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家庭科教育とまちづくり学習に関する一考察

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Academic year: 2021

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1.はじめに

近年、「子ども参画のまちづくり」への関心の高まりとその必要性の認識、環境問題への危機感、 学校教育に 2002 年(高等学校では 2003 年)に導入された「総合的な学習の時間」等を背景として、「ま ちづくり学習」、「まち学習」等の「まち」に関わる学習の取り組みは、全国各地で様々なレベルと内容 で実施されている。 また、2011 年 3 月 11 日の東日本大震災からの復興、これから起きうる震災に向けた対策の必要性 も加わり、まちづくり自体に対する関心・必要性はさらに高まっている。甚大かつ深刻な状態からの 復興を急ぐことは当然であるが、しっかりと未来を見据えたより良いまちづくりを進めることが重要 である。経済・産業機能の回復も急務となるが、そういった中でも子どもの成育環境という視点が欠 落してはならない。なぜならば、これからのまちの将来は子どもたちが担い、築き上げていくのであ る。そのような意味でも、子どもを対象としたまちづくり学習の実現・発展が必要となる。 まちづくり学習は、近年、地域で行われているケースも多い。しかし本稿では、あくまでも学校教 育現場を対象としたまちづくり学習に焦点を当てている。なぜならば、学校教育の大きな目的の一つ に、これから社会に出て行く一人前の市民を育てていくということがある。「一人前の市民」とは、 自らの責任で判断することができる人である。今、子どもたちが「生きる力」を身に付け、社会の激 しい変化に流されることなく、それぞれが直面するであろう様々な課題に柔軟性を持ち、かつ勇敢に 対応し、社会人として自立していくことができるようにする教育が強く求められている。まちづくり 学習もこのような教育の一環として位置付けることが重要であるからである。 汐見稔幸によると、『教育とは、どんな社会をつくるのかというところに帰着し、教育学はつまる ところまちづくりであり、社会づくりなのである』という [1]。また、延藤安弘によると、『まちづく り学習の対象とする教育とは、まちの人工環境(住宅・公園・道路など)、自然が息づく生命環境、 地域における人々の関係としての人間環境、“関わり・関係” の中で育てられる精神環境であり、この ような 4 つの側面をホリスティック(全包括的)にとらえるものである』とされている [2]。彼らの考え からすると、充実した教育、まちづくり学習を学校教育の中で行おうとする場合、一教科だけの視点 では不足してしまうことはいうまでもない。つまり、様々な教科の特性を活かしながらその視点を取 りこんでいくことで、より充実した教育、まちづくり学習へと発展させていくことができると考える。 そうした中で、人や子どもの生活空間としてまちを捉える家庭科の視点をまちづくり学習へと取り込 むことで、まちづくり学習の一視点の確立、さらに家庭科教育の目標・目的の達成に寄与するのでは ないだろうか。

家庭科教育とまちづくり学習に関する一考察

A Study on Home Economic Education and Community Design Learning

陣内 雄次,上田 由美子

1

,渡邊 真弓

2

JINNOUCHI Yuji, UEDA Yumiko, WATANABE Mayumi

1 NPO法人宇都宮まちづくり市民工房 2 宇都宮大学大学院教育学研究科 1 年

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そこで本稿では、2008 年(小・中学校)、2009 年(高等学校)公布の学習指導要領改訂に伴う、家庭 科教育の目的とまちづくり学習の有効な関係性を示し、さらに 2011 年 8 月に栃木県の教師 65 名に対 して行ったまちづくり学習に関するアンケート調査結果を分析することにより、現状の課題、展望等 を踏まえた今後の家庭科教育におけるまちづくり学習への一助としたい。

2.家庭科教育の目的とまちづくり学習の関係性

本章では、2008 年(小・中学校)、2009 年(高等学校)公布の学習指導要領を踏まえた家庭科教育の 目的を整理し、まちづくり学習を家庭科で行う上で、家庭科教育の目的の達成に寄与することができ るのかどうか、取り扱う内容に沿ったものであるかどうかについて検討する。 (1)家庭科教育の目的・目標 家庭科教育では、小・中・高等学校を通して、実践的・体験的な学習を行う教科としての性格が一 層明確になるように留意して、創造的な姿勢と技能を育てることにつながることを重視している。日 本家庭科教育学会編著「家庭科の 21 世紀プラン」による家庭科教育が育む大きな目標は、「個人及び家 族の発達と生活の営みを総合的に捉えて、日々の生活活動の中で、主体的に判断して実践できる能力 を育み、明日の生活環境・文化を創ることのできる資質・能力を育成する」である。 佐藤文子によると、『家庭科教育において求められるのは、生活上の諸問題を主体的に解決し、克 服してゆく力の育成にある。家庭生活を取り巻く諸問題は、自然科学的な側面と社会科学的な側面と を併せ持ったものが多く、問題を解決するためには双方の方法を踏まえた視点が必要であるといわれ ている。そのためには、問題解決の各場面で活かすことのできる知識と技術の習得を目指すことが求 められている』という [3]。 (2)家庭科改訂の趣旨 2008 年 1 月の中央教育審議会の答申において、教育課程の基準改善のねらいが示されるとともに、 各教科等別の主な改善事項が示された。以下家庭科、技術・家庭科についての指摘事項を述べる。 ○学習した知識や技術などが実生活で十分に生かされるようにする。 ○ 子どもたちが自己と家庭、家庭と社会とのつながりに目を向け、生涯の見通しをもって、よりよい 生活を追求できる実践力を身につけること。 ○ 少子高齢化や家庭の機能が十分に果たされていない状況から、家庭の在り方や家族の人間関係、子 育てについて学習し、生活における自立とともに他の人と連携し共に生きるための知識と技術の習 得が必要である。 ○食生活の乱れや消費者トラブルの増加から、食育や消費者教育の充実を図る。 ○持続可能な社会の構築の観点から、資源や環境に配慮したライフスタイルの確立が望まれる。 これを受け、小学校の内容構成は、従来の 8 つの内容から、新しく「A 家庭生活と家族」、「B  日常の食事と調理の基礎」、「C 快適な衣服と住まい」、「D 身近な消費生活と環境」の 4 つとなり、 これは同じ枠組みの中学校技術・家庭科、家庭分野との体系化を図りやすくしている。 また、小・中学校ともに、衣生活と住生活が同じ内容項目に分類されたのは、人を取り巻く環境と いう共通のキーワードのもとに、衣環境は人間の体に密着した、すなわち最も近い環境、住環境はそ れをとりまくさらに大きな環境という概念から同じ分類としたものである。 これらを踏まえ、佐藤文子はこれからの家庭科教育の在り方を以下のように述べている(以下引用)。 『 従来から、家庭科、技術・家庭科は、実践的・体験的な学習活動を通して行うことが教科の

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独自性となっているが、今回は、学校で学んだことが生活での実践に生かすというより生活に 密着し実感を伴った学習が求められている。新しい教育課程において求められているのは、「生 きる力」をさらに広げた「人間力」の育成であり、その主要な観点の一つとして、「自己と社会 のかかわり」が重視されている。これは、家庭科の対象が、個人や家庭の範囲にとどまってい るのではなく、社会との関わりにおいて生活を捉える必要性を重視したものである。 また、家庭・地域社会との連携という視点を踏まえつつ、学校における学習と家庭や社会に おける実践との結びつきに留意した内容の充実を図ることである。家庭科、技術・家庭科の学 習は、これまで以上に、家庭・地域社会との連携を踏まえる必要性がある。学校での生徒の学 習が実際の生活の場に生かされるとともに、家庭や地域での経験を活かして学習の効果を高め るためには、生徒の生活や地域の実態を知り、適切な題材を設定するとともに、地域の一員と して主体的に関わることが一層求められているといえる。』[3] (3)まちづくり学習について 「まちづくり学習」といっても、その明確な定義はないといえる。「まちづくり学習」、「まち学習」、「住 まい・まち学習」、「環境学習」、「地域学習」など、まちづくり学習に似た概念や街づくり学習に含ま れる概念は様々あり、使う人の独自の定義、または感覚によって使い分けされているのが現状である といえるのではないだろうか。なぜならば、「環境」、「地域」をどこまでのスケールと捉えるかは、 人によって異なる。たとえば「環境学習」とは人間と取り巻く環境全般に渡るものであり、「判断力」 や「主体性」の育成を定義に含むが、日本においては公害を契機として広く認識されたことから、そ の範囲は狭く捉えられがちで、一般的な環境問題や自然保護に偏重していた。 『「まちづくり学習」と称されるものやそれに似た概念のものに共通していえることは、「まち」に関 わる事象や事柄、もの、人などを題材とした実践的・体験的な学習形態をとるということである。実 践的・体験的な学習形態とは、フィールドワーク、インタビュー調査、絵や模型作り、グループ討論、 ディベートなどである』[4]。また、学習の具体的な目的は、実践的・体験的学習方法を通して、子ど もたちが自分たちの住むまちを知ることによって、まちづくりに関わるノウハウや思考力、それを主 体的に考え行動する力、話し合う力、まちへの関心や意欲、まちの形成者としての責任感の醸成とい える。つまり、まちづくり学習は、単なる知識習得に終わらず、子どもの生活の場である「まち」を 題材として学ぶ楽しさや学ぶ意味、思考の手立てなど学ぶ能力の基礎を築く学習といえる。そうした 基礎が発展し、課題発見・解決力、コミュニケーション力といった現代社会に必要とされる力に結び ついていくと考える。 (4)家庭科教育とまちづくり学習の関係性 (2)(3)の内容を踏まえ、以下のような家庭科教育とまちづくり学習の関係性があると考える。 まず、 戦後 60 年経って、住宅の価値が量から質にうつってきた。これからは、「どう暮すのか」、「ど う伝えていくのか」ということについて、すべての人が責任を持って考えていかなければならない。 住教育は、生活者が自らの暮らしをいかに組み立て維持していくか、という「生活者の目線」を育て るものである。これは、家庭科教育のそもそもの目標と合致している。 さらに、今回の学習指導要領改訂における家庭科教育の改善点として示された、「家庭と社会との つながり」、「生活における自立とともに他の人と連携し共に生きるための知識と技術の習得」、「持続 可能な社会の構築」といった点が、自分たちのまちを題材として、自分と自分を取り囲む環境・社会 との関わりを実践的・体験的に学ぶまちづくり学習によって達成できるのではないかと考える。

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「住む」ということは自分ひとりだけで成り立つものではなく、必ず家族や地域の人との関わりを 考えなければならない。住居、そこに住まう人々が集まりまちを形成し、ひいては地球環境と大きく 関わっている。『住教育では、人と人、人ともの・こと、人と空間、人と環境など多彩な複合的な関 係性の中で、どう生きていくのか、ということを学び、自分の暮らしを自らデザインし、互いの価値 観を認めあい、自己実現をしていく力をつけていくことを目的としている』[5]。 以上より、住教育を主に担う家庭科教育にまちづくり学習を取り入れることの有効性がいえるであ ろう。

3.まちづくり学習についてのアンケート調査結果(現職教員対象)

まちづくり学習に対する教員の現状の意識を把握する ことで、これからまちづくり学習を学校教育、特に家庭 科教育に取り入れる可能性と課題を見出すことを目的に、 2011 年 8 月 25 日にアンケート調査を行った。概要は以下 のとおりである。 調査期間:2011 年 8 月 25 日 調査対象:教職員免許状所持現職教員の更新講習 「住まいとまち環境を楽しく学ぶ」受講者 65 名 配布回収:受講終了後回収(回収率 100%)    (1)属性結果    回答者は 65 名、男女比は 95%が女性であった。また、小学校教諭が 55%で約半数を占め、続いて 高校教諭(15%)、中学校教諭、講師(11%)、その他(8%)であった(図2)。年代は 30 代(38%)、60 代(32%)、40 代(25%)、30 代(5%)であった(図3)。さらに専門教科は家庭科が 28%と最も多く、 社会科(11%)、国語科(9%)と続いた(図4)。 (2)住生領域に関する授業実態について 今回の回答者は様々な専門の出身であるので、まず今まで住生活領域に関する授業を行ったことが あるかどうかについて質問した。その結果を職性別に分析したところ、小学校教諭では、63.8%が家 庭科の授業で行ったことがあるとし、中学校教諭では 57.1%、高校教諭では 80.0%、講師では 14.3%、 ᅗ  ᅇ⟅⪅ᑓ㛛⛉┠๭ྜ  ᅗ  ᤵᴗ㢼ᬒ㸦図 1 授業風景(2011 年 8 月 25 日陣内撮影)ᖺ ᭶ ᪥㝕ෆ᧜ᙳ㸧 ࿑  ࿁╵⠪⡯ᕈഀว 図 2 回答者職性割合 図 3 回答者年代割合࿑  ࿁╵⠪ᐕઍഀว

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その他でも 20.0%が行った経験を持っていた(図 5)。 上記で「必ず行っている」、「行っている」と回答した教諭 39 名に対して、住生領域の内容を7つ提 示し、授業で取り上げたことがあるかどうか、授業で取り上げる必要性を感じているかどうかについ て質問した。7つの内容とは、①住宅の安全性、②住宅の快適性、③高齢者と住環境、④地域の住宅 問題、⑤地域の景観、⑥住民参加のまちづくり、⑦自然環境と住生活である。 必要性があると感じる内容、その中で実際に授業を行った内容は、②住宅の快適性以外は、どの項 目も 20 ポイント以上の差が認められ、特に⑥住民参加のまちづくりで 52.6 ポイント差、⑦自然環境 と住生活が 35.1 ポイント差という結果になった(図6)。これらの内容が、必要性は感じているが、 なんらかの要因によって授業として取り組みにくい現状にあるといえる。 (3)まちづくり学習に対する回答者の評価 全員に対し、まちづくり学習を授業展開することに対して質問した。その結果、住生活領域の授業 図 5 住生活領域の授業の取り組み経験についての割合 図 4 回答者専門科目割合 ࿑  ૑↢ᵴ㗔ၞߩ᝼ᬺߩขࠅ⚵ߺ⚻㛎ߦߟ޿ߡߩഀว

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経験者は、約 40%が「難しいと思う」という回答をしているのに対し、ほとんど授業を行っていない 回答者は、難しいと回答した者はおらず、75%が「できそうである」と回答していた。また、全く住 生活領域の授業を行ったことがない回答者も 63.2%と非常にポジティブな回答であった(図7)。 住生活領域の経験の有無によって、まちづくり学習の授業展開に対する評価が明らかに違った。こ れは、実際に授業経験を行ったからこそ分かる現実があるとのではないか。それは、限られた授業時 間数という点であると考える。そうした限られた時間数の中で、まちづくり学習というあまり経験の ない授業を展開することに対して、授業経験者は「難しいと思う」と回答したと思われる。 (4)まちづくり学習の授業を自身の学校で行うことに対する回答者の意識 まちづくり学習に関する授業展開を自身の学校で行うことにたいして、小学校教諭は条件等を含め 「できる」と回答した割合は合わせて 88.9%であり、中学校教諭は 71.4%、高校教諭は 50%であった(図 8)。 子どもたちの年齢が上がるにつれ、授業としてまちづくりを展開することはなかなか難しいという 現状がうかがえた。また、どの回答者も「専門家のアドバイザーがいればできる」割合が最も高く、 図 6 行ったことのある授業内容と必要性を感じる授業内容について࿑  ⴕߞߚߎߣߩ޽ࠆ᝼ᬺౝኈߣᔅⷐᕈࠍᗵߓࠆ᝼ᬺౝኈߦߟ޿ߡ 図 7 住領域の授業経験とまちづくり学習の授業展開について࿑  ૑㗔ၞߩ᝼ᬺ⚻㛎ߣ߹ߜߠߊࠅቇ⠌ߩ᝼ᬺዷ㐿ߦߟ޿ߡ ࿑ ࿑7 ૑૑㗔ၞߩ᝼ᬺ⚻㛎ߣ߹ߜߠߊࠅቇ⠌ߩ᝼ᬺዷ㐿ߦߟ޿ߡ

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外部の協力がまちづくり学習の展開に影響していることが分かった。 また、まちづくり学習が実現しやすくなると思われる方法について評価を求めたところ、「学習内 容や方法を相談できるセンターの設置」や「専門書や資料の紹介」という教員自身が時間をかけて専門 知識を身につけるような内容よりも、「まちづくりの実践授業の見学」、「詳細な指導案の紹介」、「ま ちづくり授業のビデオの貸し出し」など、具体的な実践方法を短時間に分かりやすく修得できる内容 が支持される傾向にあった(図9)。 (5)アンケート調査のまとめ  住生活領域を家庭科で行ったことがあるとした回答者が、「住民参加のまちづくり」の必要性を感 じているものの、実際に授業に取り組んでいるのは1/3にも満たないことが明らかになった。それ は、実際に授業時間数の確保や教材研究の時間を教師自身が確保することが難しいことからが要因と して考えられる。さらに、小・中学校に比べ、高等学校ではまちづくり学習の授業導入の困難性が高 図 8 まちづくり学習に関する授業展開を行うことについて    ࿑  ߹ߜߠߊࠅቇ⠌ߦ㑐ߔࠆ᝼ᬺዷ㐿ࠍⴕ߁ߎߣߦߟ޿ߡ 図 9 まちづくり学習の授業が実現しやすくなる方策 A: 専門書や資料の紹介、B: 大学の教授などの専門家の個人的指導、C: 学習内容や方法を相談できるセンターの設置、 D: 詳細な指導案の紹介、E: まちづくりの実践授業の見学、F: まちづくりの授業ビデオの貸し出し、G: まちづくりの 授業実践者の体験を聴くなど勉強会の開催、H: 講師のまちづくりの授業体験の場

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いことがうかがえた。これは、高等学校は小・中高校と比べ、様々な地域から通う生徒がいること、 それも含め地域と学校又は生徒の関わりがあまりないこと、授業間の連携が取りづらいこと等が背景 としてあるのではないかと考える。つまり、特に高校生に対して、まちづくり学習を行う際には、発 達課題に沿った、生徒が興味関心を持ち、生徒自身が主体的に動き、地域を巻き込んでいくような学 習プログラムの投げかけ方が重要になってくると思われる。自己の将来をより具体的に考え始める高 校生という時期にまちづくり学習を行うことの意義は大きいと考える。 小・中・高等学校の多くが副読本や専門家のアドバイザー等の外部からの支援、また具体的な実践 方法を分かりやすく短時間で修得する術が加わることでまちづくり学習が学校教育ないで実現可能に 近づくことが明らかとなった。 以上の点を踏まえ、これからまちづくり学習を学校教育、特に家庭科教育で展開していくために、 直接的な支援体制の明確化、間接的な支援として、副読本や学習プログラムの開発が必要であると考 える。小学校に比べ、中・高等学校ではまちづくり学習の展開は難しいという結果であったが、少な い授業時間数の中でも効果的で、かつ発達段階に合わせた学習プログラムを示すことによりそのネガ ティブ要素を取り除けるのではないかと考える。 住教育・まちづくり学習は、知識を教えるのではなく、考える力を重視するものである。素敵なま ちはなぜ素敵だと感じる理由を考える、それだけでも充分考える力がついてくるであろう。さらに私 たちが生きていくために人とまちがどうつながっているかを考えていけば、人はまちをどう維持して いくのかといった、他者とのつながりについて考えることにもなるであろう。 住教育を通して豊な暮らしをデザインする人を育てることが、住教育の目標である。与えられた知 識の塊を持っているだけではなく、その塊を状況によっては分解してつなげていく力を育み、真の教 養や生きる軸を得るのが住教育となると考える。 まちづくり学習によって、学ぶ面白さや学びへの挑戦の意味を子どもたちに体得させることができ るといえる。子どもたちが、まちづくり学習を通して未知の知識や体験に関心をもち、仲間と協力し て学ぶことの楽しさから、未経験の体験に挑戦するその価値を体得することで、人生おいて学び続け る意欲の基礎をつくることができるのではないだろうか。

4.おわりに

本稿では、家庭科教育の目的とまちづくり学習の有効な関係性を示し、さらに 2011 年 8 月に栃木県 の教師 65 名に対して行ったまちづくり学習に関するアンケート調査結果を分析することにより、現 状の課題、展望等を踏まえた今後の家庭科教育におけるまちづくり学習への一助となることを目的と した。 2008 年の学習指導要領改訂により、「人間力」の育成が言われており、その主要な観点の一つとして、 「自己と社会のかかわり」が重視され、家庭科教育が担うところは大きい。家庭・地域社会との連携、 学校における学習と家庭や社会における実践との結びつきに留意した内容として、まちづくり学習を 位置付けることによって、家庭科教育本来の目的・目標が達成のための効果は大きいといえる。 また、東日本大地震後の復旧復興において、子どもたちがまちづくりを考えることはとても大きな 意味を持つ。2011 年 9 月 4 日には、陸前高田市高田町の仮設子どもセンターで「子どもまちづくりク ラブ報告会」が開かれた。地元の子どもたちが復興のアイデアを大人たちに伝え、未来のまちづくり を語り合ったのである。子どもたちは「自然と人の共存」「子どもからお年寄りまで楽しく安心して

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暮らせる街」などをテーマに掲げ、市内の地図を基にした復興のイメージ図を示し、発表後は大人た ちと計画を話し合い、復興のイメージを膨らませた。今後こうした取り組みが増えていくことで、子 ども自身のまちへの視点を育て、これからのまちを育てていくこととなるのではないかと考える。 しかし、まちづくり学習を学校教育の場に導入することへの必要性は多くの教員が感じていても、 実際に展開するのは難しいことが明らかになった。ただし、外部からの直接的または間接的な協力や、 具体的な実践例を分かりやすく示すことができれば、学校でのまちづくり学習展開の可能性が高まる ことも分かった。 また本稿では、家庭科教育へのまちづくり学習の位置づけに視点を置いていたため、まちづくり学 習を具体的にどのような形で取り上げるか、体系づけるかといったことについては論じてはいない。 先にまちづくり学習を行う際、様々な教科の視点からまちを多面的に捉えることが必要であることを 述べたが、住まい一つ一つが集まり、関係性を持つことによってまちが成り立っているように、家庭 科と他教科の教科分野との関係性、小・中・高等学校の関係性、学校と地域、外部の人・モノとの協 力による関係性など、様々な関係性を築きながら学際的にまちづくり学習が発展していくことが、学 校教育におけるまちづくり学習を活発にしていくことへと繋がるであろう。 本稿執筆に当たっては、教員免許更新講習受講の栃木県教職員の方々にご協力いただきました。末 筆ながら感謝申し上げます。 【引用・参考文献のリスト】  [1] 住宅総合研究財団・住教育委員会編著『屋根のない学校』萌文社 2011 [2] 住宅総合研究財団・住教教育委員会編著『まちは子どものワンダーランド』風土社 1998 [3] 佐藤文子、川上雅子著『家庭科教育法改訂版』高陵社書店 2010 [4] 高木真理「家庭科教育におけるまちづくり学習の可能性 ―住生活領域の視点から―」宇都宮大 学教育学部修士論文 2001 [5] 住宅情報提供協議会編『住教育ガイドライン』2008 住生活月間実行委員会事務局 http://www.jh-a.or.jp/contents/gekkan/jukyouiku/index.html 住宅情報提供協議会 住まいの情報発信局 http://www.sumai-info.jp/index.html 日本家庭科教育学会編『家庭科21世紀プラン』家政教育社 1998 文部科学省 HP http://www.mext.go.jp/

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