作用素環の研究

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作用素環の研究

大学院理学研究院・大学院理学院 准教授

戸松

とまつ

れい

(理学部数学科)

専門分野 : 解析学(作用素環論)

研究のキーワード : 解析,代数,作用素環,無限次元,非可換

HP アドレス : http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~tomatsu/

何の研究をしているのですか?

数学の作用素環論を研究しています。非常に大雑把に言えば、関数や行列を一般化した 対象なのですが、こう言われてもまず分からないですよね。もう少し丁寧に説明してみま

す。

関数と言いますと、高校で習う有名な三角関数や指数関数などを思い浮かべることで

しょう。歴史的に由緒ある関数は他にも沢山あって、それら個々の性質や相互の関係は大

いに研究されてきました。オイラーやガウスについて調べてみるとよいでしょう。

他方、大学の数学では「集合」という概念を非常に大切にします。今は関数の集まりを

考えてみましょう。例えば、区間[0,1]上の連続関数たちを全部集めた集合がどのような構 造をもつかを考察します。この集合が代数構造(和、積、スカラー倍)をもつことは数学 (線形代数学)を少しだけ勉強すれば、誰にでも分かる簡単な事柄です。実はさらによい

ことに、この集合は「距離」という物差しももっています。ふたつの関数の近さ、遠さを

数値で計測できるということです。この考え方を推し進めると、個々の関数というよりは、

むしろ関数の集まりを研究する「関数解析学」にたどり着きます。これは20世紀初頭に生 まれた比較的新しい分野です。

私の研究対象である作用素環は、「代数構造と距離」をもつ集合です。もちろん先程述

べた関数の集まりは作用素環です。もう1つの重要な例としては、行列の集まりからなる

ものがあります。興味があれば、この分野の創始者であるフォン・ノイマンについても調

べてみるとよいでしょう。

何が面白いのですか?

作用素環は絵に描いてみせることのできない抽象的な対象のため、面白さを伝えること

は容易ではありません。キーワードを挙げるならば、無限次元と非可換でしょう。 作用素環には「次元」と呼ばれる数値が対応し、作用素環論の研究者が興味を持つのは

無限次元のものです。無限次元というと驚いてしまうかもしれません。これをうまくコン

トロールする道具が先程述べた関数解析学です。もしかしたらヒルベルト空間という名前

はどこかで聞いたことがあるかもしれませんね。無限次元かつ非可換な作用素環を考える

と、有限次元の場合には起こらない興味深い現象が起こります。絵には描けない想像しづ

らい対象の持つ様々な性質を浮き彫りにすることを、私たち研究者は行っています。

私にとって作用素環論が魅力的なのは、代数構造と関数解析の相互作用のなす洗練され

出身高校:岐阜県立多治見北高校

最終学歴:東京大学大学院数理科学研究科

定理・法則

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た定理があるからというのがまずひとつの理由です。もうひとつは他分野とも密接に関係

しており、分野のポテンシャルが非常に高いということです。例えば、先程作用素環は絵

には描けないと述べたので意外かもしれませんが、幾何学(トポロジー、非可換幾何学、

幾何学的離散群論)にも応用がありますし、エルゴード理論、確率論(ランダム行列や自

由確率論)、表現論(これは数学全般に及ぶ体系と考えられるので当然なのですが)、そ

して物理学では場の量子論や統計力学などとも関連し、現在においても盛んに研究されて

います。

日本の作用素環論の研究者は、様々な問題に取り組めるバランスの取れた布陣をなして

いることも一言添えておきます。

どんな装置を使って研究していますか?研究のスタイルは?

私の分野では大量の数値計算を行う必要は滅多にないので、原理的にはボールペンと

ノートでOKです。しかしPCもやはり必要ですね。論文を書いたり、インターネットで 興味のある論文をダウンロードしたり、arXivという毎日論文が載るサイトをチェックし たりします。共同研究者とはメールでやり取りもします。

研究は、朝9時から始めて夕方5時には終了というのではもちろんありません。その点

において数学の研究は24時間労働といえます。数学の問題に証明を与えようとすると、そ れぐらい時間をかけて、そして何ヶ月も考え続けないとできないことが多いのです。大抵

の研究者はどんなときも、取り組んでいる問題に頭を悩ましているものです。ですから一

見ぼうっとしているように見えたり、ただ寝転んでいるように見えたりすることもあるの

ですが、実際は違う(ことが多い)のです。疲れたとき、私は大好きなお酒(特にベルギー

ビール)を気の置けない仲間と飲んで楽しみます。

研究職にあこがれているのですが、何が必要でしょうか?

高校、大学時代に教わる数学はすでに知られている事柄なので、教える側、教わる側と

もに間違いのない安心な内容です。しかし研究者は正しいかどうかも分からないことに普

通は孤独に対峙して、数学的に正しい証明を与えるべく自分の頭の中で深く考え、悩むの

ですから、その心理的ストレスは並々ならぬものです。

研究者に求められる本当に重要な資質は、ひとつの問題を粘り強く考察し続けられるし

つこさ、少々の難所でもめげない根性、新しい問題に立ち向かっていく勇気だと思います。

こうしたポジティブな内面をまず磨くように努力しましょう。

先生や友人、そして授業、本やインターネットなど様々な手段を駆使して知識を深めて

いくことはもちろん大切です。しかしそれらから得た事柄(数学では定理や証明)を自分

の考察なしにそのまま鵜吞みにして理解したつもりになることは決してやってはならない

危険なことです。出版された専門書や論文にも間違いは散見されます。正確に理解してい

ることを自身で判定できて初めて知識を獲得したと言えます。知り合いの前で分かったこ

とを説明してみるとよいでしょう。自分では気づかなかった間違いが出てくることや、意

外な知見を得られることも多いでしょう。

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