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財政と金融の連動 経済・金融・国債の見方

<特集> 世界的金融不況の中の日本財政

安田 洋祐

初出: 2011 年 10 月

財政あるいは財政学は,英語で Public Finance と呼ばれることから明らかなよ うに,公的部門のファイナンスに関する問題を扱っている.政府という特定のプ レーヤーの資金調達について分析する,という意味ではミクロ的な分野と言える だろう.しかし近年になって,ミクロ的であるはずの財政問題が,金融市場という チャネルを通じて実体経済にマクロ的な影響を及ぼすケースが急増している.実際 に,ギリシャの債務危機や米国の国債格付け低下が世界経済に与えた大きなショッ クは記憶に新しく,前者については未だに予断を許さない状況が続いている.こ うした現状をふまえ,本稿では,財政問題がどのように金融市場やマクロ経済と 繋がっているのかについて,経済学的な視点から整理を試みる.

経済の見方 リアルとマネーを分ける

財政について議論する前に,まずは経済の動きをいかにして捉えればよいのか を少し考えてみたい.といっても,この短い論考で標準的なマクロ経済学をイチ からレクチャーするのは不可能であるし,以下で述べるようにその必要性も低い. ここでは代わりに,経済現象を捉える上で筆者自身が役に立つと感じている,シ ンプルな視点をご紹介する.

言うまでもなく,マクロ経済現象というのは非常に複雑で,そもそも明快な分析 や予測を行うのが難しい.大学院以上のきちんとした経済学教育を受けていない (大多数の) エコノミストやアナリストの発言が信頼性を欠くばかりではなく,一 流の経済学者同士でも主要な論点について意見が対立することがある.特にリー マンショック以降は,マクロ経済学の主流派アプローチ1の欠陥を指摘する声が学 界内からもあがっており,分野自体が大きなチャレンジに直面していると言わざ

本稿は『ジュリスト』2011 年 10 月 15 日号 (No.1531) に掲載された記事の草稿です.

やすだ・ようすけ — 政策研究大学院大学助教授

1動学的確率一般均衡 (Dynamically Stochastic General Equilibrium=DSGE) という数理モデ ルを土台としている.詳しくは加藤 (2006),齊藤 (2006) などを参照.

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るを得ない2.残念ながら,出来合いの理論を勉強しさえすれば,一見すると難し いマクロ経済の全貌がするすると分かる,といった理想的な状況からはほど遠い のが現状である.

しかしながら,経済学が有益な視点を何も提供できない,というわけでは決し てない.シンプルで使いやすいにも関わらず,一般の方にあまり浸透していない 考え方もたくさんある.代表的なものが「リアル (実体経済) とマネー (金融) の分 離」という視点だろう.経済のニュースでは,消費や生産といった実体経済のリア ルな側面と,株式市場や資産,為替といったマネーの動きが混然一体となって扱 われている.このため,経済を動かしている個々の企業や消費者の活動に目を向 ければ良いのか,それとも表面的なお金の動きをヒントにすれば良いのかがよく 分からず混乱しやすい.結果として「なんだかいろんな数字が出てきて経済の話 はややこしい」となってしまいがちである.この問題を解消するために役に立つ のが,リアルとマネーを分けて考える,という発想だ.とりわけ,次のようにリア ルな側面の中でも生産活動に目を向けると,経済の動きが一気に掴みやすくなる.

マクロ経済の動きを捉える指標はいくつかあるが,最も代表的なものは国内総 生産 (GDP) だ.これは,日本で生産活動を行っている個々の生産者が生み出した アウトプット (より正確には付加価値) を足し合わせたものである.では,この生 産活動の水準はどうやって決まってくるのだろうか? 非常におおざっぱに言って しまうと,円滑な経済取引を阻害する摩擦要因がない限り,アウトプットは生産 能力によって決まってくる3と考えられる (摩擦要因については後述).そして,生 産能力を決定するのが,労働供給や資本のサイズ,設備の技術水準といった投入 要素である.なかでも特に重要なのが技術水準で,その上昇をもたらす「技術進 歩こそが長期的な経済成長のけん引役である」というのは,いまや経済学者のコ ンセンサスとなっている.

これは,経済活動が円滑に行われている状況では,マネーの動きとは独立に「リ アルな生産能力の推移を見ることでマクロ経済の動きをうまく捉えることができ る」ということを意味する.別の言い方をすると,たとえ金融市場が慌ただしく ても,それが円滑な生産活動を阻害しない限り,実体経済というのはほとんどグ ラつかない.主役はあくまでリアルな生産で,マネーというのはその背後に隠れ た黒子に過ぎない,というわけだ.現実の日本経済をイメージしてみても,株価 や為替が少々変動したところで GDP は乱高下しない,というのは実感とフィット しているだろう.個々の生産者が生み出したアウトプットが GDP として計上され るという初歩的な原則をふまえると,ミクロの生産活動が安定していればマクロ 経済にも大きな変動が起こらないのは当たり前ではある.しかし,この当たり前 の話をふまえてリアルとマネーを区別して考えるだけで,複雑なマクロ経済の動

2現段階の主流派アプローチで何ができる/できないのかについては清滝 (2010) が詳しい.

3摩擦要因がない状況でもアウトプットが需要によって決定される,というケインズ的な立場を とる研究者もいる (たとえば吉川 (2000)) が,現在では少数派である.

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きが,少しはすっきりと見えてくるのではないだろうか.

金融の見方 — 流動性の罠と市場を支える制度

では次に,さきほどの説明の中で言及した,円滑な経済取引を阻害する摩擦要 因にも目を向けてみよう.実は,この摩擦要因の最たるものがマネーのミスマッ チ,つまり金融の機能不全なのである.マネー以外のリアルな摩擦要因としては, 労働市場や財市場のミスマッチなども知られており,それぞれ活発な研究が進め られている.ここでは,本稿のテーマと直接関係するマネーの問題に焦点をあて ることにしよう.ちなみに,こうした市場でのミスマッチを分析するフレームワー クで,最も標準的なものがサーチ理論4と呼ばれる理論だ.事前にはよく分からな い取引相手を市場の中で探し出して (= サーチ) 取引を行う,という分権的なマッ チング過程を明示的に扱ったサーチ理論は,伝統的な「需要と供給」の分析からは 得られない様々な含意を引き出すことに成功している.その貢献が評価され,昨 年はこの分野を代表するパイオニア的な研究者 3 名がノーベル経済学賞を受賞し た5

少し脱線してしまったので,話をマネーの摩擦へと戻そう.金融というチャネ ルがなぜ,そしてどういった形で摩擦要因となるのだろうか? 金融がうまく機 能しない,というのはお金の融通,つまり貸し借りが適切に行われないことを意 味する.マネーの余っている人から,マネーを必要とする人へと円滑にファイナ ンスが行われないのだ.結果的に,予定していた消費や,計画していた投資・生 産の中止や変更というチャネルを通じてリアルな影響をもたらすこととなる.た とえば,非常に生産性の高い投資プロジェクトがあったとしても,うまく運転資 金を調達することができなければ,リアルな生産活動にはつながらない.このよ うにして,黒子的な存在でしかなかったマネーの世界が,リアルな経済活動を大 きく左右し得るのである.

では,どのようにしてマネーの摩擦は生まれるのだろうか? 円滑な金融機能 を阻む要因はいくつも考えられるが,大きく分けると次の 2 つに分類できる.

1. 金融市場での価格調整機能がうまく働かない 2. 補完的な制度が崩れて金融市場が成立しない

まずは前者から見ていこう.金融市場におけるお金の貸し借りも,原則として は他の市場と同じように価格を通じて需給が調整される.ここで価格の役割を演 じるのが金利,より正確には物価上昇の影響を取り除いた実質金利 (= 名目金利 − インフレ率) である.お金を借りたい人が貸したい人よりも多ければ資金の超過需

4サーチ理論については今井他 (2007) を参照.

5ピーター・ダイヤモンド (MIT 教授),デール・モーテンセン (ノースウェスタン大教授), ク リストファー・ピサリデス (LSE 教授) の 3 氏が受賞.

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要が発生して実質金利が上がり,逆であれば実質金利が下がる.こうした価格調 整を通じて,(通常時であれば) マネーが相対的に余っている部門からより必要と している部門へと円滑にファイナンスされていく.

もちろん,現実の金融取引というのはこのような標準化された仕組みで説明で きるほど単純ではない.一般に,経済学者が現実の経済について語るとき,過度に 単純化された論理や数理モデルを用いる場合が多いが,これは単純なストーリー で現実のすべてが説明できる (と信じている) からではない.あくまで説明の手助 けとなる本質的な見方を分かりやすく提示しているだけなので,どうかこの点は 誤解しないで頂きたい.ここでは,マクロの資金需給を決定する上で,実質金利 が鍵を握っているという点さえ抑えれば十分だ6

ではいったい何が実質金利による調整メカニズムを邪魔するのだろうか? ヒ ントは実質金利の定義 (= 名目金利 − インフレ率) に隠されている.名目金利はゼ ロ以下には下がらない,という制約(これをしばしば「ゼロ金利制約」と呼ぶ)の 存在がその答えだ.貸した金額よりも少ない返済額でお金を貸してくれる人はい ないため,名目金利はかならずゼロ以上でなければいけない.これは,実質金利 がどれだけ下がっても,「− インフレ率」を下回ることがないことを意味する.現 在の日本経済のようにデフレに苦しんでいる場合にはインフレ率はマイナスとな るため,「− インフレ率」は正の値となっている.実質金利がこの値まで下がって もマネーに超過供給が発生している場合には,(これ以上実質金利を下げることが できないので) マネーのミスマッチが必然的に発生する.これが俗にいう「流動性 の罠」と呼ばれる現象 (の実質金利から見た説明) だ7.流動性の罠に陥ると,実質 金利という価格の調整を通じてマネーの需給がバランスせずに,余っている資金 が有効に使われなくなってしまうのである.

次に,後者の要因を見ていこう.金融取引というのは,普通の商品の売買と比 べてかなり異質かつ複雑である.具体的には,現在と将来という時間を通じた取 引である点,借り手の返済能力に関して情報の非対称性が存在する点が大きな特 徴だ.このため,借り手が借り逃げしないための契約や長期的関係の構築,情報 の非対称性を緩和するためのスクリーニングやモニタリングのノウハウなど,金 融市場を円滑に機能させるには補完的な制度が欠かせない.日本をはじめとする

6先端的な学術研究においては,単純なロジックで説明できないような複雑な経済現象の解明や, 一見すると単純化された議論がどこまでモデルの細部に依存しないのか (頑健なのか) の判定,と いった地道で禁欲的な作業にむしろ心血が注がれている.関心のある読者は,ぜひ経済学者の書い た金融関係の学術論文に目を通して頂きたい.ナイーブな市場メカニズムでは説明できない,様々 な金融制度の仕組みや機能 (不全) について,情報の 経済学やゲーム理論という数学ツールを武器 に挑む彼らの知的格闘の様子が伺えるはずだ.

7ゼロ金利制約や流動性の罠は,長らく現実の経済では起こりえない机上の空論だと考えられて いた.しかし,日本における長期間のゼロ金利とデフレ,そしてリーマンショック後の先進諸国の 日本化を受け,現在のマクロ経済学では最重要なトピックのひとつになっている.その端緒となっ たのが,日本でもお馴染みのポール・クルーグマン (プリンストン大教授.当時は MIT 所属) の 論文 (Krugman (1998)) である.日本経済が陥った流動性の罠に関する分析については植田 (2005) が参考になる.

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先進国では,こうした制度が通常は機能しているため,金融市場が本来抱えてい る困難や脆弱性に気が付きにくい.実際に,20 世紀後半以降は様々な金融仲介機 能や金融商品が登場し,世界中でマネーの貸し借りが (見方によっては過剰なまで に) 行われた.ありとあらゆる資金やリスクが取引され,不安定な金融マーケット というのは過去の遺物に過ぎない,という楽観論に包まれていたのである.しか し,こうした妄信がリーマンショックによって脆くも打ち砕かれたことは,改めて 言及するまでもないだろう.

リーマンショックのような大きな金融市場の混乱は,通常はうまく機能している 補完的な制度を崩壊させる.大手金融機関の倒産,長期的関係の破たん,リスク 評価の大幅な見直し,といった金融市場を取り巻くイベントは,マネーの世界だ けの大事件にとどまらず,ファイナンス機能の麻痺というチャネルを通じてリア ルな経済活動に甚大なショックをもたらす.社会にとって有益なプロジェクトが, マネーの制約が原因となってストップ,あるいは新たに行われなくなってしまい, それが生産活動の停滞を生み出すからである.さらに,こうした実体経済の落ち 込みは,一度崩れてしまった金融制度の再構築をよりいっそう難しくする.マネー の世界での混乱がリアルの世界に波及し,それがマネーの問題をより深刻化させ る,という形で負のスパイラルが増幅,持続していってしまうのである.

余談ではあるが,マクロ経済分析における金融チャネルの重要性をいち早く見 出し,金融と実体経済の相互連関を見事に解き明かす先駆的な研究8を行ったのが, この分野の世界的な権威である清滝信宏プリンストン大教授だ.清滝教授の業績 はリーマンショック以降特に注目を集めており,現在のマクロ経済学では,いかに して金融市場や金融機能をモデル分析の中に明示的に取り込むかが大きな課題と なっている.

ここまでの議論をまとめると,次のように整理することができる.

【経済の見方】 — 金融市場が円滑に機能している場合には,経済の動きはリアル な側面 (特に生産活動) を見ることで掴むことができる.

【金融の見方】 — 金融機能の低下をもたらす主たる要因としては,(1) 流動性の 罠,および (2) 補完的な制度の崩壊,の 2 つが挙げられる.

以下では,これらの見方を前提として,いよいよ財政の問題について考えてい きたい.

国債の見方 — デフォルトかインフレか

財政とマクロ経済の繋がりを考える上でもっとも重要な役割を演じているのが

8Kiyotaki and Moore (1997).清滝 (1994) で,同論文を含む清滝教授の一連の研究のダイジェ ストが紹介されている.

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国債である.国債は,単に政府の借金であるばかりではなく,金融資産として莫 大な量 (日本国債の残高は年間 GDP の約 2 倍の水準) が流通し,金融市場におい て取引されている.そのため,国債価格の変動やその見通しはマネーの世界を大 きく左右する.

しかし,どれだけマネーの世界で存在感があるからといって,それがそのまま 実体経済にも大きな影響を及ぼすとは限らない.上述の【経済の見方】で確認し たように,金融市場の機能を損なわない限りにおいて,国債の問題は直接リアル な経済活動へと波及しないからだ9.やや突き放した言い方をすると,政府部門 のファイナンスがどうなったところで,リアルな世界での生産者の生産能力が突 然変わったりはしない.仮に最悪のシナリオとして政府財政が破たんした場合で も,民間部門で有益なプロジェクトが生まれそこにきちんとお金が回り続ければ, マクロ経済は安定する.よって過度の心配は無用,というわけだ.

以上の楽観的なストーリーは,あくまで政府の財政問題が金融市場の機能を損 なわない,ということを前提としていた.それでは実際に,日本の財政・国債問 題が,金融市場の機能不全を招くほどの大きなショックをもたらす危険性はあるの だろうか? 結論を先に言うと,そういった危険性が無いとは言い切れない,と 筆者は考える.

現在,日本の国債の約 95% は国内で保有され,そのうちの大部分を銀行や保険 会社などの金融機関が抱えている.仮に政府が国債を返済できずにデフォルト (債 務不履行) を起こした場合には,これらの金融機関の持っている資産価値が一気に 消え去ってしまう.当然ながら,金融機関の多くが倒産し,金融市場の機能がし ばらくの間はストップする.単にマネーのマッチングがうまくいかなくなるだけ ではなく,国民が銀行に預けている預金や,将来受け取るはずだった年金も,(部 分的にしか) 返ってこなくなる可能性が高い.政府の歳出も,少なくとも短期的に は大幅にカットされるだろう.国債のデフォルトという最悪なシナリオが発生し た場合には,金融のみならず,こうした様々なチャネルを通じて,実体経済に深 刻な影響がもたらされる,と考えらえる10

もちろん,政府もこうした最悪の事態は避けようとするに違いない.実際に,歳 出の削減や増税,景気回復による税収の自然増など,正攻法で政府債務を返済し, 国債デフォルトのリスクを軽減するオプションはまだまだ残されている11.また, 新規の国債に買い手がつかず市中で消化されない,という非常事態が発生した場

9実際には政府分門は巨大なので,金融チャネル以外を通じた実体経済への影響も無視できない. たとえば,歳出減のための公務員の削減や公共事業の縮小などが実現すれば,(少なくとも短期的 には) 大きなインパクトをもたらし得る.

10国債デフォルトやそれに伴う経済の激変というのは,決して理論上の産物ではない.むしろ, 歴史をひも解けばこうしたイベントが現実に繰り返し起こっていることが確認できる. デフォル トを引き起こす要因やその帰結などは Reinhart and Rogoff(2009) が詳しい.

11正攻法で日本の財政が維持できるかどうかを分析した最新の論文として Doi, Hoshi and Okimoto (2011)が参考になる.

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12にも,デフォルトだけが唯一の選択肢とは限らない.(財政法 5 条で原則的に は禁止されている) 日本銀行による国債の直接引き受けに踏み切ることも考えられ るからだ.直接引き受けが一時的な緊急措置にとどまらず恒常化した場合には,イ ンフレを招く可能性が高い.その場合には国債の実質的な価値が下がるため,表面 的にはデフォルトと大きな違いはない.しかし,金融市場へ与える影響は (デフォ ルトを選択した場合と比べて) 軽微に留まることが期待される.その一方で,財市 場や労働市場といったリアルなマーケットへ与える負の影響はインフレの方が大 きいだろう.最悪の事態を避けるために,デフォルトとインフレのどちらを選択 すべきなのかは,このトレードオフをどう評価するかにかかっている.

おわりに

以上,やや駆け足で経済・金融・国債の見方をそれぞれ紹介してきた.冒頭で述 べたように,マクロ経済の動きというのは非常に複雑で,最先端の経済学をもっ てしても分からないことがたくさんある.本稿では,こうしたマクロ経済学の課 題や現状にも触れながら,経済学者たちが真摯に取り組んできた研究やその中で 培われた知見を,あえてできるだけレベルを落とさずに解説しようと試みた (つも りである).本稿を通じて,少しでも多くの法律家・実務家の方に,経済学的な考 え方の面白さや有用性,そして経済学者の問題意識を感じ取って頂ければ,筆者 としてそれに勝る喜びはない.

12いつ非常事態がやってくるのかは,国債の買い手のインセンティブや戦略的な行動に依存する ため予測するのが非常に難しいが,ゲーム理論を使った分析が進展を見せている.手前味噌で恐縮 ではあるが,詳しくは安田 (2010) を参照頂きたい.

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参考文献

[1] 今井亮一 = 工藤教孝 = 佐々木勝 = 清水崇 (2007)『サーチ理論 — 分権的取引 の経済学』東京大学出版会

[2] 植田和男 (2005)『ゼロ金利との闘い — 日銀の金融政策を総括する』日本経 済新聞社

[3] 加藤涼 (2006)『現代マクロ経済講義 — 動学的一般均衡モデル入門』東洋経 済新報社

[4] 清滝信宏 (1994)「貨幣と信用の理論」岩井克人 = 伊藤元重編『現代の経済理 論』東京大学出版会(第 5 章)

[5] 清滝信宏 (2010)「現代景気循環論の展望」日本経済学会編『日本経済学会 75 年史 — 回顧と展望』有斐閣(第 7 章)

[6] 齊藤誠 (2006)『新しいマクロ経済学 — クラシカルとケインジアンの邂逅 (新 版)』有斐閣

[7] 安田洋祐 (2010)「ソブリンリスクと財政再建 (下) (経済教室)」 日本経済新聞 (3月 4 日)

[8] 吉川洋 (2000)『現代マクロ経済学』創文社

[9] Doi, T., Hoshi, T. and Okimoto, T. (2011) “Japanese Government Debt and Sustainability of Fiscal Policy.” NBER Working Paper, No. 17305.

[10] Kiyotaki, N. and Moore, J. (1997) “Credit Cycle.” Journal of Political Econ- omy, Vol. 105, No. 2, pp. 211-248.

[11] Krugman, P. (1998) “It’s Baaack: Japan’s Slump and the Return of the Liquidity Trap.” Brookings Papers on Economic Activity, Vol. 1998, No. 2, pp. 137-205.

[12] Reinhart, C. M. and Rogoff, K. S. (2009) This Time Is Different: Eight Centuries of Financial Folly, Princeton University Press.

(ラインハート = ロゴフ (村井章子訳)(2011)『国家は破綻する — 金融危機の 800年』日経 BP 社)

参照

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