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なぜ暗黒物質はいまだ見つからないのか

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Academic year: 2021

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なぜ暗黒物質はいまだ見つからないのか

近年における宇宙観測の発展の結果,我々の宇宙に通常 の方法では検出にかからない物質,いわゆる暗黒物質が存 在することが確定的となった.では,その正体は何であろ うか? これまで確認されている素粒子や,それらが構成 する物質は,暗黒物質にはなりえないことがわかっている. その正体をめぐる謎は宇宙の暗黒物質問題とよばれ,物理 学における最重要問題の 1 つとなっている. 暗黒物質の正体については,さまざまな仮説が提案され ている.有力なのは,暗黒物質は質量が陽子の百倍程度の 中性で安定な新しい素粒子とする,WIMP(Weakly Inter-acting Massive Particle)仮説である.この仮説は,素粒子 標準模型をこえる物理と深く関係する可能性を示し,また 標準模型の素粒子とある程度の強さで相互作用をすること も保証する.そのため,理論と実験の両面で強く支持され, 現在その検証が世界中で行われている. WIMP の探査は図のように,高エネルギー粒子衝突で暗 黒物質をつくり出す加速器探査,我々の周囲に漂う暗黒物 質を地下の検出器でとらえる直接探査,銀河系や近傍銀河 などにいる暗黒物質が,対消滅の際に生成する高エネル ギー粒子線(反陽子やガンマ線)をとらえる間接探査の 3 本柱を軸に行われている.これらの実験の検出感度は上 がっているが,いまだ WIMP の検出にはいたっていない. この事実は何を意味するのだろうか? 実験の感度が上 がれば,いずれ発見される可能性は十分にある.これまで の高感度探査は,特定の素粒子(クォーク,グルーオンや ヒッグス粒子)との相互作用に依存する傾向があった.ほ かの素粒子との相互作用に感度がある実験(電子・陽電子 加速器など)の推進や,特定の相互作用によらず幅広くシ グナルが期待できる間接探査の高感度化が重要となる.あ るいは,暗黒物質は WIMP ではない可能性もある.その 場合,どのような候補がありうるのか,背後にどのような 物理が考えられるのか,そしてどのように検証すればよい のか,新しいアイデアに基づく再考が必要となるだろう. 会誌編集委員会 ©2016  日本物理学会

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