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ベネズエラ発の国際メディア・コンテンツ企業シスネーロスの躍進 (特集 途上国のエンターテイメント事情)

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Academic year: 2021

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(1)

ベネズエラ発の国際メディア・コンテンツ企業シス

ネーロスの躍進 (特集 途上国のエンターテイメン

ト事情)

著者

坂口 安紀

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

203

ページ

26-27

発行年

2012-08

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003906

(2)

  世界有数の産油国であるベネズ エラは、石油以外の二つのことに ついても世界トップレベルの輩出 国である。まず、ミス・ユニバー スの常勝国であることが示すとお り、世界トップレベルの美人を多 数輩出している。近年では二〇〇 八∼〇九年の世界大会で連続優勝 を果たした 。もうひとつは 、メ ジャーリーグのみならず日本でも 活躍する多くのプロ野球選手の輩 出国でもある。日本のプロ野球界 では 、ラミレスやカブレラなど 、 お馴染みのベネズエラ人選手が活 躍している。   美人ページェントとプロ野球 、 この二つはベネズエラで人気のエ ンターテインメントである。その 両方を傘下におさめ、前述のよう な成功に導いているのが、ベネズ エラ最大の企業グループ 、シス ネーロス︵ODC︶である。シス ネーロスは、メディア・コンテン ツ産業を軸に据えながらも、ビー ル、コーラなどの飲料、携帯電話 やインターネット接続などの通信 事業、スーパーやデパートなどの 流通小売り、ファストフードなど の外食産業と、多様な産業に幅広 く事業展開している。さらに一九 九〇年代以降、シスネーロスはベ ネズエラを飛び出して本社を北米 に移し、北南米大陸をまたにかけ る国際メディア・コンテンツ企業 グループへと変貌をとげた。

●国内最大手のメディア・

コンテンツ企業に

  シスネーロスは一九二九年に キューバ人移民のディエゴ・シス ネーロスがカラカスで数台のト ラックで運輸業を始めたことに端 を発する。父ディエゴの後を継い だ四男グスターボは、石油開発と 輸入代替工業化でベネズエラが長 期経済成長をとげるなかさまざま な産業に多角的に事業展開し、シ スネーロスを国内最大規模の企業 グループに成長させた。グループ 企業の株式は公開せず一族が所有 を支配している。グスターボが今 もなおグループ総裁を務めてお り、親族の多くがグループ企業の 経営を担う、典型的なファミリー 企業だ。   グループがメディアに進出した のは、一九六〇年に既存テレビ局 を買収し、ベネビシオンを設立し たのが始まりである。ベネビシオ ンは ﹁テレノベラ﹂ と呼ばれるソー プオペラ︵毎日放送される長期連 続テレビドラマ︶や音楽番組で人 気を博し、躍進した。その後ラジ オ局や音楽レコード・テープや映 画︵のちにはCDやDVD︶の作 成会社を次々と設立または買収 し、事業拡大を進めた。   冒頭でふれたミス・ユニバース については 、一九八一年に国内 ページェントを獲得し、それ以降 三〇年間で五人の世界優勝者を輩 出している。混血社会が美人を生 みやすいとはよく言われるが、五 人もの世界優勝者を出せたのは 、 メディアやコンテンツ産業にノウ ハウや人脈をもつシスネーロス が、それらで蓄積した強みをいか し、競争力のある事業としてペー ジェントを運営してきた結果であ るといえる。   一方スポーツの分野では、シス ネーロスは二〇〇一年にプロ野球 チーム、レオネス・デ・カラカス を買収した。ベネズエラは、南米 大陸に位置しながら国民的スポー ツがサッカーではなく野球という めずらしい国である。国内のプロ 野球リーグには全国に八チームが 存在し、首都カラカスに本拠地を おくレオネスは、日本でいう東京 読売ジャイアンツに相当する。宿 敵マガジャネスとの試合は、日本 でいう巨人阪神戦に匹敵し、カラ カスの街があつくなる。プロ野球 の実況放送は、日本同様ベネズエ ラでも重要な大衆エンターテイメ ントである。テレビ局ベネビシオ

ラ発

の国

際メ

コンテン

特 集

途上国の エンターテイメント 事情

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ンやラジオ局をもつシスネーロス にとって、レオネスの買収は重要 なコンテンツを直接確保したこと になる。

●北南米大陸をまたにかける

  一九八〇年代にベネズエラ国内 でメディア・コンテンツ産業にお いて確固たる地位を築いたシス ネーロスは、一九九〇年代に入る と、それらの分野で一気に北南米 大陸へと進出する。   ラテンアメリカは、スペイン語 を標準語とする二〇カ国近い国か らなる一大スペイン語文化圏であ る。ブラジルはポルトガル語圏だ が、ポルトガル語とスペイン語は 似ていて翻訳が容易であるうえ歴 史文化的共通点が多いため、近隣 のスペイン語圏とほぼ同一文化圏 であるといえる。ラテンアメリカ の人口およそ六億人に加えて、北 米にもヒスパニックと呼ばれるス ペイン語を母語とする人々が約五 〇〇〇万人いる。すなわち、北南 米大陸で六億五〇〇〇万人とい う、世界総人口の一割弱に相当す る巨大文化圏が存在するのであ る。それは、文学などの文字文化 同様、テレノベラ︵ドラマ︶や映 画、音楽などのコンテンツ産業に とっても、巨大マーケットを形成 している。   シスネーロスが北米のメディア 企業に負けることなく北南米で躍 進した背景には、ラテンアメリカ には北米とは異なる独自の音楽や ドラマの分野・テーマが発展して きたことがある。北米の音楽や映 画はラテンアメリカでも人気だ が、それらと並びサルサ、メレン ゲ、レゲトンといったラテンアメ リカ独自のポピュラー音楽が、若 者から年配層にまで根強い人気が ある。ドラマでも、 貧富の格差 ︵貧 しい美少女が裕福な家庭の息子と 恋に落ち、成り上がる︶やアマゾ ンの豊かな自然を背景に繰り広げ られるドラマなど、ラテンアメリ カ独自のテーマをあつかうテレノ ベラが人気を集める。ラテンアメ リカ独自のコンテンツへの支持が 強いため 、ラテンアメリカのメ ディア市場は北米のコンテンツに 席巻されることがなく、むしろシ スネーロスがラテンアメリカ企業 ならではの強みをいかせる土壌と なっている。   シスネーロスの国際的躍進を可 能にしたもうひとつの要因とし て、同社がメディア産業における 技術革新の波にうまくのり 、メ ディア事業そのものと、得意のコ ンテンツ事業を両輪とし、ハード とソフトの二本立てで事業を拡大 してきたことが指摘できる。ベネ ビシオンは従来よりテレノベラな どベネズエラで作成したコンテン ツをスペイン語圏の各国テレビ局 に輸出していた。一九八〇年代以 降はラテンアメリカ各国で衛星放 送やケーブルテレビ事業が広がっ たが 、それら有料放送による多 チャンネル化が、シスネーロスに とって番組販売先の拡大をもたら した。加えて、一九九二年にチリ の民放局と北米最大のスペイン語 テレビ局ユニビジョンを買収した のを皮切りに 、シスネーロスは 、 ラテンアメリカ、北米、そしてス ペインやポルトガルにおいて数多 くのテレビ・ラジオ局、ケーブル 放送や衛星放送事業、コンテンツ 制作・販売企業の買収を続け、メ ディア事業の国際化を進めてき た。なお番組 ︵とくにテレノベラ︶ の輸出も引き続き拡大しており 、 現在では輸出先は、日本や中国を 含む世界九〇カ国以上へと広がっ ている。   ハードとソフトの両輪戦略は 、 近年ではネット配信事業や携帯電 話通信事業にも見られる。一九九 〇年代には、AOLラテンアメリ カやIAMPなどネット接続会社 をラテンアメリカの複数国で設立 した。ベネズエラでは、グスター ボの従兄弟のオスワルド ・シス ネーロスが携帯電話会社DIGI TELを買収した。そして携帯電 話へのコンテンツ配信やオンデマ ンド放送など、技術革新によって 広がる新しいメディアを舞台とす るコンテンツ事業に乗り出してい る。 ︵さかぐち   あき/アジア経済研究 所  ラテンアメリカ研究グループ︶

ベネズエラ発の国際メディア・コンテンツ企業シスネーロスの躍進

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