●所得税の基礎知識
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所
得
税
復興特別所得税から控除しても、控除 し切れない残額がある場合は、住民税か ら控除できます( 51ページ参照)。
◆予定納税
平成25年以後においては、所得税に併 せ、復興特別所得税の分も予定納税を行 います。予定納税については 59ペー ジを参照して下さい。
◆確定申告
平成25年分以後の所得税の確定申告で は、所得税額および復興特別所得税額に ついて、源泉徴収額・予定納税額を考慮
した精算を行います。
納めるべき税額がある場合は、確定申 告時に所得税額と復興特別所得税額を併 せて納付します。
納めすぎとなっている場合は、確定申 告時に所得税額と復興特別所得税額が併 せて還付されます。
◆延納
平成25年以後において、所得税の延納を する場合には、併せて復興特別所得税も 延納することができます。所得税の延納 については 58ページを参照して下さい。
◆基準所得税額
平成25年分以後の所得税の確定申告の 際には、所得税と併せて復興特別所得税 も納付します。
申告時の復興特別所得税は、基準所得 税額に対して2.1%となります。基準所 得税額とは、外国税額控除以外の税額控 除を行った後の所得税額です。
復興特別所得税を考慮すると、基本的 には、図表のようにあらゆる所得税の税
率が1.021倍になるものといえます。
◆外国税額控除
平成25年以後においては、外国税額控 除はその他の税額控除とは異なる取扱い をします。
外国税額控除の適用がある場合、まず、 控除限度額の範囲( 51ページ参照) で所得税から控除します。控除し切れな い残額がある場合は、以下の控除限度額 の範囲で復興特別所得税から控除します。
■
復興特別所得税の申告納付
◆確定申告の必要な人
所得税では、1月1日から12月31日 までの1年間の収入に対し、所得を確定 させ、税額を計算して申告と納税を行い ます。この申告のことを確定申告といい、 翌年の2月16日から3月15日までの間に 行うことが必要です。平成28年分の確定 申告書(提出は平成29年)からは、個人 番号(マイナンバー)の記入が必要とな りました。
確定申告は、所得と税額を確定させる とともに、源泉徴収された税金や、予定 納税した税金と実際の税額との差額を精 算するという役割も果たしています。ま た、損失が発生した場合には損失申告、 申告内容に誤りがあった場合には、税務 署の指摘前であれば修正申告を行うこと ができます。
◆確定申告ができる人
確定申告の義務のない人でも、予定納 税額や源泉徴収税額などを考慮した結 果、実際に支払うべき税額を超えて納付
している場合には、還付を受けられるな ど確定申告した方が有利な場合もありま す。たとえば次のような場合です。
確定申告の必要な人、確定申告ができる人
確定申告をしなければならない人につ いては、たとえば次のような人が該当し ます。なお、これらに該当する場合であ
っても所得税の計算結果が還付となる場 合は、2月16日を待たず、1月1日から還 付申告書を提出することが可能です。
確定申告の仕組み
-3
2
控除限度額=その年分の復興特別所得税の額× その年分の国外所得総額その年分の所得総額
●主な申告時の税率(平成29年分)
復興特別所得税を考慮しない税率 復興特別所得税を考慮後の税率(※) 所得税 住民税 合計税率 所得税+復興特別所得税 住民税 合計税率
総合課税の各種所得の税率(給与所得、雑所
得、事業所得など) 5%〜45% 10% 〜55%15% 〜45.945%5.105% 10% 〜55.945%15.105%
総合課税を選択した株式等の配当等の実質的
な税率(配当控除を考慮) 0%〜40% 7.2%〜8.6% 7.2%〜48.6% 〜40.84%0% 7.2%〜8.6% 49.44%7.2%〜
申告分離を選択した上場株式等の配当等と譲
渡所得の税率 15% 5% 20% 15.315% 5% 20.315% 一般株式等の譲渡所得の税率 15% 5% 20% 15.315% 5% 20.315%
先物取引等の雑所得 15% 5% 20% 15.315% 5% 20.315% ●復興特別所得税からの外国税額控除の限度額
※ 配当控除以外の税額控除や、損益通算などを考慮しない税率です。
一般の人 各種所得金額の合計額から所得控除を行い税率を適用して計算した税額が、配当 控除及び年末調整による住宅ローン控除額の合計額より多い人
年金受給者※
給与所得者 給与収入が2,000万円超などの一定の人
退職所得者 「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった人などで一定の人( 32
ページを参照)
※ ただし、例外的に年金等の収入金額が400万円以下で、雑所得以外の所得金額が20万円以下の場合は所得税の申
告は不要です( 270ページ参照)。
●所得税の基礎知識
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所
得
税
◆確定申告の必要なサラリーマン
サラリーマンで確定申告をしなければ ならないケースとしては、たとえば次の
ような場合があげられます。 サラリーマンは、毎月の給料の支払い
時に所得税が源泉徴収され、年末調整に よって税額の精算が行われるのが原則で す。年末調整では、雑損控除・医療費控 除・寄附金控除を除く大部分の所得控除 と、適用2年目以降の住宅ローン控除が 行われますので、一般にサラリーマンは 確定申告の必要はありません。しかし、
一定の場合には、例外的に確定申告を行 い、納税しなくてはなりません。また、 前述の通り確定申告の必要がない場合で も、確定申告をした方が有利なケースも あります。
なお、住民税の申告については、 72ページを参照して下さい。
サラリーマンと確定申告
損失の控除や繰戻還付を受ける場合に は、損失の申告をすることができます。 損失の申告とは、純損失や雑損失等が発 生した場合に、損失用の申告書を用いて その内容を申告するものです。具体的に は次の通りです。
◆損失の繰越控除
「損失の繰越控除」でも述べましたが ( 34ページ参照)、その年に発生した 純損失や雑損失などの一定の損失につい
ては、以後3年間にわたって繰越控除を 受けることができます。
◆損失の繰戻還付
純損失が発生し、かつ青色申告を行っ ている場合には、その年の損失が前年に 発生したと仮定して、前年に納めた税金 の還付を受けることができます。これを 繰戻還付といいます。なお、繰戻還付を 受けた金額について、重ねて繰越控除を 受けることはできません。
損失の申告
◆確定申告に関するチェックポイント
サラリーマンが確定申告する場合のチ ェックポイントとして以下のようなもの があります。申告義務のある人はもちろ
ん、申告義務のない人でも申告した方が 有利になるかもしれません。
①給与収入が年間2,000万円を超える場合
②給与を1か所から受けている人で、給与・退職所得以外の各種の所得金額の合 計が20万円を超える場合(たとえば、総合課税の対象となる利子や配当、ある いは原稿料などの雑所得その他の所得の合計が20万円を超える場合)
③給与を2か所以上から受けている人で、従たる給与の収入金額と給与・退職所得 以外の各種の所得金額との合計額が20万円を超える場合(ただし、その年中の 給与収入から社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・ 地震保険料控除・障害者控除・寡婦(寡夫)控除・勤労学生控除・配偶者控除・配 偶者特別控除・扶養控除の額の合計額を引いた残りが150万円以下で、かつ給 与・退職所得以外の各種の所得金額の合計が20万円以下の場合は確定申告不要) ④同族会社の役員や親族などで、給与以外に、貸付金の利子や、店舗・工場など
の賃貸料、機械器具の使用料等の支払いをその会社から受けている場合
⑤災害により被害を受け災害減免法により源泉徴収を猶予または還付を受けた場 合
①雑損控除、医療費控除、寄附金控除(ワンストップ特例を除く)、住宅ローン減 税を受けられる場合
②給与所得者が年の途中で退職し、その後就職しなかったために年末調整を受けな かった場合
③予定納税をしたが、災害等により実際の所得金額が大きく減少してしまった場合 (予定納税については 59ページを参照)
①特定支出控除を受けられる可能性はあるか。
②家族の医療費について医療費控除または医療費控除の特例(セルフメディケー ション税制)を受けられるかどうか。その際、領収書(注)は持っているか。
③社会保険料控除の適用を受けることを忘れていないか。特に、家族の国民年金 保険料を忘れていないか。
④災害(台風・雪害など)・盗難・横領などにより損害を被っていないか。 ⑤マイホームを取得したり、増改築を行った人は、住宅ローン減税や投資型減税
の適用を受けることを忘れていないか。
⑥家賃収入などの不動産所得がある場合、その家屋の減価償却費を計算したか。 ⑦認定NPO法人の支援金などの寄附をした場合、寄附金控除を忘れていないか。 ⑧年末に結婚したり、子供が生まれた場合等で、年末調整で配偶者控除・配偶者
特別控除・扶養控除の適用を受けることを忘れていないか。
⑨譲渡損失の繰越控除の対象となる上場株式等の譲渡損失が発生していないか。
(注)平成29年分以後の確定申告書を平成30年1月1日以後に提出する場合、領収書に代えて明細書を添 付し、領収書については自己保存することとされました(ただし経過措置あり)。
●所得税の基礎知識
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所
得
税
所得税の確定申告書には、 大きく分けて申告書A、申 告書B、別表の3種類があります。 さらに別表は、分離課税用(三表)、 損失申告用(四表)、修正申告用(五 表)の3種類に分かれます。申告す
る所得の種類に応じてAかBかが決 まり、さらに目的に合わせて必要な 別表を組み合わせます。これらの申 告書の組み合わせを一覧にすると、 次のようにまとめられます。
確定申告書の種類
先ほどの「損失の申告」のところで、損失用の申告書を
使用すると書いてありました。内容によって使用する申
告書が違うのでしょうか?
所得税の納付期限は、原則として確定 申告と同様に2月16日から3月15日まで とされています。
ただし、この期限内に全額を納付でき ない場合は、税金の1/2以上を期限内に 納付すれば、残額については同年の5月
31日まで納付を延期することができま す。これを延納といいます。
この場合、納税者は3月15日までに所 定の延納届出書を提出するか、確定申告 書の「延納の届出」欄に必要事項を記入 することが必要です。延納の際には、所
所得税の納付
◆納付の原則と延納
申告所得税の納付方法には、次の3種 類があります。
◆(1)納付書で現金納付する方法
金融機関又は所轄の税務署で納付書を 用いて納付することができます。 納付税額が30万円以下など一定の場合 は、コンビニエンスストアでの納付も可 能です。
◆(2)指定した金融機関の預貯金
口座から振替納税する方法
振替納税を利用すると、預貯金残額を 確認しておくだけで、金融機関又は税務 署に出向かなくても自動的に納付ができ ます。利用の際には、口座振替依頼書を 提出する必要があります。なお、振替納 税の引き落とし日は3月15日ではなく、
4月中旬頃となります。
平成29年1月から、領収証書の送付が 取りやめとなりました。
◆(3)インターネットバンキング
等を利用して電子納税する方法
国税電子申告・納税システム(e-Tax) による電子納税方法です。利用の際には、 事前に「開始届出書」の提出が必要とな ります。
く わ し く は 60ペ ー ジ のCheck Point!を参照して下さい。
◆(4)インターネットを利用した
クレジットカード納付
平成29年1月4日の納付委託から、専 用サイトでのクレジットカード納付が可 能になりました。
得税の残額に一定の利子税を加えた金額 を納付することになります。
◆税金の納付方法
一定の条件を満たす人は予定納税を行 う必要があります。税務署は、前年の確 定申告をした人について、前年分の所得 金額や税額などをもとに予定納税基準額 を計算します。予定納税基準額が15万円 以上である場合には、その年の所得税の 一部を事前に納付することが求められま す。これを予定納税といいます。対象と なる納税者には、その年の6月15日まで に予定納税基準額、予定納税額が通知さ れます。納税者は、税務署から通知され た予定納税基準額の1/3ずつを7月と11 月の2回に分けてあらかじめ納付する必 要があります。
ただし、その年の所得税の見積り額が、 災害等により通知された予定納税基準額 より少なくなる見込みのときは、予定納 税額の減額を申請することができます。 具体的には、6月30日時点を基準に計算 した見積り額、申請理由などを記載した 「予定納税額の減額申請書」を、7月15 日までに所轄税務署長に提出します(11 月分については10月31日時点の見積り額 とし、11月15日までに提出します。実際 に減額を受けるには税務署長の承認が必 要です)。予定納税基準額は、次のよう に計算されます。
◆予定納税
●所得の種類と使用する申告書
使用する確定申告書 申告する所得と目的
申告書 申告書 別 表 A B※1 分離 損失 修正
給与所得・雑所得・配当所得・一時所得の4
種類だけを申告する場合 ○
分離課税の所得、山林所得、退職所得がある
場合(損失申告の場合は除く) ○ ○
損失申告を行う場合※2 ○ ○
修正申告 の場合
総合課税対象の所得のみの場合 ○ ○
分離課税対象の所得がある場合 ○ ○ ○
※1 申告書Bは、所得の種類にかかわらず使用可能です。
※2 その年の一定の損失を翌年以後に繰り越す場合や、前年からの繰越損失額があり、かつ翌年以後へ の繰越損失額がある場合など
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申告所得税等については、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用 した電子納税が利用できます。
電子納税は自宅に居ながらにして納付手続が可能となるため、納税手続の ための場所的・時間的制約がない便利な方法です。また、確定申告書の添付 書類のうち一定のものについては、添付・提出を省略できます。
e-Taxを利用するためには、事前手続が必要です。具体的には、「電子証 明書」の取得および電子申告・納税等の「開始届出書」の所轄税務署長への 提出が必要となります。電子証明書については、個人番号カード(マイナン バーカード)に搭載された電子証明書をICカードリーダライタで読み込む ことでも利用できます。
納付方法は、ダイレクト納付またはインターネットバンキング等による電 子納税の2つがあります。
ダイレクト納付とは、事前に税務署へ届出等をしておき、e-Taxを利用し て電子申告等又は納付情報登録をした後に、届出をした預貯金口座からの振 替により納付する方法です。申告所得税、贈与税等の電子申告等が可能な税 目の全てについて、納税が可能です。
インターネットバンキング等による電子納税とは、事前に納付情報データ をe-Taxに登録するか(登録方式)、納付情報データの登録をせずに(入力 方式)、インターネットバンキング等からの振替により納付する方法です。 インターネットバンキングのほか、モバイルバンキングやATMを利用した 納税も可能です。また、平成29年6月12日からは、クレジットカードによる 納税もできます。
登録方式では全税目について納税が可能ですが、入力方式では申告所得税、 法人税、地方法人税、消費税および地方消費税、申告所得税および復興特別 所得税、復興特別法人税の6税目のみ納税が可能となります。
なお、電子納税では領収証書は発行されないため、領収証書が必要な場合 は従来どおり、窓口に納付書を持参して納付を行う必要があります。
国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用した電子納税
予定納税基準額 =前年の各種所得金額に対する所得税額
−前年の各種所得に対する所得税の源泉徴収税額※
※ 平成25年以後においては、復興特別所得税の分も予定納税を行うため、上記の計算結果に1.021 を乗じます。