Title
島嶼経済における情報通信関連産業クラスターの形成過
程と課題
Author(s)
宮城, 和宏
Citation
地域研究 = Regional Studies(2): 163-176
Issue Date
2006-03-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/5544
宮城和宏 :島峡経済におけるJCT産業クラスター
島喚経 済 にお ける情報通信 関連産業 クラス ターの形成過程 と課題
宮城
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1972年 の本土復帰以 降、沖縄 で は三次 に渡 る沖縄振 興 開発計 画 に よる製造業振 興が行 われて きた。 しか し、依然 と し て財 政支 出や基地経 済 に依存 した構造 、全 国平均 の2倍近 い水準 で推移 して きた完 全失業率 は大 き くは変 わ っていない。 この ような課題 を解 決 し、観光産業 と並 ぶ リーデ ィング ・セ クターの振 興 を図 る 目的で、1998年 のマ ルチ メデ ィア ・ア イラ ン ド構想 を噂矢 とす る情報通信 産業 クラス ター形成 の努 力が これ まで成 されて きた。 島喚経 済 と しての 「規模 の不 経 済性」 を克服 し、民 間主導 の 自立型経 済 を構築す る こ とが 目的であ る。本稿 で は、沖縄 マ ルチ メデ ィア ・アイラ ン ド 構想 を噸 矢 とす る情報通信 関連産業 の沖縄 へ の集積過程 を明 らか にす る と同時 に、 クラス ター形成 の可能性 と今後 の課 題 につ いて論 じる。 キー ワー ド :情報通信 関連産業 、 クラス ター、島喚経 済、沖縄 マルチ メデ ィア ・ア イラ ン ド構想 1.は じめに 1972年 の本土復帰以降、本土 との経済格差や高失業 率 の是正 を目的 に、沖縄振興 開発特別措置法 に基づ く 三次 に渡 る沖縄振興 開発計画 を通 じて様 々な施策が推 進 されて きた。 その結 果 、道路 、空港 、港 湾等 の産 業 ・社会 イ ンフラの整備 に関 して本土 との格差 は着実 に是正 されて きたが、製造業振興 を中心 とす る様 々な 施策が大 きな成果 を収めた とはいえず、依然 として高 い失業率や財政支出、基地経済 に依存 した構造が続 い ている。 背景 には、本土 との距離が もた らす輸送 ・情 報通信 の高 コス ト、製造業 に必要な規模 ・範囲の経済 を活かせ ない こと、その歴史的経緯 (米軍統治 による 基地経済化) によ り製造業の存立基盤である技術 ・産 業資本の蓄積が な されて こなか ったこと等がある。 ま た、沖縄 の島喚経済 としての特性 である 「規模 の不経 済性」を十分考慮せず に、製造業の振興 を追 い求め続 けた こ とも重要 な一因であろ う `I). ちなみ に、平成13 年度の県内総生産の産業別構成比 は、1
次産業1.92%、 2次産業15.4%(うち製造業5.25%)、3次産業86.99% となってお り、2
次産業、中で も製造業の比重が低 く、3
次産業 に特化 した沖縄独特 の産業構造 は今 も変 わ ら ない。製造業の比率 は全国最下位 (全国平均20.34%)、 3次産業の比率 は東京都 に次 いで全 国第 2位 (全国平 均76.7%)である`2'。 1980年代後半以降、沖縄県 は島喚経済の不利 を克服 し、民 間主導型の 自立経済構築の手段 として情報通信 技術 (ICT)を利用す る情報通信 関連産業 を一つの核 と した経 済発 展 モ デル を模 索 しは じめ た。 いわゆ る 「マルチ メデ ィア ・アイラン ド構想」である。情報通信 基盤の整備 と情報通信技術 の発達が、距離 と時間の壁 の克服 を可能 に し、地理的遠隔性 とい う離 島県沖縄 の 弱点 を利点 に転ず る有望産業 として期待 されているこ とがある。 本稿では、沖縄 マルチメデ ィア ・アイラン ド構想 を 噂矢 とす る情報通信 関連産業の沖縄への集積過程 を明 らかにす る と同時 に、 クラス ター形成の可能性 と今後「
地域研究
」
2号 2006年
3月
研究 ノー ト
の課題 につ い て論 じる。 以 下 、2節 で は情報通 信 関連 産業 クラス ターの形 成 過程 を国 、県 の様 々な政策 や計 画 よ り明 らか に し、3節 で は ポ ー ターの クラス ター理 論 を援 用 して課題 につ いて検 討 す る。 最 後 に、政 策 的 イ ンプ リケー シ ョンを提示 して結 び とす る。 2.沖縄 における情報通信関連産業 クラスターの形成過程(1
)情報通信 関連 産業集積 の県別比 較 コールセ ンター進 出 に 自治体 の助 成 金 が適 用 され る ようにな って数年が経 過 した。 沖縄 県 な どが始 め た通 信 費 や設備 の助成制 度 な どハ ー ド面 の優遇策 は全 国的 に普 及 してお り、沖縄 や北 海道 が コー ルセ ンターの誘 致 で それぞ れ5000人以上 の雇 用 を生 み 出 した成功 体験 に相乗 りに しよう と地方 自治体 間で コー ルセ ン ターの 誘 致競 争 が激 しくな って きて い る `3'。競 争激 化 の 中で 助 成制度 内容 も従 来 の 「ハ コモ ノ」 中心 か ら企 業 ニー ズの多様 化 を反映 して教育研 修 費 や ス タ ッフ採 用 費 な どを助 成対 象 とす る ものや オ フ ィス賃 貸 料 の一部 を支 援 した り等 、多様 で あ る (4'。現 在 、誘 致競 争 は第2段 階 を迎 えた といわれ てお り、今 後 は誘 致 した企 業 をい か に定着 させ るかが重 要 とな る。 なお 、 コー ルセ ンタ ー の運用 コス トの約7割 は人件 費 とい わ れ て い るが 、 今 後 は人件 費 の支援 の みで な く人材 育 成 な どソフ ト面 の支援 策 が誘致 の成否 を決 定 す る と考 え られ る。 す な わ ち、人件 費 を低 減 化 す るだ けで な くいか に クオ リテ ィの高 いサ ー ビス を提 供 で きるか、 そ の ため に どの よ うな支援 を提 供 で きるかが コー ルセ ン ター を誘 致 す る 上 でのポ イ ン トとなるであ ろ う。 図1は コー ルセ ン ターの 自治体 別 立 地状況 をみ た も ので あ る。 同図 よ り明 らか な よ うに、2004年5
月現在 でみ て、沖縄 に立地 した コー ルセ ン ターが38件 で最 も 多 く、次 いで北 海道 (26件 )、福 岡 (20件 )、宮 城 県 (14 件)、長崎 (13件 ) の順 とな って い る。 北 海道 は道経 済 白書 でIT
を 「ハ ンデ ィキ ャ ップ とい われて きた距離 と時 間 を克服 で きる」 と公 共依 存脱 却 - の カギ と位 置 づ け、情 報系 を含 め34大学 の存 在 を背 景 に 「優 秀 な労 働 力」を売 りに先 発 の沖縄 を追 い越 す 勢 いで コー ルセ 図 1 コールセンターの自治体別立地状況 (2004年5月現在) (出所)コンビゝ一夕-テレフォニ-編集部編(2004)より作成。 2018161412100968642 憾 I.i 闇靴 ロその他ロデータ-センタ-ロコンテンツ制作E■ソフト。コールセンターg情報サ-ビス菜ウェア開発 A 醍 a ・■. 】 ■ ■ . _ .蛋 → 図2 沖縄 県 にお ける情 報 通 信 関連 産 業 の集 積 状 況 (出所)沖縄 県商工労働部情報産業振興課(2003)より作成。 ンタ-の集積 を果 た して きた'5'。 ちなみ に、 い ち早 く 助成 制 度 を打 ち出 した沖縄 で は県外 企 業38社 が立地す る集積 地 とな り、 これ まで に6000人以上 の雇 用 を創 出 して きた とい われ てい る。 さらに、 コー ルセ ンター に 加 えて、 ソフ トウェア開発 、 コ ンテ ンツ制作 、 デー タ セ ン ターそ して情 報 サ ー ビス等 を含 む情報 通信 関連 産 業全般 で み る と沖縄 県 には2003年 まで に83社 の新規進 出企 業 が あ り、1995年 か ら2003年 まで に8333人の新規 雇用者 を創 出 した (図2
参照)`6)。 (2)情 報通信 関連 産業 クラス ターの形成過程 1)戟後 の基地経 済か ら復帰後 の基地依存 ・財政依存 型経 済へ 沖縄 は戦後 、米 軍施 政権 下で ア メ リカの軍事 戦略 で 構築 され た広 大 な米軍 基地 か ら派生 す る基地建設 に依 存 す る形 で経 済復 興が始 ま り、物 を生 産す る代 わ りに宮城和宏 :島峡経済における
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CT
産業クラスター 日本本土 や外 国か ら物 を移輸入す る構造が形成 されて きた。 その間、 日本本土 の高度成長 か らも取 り残 され ることになる。 一方 、本土復帰後 の1
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年 か ら2
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年 までの間 に、 「本土 との格差是正」 と 「自立的発展のための産業基盤 の整備」 を重点項 目と して沖縄振興 開発特別措置法 に 基づ き策定 された3
次 、30年 に渡 る振興策 (沖縄振興 開発計 画)の下で約7
兆円 もの開発事業費が投入 され て きた。主 に製造業 中心 の産業構造 を目指 した振興 開 発計 画 に よ り、一定 の社 会資本整備 は進 んだ ものの、 製造業 の企業誘致 は一向 に進 まず、観光産業以外 に新 たな産業 は育 たなか った。結果 は、製造業 シェアの上 昇 で は な く観光産業 の想定外 の健 闘であ った。結局 、 戦後 を通 じて沖縄 では、 ものづ くりの産業 は計画通 り 育 たず 、基地経 済依存型、財政依存型、そ して物 を移 輸 入す る消費型構造 を変 えることはで きなか った こ と になる。 様 々な要 因が指摘 されている。島喚県であ る とい う 地理的特性 に よる距離 ・時 間面での不利 、水資源 ・電 力 ・資本 な どの制約 か ら製造業が発展す る余地が少 な か った こ と、現在 も本 島の約2
0%
を占めている米軍基 地が効率 的 な産業基盤整備 や企業立地 を進め る上で大 きな制約 になってい ること等 であ る。 この ような悪条 件 に もかかわ らず 、従来の計画では沖縄 の産業立地上 の特性 を考慮せず に、本土 との格差是正 の手段 と して 製造業の振興 を重視 し続 けた。沖縄県が1
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年代末以 降、観光産業 と並ぶ リーデ ィングセ クター と して情報 通信 関連産業 の集積 を図ろ うと して きた背景 には以上 の要因があった と考 え られる。 沖縄 県 は近年 、 コールセ ンター を中心 と した情報通 信 関連 産業 の集積地 と して脚光 を浴 びつつ あるが、以 上 よ り明 らか な ように、従来の3
次 に渡 る沖縄振興 開 発計画 において沖縄 の戟略的 な産業 と して必ず しも情 報通信関連産業の振興が重視 されてきたわけではない `7)。 それで は、 どの ような歴史的 な経緯 で今 日、沖縄 に情 報通信 関連産業 の集積が進展 したのであろ うか。以下 では、その点 について明 らかに してい きたい。 2)情報通信関連産業の集積地へ1
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年 に県 は、同年 か ら数 えて2
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年後 の2
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年 まで に在神米軍基地 を三期 に分 け段 階的 に整理縮小 し、最 終的 に基地の全廃 を目指す 「基地返還 アクシ ョンプロ グラム」 と基地や財政依存経済か らの脱却 を図 り自立 経済 を目指す新 たな産業振興戦略である 「産業創造 ア クシ ョンプログラム」
とのセ ッ トで21
世紀 の グラ ン ド デザ インである国際都市形成構想 を策定 した。 当初、県 に よる数多 くの構想 の一つ にす ぎなか った 同構想が注 目を集め る ようになった契機 は、1
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年9
月に起 きた少女暴行事件 である。復帰後最大 の反基地 集会 となった9
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年秋の「
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県民総決起大会」 の開催 にみ られ る県民 の反基地感情 の高 ま りを背景 に、政府 は 「基地の全面返還」 を前提 に県が作成 した国際都市 形成構想 や基地変換 アクシ ョンプログラムの実現 に向 けた支援 を約束す るこ とになる。 在神米軍基地の整理 縮小 ・統合 問題 を議論 す るためのSACO (沖縄施設 ・ 区域等 に関す る 日米特別行動委員会)が1
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年1
1
月に 設置 され、1
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年1
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月には首相 と北海道 開発長官 を除 く全 閣僚 で構成す る 「沖縄政策協議会」
が官邸 内へ設 置 されることになった。 早速、9
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年1
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月には各省庁 か ら沖縄政策協議会の下 へ8
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もの沖縄振興策が提案 されることになる。 その中 で各方面か ら特 に高 く評価 されたのが県の国際都市形 成構 想 と考 え方 が一致 して い る と考 え られ た郵 政省 (当時) の 「沖縄 マ ルチ メデ ィア特 区構想」と通産省 (当時)の 「沖縄 デジタルアイラン ド構想」である。 沖 縄 マルチ メデ ィア特 区構想 は、 アジア ・太平洋地域 の 情報通信ハ ブ基地 と して機能す る国際都市 「沖縄」の 形成 を目指す ものであ り三つの施策 を揚 げた。 ネ ッ ト ワークと低料金 を前提 とし、(1
)研究開発施設の整備 、 国内外 の優 れた研究者 の招稗 な ど技術 ・人材 ・施設の 集中、 (2)遠隔医療、ネ ッ トワーク ・アウ トソー シン グなど先進的アプ リケーシ ョンモデルの集中、 (3)電 子美術館 、税 の優遇措置 な どコンテ ンツの集 中、であ る 'H-。他方、通産省 のデ ジ タルアイラン ド構想 は、情 報化 を通 じた沖縄の地域振興策であ り、 (1
)起爆剤 と「地域研究
」
2号 2006年3月研究 ノー ト
して公的機 関 による情報化 の促進、 (2
)電子商取引の 展 開、 (3)若者層 に魅力的かつ活力 のあ る情報産業の 確立、 (4)若年層 の育成 を通 じた将来 に向けての情報 化 の土台づ くりを提起 した。 なお、沖縄振興策 につい て は1999年 12月8日に 「普天 間飛行場 の移設 に係 る政 府方針」が 閣議決定 され、それ に 「沖縄 県北部地域の 振興 に関す る方針」等 が盛 り込 まれた。 また2000年 7 月には九州 ・沖縄サ ミッ トが名護市 で開催 されるな ど、 政府が北部地域の振興策 に積極 的 に取 り組 んでい く方 針が決定 され る中で郵政省 も名護市 を中心 に様 々な情 報通信施策 を展開す るようになる (9)0 これ らの構想 を契機 に情報通信 関連産業の集積 に向 けた動 きが県 内外 で急速 に進展 してい くこ とになる。 まず1998年 9月 に県 は 「沖縄 マルチ メデ ィアアイラン ド構想」を発表、次 いで1999年 4月にはそれを側面か ら バ ックア ップす るための機 関 と してNPO特定非営利活 動法 人 「フロム沖縄推進機構」
を発足 させ る。 1999年 6月には沖縄 政策協議 会 に よ り 「沖縄経 済振興21世紀 プラ ン」 の中間報告書 が公表 され、2000年 7月の 「九 州 ・沖縄 サ ミッ ト」
を挟 んで2000年8
月 には 「沖縄経 済振興21世紀 プラン」最終報告書 において「沖縄 国際情 報特 区構想」
が示 された。 さらに2001年7月には、県 に よる 「沖縄e
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宣言」
及 び 「情報通信 関連分野の人 材育成 に関す る基本方針」 が発 表 され、2002年8月に は県 による 「沖縄県情報通信産業振興計画」、2003年3
月には県 による 「沖縄e
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チ ャレンジプラン」、2005 年3月には 「第2次沖縄県情報通信 産業振興計 画」
へ とつ なが ってい くこ とになる。各構想 あ るいは計画の 詳細 は以下の通 りである。 「沖縄 マルチ メデ ィアアイラ ン ド構想」 で県 は、達 成 目標 として① 沖縄 における情報通信 産業の振 興 ・集 積 による 自立 的な経 済発展 、② 高度情報通信技術 を活 用 した特色 あ る地域振 興の道標 、(参アジア ・太平洋地 域 における情報通信分野のハ ブ機能 を通 じた国際貢献 を挙 げ、到達 目標 の 目安 と して県内の情報通信 産業 に おける1997年現在 の雇用6000人 を2010年 には全 国 にお け る情報通信 産業 の雇用規模 の1%であ る2万4500人 に引 き上 げ るこ とを謳 っている。 さらに、情報通信産 業 を (1
)情報 通信機器 製造 、 (2
)情報流通 、 (3)
ソフ トウェア開発 、 コンテ ンツ制作 、情報サ ー ビス に 大別 した上で、沖縄県の優位性 ・不利性 を地理的条件 (用地 ・水 ・電力等、マーケ ッ トとの距離、時間、気候、 位置)、社会的条件 (マーケ ッ ト、資本、人材、各種制 度、生活環境 、若年労働 人口、文化風土)で比較検討 した結果 か ら情報通信産業 における重点分野 として コ ンテ ンツ制作 (コンピュー タグラフィック製作等)、 ソ フ トウェア開発 (GIS:地理情報 システムの製作等)、 情報サー ビス (コールセ ンター等)の3分野 を挙 げた。 マ ルチ メデ ィアアイラ ン ド構想実現 のための シナ リ オは次 の ようである。 フェーズ1
(1998-2000年度): 顧客サ ポー ト機能等 の集積 の中核 の形成、 フェーズ2
(2001-2006年度) :集積 の中核の充実 を図 る とともに 関連 プロジェ ク トを実施す る。 これ によ り労働 集約部 門か ら頭脳集約部 門-のステ ップア ップ ・高度化 を図 る。 フェーズ3(2007-2009年度):これまでの各種集 積 を もとに産学の連携 による先端的な製品開発 を行 う。 これ に よ りハ イテ ク分野へ進 出す る。 以上 の シナ リオ はわか りやす くい えば、 まず コールセ ンター等 の情報 サー ビス分野 を集積 させ、次 いで コンテ ンツビジネス、 ソフ トウェア開発 の順で情報通信 関連産業 を主力産業 に育成 してい こ うとい うものである。 県が策定 したマ ルチ メデ ィアアイラン ド構想では 「企業誘致 の第1ス テ ップ と して東京等 で発生す るバ ックオ フ ィス機能 、 コールセ ンター機 能等 の情報処理サ ー ビス業務等 の受 注 ・集積 を強力 に推進す る」
ことが明記 されている。 なお、 コールセ ンターな どの情報サ ー ビス関連企業 誘致 の効 果 を強 く印象づ け、その後 の誘致 に弾み をつ けたのが、1997年 に沖縄振興策 として沖縄 に一部移転 されたNTTの104番号案内サービス、1998年のマルチ メ デ ィアアイラ ン ド構想 と考 え られる(10'。 それ を制度面 で支 えて きたのが1997年度 よ りス ター トした国の 「沖 縄若年者雇用 開発助成金」
と1999年度 よ りス ター トし た通信 回線使用料 の8
割補助である (フリーダイヤルの 電話料金 の うち約80%が補助 され、首都圏 にセ ンター宮城和宏 :島唄経済におけるICT産業クラスター を置いた場合 と同等の負担で済む)。後者 について、県 は
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年度予算 に通信料補助 と して約1
億8
千万 円 を 計 上 した(11'。 その背景 には、「人件費 な どで3割 コス ト低減 して も、通信 コス トで3
割高 な ら沖縄 でや るメ リットは薄れる」ことがあった。 ちなみ に、1
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8
年時点 では、沖縄 が首都 圏か ら遠隔地 にあ るため通信 コス ト が割高 になってい るこ とや県内で発注す る受注業務が ほ とん どない こ とが企業 の県内進 出 に際 しての不安材 料 となっていた (12)0 国 に よる優遇措置 と しては、沖縄振興 開発特別措置 法の改正 によ り、情報通信産業 (ソフ トウェア業、情報 処理 ・提供 サ ー ビス業 、放送業、映画 ・ビデオ等製作 業、情報記録物製造業、電気通信業 の6業種 ) に関 し て2
3
市 町村`-3)が国内初の 「情報通信産業振興地域」指 定 を受 け、設 備 の新 設 ・増 設 に伴 う機 械 ・装 置 、建 物 ・付属設備 ・構築物 の取得 ・製作 ・建設 に関 して課 税の特例 の適用が受 け られる ようになった(
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年4
月1日施行)。 これ らは、当初 「一国二制度的な思い切 った措置」
(政府) とされていたが、制度 と実態 との乗 錐か ら 「絵 に描 いた餅」 と指摘 されていた(14)。理 由は、 第1
に同制度 は投資税控 除が大 きな売 りとされ、法人 税額 の2
0%
を限度 に、機械 ・装置1
5%
、建物 ・付属設 備 ・構築物8% と規定 されているが、沖振法改正 と同 時期 に施行 された租税特別措置法の通達 で付属設備 は 「建物 とともに取得等 をす る場合 における建物付属設備 に限 られ る」こ とが定 め られていた こ とにある。 ただ し、通常 、IT企業の事業所 は、いわゆる 「取得」
で は な く賃貸が ほ とん どで、備 品等 に関 して も 「リース契 約」
等が多 く含め られるため、 この ことは立地企業が 同制度 を利用す るこ とがで きない こ とを意味す る。 第2
に、驚 くべ きこ とに沖縄 マルチ メデ ィアアイラ ン ド 構想 の フェーズ1(
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0
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年度) において重視 さ れていた コールセ ンターが情報通信産業 の対象6業種 の中に含 まれていなか った こ とである。 そのため、当 時、集積 が進 みつつあ った コールセ ンターが設備 の新 設 ・増設 を した として も控 除 を受 けるこ とがで きない ケースが現 れ ることになる(15)。結局、企業の沖縄進 出 は同制度 よ りも県単独予算 による通信費の8
割補助 や 「沖縄若年者雇用 開発助成金」が大 きな決め手 になった もの と考 え られる。 これ に対 して、県情報政策室 は2
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年8
月に進 出企 業へ の聞 き取 り調査結果 を踏 まえて投資税額控 除 にパ ソコ ン、サ ーバ ーな ど設備投資 の主力 となる 「器具」、 「備品」だけで な くそれに 「リース契約」
を加 え、対象 業種 にコールセ ンター を加 えることで制度 の拡充 を図 るこ と、従来の 「情報通信産業振興地域」 に加 えて先 の6業種以外 の情報通信 関連産業 も扱 える ように 「特 別情報通信産業振興地区」の創設 を国に求めた。「特別 情報通信産業振興地区」
に関 しては、 コンテ ンツ等 の 集積 や国内外企業 の誘致 につ なが るデー タセ ンター等 に特別 自由貿易制度並 みの法人所得3
5%
控 除(
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年 間) の優遇措置 を求めた。背景 には当時、県内 に企業や行 政 の持 つ膨大 な情報 の管理 、補修 を行 うデー タセ ンタ ーの設立が相次 いでいたことがある(16)02
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2
年 には、沖縄振興 開発特別措置法、第3
次沖縄 振興 開発計画 (いずれ も2
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年度 に終了) に代 わる も の と して沖縄振興特別措置法が制定 され、それ に基づ き沖縄振興 の向か うべ き方 向 と基本施策 を明 らか に し た総合的 な計 画 と して沖縄振興計画が同年 、新 たに策 定 された。 さらに、県 は同計 画 に基づ き 「沖縄県情報 通信産業振興計画」 を2
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年8
月 に作成す る。 同計画 の 目標 は、1)活力ある民間主導型 自立的経済の構築 に 向けて、情報通信関連産業の集積 ・振興 を図ること、2) アジア ・太平洋地域 にお ける情報通信 関連産業の集積 地 と して国際 的 な情 報通信 ハ ブの実現 を目指 す こ と、 にある。 これ らの一連 の流 れの中で、従来の沖振法 に おける先の問題点の改善が図 られることになった。 沖縄振興 開発特別措置法 に代 わる沖縄振興特別措置 法 による情報通信 産業 の振興 に関す る改善点 は以下の 通 りである。 まず第1
に、「情報通信産業振興地域」 に おける課税特例 の対象業種 に従来の情報通信 産業6業 種 に加 えて情報通信技術利用事業 (コールセ ンター等) が明記 された(17)。 ただ し、投資税額控除の対象 は設備 の新設 ・増設 に伴 う機械 ・設備 、器具 ・備 品、建物 ・「地 域研 究
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2号 2006年3月
研 究 ノ ー ト その付属設備 ・構築物 の取得 ・製作 ・建設 に限定 され てお り、県が求めた 「リース契約」 は依然 として含 ま れていない。第2に、従来の 「情報通信 産業振興地域」
に加 えて、新 たに特定情報通信事業 (デー タセ ンター、 イ ンター ネ ッ ト ・イクスチ ェ ンジ、 イ ンター ネ ッ ト ・ サ ー ビス ・プロバ イダ) を対象 とした経 済特 区である 「情報通信産業特別地区」
(那覇 ・浦添地 区 と名護 ・宜 野座地区)が指定 されるこ とになる柵 。 なお、県 は沖 縄振興特別措置法第2
8
条 に基づ く 「沖縄県情報通信産 業振興計画 (第1次計画)」の実績 を基礎 に、その基本 的考 え方 を受 け継 いで、2005年3
月 に 「第 2次沖縄県 情報通信産業振興計画」 を策定 した。 一方、その間に、沖縄政策協議 会 は1999年6月に基 地 ・財政依存経済か らの脱却 を 目標 に 「沖縄経 済振興 21世紀 プラン」中間報告書 を発表。1)加工交易型産業、 2)観光 ・リゾー ト産業 、3)農林水 産業 とともに、4 本柱 の一つ に 「国際的 な情報 ネ ッ トワー クを目指す情 報通信関連産業の育成」
を位置づ け、その中で情報通 信 関連企業等 の誘致 に よる沖縄経 済 の活性化 のための 環境づ くりを狙 い と した 「沖縄 国際情報特 区」構想 の 検討 を提言 した。郵政省 (当時) は これ を受 けて同構 想 の具体化 に向けて 「沖縄 国際情報特 区構想 の推進方 策等 に関す る調査研 究会」 を同年9月 よ り開催 し、情 報通信ハ ブ実現の加速化の ための方策 、国内外 か らの 情報 関連企業等の誘致 を促進す るための方策等 につい て検討 を行い、2000年 4月に報告書 を取 りまとめている。 郵政省 (当事) に よる沖縄 国際情報特 区構想 を具体 化す るための提言 は以下の通 りであ る。 1)アジア ・太 平 洋 地域 の情 報通信 拠 点 の形 成 に向 け た グ ローバ ル なⅠ
Ⅹ (
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:イ ンター ネ ッ トの相互接続 点)の形成、2)地域情報通信 ネ ッ トワー クの高度化 、 3) 国内外 の情報通信 関連企 業 、研 究機 関等 の誘致促 進 ・集積 ・育成、4)国内外 の コンテ ンツ、アプ リケー シ ョンの集積 、5)情 報通信技術等 に明 るい人材 の早 期 ・大量育成。郵政省 (当時) による この沖純 国際情 報特 区構想 に関す る内容 は、同 じく2000年8
月に公表 された 「沖縄経済振興21世紀 プラ ン」
最終報告書 にそ の まま盛 り込 まれ ることになる `19)。 なお、同構想 はア ジア太平洋地域 の通信需要の増大 を踏 まえ地理的条件 や情報 イ ンフラの整備計画 な どか ら 「世界 に向けた情 報 ゲー トウェイ」、「情報結節点」
として沖縄 の潜在的 発展性 に期待 を寄せ 、国内だけで な く 「海外 の情報通 信 関連産業 の誘致」
を図 る支援策の構築 を打 ち出 して いる。 同時期 、政府 は 日本が5
年以内 に世界最先端 のIT国 家 になることを目標 とした「
e
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J
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戟略」 を2001年 1 月に策定す る とともに、同年3月には具体的 な行動計 画 と して「
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重点計 画」 を策定 、推進 してお り、 さらに2002年6月には、新 たに「
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重点計画-2002」 を策定 し、「
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J
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n戟略」
の早期達成 を図ろ うとしてい た。 そ れ に対 応 して県 は、2001年7月に、沖縄 県が 「情報通信技術 を活用 して、県民生活の向上 と、自立に向 けた持続 的発展 を 目指 し、すべ ての県民が一体 となっ て取 り組 んでい く決意 を県内外 に表明す るこ とを目的 として」沖縄e
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宣言 を表明す る と同時 に、「IT
人材育成 の先進地域 となるこ とを目指 し、県民一人一 人の情報 リタラシーの向上や学校教育 による情報化 ・ 国際化 に対応 した人材 の育成 を図 る とともに、情報通 信関連分野の多様 で高度 な人材 を早期 に育成 し、充実 したIT
人材層 を形成 してい く」 こ とを目的 に 「情報 通信 関連分野の人材育成 に関する基本方針」
策定する。 さ らに、 これ まで に県 内外 で策定 されて きた各種構 想 ・計 画で提言 された、情報通信基盤 の整備 、地域の 情報化 、行政の情報化、情報通信 関連産業 の振興、IT
人材育成等 の現状 を踏 まえ、「
沖縄e
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宣言」の具体 的 な実現 を図 るため に、2003年3
月 に県 は 「沖縄e-i
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チ ャレンジプラン」を策定 した。 その 目標 は、 こ れ まで に他 の構想 ・計画等で も指摘 されて きた ことで あるが、「本土か らの遠隔性や、島喚性 などのハ ンデ ィ キ ャ ップ を解決す る とともに、 自立 した情報交流圏及 び経 済圏 を確立 し、世界 との活発 な交流 を有す るアジ ア ・太平 洋地域 の情報通信ハ ブの実現 を目指す」 こ と にある。宮城和宏 :島峡経済におけるICT産業クラスター
3.
情報通信関連産業 クラスターを支 える要素 と課題(1
)ポーターの産業 クラ1スター理論 Porter(1998)によれば、 クラス ター とは、「ある特 定の分野 に属 し、相互 に関連 した、企業 と機関か らな る地理的 に近接 した集団」であ り、その構成要素 には 企業だけではな く専用 インフラス トラクチ ャーの提供 者、専 門的な訓練 ・教育 ・情報 ・研究 ・技術支援 を提 供す る政府 その他の機関 (大学、シンクタンク、職業 訓練機関など)、規格制定団体、業界団体その他、 クラ ス ターの メンバーを支援す る民 間部 門の団体等が含 ま れる。 クラス ター内の企業の競争優位 を高めるのが、その 国 (地域)の属性 であ り、ポーターはそれ を以下の四 つ に区分す る (いわゆる ダイヤモ ン ド)0 ① 要素条件 (もともとその国に備わっているもの よりも、産業固有 のニーズ に沿 って高度 に専 門化 され た要素が重 要)、 ②需要条件 (国内の買い手が、その製品やサー ビスに ついて世界で最 も洗練 されていて要求水準が高いか ど うか)、③ 関連産業 ・支援産業 (国際的な競争力 を持つ 供給産業 ・関連産業の存在お よびそれ との密接 な協力 関係の有無)、④企業戦略 ・構造 ・競合関係 (国内の競 合関係の激 しさ)。 四つの属性 か らなるダイヤモ ン ドは、互いに強化 し 合 う一つの システムを形成 してお り、政府 はダイヤモ ン ドの各属性 を伝導 し増幅するうえで重要 な役割 を果 たす ことがで きる。 沖縄 に情報通信関連産業 クラス タ ーを形成す る上で、国 ・県が政策的な内生変数 として 直接 に関与可能 な ものは、上記四つの属性 の うち① 要 素条件 、(参関連 産業 ・支援 産業 で あ ろ う。 た だ し、 ③ 関連産業 ・支援産業 に関 しては、政府が触媒 として ある産業 を支援す るのではな く、直接 に特殊法人等 を 設立す ることによ り、市場 に介入す るのであれば弊害 をもた らす可能性が高い。一方、(参需要条件、④企業 戟略 ・構造 ・競合関係 に関 しては、国 ・県が政策 を通 じて間接的に影響 を及ぼす ことが可能であるとして も、 基本的に企業 の領域であ り、直接 に関与す ることはで きない。つ ま り、国や県 にとっては政策上の外生変数 として扱われるべ きものである。Porter(1998)が指摘 するように、「政府の政策が成功するのは、企業が競争 優位 を獲得で きるような環境 を創 り出す場合であって、 そのプロセスに政府が直接介入 して しまった らうま く いかない」。政府の立場 は、あ くまで も触媒であ り、企 業が よ り高い レベルの競争力 をめ ざすのを奨励 し推進 するのが政府の役割 となる。 政府の具体的な役割の一つ としてポー ターが挙 げて いるのが、先の ダイヤモ ン ドでいえば、① 要素条件 に あたる 「専 門的要素の創 出に力 を注 ぐ」 ことであ る。 例 えば、初等 ・中等教育や国 としての基本 インフラス トラクチ ャーな どの一般 的な要素の創出 よ りも、先進 的かつ専 門的で、具体的な産業あるいは産業 グループ に関 して、専 門的な研修制度、産業 に結 びついた大学 での研究活動、業界団体 の活動、民間企業 レベルでの 投資 を促す ような政策が重要 となる。 (2)情報通信 関連産業 クラス ター形成 における政府、 県の役割 沖縄県 にコールセ ンターを始め とす る情報通信関連 産業の集積が進展 して きた背景 にも、情報通信 関連産 業 とい う特定の産業 をターゲ ッ トに した上で、同分野 の専門的な要素の創 出のために各種 の施策が実施 され て きたことがある。 さらに、今後、沖縄 に情報通信 関 連産業の集積 をロ ック ・インし、イノベーシ ョンを創 出す る上で も、政府、県の触媒 としての役割 は引 き続 き重要 となろう。 以下では、ポーターの議論 を参考 に、 沖縄 の情報通信 関連 クラス ターにおいてこれ までに上 述の ダイヤモ ン ドの① 要素条件 における 「専 門的要素 の創 出」
や(参関連産業 ・支援産業 (機関) に関 して果 た した政府、県の役割 を中心 に考察する。 沖縄 に関 しては、 これ までに若年労働力が豊富であ る とか、全国に比べ安 い人件費、オフィス賃貸料、気 候条件や住環境の良 さ、低 コス ト生産基地である台湾、 アジアに近い等 々、元来、沖縄 に備 わっている要素が 優位 として指摘 されて きたが、観光産業の発展 を除け ば、今 日までそれが十分活か されることはなか った。「地域研究
」
2号 2006年
3月
研究 ノー ト
その転機 となったのが、沖縄県 のマ ルチ メデ ィアアイ ラ ン ド構想 であ り、その後の政府 、県 、市 町村 、民 間団 体等 の協力の下 に進め られた以下の様 々な施策である。 (∋ 通信 コス ト低減化支援事業 :情報通信関連企業の 誘致 に大 きな効果 をもた らした と考 え られているのが、 通信 コス ト低減化事業であ る。 コールセ ンターな ど情 報 関連産業が集積す る条件 は、太い (回線)、安 い (コ ス ト)、人材 にあ る といわれ てい る。 そのため、県 は 1999年度か ら単独事業 として、本土一 沖縄 間の専用線 の通信 コス トを8
割補助す る コールセ ンター等環境事 業整備事業 を、雇用数 な ど一定条件 を満 たす企業 に実 施。 この補助 によ り、首都 圏 と隣接 県 の間 と同 じレベ ル まで通信 コス トを引 き下 げた (東京都 内での立地 と 変わ らない通信 コス ト提供)。 さらに、立地企業増 によ る支援事 業 の利用企 業増 大 に対処 す る ため に、県 は 2002年度 よ り沖縄一 本土 間の通信 回線 を借 り上 げて事 業者 に無償提供す る 「情報産業ハ イウェイ」
事業 を導入 Lだ'20).
② 沖縄若年者雇用開発助成金 :沖縄若年者雇用 開発 助成 金制度 (国が沖縄 だけ に実施)が 1997年度 か らス ター ト。「沖縄若年者雇用奨励 金」で は、30歳未満 の若 年者新規雇用 に対す る最大 15万 円 を限度 に賃金の2
分 の1を補助 (21'。 「沖縄 若年 者雇 用特 別 奨励 金」で は、 「沖縄若年者雇用奨励金」の支給 を受 け、3
人以上の労 働者 を雇用 (うち30歳未満 の若年者 の 占める割合が2
分 の 1以上)、300万 円以上 の設備投資 を行 う事業者 に 対 して一定額 を支給 。① の通信 コス ト低減化支援事業 とこの助成金が首都圏 より安 い家賃や人件費 に加 わ り、 コス ト面で沖縄の優位性 を際立たせていると考えられる。 ③ フロム沖縄推進機構の設立 : 「マルチメデ ィアア イラン ド構想」 の推進母体 と して産 ・官 ・学 ・住民が 一体 となった特定非営利活動法人 (NPO)「FROM (フ ロム)沖縄推進機構」
が 1999年 4月28日設立 された。 情報通信 産業 の集積 、人材育成 な どを通 じて同構想の 支援 を行 うのが 目的である。 情報通信 関係 の各協議会、 個別企業、大学等 の研 究機 関、県 ・関係市町村 な どの 行政 を含め た正会員、総合事務局 な どの特別会員で構 成。 同構想 の推進 に向け、参加各団体 の意思統一や戟 略構 築 、 国や民 間 に対 す る予算 化 、投資 の促 進 、調 査 ・研 究 か らビジネスチ ャンス創 出 を目指 した コーデ ィネイ ト機能 を担 う。 蓬)雇用対策事業 :1999年 9月の県議会で 「緊急雇用 対策特 別事 業」が認 め られ、那覇市西 の浦添職業能力 開発校 ・那覇分校 内 にテ レ ・ビジネス人材育成セ ンタ ーが 開設 され る。 1999年 11月か ら受講生 に無料で業務 に必 要 な基礎知識 を教 える 「コールセ ンター業務入門 講座」
を開講。雇用 開発推進機構 (エ ンパ ク ト) とフ ロム沖縄推進機構が運営(22'。同セ ンターでは入門講座 の修了者 を対象 によ り高度 なIT
系 の コールセ ンター 業務 の技 能修得 を図るため、テ クニ カルサ ポー トエ ン ジニア養成講座 も定期的に開催 されるようになった(23)0 人材育成 に関 して は他 に も、「沖縄e-island宣言」
を実 践す るために、県 (情報産業振興課)主催の「IT
高度 人材育成事業」
(県内IT
エ ンジニアのスキルア ップを 図 り、高度 なIT
技術 を有す る人材 の育成 ・確保が 目 的)、雇用 開発推進機構運営の 「戦略産業人材育成支援 事業」
(情報通信産業等の事業所が、その社員 を国内外 の先進企業等 に派遣 して研修 を行 う場合、その経費の 一部 を助成)、「高度技術者交流促進事業」
(高度技術者 講習会等 の開催 に対す る助成)な どが実施 されている。 ⑤ 情報通信産業振興地域 :沖振法 (沖縄振興開発特 別措置法 )改正 を受 け、1999年12月に情報通信 産業振 興地域指定 (23市 町村、後 に宜野座村 を加 え24市町村) 制度が ス ター トし、県内進 出IT
企業 (情報通信産業 6業種)の法 人税、事業所税、事業税、不動産取得税、 固定資産税の減免 、事業所税の減免措置が新 たに追加 された (支援対 象 は県外企業 に限定 されず 、県内の情 報通信企業 も対象)。 さらに、2002年の沖縄振興計画 に 基づ き、新 た に特 定情 報通信事 業 (デー タセ ンター、 インター ネット・サー ビス ・プロバ イダー、 インターネ ッ ト ・エ クスチ ェ ンジ) を対象 と した情報通信 産業特 別地区 (那覇 ・浦添地区、名護 ・宜野座地区) を指定。 特区内で行 われる対象事業か ら得 られた所得の35% を、 法人税 の課税所得 か ら控 除。その うちデー タセ ンター宮城和宏 :島峡経済におけるJCT産業クラスター に関 しては、情報 中枢機能の集積 のため に、
2
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3
年度 か ら、デー ターセ ンター集積支援補助金が実施 され て いる(24)0 ⑥ インキュウベ - ト (創業支援)施設 の設立 :映像 コンテ ンツ、ゲーム ソフ ト制作 な どCG製作 に対応す る企業化支援 デジタルメデ ィアセ ンター (那覇市壷川)、 PC教室 、モーシ ョンスタジオ ・音響 ス タジオな どCG 製作支援 を行 う名護市マルチ メデ ィア館 (名護市豊原)、IT
研 修室 、サ テ ライ トオ フ ィス4
室 を有す る沖縄 テ レワー クセ ンター (沖縄市 中央)、 コールセ ンター、デ ー タセ ンター分野 の事 業化支援 を行 う宜野座村 サ ーバ ー ファーム (宜野座村)、 コンテ ンツ工房 、 コンテ ンツ ス タジオな ど産業支援施設 を有す る嘉手納 町マ ルチ メ デ ィアセ ンター (嘉手納町)、北谷町 メデ ィアステー シ ョン (北谷 町)、沖縄IT
ワー クプラザ (沖縄市泡瀬) な どがある。 ⑦ 市町村 レベ ルでの独 自の支援策 :那覇市 は2
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年 度 に企 業 立 地促 進 奨励 助 成 金 を新 設 、 また沖縄 市 はIT
関連 の企業誘致 のための優遇措置 と して事業所 の 家賃補助 と社 員研 修 奨励 金 を2
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年1
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月 にス ター ト、 宜野湾市 は市 内の情報通信 関連企業 に家賃補助 と雇用 助成 金 を交付 す る優遇措置制度 を2
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年度 に設 けた。 同様 の助成制度 は他 に も浦添 、嘉手納 、北谷 町等 で設 け られている。 ⑧ 民 間 レベ ルでの支援 :那覇市 の国際電子 ビジネス 専 門学校 は情報 ビジネス課 にテレマーケテ ィングコース を新設。沖縄 大学 マルチ メデ ィア教育研 究 セ ンターは ネ ッ トワー ク管理技術者養成講座 を開講 (米 ネ ッ トワ ー ク機器大手 の シス コシステムズが社員研修用 に開発 した教育 プ ログラム を導入、世界標準 の ノウハ ウを提 供)0 (勤 コールセ ンター産業協議 会の発足 :2
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年8
月21
日、県内 にあ る コールセ ンター1
2
社 、県専修学校各種 学校協 会 な ど準 会員3
団体 、 フロム沖縄推進機構 や北 谷 町、嘉手納 町 な ど特 別会員6団体 に よ り県 コールセ ンター産業協議 会が発 足。 コールセ ンター産業 の振興 発展 を支 えるための提 言 、将来展望 を見 出す ための調 査検討 、広報活動 を行 うのが 目的。背景 には、2
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年 度 に県 の通信 コス ト低 減化支援事業の終了 (その後継 続)や相次 ぐIT
産業進 出 によ り人材不足が言 われ始 めた こ と、誘致 か ら定着 、拡大 の第2段 階- の移行期 に入 ったことがあった。 ⑲ 民 間 レベルでの人材育成 :県内のIT
企業5社が2
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6
年4月 よ りソフ トウェア開発 にお ける若手 人材育 成 のため独 自の奨学制度 を始 め る予定。5
社 が学生7
人 を選抜 、社員候補 と して授 業料 を負担 し、 プログラ マー教育講座 を持 つ ソフ トハ ウスサザ ンウ イングで プ ログラムの技術 につ い て1
年 間学 ばせ る。背景 には、 「県内 には ソフ トウェア開発企業が407社 もあ り、技術 者不足 は深刻。企業 の技術者確保 と若者 の人材育成 に 貢献 したい」
ことがある。 ⑪ 大容量 ケーブルの整備 :情報通信 関連産業 を振興 させ る上 での イ ンフラに関 して も、沖縄 は 日本 と海外 を結ぶケーブルの中継地 になっている。ただ し、現在、 沖縄 に集積 してい る コールセ ンターは国内通信 が主 で あ り、国際的規模 で展 開す る情報通信 関連企業 は (本 土)都市部 に集 中 してい るのが実情 である。 中継地 と しての メ リッ トを活 かす には海外 との通信 を主 とす る 企業 をどう集積 させ るかが課題 となっている (25)。なお、 沖縄 が 日本 と海外 を結 ぶ ケーブルの中継地 になってい るこ との メ リッ トと しては、① 中継所 の存在 が、国際 通信 の占め る割合が高 い多 国籍企業 な どに対 し、 コス ト面で メ リッ トを もた らす。国際通信 で中継所 まで専 用線 を使 う場合 に限 るが、専用線 の距離が短 いほ どコ ス トが安 くつ く。 その点 で沖縄 に立地す る企業 は通信 コス トが トー タルで少 な く、東京や大阪の企業 に比べ て 有利 とも言 える。 (参中継所 は高速道路 の インターチ ェ ンジと同 じで、 イ ンターチ ェ ンジが ある場所 に企業が 集積す る可能性 がある(26)0 (3)情報通信 関連産業 クラス ター形成 における諸課題 以上 よ り明 らか な ように、沖縄 の情報通信 関連 産業 クラス ター形成 に向けて これ まで政府 、県 は、通信 コ ス ト低減化支援事業や沖縄若年者雇用 開発助成金制度 、「地域研究
」
2号 2006年3月
大容量 ケーブルの整備等 にみ られ る ような要素 コス ト 削減 か ら、雇用開発推進機構 を通 じた雇用対 策事業 に お け る高度 人材育成や インキュベ - ト施設の設立等 を 通 じた よ り積極的 な人材育成 まで、主 に① 要素条件 の 整備 に力 を入れて きた。 また、③ 関連産業 ・支援 産業 (機関) に関 して も、 フロム沖縄推進機構 を通 じて情報 通信 関連 産業 を支援 す る体 制 を整 えて きた。 さらに、 これ らに呼応す る形 で民 間 において もコールセ ンター 産業協議 会が発足 、民 間 レベ ルでの人材育成 も始 まる な ど情報通信 関連産業 を支 える体制 が次 第 に整 いつつ あ る とい え よう。 以上 の様 々な施策 を通 じて、情報通 信 関連産業 の クラス ター形成の試みが成 されて きたが、 一方 でい くつかの問題 点あ るい は課題等 も指摘 されて いる。 まず第1に、指摘 されてい るのが人材 の不足である。 ポー ターの クラス ター を支 える ダイヤモ ン ドの一つで あ る要素条件 の うち重要 な人材育成 に関 しては、既 に 何度 か指摘 して きた ように産官学が連携 す る形で一定 の成果 を もた らして きた と考 え られ るが、その一方で 雇用の ミスマ ッチが指摘 されている。 例 えば、 コール セ ンターは、 1社当た り100人規模 の雇用吸収力がある といわれてい るが、既 に2000年 頃 よ り、雇用 の ミスマ ッチ (IT
企業の求 め る人材 と求職者 の技術 レベ ルが かみ合わ ないケース)が顕在化 して きた。 また、一部 で は募集定員 を確保 で きない企業 も出て きてい る とい う。依然 、高失業の県内で応募が少 ない理 由は、「安 い、 きつい、不安定」とい う低賃金 、精神 的 な重労働 、パー トや臨時 とい う雇用 の不安定 (労働 条件 の悪 さ) さが あ る。 ただ し、その一方で資格取得 な ど社員 のスキル ア ップに力 をいれ、賃上げや福 利厚 生 を強化 し、業界 イメージの刷新 を図る企業 もある点 には注意 を要す る。 雇用の ミスマ ッチの問題 に関 して は、雇用 開発推進 機構 (エ ンパ ク ト)、教育機関等 においてニーズに合 っ た人材の育成 を早急 に行 うこ とによ りミスマ ッチ を解 消す る こ とが求め られ よう。 なお、県 コールセ ンター 産業協議 会長 を務 め る川本久敏csK
コ ミュニ ケー シ ョ ンズ社長 は、「コールセ ンター業務 は、基本的 に労働集 研 究 ノ ー ト 約型産業。製造業が労働 の場 をアジアに求めた ように、 付 加 価 値 が なけれ ば賃 金 の安 い ところに流 れ る」 と 「単純 な電話対応」 にとどまらない専 門分野への特化 を 求め る (27'。 この点 に関 して、雇用開発推進機構 の報告 書 『沖縄 にお け る コールセ ンター産業 の展望 と人材育 成 に関す る研究』(2000年4月)では、 コールセ ンター の業種 が多種 多様 で要求 され る技術力 も異 なることよ り、主 に1)業務 内容 の周知、2) レベ ルに応 じた人材 育成の2
点 を指摘。1)については、 コールセ ンターは 電話案 内 だけで な く、金融 、通信販売 、IT
関係、航 空関係 と多岐 に渡 るこ と、 コールセ ンター を大 きくテ レマ ーケテ ィング とテ クニ カルサ ポー トに分 ける と後 者で は よ り高度 な技術力が要求 され るため人材確保が 大 きな課題 になるゆえ、県外 か らの理工系や多言語 に 対応 で きる人材 を求め人材 に厚 み を持 たせ ることも必 要 と指摘 してい る。 さらに、情報通信 関連産業 の中心 を現在 の労働 集約 的な コールセ ンターか らよ り技術 ・ 知識集約的 な コ ンテ ンツビジネス、 ソフ トウェア開発 等- の シフ トを通 じて クラス ターに厚 み を持 たせてい くため には、産学連携 を通 じた人材育成が重要 となる。 一方 、政策サ イ ドか らの人材 の ミスマ ッチ解消の努 力 と同時 に、企業 間の競争 を通 じて、ポー ターの ダイ ヤモ ン ドの一つの大 きな柱 であ る④ 企業戦略 ・構造 ・ 競合関係 (競 合関係 の激 しさ) を改善す るための努力 が企業サ イ ドに も求め られ る。す なわち、 クラス ター 内企業 の競争圧力が、 イノベー シ ョン促進 のために重 要 とな る。 ポー ター に よれ ば、企 業 間の競 合 関係 は、 ローカルな ものであればあるほ ど激 しくな り、「そ して 激 しければ激 しいほ ど効果 も大 きい」。それが引いては コールセ ンター産業の魅力 を高め、 イメー ジア ップに もつ なが るこ とになる。 さらに、それが従業員の待遇 改善等 に もつ なが るのであれば、情報通信 関連産業 に 対す る県民 の意識 を高 め、ニーズ に合 った人材供給 に もつ なが る可能性 がある。 その結果 、例 えば、人材供 給増-知識外部性増-立地企業増一産業集積促 進 とい う好循環 をもた らす ことが重要である。 第2に、情報通信関連企業の さらなる集積にはコ-宮城和宏 :島峡経済におけるJCT産業クラスター ルセ ンターの高付加価値化 を図るだけでな く、集積企 業 もコンテ ンツ制作 、 ソフ トウェア開発へ と広 げてい く必要ある。 これは、多様 な人材 による高度 な知識 ・ 技術が フェイス ・トウ ・フェイスの相互作用 によ りス ピ ルオーバー して 自己増殖的 に集積が拡大す る、いわゆ る知識外部性 の観点か らも重要である(28)。 そのための 施策 と して以下の3点が重要 となる。 ①情報通信 関連 分野の中で も特 に戦略領域 を定めての人材育成 (つ ま り、マルチ メデ ィア ・アイラン ド構想の 「三つの重点 分野」、 コールセ ンター、ア ミューズ メン ト、地理情報 システム (GIS)の先鋭化 を図ること)、あるいは人材 の外部か らの導入(29'。 人材の集積 に関 しては、魅力あ る住環境 を整備す ることよ り沖縄県 を県内の人材 は も ちろん、県外 の移住者 に とって も魅力ある地域 に しな ければな らない。(参国際光 ケーブルの陸揚 げ地点が沖 縄 に集 中 していることを活用 した産業 ・研究機 関 ・国 際機関の誘致。③ 「特色ある非情報産業 (観光 ・リゾー ト産業、健康 ・ウェルネス産業等)」への徹底 した
IT
導入、等である。 4.結び 1972年 の本土復帰以降、沖縄 では3
次 に渡 る沖縄振 興開発計画 による製造業振興が行われて きた。 しか し、 依然 と して財政支出や基地経済 に依存 した構造 、全 国 平均 の2
倍近い水準で推移 して きた完全失業率 は大 き くは変 わっていない。 この ような課題 を解決 し、観光 産業 と並 ぶ リーデ ィング ・セ クターの振興 を図 る目的 で、1998年のマルチ メデ ィア ・アイラン ド構想 を晴夫 とす る情報通信産業 クラス ター形成の努力が これ まで 成 されて きた。 島喚経 済 と しての 「規模 の不経 済性」
を克服 し、民 間主導の 自立型経済 を構築す ることが 目 的である。 一方、新 たな リーデ ィング ・セ クター と しての情報 通信 関連産業 は、沖縄 の ような島喚経済の不利 を克服 す る上で有望 な産業である一方で、立地条件 (安価 な 労働力 ・通信 コス ト、人的資源 の有無等) さえ整 えば 場所 を選 ば ない とい う特性 を有 して い る (宮城 ・董 2005)。つ ま り、立地先 は必ず しも沖縄でな くともよい。 そのため、政府、県 による様 々な優遇措置 (通信費低 減、雇用 開発助成等)が解除 されれば、 これ までの集 積 は即 、他地域- の分散 につ なが る可能性 を秘めてい る。 それでは、沖縄県が情報通信 関連産業の更 なる集 積 を可能 に し、それ を最終的 にロ ックイン (凍結)す るためにはどのようなことが求められるのであろうか。 本稿では、 この点 についてポー ターの クラス ター形 成 におけるダイヤモ ン ドの議論 を参考 に議論 して きた。 政策的 インプ リケー シ ョンは、政府 、県が ダイヤモ ン ドの4つの属性 の うち、政策的な内生変数 として直接 関与で きるのは、(∋要素条件 にあ り、「専門的要素の創 出に力 を注 ぐ」ことが政府、県の重要な役割である と い うものである。 情報通信関連産業の高度化 に向けて、 専 門的な研修制度 、産業 に結 びついた大学での研究活 動、業界団体の活動 、民 間企業 レベルでの投資 を促 す ような政策が重要 となる。一方、 クラス ター形成過程 において、それ以外 の② 需要条件、③ 関連産業 ・支援 産業、(む企業戟略 ・構造 ・競合関係 に、政府、県が直 接 、介入す ることは避 けなければな らない。政府、県 の役割 はあ くまで も触媒 としての役割であ り、 クラス ター内の企業が競争優位 を獲得で きるような環境 を創 りだす ことにある。 ダイヤモ ン ドの① 要素条件 の整備 や情報通信 関連 産業発展 のための環境づ くり通 じて、 集積 における正の外部性 (特 に知識外部性) を利用 し た産業集積 を沖縄県内 にいかに自己増殖的 に形成す る かが重要 となろう。 なお、本稿では情報通信 関連産業の個 々の分野 につ いては十分 に扱 うことがで きなかった。 この点 につい ては稿 を改めて扱 いたい。 謝辞 本稿 は、2005年6月19日の 日本計画行政学会九州支部第26回大 会 (於 :熊本学 園大学)での報告 「島換経済 における情報通信 産 業 クラス ターの形成過程 と諸課題」
を加筆 ・修正 した ものである。 討論者の友利贋先生 (沖縄 大学)、座長の水谷守男先生 (鹿児 島 国際大学)、長安 六先生 (佐賀大学)か らの各 コメ ン トに感謝 申 し上げたい。 なお、本誌査読者か ら貴重 なコメン トを頂 いた。記「地域研究
」
2号 2006年3月 研 究ノ
ー
ト
して感謝の意 を表 したい。 注 (1)島喚経済では、工業の存立基盤 である技術 ・産業資本 の蓄積、 輸送 ・情報 コス トに加 えて、市場の狭 さ ・浅 さよ り規模 ・範 囲の経済 を活かせ ないため、農業-工業-サー ビス業 とい う 通常の構造転換パ ター ン (ぺ テ ィ-クラー クの法則) に反 し て、工業 をスキ ップ して農漁業か らい きな り観光業等 のサー ビス産業へ移行す る特徴が指摘 されている (素数 (2002)参 照)。その一方で、本誌査読者 よ り島喚経 済 において も製造 業振興が成功 している先行事例 としてマル タ島がある との指 摘 を受 けた。マル タ島 とその他 の島換経済 との違 いについて の考察は、今後の課題 としたい。 (2)内閣府 『県民経済計算年報』
平成16年版。 (3)コールセ ンターの コンサルテ ィングを手掛 けるプロシー ドに よれば、何 らかの支援策 を実施す る自治体 は全国で60-7 0に上 る とい う (『沖縄 タイムス』2004年3月17日朝刊 )。誘 致 に関 しては、「コールセ ンター を設置す るオフ ィスの低価 格での提供 、人件費の補助 、高速 な通信 回線 の整備 は当た り 前。水道料 を無料 にす る自治体 さえ もある とい う。
」
(
『日経 産業新聞』2004年12月2日朝刊) (4)各都道府県別の詳細 については コンピュー ターテ レフォニ-編集部編 〔20
04〕を参照 されたい。 (5)『沖縄 タイムス』2001年6月3日朝刊。 (6)沖縄県観光商工部情報産業振興課 のサ イ トよ り。 (7)第三次沖縄振興 開発計画 (1992-2001)では情報産業 につい ての記述 は全86ページ中わずか8行 にす ぎない。「情報サー ビ ス業」
に関 して 「拠点の形成 を図 り、技術者 を確保 し、県外 か らの業務受託の円滑化 を促進す る」 ことと社会基盤の整備 が触れ られているだけであった(
『沖縄 タイムス』2000年6月 8日朝刊)0 (8)沖縄 における研究開発 プロジェク トと して、高度 な映像 ソフ トの製作 、地上 デ ジタル放送 システムの開発 、NTTの番号案 内業務 を一部沖縄へ移すな ど、情報 システム資源 を外部委託 するアウ トソー シング事業者の誘致 な ども提案。税の優遇措 置では、参入す る企業の法 人税、固定資産税 の減免 な どを挙 げた(
『沖縄 タイム ス』1996年12月9日)。 なお 『平成12年 (2000年)版通信 自書』で は、沖縄 に関 して情報通信分野 に おける 1)情報通信基盤の整備、 2)人材 の育成 ・研究開発 の推進、3)先進的名 アプ リケー シ ョンの展 開、4)情報通 信産業の集積、5)情報発信機能の強化 を促進す るための施 策の実施が轟われている。 (9)例 えば、名護市及び沖縄県北部地域での情報通信 関連産業の 立地促進、雇用の創 出及びマルチ メデ ィア分野の人材育成 を 図 る た め99年3月 に名 護 市 マ ル チ メ デ ィア館 が 完 成。 NTT104番号案 内セ ンター他情報通信 関連企業 が入居 した。 他 に も沖縄市におけるテ レワー クセ ンターの開設 (2000年1 月)、通信 ・放送機構が通信 コス ト低減化 に資す る研究 開発 を目的に2000年4月に那覇市の沖縄情報通信研究開発支援セ ンターの分室 (沖縄情報通信研究開発支援セ ンター北谷町共 同利用 セ ンター)を開設 (その後、名護、糸満の分室) した。 (10)NTT番号案 内の沖縄移転 に伴 うパー ト採用 に競争率17倍 に 当たる4200人が殺到 したことや コールセ ンター とい う当時聞 きなれ ない言葉が定着 した こ とが指摘 されている (『沖縄 タ イムス』2001年6月2日朝刊) (ll)通信 コス ト低減化支援策 は、1999年度か ら2001年度 までの3 年間の時限措置 として実施 されたが、その後延長 されている。 (12)『沖縄 タイムス』1998年10月22日朝刊。 (13)「情報通信産業振興地域」
は以下の通 り。南風原町、糸満市、 豊見城市、那覇市 、浦添市 、宜野湾市 、北谷 町、嘉手納町、 読谷村 、沖縄市 、本部町、名護市、宜野座村、石川市、具志 川市 、与那城町、勝連町、北 中城村、中城村、西原町、与那 原町、東風平町、石垣市、平良市。 (14)『沖縄 タイムス』2002年5月15日朝刊。 (15)1998年 に沖縄 に進出 した コールセ ンター大手csKコ ミュニ ケーシ ョンズ (テ クニカルサポー ト)は、その後順調 に売 り 上 げ を伸 ば し2000年 に黒字転換。2001年3月にラウンジや仮 眠室 、 シ ャ ワー室 を備 える オ フ ィス約1650平 方 メー トル (500坪 ) を増設 、約2億 円余 りの設備投資 を行 い、付属設備 の投資税額控 除 を申請 したが、約1600万円 と試算 していた控 除は受 けられなかった とい う(
『沖純 タイムス』2002年5月15 日朝刊 )0 (16)『沖縄 タイムス』2001年12月2日朝刊。 (17)沖縄振興特別措置法第3条第8号 によれば、「情報通信技術利 用事業」 とは 「情報通信産業以外 の業種 に属す る事業者が 情 報通信 の技術 を利用す る方法 によ り商品又は役務 に関す る情 報 の提供 を行 う事業その他の政令で定める事業 をい う」
。
「そ の他 の政令で定める事業」では製造業、小売業 な ど情報通信 産業以外の業種 に属するコールセ ンターが対象 となっている (沖縄振興特別措置法施行令第3条)。 なお、「沖縄県情報通信 産業振興計画」
により 「情報通信産業振興地域」 に宜野座村 が追加 され対象地域 は24市町村 に拡大 した。 (18)沖縄振興特別措置法第3条第7号 によれば 「特定情報通信事 業」
とは、「情報通信 産業 に属す る事業の うち、情報の電磁 的流通 (符号 、音響、影像 その他 の情報の電磁的方式 による 発信 、伝送又 は受信 をい う。)の円滑化 に資す る事業、情報 処理の高度化 を支援する事業その他の企業等の経営の能率及 び生産性の向上 を図る事業であって、その事業 を実施す る企 業の立地 を図ることが 情報通信産業の集積 を特 に促進す るも の として政令 で定める もの をいう」
。
「特定情報通信事業」
の 内、① デー タセ ンター とは、「自己の電子計算機の情報処理 機能の全部若 しくは一部の提供 を行 う事業又は委託 を受けた 自己の施設 において顧客の電子計算機の保守若 しくは管理 を 行 う事業 (これ らの事業 と一体的に行 う事業であって、顧客 のため にデー タベースの作成若 しくは管理その他の情報処理 を行 う事業又 は顧客が行 う情報処理 に対する支援 を行 う事業宮城和宏 :島峡経済におけるICT産業クラスター を含 む)」。(参イ ンター ネ ッ ト ・サ ー ビス ・プロバ イダー とは、 「電 気 通信 事 業 の うち、 イ ンター ネ ッ ト接続 サ ー ビス を行 う もの」。(参イ ンター ネ ッ ト ・エ クスチ ェ ンジ とは、「電気通信 事業の うち、電気通信設備 を介 して、② の事業 を行 うものの 電気通信 設備 を相互 に接続す る もの