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ケニアの図書館と防災 -- ナイロビの事例 (特集 災害と図書館)

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ケニアの図書館と防災 -- ナイロビの事例 (特集

災害と図書館)

著者

岸 真由美

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

210

ページ

43-44

発行年

2013-03

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003756

(2)

●ケニアの災害の概要

  ケニアはアフリカ大陸東部に位 置し、東側はインド洋に、西側は ビ ク ト リ ア 湖 に 面 し た 国 で あ る。 こ の 国 で 多 い 自 然 災 害 は、 旱 かん 魃 ばつ 、 洪 水、 地 滑 り、 落 雷 な ど で あ る。 地震も日本に比べれば規模が小さ いが起こる。最近の例では、二〇 一一年に東アフリカ地域を襲った 大旱魃、二〇一二年の大雨期に中 部および西部で頻発した洪水や地 滑りがある。   人的災害では火災と交通事故が 多い。特に前者については、多数 の犠牲者を出した大規模火災がこ の数年で何度か起きている。火災 の要因としては漏電や雨漏りによ る電気系統のショートなど、電気 配 線 の ト ラ ブ ル が 多 い と 言 わ れ る。 またその他の人的災害として、 暴動やテロ関連の爆発などが考え られる。   災害発生時、図書館などの情報 セ ン タ ー は 所 蔵・ 保 有 す る 資 料・ 情 報 の 被 災 を で き る か ぎ り 防 ぎ、 館内の利用者の安全確保につとめ る必要がある。また迅速な対応を とるため、普段からの防災への備 えが重要となる。   本稿では、ナイロビ市内にある 公共図書館二館と大学図書館一館 の聞き取りをもとに、ケニアの図 書館における防災への取り組みの 事例を紹介する。聞き取りはケニ ア国立図書館サービス(以下、K NLS)が運営するナイロビ図書 館、ブルブル図書館と、ナイロビ 大学中央図書館(正式名称はジョ モ ・ ケニヤッタ記念図書館。以下、 JKML)で行った。

●図書館の想定災害=火災

  ケニアの図書館で最も想定され る災害は火災である。KNLSナ イロビ図書館では過去に一度漏電 に よ る 小 火 が 起 き て い る。 他 方、 火災以外の災害はあまり想定され ていない。雨期に豪雨が続くと道 路や家屋がしばしば冠水するナイ ロビだが、この三つの図書館は水 害による被災の経験がない。 また、 KNLSの職員によれば、暴動や テ ロ に よ る 被 災 の 可 能 性 は 低 く、 二〇〇七年の選挙後に起きた暴動 でもKNLSの公共図書館はいず れも被害を受けなかった。理由は 図書館が商業的価値の高い施設で はないためだろうということであ る。   各図書館の具体的な防火対策は 次のとおりである。

●公共図書館

  KNLSはケニア国内の公共図 書 館 を 運 営 す る 公 的 機 関 で あ る。 公共図書館サービス部とナショナ ル・ライブラリー部の二つに分か れており、公共図書館は全国に五 八館ある。ナショナル・ライブラ リーは国の法定納本図書館として 国内の出版物を網羅的に収集・保 存し『ケニア全国図書目録』を出 版する。   ナイロビ図書館はナイロビの市 街地にある最も早くに開館した公 共図書館で、 施設内にナショナル ・ ライブラリーを併設している。ブ KNLSブルブル図書館正面玄関 左手に非常 階段が見える KNLSブルブル図書館の消火設備

特 集

災 害 と 図 書 館

 

  ナ

  ―

43

アジ研ワールド・トレンド No.210 (2013. 3)

(3)

ルブル図書館は二〇一一年に開館 した最先端の公共図書館で、ナイ ロビ市内のブルブルと呼ばれる中 流階級が住む住宅地区にある。   火災への備えとして、ナイロビ 図書館もブルブル図書館も普段か ら電気設備等の定期保守を実施し ており、各階にそれぞれ火災報知 機、消火器を配置し非常口や非常 階段、 誘導用サインを設けている。 また煙や熱の感知器はないが、後 者 で は C C T V で 各 階 の 監 視 を 行っている。   防災訓練 ・ 研修も行われており、 ナイロビ図書館が防災訓練を年二 回程度、ブルブル図書館が研修を 四半期に一度の頻度で実施してい る。防災訓練では消火器を使用し た消火訓練も行っているが、消火 器は使い切りで使用後に補充が必 要となるため一回の訓練で多くは 使用できないとのことだった。ま た、災害時の負傷に備え救急箱も 部署毎に用意しており、利用者に 対しては、初回来館時の利用登録 と併せて非常口や火災時の対応な どを説明している。   ナショナル・ライブラリー部を 併設するナイロビ図書館の施設内 では、全国の公共図書館に配送さ れる図書の一括収集・一括整理が 行われている。全館が利用する図 書館システムの目録データもこの 施設内で管理されている。そこで 被災によるデータ消失のリスクを 分 散 す る た め、 デ ー タ の バ ッ ク アップを同施設内とナイロビ市内 の別の二箇所(ブルブル図書館と 保守会社)の計三箇所に保存して いる。

●ナイロビ大学中央図書館

  ナイロビ大学はケニアの国立大 学のみならず東アフリカのなかで も ト ッ プ ク ラ ス の 総 合 大 学 で あ る。同大学の中央図書館であるJ K M L は ナ イ ロ ビ 市 内 の メ イ ン・ キャンパスにある。   ナイロビ大学では災害時に迅速 で安全な避難行動を確保し被害を 最小に押さえるため、キャンパス 内で避難場所を指定し、大学全体 の災害管理手順を定めている。J KMLも災害時にはこの手順に従 う。   JKMLの建物内には防火設備 として、粉消火器と消火栓(各階 約 三 カ 所 程 度 )、 ガ ス 消 火 設 備、 火災報知機が設置され、非常口と 誘 導 用 サ イ ン が 設 け ら れ て い る。 施設や設備の保守については委託 会社が行っているが、それとは別 に図書館員一名が施設管理を担当 している。担当者によれば、重要 性は認識されているが技術・手続 き上の問題で防災訓練は実施して いないとのことだった。   図書館システム用の機器はJK M L の 建 物 内 に 設 置 さ れ て お り、 そのデータはナイロビ、 モンバサ、 キスムに点在する各キャンパスの 図書館で共有されている。以前は データバックアップの方法として テープを用いて定期的に手動で実 施していたが、現在はナイロビ市 内の別の場所にあるチロモ・キャ ンパスから遠隔操作によるオンラ イン ・ バックアップを行っている。

●終わりに

  ケニアの図書館では火災を主要 な災害と想定し、これに最低限備 えた設備になっている。ただ防災 訓練は徹底されていない。JKM Lの施設管理担当者も緊急時には パニックに陥り適切な対処ができ な い の で は な い か と 懸 念 し て い た。地震に対する図書館の危機意 識は低いが、建築基準法には耐震 に関する規定がないためケニア国 内 の 建 造 物 の 耐 震 性 は 総 じ て 低 く、マグニチュード五程度の地震 でも建物が倒壊する可能性がある との指摘もある。また、暴動や爆 発の直接の対象にはなりにくいと しても、二次的に被害を受ける場 合もあろう。地理的環境、各種情 勢、海外の災害事例を考慮しなが ら、 できるだけ想定範囲を広げて、 万が一に備えた対策を準備するこ と が 今 後 の 課 題 の よ う に 思 わ れ る。 ( き し   ま ゆ み / ア ジ ア 経 済 研 究 所 在ナイロビ海外派遣員) KNLSナイロビ図書館 一階書架の脇に 設けられた非常口(右奥) JKML 中央部吹き抜けの階段の壁に設 置された火災報知機(丸い機器)

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アジ研ワールド・トレンド No.210 (2013. 3)

参照

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