計量経済分析特論 ¡ 演習 導入
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計量経済分析
学部の計量経済学をすでに学んでいることを前提としますので、計量経済学の 必要性やその理由については言及しません。その代わり、今後学ぶことになる大 学院の計量経済学についての概観をしておきましょう。
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学部の内容との違い
学部とは異なる基本的な部分は
演算はほぼすべて行列で行う
統計学的な構造に立ち返って影響や対処を詳しく考察しなおす
より広範な種類のデータに対する分析方法を学ぶ
になります。学部よりも精緻でかつ広範な方法を学ぶことで、研究論文を作成す る段階で必要になる理論的な判断を培います。
½º½º½ 行列による演算
学部では入門的な統計学との対応から、通常の解析的な演算を通じて計量経済 学を学んできました。それに対し、大学院の計量経済学ではその意味が理解しや すくかつ非常に簡便な議論が可能となる行列を用いた演算を中心に話を進めるこ とになります。具体的には学部では
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½
½
¾
¾
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ですが、すべての標本を用いた行列表記、
½
¾
½¼
½½
¡¡¡
½
¾¼
¾½
¾
¼
½
¡¡¡
¼
½
½
¾
で議論され、簡易的に、
と表記されます。演算の行列化は煩雑な演算を一掃し、理論的な理解にも役立つ ため、中級以上の計量経済分析には行列を用いた議論が中心になります。
計量経済分析特論 ¡ 演習 導入
確率論を基礎とする統計概念の精緻化
学部計量経済学は説明変数が非確率変数であるなど、実際的には非常に限られ た条件の下で、分析されています。しかし、大学院では非常に緩やかな条件で理 論が構築されることになります。ただ、簡単にそこまでの拡張が行うことはでき ません。概念の拡張にはそれなりの道具立て、すなわち統計概念の精緻化が必要 となります。統計概念といっても本来推測統計に属する統計分析ですから、確率 論の領域や数理統計の議論が展開されることになります。その意味で高度な議論 になりますが、それが質の高い研究への礎になります。
広範な分析方法の習得
学部の計量経済はわかりやすさを重視し、制約された中で話が進められました。 しかし、大学院ではより一般的な環境の中で、分析が進められるように議論が進 めます。はじめは学部内容を復習する形になりますが、速やかに一般的な話に移行 します。そこでは一般化モーメント推定のような汎用性の高い推定方法や、
およびのような、特殊な状況での推定、パネル分析にあるような豊富な
情報を利用する推定などを学ぶことになります。
分析の限界や注意点を知る
論文等で分析する際にさまざまな特殊条件での推定が要求されることがありま す。そのとき安易に、よく使われる推定を行うと、大きな間違いを犯すことがあり ます。それに注意できるよう推定や検定に横たわる問題を深く理解してください。
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大まかな流れ
講義の流れは大まかに次のように考えています。
最小二乗法とその周辺
古典的仮定の緩和と大標本理論
最尤法とその周辺
モーメント法と一般化モーメント法
同時方程式体系
! 時系列分析
パネル分析
計量経済分析特論 ¡ 演習 導入
" その他の分析
なお、内容は前後するかもしれません。
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テキスト他
基本なテキストは
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とします。購入はどちらでもかまいません。アマゾン社 #$$%&'() (*%
等で購入することを勧めます。なお、これ以外にも、タイプの異なる良い教科書 として、
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があります。こちらをサブテキストとしますので、しっかり計量経済を学びたい 場合にはこちらを参照することも勧めます。
なお、学部の復習も含め行列表記による計量経済分析を確認したい場合には 浅野皙中村二朗 「計量経済学」 有斐閣
を勧めます。大学院の内容がきついようだったら、まずこれを読んでください。