表されるオ ーステナイト型ステンレス鋼が使用されている。オーステナイト型ステンレス鋼は安価な だけでなく、力学的強度と耐食性に優れるため、歯科部材だけでなく工業材料や民生品な どに広く用いられている。しかし、依然として既存のオーステナイト型ステンレス鋼では 隙間腐食や孔食が発生するため、更なる耐食性の改善が望まれている。また、Ti-Ni 合金や オーステナイト型ステンレス鋼には、ニッケルが必ず添加されているため、ニッケルによ る金属アレルギーの発症が問題視されている。これらの問題を解決するために、ニッケル のかわりに 1 重量%程度の窒素で力学的強度と耐食性を向上させたニッケルフリーステン レス鋼が、新しいオーステナイト型ステンレス鋼として注目されている。 現在、ニッケルフリーステンレス鋼は、溶解によって製造されたインゴットから製品形 状に加工している。しかし、ニッケルフリーステンレス鋼は、高濃度の窒素を含んでいる ことから、素材自体が非常に硬く機械加工が非常に困難であるだけでなく、成形加工の条 件によっては非常に脆くなってしまうため、ニッケルフリーステンレス鋼から複雑形状製 品を製造する技術は実用化されていない。さらに、ニッケルフリーステンレス鋼の溶解に は大型の特殊溶解設備が必要となるため、素材自体も既存のオーステナイト型ステンレス 鋼と比較して高価である。これらのことから、ニッケルフリーステンレス鋼を素材とする 小型で複雑な形状の歯科部材を低コストで簡便に製造できる新しい製造技術の開発が強く 望まれていた。 2.現在までの成果 今回、窒素を含まない柔らかいフェライト型ステンレス鋼4)の状態で歯科用線材や小型 部品などに成形し、それら製品に窒素を吸収させることによって、力学的強度と耐食性を 高めたニッケルフリーステンレス鋼(オーステナイト型ステンレス鋼)製の歯科部材製造 技術の共同開発を開始した。窒素吸収前の柔らかいステンレス鋼の状態では、直径 1 mm 以下の線材を室温中で容易に成形できること、合金成分の調整により複雑な形状の歯科用 部品も容易に製造できることがこれまでに明らかとなっている(図1参照)。これらの成形 品を1200 ℃に加熱した熱処理炉内で窒素ガスと 2 時間接触させることで、1重量%程度の 窒素を成形品に吸収させた(図2参照)。窒素吸収後の成形品のミクロ組織は、フェライト 組織からオーステナイト組織へと完全に変化しており、成形後の窒素吸収によって目的の ニッケルフリーステンレス鋼が得られていることが明らかとなった(図3参照)。また、窒 素吸収させた成形品の引張強度、破断伸び、ねじり強度、耐食性は既存のステンレス鋼と 比較して高い値を示した(図4、図5および図6参照)。 3.技術的ポイント 本方法では、窒素が固溶しないことによる窒化物の形成及び加熱に伴う結晶粒の粗大化 が懸念されたが、窒素吸収の際の温度制御や窒素吸収前の加工プロセスを工夫することで、 窒素が完全に固溶し、結晶粒の粗大化も起こらない条件を見いだすことができた。また、 窒素吸収前のフェライト型ステンレス鋼の成形条件や合金成分の調整を行うことにより、 窒素吸収処理前に小型で複雑な形状の歯科部材を容易に成形することができた。

(3)

4.今後の展望 今回開発した製造方法を用いて、高強度と高耐食性とを有するニッケルフリーステンレ ス鋼から小型で複雑な形状を有する歯科部材を低コストで製造することが可能となる。素 材製造コストは従来のNi フリーステンレス鋼の半分以下に抑えることが可能となる。また、 窒素吸収により既存のオーステナイト型ステンレス鋼よりも高い力学的強度が得られるこ とから製品を小型化することができ、口腔内で目立たず、使用時に違和感のない歯科部材 を提供することが可能となる。さらに、金属アレルギーが問題となっているニッケルのか わりに無害な窒素により力学的強度と耐食性とを向上させているため、人体あるいは体内 組織に接触して使用される民生品や生体材料を構成するステンレス鋼素材やそれら製品を 低コストで製造・提供することができる。 現在は、厚さあるいは直径が4 mm までの製品にしか適用できないが、素材のミクロ組 織の微細化が達成できれば、さらに大型の製品(構造材料)への応用も可能である。

(4)

【用語説明】 1)Ti-Ni 合金 チタン(Ti)とニッケル(Ni)の原子比が1対1付近の組成の合金で、材料を変形させ ても、これをある温度以上にすれば元の形に自発的に戻る“形状記憶効果”を示す形状記 憶合金として知られている。また、超弾性効果を利用して歯列矯正ワイヤや眼鏡フレーム などに使用されている。 2)オーステナイト型ステンレス鋼 代表的には、鉄に18 重量%程度のクロムと 8 重量%程度のニッケルを添加した、面心立 方構造を有する合金。非磁性体で、機械的強度や耐食性はフェライト型ステンレス鋼より も優れている。 3)金属アレルギー 汗や唾液などによってイオン化した金属により、皮膚や口腔内に炎症を生じるアレルギ ー疾患。ピアスなどの金属アクセサリーによる“かぶれ”や“湿疹”が代表的。金属アレ ルギーの機序の詳細については、未だ不明な点が多い。 4)フェライト型ステンレス鋼 代表的には、鉄に13 重量%程度のクロムを添加した、体心立方構造を有する合金。強磁 性体で、成形性や切削性はオーステナイト型ステンレス鋼よりも優れている。 ○問い合わせ先 〒305-0047 茨城県つくば市千現一丁目 2 番 1 号 独立行政法人物質・材料研究機構 広報室 TEL:029-859-2026 FAX:029-859-2017 ○研究内容に関すること 独立行政法人物質・材料研究機構 生体材料研究センター 機能再建材料グループ ディレクター 塙 隆夫(はなわ たかお) TEL:029-859-2485 研究員 黒田大介(くろだだいすけ) TEL:029-859-2430

(5)

φ 1.0 mm

φ 3 mm

φ 9 mm

図1 窒素吸収前に成形した歯科用線材と小型部品

4 mm

4 mm

R.P. R.P. V.G. V.V. I.V. E.V. 窒素ガス R.P.: ロータリーポンプ V.G.: 真空計 V.V.: 真空排気バルブ I.V.: 窒素ガス供給バルブ E.V.: 窒素ガス排気バルブ 製品 試料台 窒素ガス 図2 窒素吸収処理装置の概念図

図2 窒素吸収処理装置の概念図

ヒーター ヒーター

(6)

フェライト組織 オーステナイト組織 40 45 50 55 60 65 70 75 40 45 50 55 60 65 70 75 40 45 50 55 60 65 70 75 回折角度 2θ 窒素吸収前 窒素吸収後 図3 窒素吸収前後の成形品のX線回折パターン

図3 窒素吸収前後の直径1 mmのワイヤーのX線回折パターン

図4 窒素吸収前後の直径1 mmのワイヤーと既存の工業用

ステンレス鋼や生体用金属材料の力学的強度と伸びの比較

500

700

900

1100

1300

引張強さ, MPa

破断伸び

(%)

SUS304

および関連合金

0

10

20

30

40

50

70

60

窒素吸収処理後

窒素吸収処理前

生体用Ti

(259 MPa)

生体用ステンレス鋼

(SUS316L)

(7)

図5 窒素吸収前後の直径1 mmのワイヤーと既存の生体用

金属材料のねじり応力と破断までのねじり角度の比較

ねじり応力

,Pa

生体用Ti

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

0

500

1000 1500 2000 2500 3000 3500

0

500

1000 1500 2000 2500 3000 3500

破断までのねじり角度,θ

窒素吸収処理前

窒素吸収処理後

生体用ステンレス鋼

(SUS316L)

-500 0 500 1000 1500 2000 10-1 1 10-2 10-3 10-4 10-5 10-6 10-7 10-8 10-9 10-10 10-1 1 10-2 10-3 10-4 10-5 10-6 10-7 10-8 10-9 10-10 電位 / mV vs. SCE 電流密 度 / A ・cm -2 316L 窒素吸収前 0.9% NaCl溶液中 図5 窒素吸収前後の成形品と316Lステンレス鋼の0.9%NaCl溶液中    での分極曲線

図6 窒素吸収前後の成形品と生体用ステンレス鋼(SUS316L)

の0.9%NaCl溶液中での分極曲線

窒素吸収後

参照

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