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説明転換の過程における事実参照に関する実験的検討

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Academic year: 2021

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(1)

説明転換の過程における事実参照に関する実験的検討

An experimental study on reference of facts in process of

explanatory shift

遠山直宏

1

寺井仁

2

三輪和久

1

Naohiro TOYAMA

1

Hitoshi TERAI

2

Kazuhisa MIWA

1

1

名古屋大学大学院 情報科学研究科

1

Graduate School of Information Science, Nagoya University

2

近畿大学 産業理工学部 情報学科

2

Department of Computer Science, School of Humanity-Oriented Science and Engineering,

Kindai University

Abstract: In this study, we conducted experiments to examine the factors that facilitate shifts in explanations using short story in which participants were required an explanation reconstruction. In the experiment, we controlled the time of presentation of a key fact that contradicts an initial explanation and has a central role in its reconstruction, reflective thinking, and the two together. The results are summarized as follows. First, when the prior explanation was rejected, attention to the key fact was inhibited although a new explanation was required. Second, the successful group increased their attention on the key fact just before the explanatory shift. Third, protection of the preceding explanation with unobserved facts was inhibited by guiding the participants ’ attention toward the key fact. Finally, although the initial explanation was not completely shifted, it has been suggested that a explanatory shift was prepared by activating reflective thinking with attention to the key fact.

1

はじめに

1.1

説明活動

私たちは普段から,身の回りで起こる様々な出来事 に対して説明を行う.しかし,自身が保持している説 明と矛盾するような事実が観察されたらどうなるのだ ろうか.一般的には,より妥当な説明を構築しようと する.先行して構築した説明(以降「先行説明」と呼 ぶ)から,より妥当な新しい説明(以降「転換後説明」 と呼ぶ)に転換するには,先行説明と矛盾する事実(以 降「キーファクト」と呼ぶ)を受け入れることが必要 不可欠である.なぜなら,科学の歴史においても,先 行説明から転換後説明への転換においては,先行説明 と矛盾するキーファクトが重要な役割を果たしてきた [1]. しかしながら,キーファクトを受け入れ先行説明から 脱却し,説明を転換することには困難が伴う.例えば, 自身が持つ仮説を支持する事例ばかりに目を向ける確 連絡先:名古屋大学大学院 情報科学研究科       名古屋市千種区不老町 情報科学研究科棟 4 階 424        E-mail: [email protected] 証バイアスと呼ばれる現象が確認されている [2].さら に,問題解決において,ある解法を発見した後,顕在 的により良い解法の探索を試みた場合であっても,す でに発見した解法に関する事実に注意が向けられてし まうことが示されている [3].科学史においても,燃素 説から酸素説への転換や,天動説から地動説への転換 などの例が挙げられる.

1.2

説明転換とキーファクト

例えば,物質が燃える現象(燃焼)は,初期には,先 行説明である燃素説により, 「燃焼とは,物質からの 燃素の放出である」という説明がなされており,当時 は医科学者などの共通した見解であった.しかし,こ の説明では合理的に解釈できない「燃焼に伴う質量の 増大」という矛盾した事実(キーファクト)が観察さ れたことを契機として,新たな説明の構築が要請され た.燃素説から酸素説への説明の転換,すなわち「燃 焼は酸素の結合である」という説明への転換は,燃素 説を否定する事実であるキーファクトを捉え直そうと する試みを通して達成されることになった [4].本研究 人工知能学会研究会資料 SIG-ALST-B503-11

(2)

ではこのように,ある現象に対する先行説明が転換後 説明に転換することを「説明転換」と定義する. 著者らの先行研究では,予想外の結末が提示される 短い物語文を用い,キーファクトへの注意が説明の再 構築の過程でどのように遷移するのかについて,検討 を行った [5].その結果,先行説明とキーファクトの間 に矛盾が生じた後,(1) 先行説明と矛盾するキーファク トへの注意が抑制され,キーファクト以外の事実に注 意が向けられていることが明らかとなった.また,(2) 説明転換の直前には,キーファクトに対する注意が促 進されることが確認された.さらに,(3) キーファクト を赤字でハイライトし,課題解決のヒントであること が教示された実験群は,統制群に対して,説明転換が 促進されることが確認された.

1.3

本研究の目的

先行研究では,キーファクトへの注意が一旦抑制さ れること,そして,説明転換の直前にキーファクトへ の注意が促進されることが眼球運動測定を通して確認 された.しかしながら,説明転換の成否におけるキー ファクトへの注意の差異については十分な検討が行わ れていなかった.その原因の一つとして,眼球運動計 測の精度の問題が考えられる. また,先行研究では,キーファクトを赤字でハイラ イトし,課題解決のヒントであることを教示すること で,説明転換が促進されることを確認している.しかし ながら,説明転換を促進するための要因として,「キー ファクトを注視する時間が増加するだけで十分である のか」,それに加えて,「キーファクトの意味を捉え直 そうとする内省的な思考を伴うことが必要であるのか」 については明らかにされていない. そこで,本研究では,以下の 2 つの問い(Research Questions: RQs)に対して実験的な検討を行う. RQ1: 説明転換の成否によって,説明転換の過程におけ る事実参照にどのような差異が認められるのか? RQ2: どのようにして説明転換を促進させることが可 能か?

2

実験

1

2.1

目的

RQ1 を明らかにするために,あご台を用いて高精度 の眼球運動計測を行い,説明転換の過程における事実 参照を実験的に検討する.

2.2

方法

2.2.1 参加者 大学生 42 名が実験に参加した. 2.2.2 課題 寺井・三輪・松林(2015)で用いられた床屋課題 (Gard-ner(1978) を改変したもの) を本実験で用いた (図 1 参 照)[5].床屋課題では,参加者は「2 つしか床屋のない 町で,髪を切ろうとしている主人公が,髪がボサボサで ある『アルフの店』,または,髪がサッパリとしている 『バリーの店』のどちらに入るか」を予想することが求 められた.この問いに対し,参加者は,店主の髪の毛に 関する事実に着目し,「主人公は髪をサッパリと整えて いる店主は床屋としての腕が良いと考えバリーの店を 選ぶ」という説明(先行説明)を構築することが予想 される.しかしその後,この説明による予想と食い違 う結末(「主人公は髪の毛がボサボサの『アルフの店』 に入った」)が提示され,なぜそのような結末になっ たのかについて,説明の転換が求められる.Gardner (1978) によれば,転換後説明は,「床屋が二軒しかない ため,二人の店主は互いに髪を切りあっている.髪が サッパリしているバリーはもう一方の髪がボサボサの アルフの髪を切っていたため,腕が悪いと考えられる. また,逆に,髪がボサボサのアルフはもう一方の髪が サッパリしたバリーの髪を切っていたため,腕が良い と考えられる」となる.ここで,店主の髪の毛に関す る事実,すなわち,「店主バリーの髪がサッパリと整え られており,店主アルフの髪はボサボサで整えられて いないなかったが,主人公は店主アルフの店に入った」 ことが,キーファクトとなる. この物語文にはキーファクトとなる事実以外にも結末 と関連しない事実が複数存在している.そのため,キー ファクトの捉え直しを行わずに,キーファクト以外の事 実と物語文には明示されていない仮定を導入すること で,説明を構築することも可能である.しかしながら, キーファクト以外の事実に基づく説明を構築した場合, 先行説明との矛盾は解消されないことになる.そのた め,矛盾なくこの物語文の構造を理解するには,キー ファクトの捉え直しが必要不可欠となる. 2.2.3 手続き 床屋課題は,先行説明が構築される結末提示前(先 行説明構築フェーズ)と,食い違いが生じた状態で新た な説明構築が求められる結末提示後(説明再構築フェー ズ)の二段階に分かれていた.先行説明構築フェーズ では,参加者にはまず,「提示される文章を読んで,主

(3)

図 1: 床屋課題(Gardner(1978) を改変) Note. 太枠内が参加者に提示された物語文であり,6 つのパラグラ フ(導入および場所,髪(キーファクト),時間,結末)で構成され ている. 人公がどちらを選ぶと思ったのか?」について判断する ように教示を行った.そして,結末を含まない文章を 提示し,説明が思いついた時点で回答を行うことが求 められた.回答後,「太郎はアルフの床屋に入っていき ました」という結末が提示され,その結末に至ったと 考えられる説明を再度構築することが求められた.参 加者には「入力された説明は別室の実験者が判定して いる」との教示を行った上で,実際にはすべての入力 に対して,「今お答えいただいた説明は,このクイズの 答えではありません.独創的で驚きのある説明を考え てください」との応答がなされた.説明再構築フェー ズは 15 分間とし,転換後説明が構築されるまでのデー タを分析の対象とした.また,床屋課題開始直前に,眼 球運動計測のためのキャリブレーションを行い,眼球 運動計測を行った. 2.2.4 実験装置

Tobii Technology 社製の Tobii T60 Eye Tracker(17 インチのモニターのサンプリングレート 60Hz) を使用 した.

2.3

結果

先行説明構築フェーズで先行説明を構築し,説明再 構築フェーズで転換後説明を構築した参加者(以降,「転 換群」と呼ぶ)は 11 名で,先行説明構築フェーズで先 行説明を構築し,説明再構築フェーズで転換後説明を 構築しなかった参加者(以降,「未転換群」と呼ぶ)は 14 名であった. 以下の分析では,説明再構築フェーズにおける 6 つの 事実に対する平均注視割合が転換群と未転換群の間で どのような差異があるのかを検討する.眼球運動計測 に不備が生じた 3 名を除いた転換群 10 名,未転換群 12 名を分析対象としており,転換群は平均 219.2 秒(SD = 179.1)で転換後説明を構築していた.そして,各事 実(導入 1/導入 2/場所/髪(キーファクト)/時間/結 末)に対しての興味領域(AOI:Area of Interests)を 設定し,全 AOI に対する注視回数をもとに,注視割合 を算出した.各事実に対する注視割合は,各事実を構 成する文字数をもとに標準化を行った.なお,各事実 への注視に偏りがないと仮定した値 (約 16.7%) をベー スラインとして設定した. 2.3.1 未転換群の注視割合に関する分析 未転換群における,説明再構築フェーズ開始から 5 分 間の各事実に対する平均注視割合を図 2 に示す.事実 間の注視割合の差異を検討するため,事実を参加者内 要因とした 1 要因 6 水準の分散分析を行った結果,主 効果が確認された(F (5, 55) = 2.85, p < .01).下位検 定を行ったところ,キーファクトへの注視割合が,場所 および時間に関する事実への注視割合に比して,有意 に低いことが明らかとなった(M Se = 0.00, p < .05). 次に,ベースラインと各事実に対する注視割合との比 較を 1 標本 t 検定により検討した.その結果,場所の 事実に対する注視割合は,ベースラインよりも有意に 高く(t(11) = 2.24, p < .05),一方,キーファクトに 対する注視割合が,ベースラインよりも有意に低いこ とが明らかとなった(t(11) = − 5.36, p < .001). 図 2: 未転換群の各事実に対する平均注視割合(5 分間) Note. エラーバーは標準誤差を示しており,以降も同じである. 2.3.2 転換群の注視割合に関する分析 転換群の説明再構築フェーズ開始から転換直前 30 秒 前までの各事実に対する平均注視割合を図 3 に示す.転 換群の再構築フェーズにおける転換直前 30 秒前までを 分析対象として分散分析を行った結果,主効果は確認 されなかった(F (5, 40) = 1.36, n.s.).また,t 検定 を行ったところ,キーファクトへの注視割合がベース

(4)

ラインに比して有意に低下していたことが確認された (t(8) = − 4.39, p < .005). 次に,転換群の説明再構築フェーズにおける転換直 前 30 秒間の各事実に対する平均注視割合を図 4 に示 す.転換群の再構築フェーズにおける転換直前 30 秒間 を分析対象として分散分析を行った結果,主効果が認 められ(F (5, 45) = 7.48, p < .01),下位検定を行っ たところ,キーファクトへの注視割合が,その他 5 つ の事実への注視割合よりも有意に高いことが示された (M Se = 0.02, p < .05).また,t 検定を行ったところ, 導入 1 に対する注視割合がベースラインに比して有意 に低く(t(9) = − 5.19, p < .005),キーファクトに対 する注視割合がベースラインに比して有意に高いこと が明らかとなった(t(9) = 4.70, p < .005). 図 3: 転換群の各事実に対する平均注視割合(転換直前 30 秒前まで) 図 4: 転換群の各事実に対する平均注視割合(転換直前 30 秒間)

2.4

まとめ

実験の結果から,(1) 先行説明と矛盾するキーファク トに対する注意が抑制されていることが明らかとなっ た.また,(2) 転換群においては,説明転換の直前にキー ファクトへの注意が促進している事実が確認された.こ れらの結果は,寺井・三輪・松林(2015)の結果と整 合的であり,転換群と未転換群の比較から,説明転換 に向かう過程において,一旦抑制されていたキーファ クトへの注意が促進し,説明転換に向かっていた事実 が確認された [5].

3

実験

2

3.1

目的

本実験では,RQ2 を検討するために,説明転換を促 進させるための要因として,「キーファクトへの注視時 間」,および,事実を捉え直そうとする意識的な態度と して,「内省的思考」に着目した.内省的思考とは,判 断を留保しじっくりと考える公正な思考であり,自分 の思考を意識的に吟味することである [6]. 実験 1 の結果からは,転換群では,説明転換の直前 にキーファクトへの注意が促進していたことが明らか にされた.本実験での実験操作により, 説明転換を促 進させる上で,「キーファクトをより長く注視するだけ で十分なのか」,それに加えて,「観察された事実を捉 え直す内省的思考が必要なのか」についての実験的な 検討が可能となる.

3.2

方法

3.2.1 参加者 大学生 88 名が実験に参加した. 3.2.2 課題 実験 1 で用いた床屋課題をしたものを一部修正して 用いた.なお,本実験の説明再構築フェーズでは,各 事実に対する注視時間を実験的に操作するため,物語 文の提示方法を変更した.具体的には,物語文の全体 を表示するのではなく,再構築される説明において参 照されることの多かった「場所」および「時間」に関す る事実と「キーファクト」の 3 つの事実を場所,キー ファクト,時間の順番で一定時間ごとに表示する方法 をとった. 3.2.3 実験条件 参加者を「統制群」(24 名),「キーファクト長提示 群」(20 名),「内省教示群」(21 名),「長提示 + 教示 群」(23 名)に均等に配置し実験を行った. (1) 統制群の説明再構築フェーズでは,場所に関する事 実を 10 秒,髪に関する事実(キーファクト)を 10 秒, そして時間に関する事実を 10 秒の間隔で順に提示して いた.(2) キーファクト長提示群では,髪に関する事実 (キーファクト)の提示を統制群の倍(20 秒)とした. (3) 内省教示群では,課題に取り組んでいる最中にヘッ ドフォンから内省的思考を促す音声が繰り返し流され た.なお,音声で教示される内容は,「最初に作った説 明に捉われずに,新しい説明を考えましょう」,「まった

(5)

く新しい説明を考えましょう」,「提示されている事実 だけから,説明を考えましょう」,「文章にない,勝手 な前提を追加せずに考えましょう」が順番に再生され た.また,音声の再生中は白紙画面が提示された.な お,統制群およびキーファクト長提示群ではこのよう な音声は提示されなかったが,内省教示群と同様のタ イミングで白紙画面が提示された.(4) 長提示 + 教示 群では,髪に関する事実(キーファクト)を統制群の 倍(20 秒)提示するとともに,内省的思考に関する音 声教示が与えられた.

3.3

結果

各群における説明転換の成否を表 1 に示す. 表 1: 説明転換の成否 人数 条件群 参加者 転換群 未転換群 その他 統制群 24 4 13 7 キーファクト長提示群 20 4 13 3 内省教示群 21 3 12 6 長提示+教示群 23 6 14 3 Note. 転換群計 17 名,未転換群計 52 名を分析対象としている.そ の他とは,先行説明構築フェーズで先行説明を構築しなかった参加 者である. 統制群に比して長提示 + 教示群で説明転換に至った 参加者が多かったものの,転換および未転換群の間に 有意な偏りは認められなかった(χ2(3) = 0.51, n.s.). 実験操作の効果が,転換の有無としては現れなかった 一方,転換に向かう準備過程に影響を与えていた可能 性が考えられる.そこで,各群の未転換群に焦点を当 て分析を進める. 3.3.1 説明構築率に関する分析 参加者がどのような説明内容を構築していたのかを見 るために,構築した説明を 4 種類(場所説明/キーファ クト説明/時間説明/根拠なし説明)に分類した.場所 説明およびキーファクト説明,時間説明はそれぞれ 3 つ(場所/髪(キーファクト)/時間)の提示されていた 事実に沿って構築していたのかを基準に分類している. このうち,キーファクトについて言及した説明は,キー ファクトの捉え直しを試みようとしていた説明であり, 説明転換に向かっていた可能性が示唆される(例:「ア ルフの髪がボサボサなのは,髪の手入れができないほ ど店が繁盛しているからで,アルフの腕の方が良いと 考えたから」).また,根拠なし説明は,事実として提 示されていない仮定を伴って説明を構築している場合 である(例:「太郎は以前アルフのお店に行ったときに 忘れ物をしており,ついでに返してもらおうと考えた から」).以下では,それぞれの説明を構築した回数を もとに,その割合を算出した.各群ごとの根拠なし説 明の構築率を図 5 に、キーファクト説明の構築率を図 6 に示す. 根拠なし説明の構築率における統制群と各群との差 異を検討するために,2 標本 t 検定を行った.その結果, キーファクト長提示群では有意差は確認されなかった が(t(24) = 1.24, n.s.),内省教示群と長提示 + 教示群 では,根拠なし説明の構築率がベースラインに比べて 有意に低いことが確認された (t(23) =−2.17, p < .05; t(25) =−3.35, p < .005). 図 5: 条件群ごとの根拠なし説明構築率(ベースライン との差分) 次に,キーファクト説明の構築率における統制群と の差異を検討するために,2 標本 t 検定を行った.そ の結果,キーファクト長提示群と内省教示群では有意 差は確認されなかったが(t(24) = 0.96, n.s.; t(23) = 1.43, n.s.),長提示 + 教示群では,キーファクト説明 の構築率がベースラインに比べて有意に高いことが確認 された(t(25) = 3.20, p < .005).なお,場所説明および 時間説明については,差異は認められなかった(キーファ クト長提示群:t(24) =−0.65, n.s.; t(24) = −0.90, n.s., 内省教示群:t(23) = 1.42, n.s.; t(23) = 0.88, n.s.,長 提示 + 教示群:t(25) = 2.02, n.s.; t(25) = 0.28, n.s.). 図 6: 条件群ごとのキーファクト説明構築率(ベースラ インとの差分)

(6)

3.4

まとめ

実験の結果から,(1) キーファクトへの注視時間を 長くするだけでは,説明転換に影響を与えない一方で, (2) 内省的思考を促す教示を組み合わせることで,完全 な説明転換にまでは至らなかったものの,それに準ず る段階,すなわちキーファクトに着目し,それを捉え 直そうとする段階に到達していたことが確認された.

4

総合考察

本研究の目的の 1 つ目は,「説明転換の成否によって, 説明転換の過程における事実参照にどのような差異が 認められるのか?」という RQ を明らかにすることで あった.実験 1 において説明転換の過程における事実 参照を眼球運動計測により検討したところ,先行説明 と矛盾するキーファクトに対する注意が抑制されてい ることが明らかとなった.また,転換群においては,説 明転換の直前にキーファクトへの注意が促進している 事実が確認された.矛盾が生じた直後は,キーファク トに対する注意が抑制するといった結果は寺井・三輪・ 松林 (2015) と一貫していた [5].そして,自らの仮説 を支持するようなデータに着目する確証バイアス [2] と いった現象とも類似しており,先行説明と矛盾してい る事実を捉え直すことの困難さが示された. 目的の 2 つ目は,「どのようにして説明転換を促進さ せることが可能か?」という RQ を明らかにすること であった.実験 2 において,キーファクトへの注視時 間と内省的思考を操作し検討したところ,キーファク トへの注視時間を増加させるだけでは,説明転換に影 響を与えない一方で,内省的思考を促す教示を組み合 わせることで,完全な説明転換にまでは至らなかった ものの,それに準ずる段階に到達すことが確認された. Grant et al.(2003) は,洞察課題の一つである放射線 問題を対象に,視線を外的に誘導することで,洞察と 注意との関係を実験的に議論している [10].その結果, 正答者がより注視する領域に注意(視線)を誘導する ことで,問題解決のパフォーマンスが向上することが 示された.このことは,先行説明に囚われている状態 であっても,キーファクトを取得する機会が与えられ るだけで,説明転換が促進され得ることを示唆してい る.しかしながら,実験操作では,放射線課題を構成 する skin の厚さを微妙に変化させることで,skin への 視線の誘導を行っていた.このような実験操作は,事 実参照の機会を増加させるだけでなく,問題解決者に 解決に直接関わるヒントを提供していたことが予想さ れる.同様に,著者らの先行研究では,キーファクト を赤字でハイライトしキーファクトに対する注意を促 すことに加え,課題解決のヒントであることを明示す ることで,説明転換の促進が認められた [5].先行研究 の実験条件では,本研究の実験 2 の長提示+教示群に おける,キーファクトへの注視時間の増加,および内 省的思考に加えて,どの事実にその態度を傾けるべき かの情報がヒントとして与えられていたと考えること ができる.以上より,説明転換を完全に促進させるた めには「キーファクトへの注視」,「内省的思考」,「内 省的思考を傾けるべき方向」の 3 つの要素により可能 となると考えており,今後検討していく予定である.

参考文献

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Uni-versity Press, (1992)

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Ex-perimental Psychology, Vol. 12, No. 12, pp. 129–140

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[3] Bilali´c, M., and McLeod, P., and Gobet, F.: Why good thoughts block better ones: The mechanism of pernicious Einstellung (set) effect, Cognition, Vol. 108, No. 3, pp. 652–661 (2008)

[4] Mason, S. F.: A histroy of the science - Main cur-rents of scientific thought, Lawrence and Wishart

Ltd, (1995)

[5] 寺井・三輪・松林: 説明転換における事実参照に関す

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[6] JOHN DEWEY.: HOW WE THINK, D. C. HEATH

and CO, (1910)

[7] Hempel, C, G.: ASPECTS of SCIENTIFIC EXPLA-NATION And Other Essays in the Philosophy of Sci-ence, Free Press, (1965)

[8] Hempel, C, G.: The philosophy of Carl G. Hempel: studies in science, explanation, and rationality,

Ox-ford University Press, (2001)

[9] Gardner, M.: Aha! Insight, Mathematical

Associa-tion of America, (1978)

[10] Grant, E. R., and Spivey, M. J.: EYE MOVE-MENTS AND PROBLEM SOLVING: Guiding At-tention Guides Thought, Psychological Science,

図 1: 床屋課題( Gardner(1978) を改変) Note. 太枠内が参加者に提示された物語文であり,6 つのパラグラ フ(導入および場所,髪(キーファクト),時間,結末)で構成され ている. 人公がどちらを選ぶと思ったのか?」について判断する ように教示を行った.そして,結末を含まない文章を 提示し,説明が思いついた時点で回答を行うことが求 められた.回答後, 「太郎はアルフの床屋に入っていき ました」という結末が提示され,その結末に至ったと 考えられる説明を再度構築することが求められた.参 加

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