労働経済学1(第5回)
広島大学社会科学研究科 特任助教
川田恵介
労働需要
• 労働需要=企業側が、ある賃金水準のもとで、雇用した いと考えている労働者数
• JR大阪駅周辺では、相次ぐ大型商業施設の誕生で求 人が急増。影響は同駅周辺にとどまらず、人気テーマ パークUSJにも及び、アルバイトの応募者が減っている。 従 来900円前後が相場だった時給が最近は1000円
(
大卒市場:大卒求人数
リクルートワークス 大卒求人倍率調査
300000 400000 500000 600000 700000 800000 900000 1000000
万 人
大卒市場:規模別
100000 200000 300000 400000 500000 600000 700000 800000
1000人 未満 1000人 以上
ハローワーク:新規求人数
労働力調査より
0 100000 200000 300000 400000 500000 600000 700000 800000 900000
63年 65年 67年 69年 71年 73年 75年 77年 79年 81年 83年 85年 87年 89年 91年 93年 95年 97年 99年 01年 03年 05年 07年 09年 11年
総数 パート除く パート
静学的労働需要モデル
• 企業により、雇用量は決定される。
• 企業は のみを支払う(労働者への福利厚生を 考えても結論は変わらない)
• 求人活動、労働者の解雇について追加的な費用が発 生しない。すなわち、企業は労働者の雇用量について
労働需要
• 企業は自社の利潤を最大にするように、雇用量を決 定する。
企業は、賃金の水準を所与と考え、雇用量を決定する。
生産関数
• 生産に用いる投入物と生産量の関係を表す関数
• 雇用量をL、労働以外の投入物の投入量をK、生産量 をYで表すと、生産関数�(�, �)は、以下の関係式を 満たす。
• L、Kともに生産量を増大させる。
• Kを所与として、雇用量を導出する。
凹型生産関数
Y
L
収入関数、費用関数
収入関数=
費用関数=
利潤関数=
利潤最大化
収入、費用
雇用量L
収入関数と費用関数の傾きが
�∗
「限界」
労働者の限界○○
労働者が一人増えた時の、○○の変化量
労働の限界生産性
労働者が一人増えた時の、生産量の増加量
=生産関数の傾き 労働の限界収入
労働者が一人増えた時の、収入の増加量
=労働の限界生産性×価格
最適雇用量の直観的理解
限界収入、 費用
�∗ 雇用量L
限界費用 限界収入
�∗∗ �∗∗∗
限界収入 ∨ 限界費用
限界収入 ∧ 限界費用
価格の影響
• 生産物の価格P、賃金wの変化が、雇用量に与える 影響を考える。
• 特に賃金と雇用量の関係は、 と呼ば れ、以後極めて重要である。
生産物の価格
限界収入、 費用
雇用量L
限界費用
限界収入
賃金の増大
限界収入、 費用
限界収入
限界費用を増 大させる
労働の需要関数
w
雇用量L
の関係
資本の増加は雇用量を増やすか
• 近代において、さまざま産業用機械(資本)が発明さ れ、普及してきた。
例)紡績機、自動販売機、旋盤、パワーショベル等
• これらの技術進歩が労働者の雇用量にどのような 影響を与えるのであろうか?
ラッダイト運動( イギリス 19世紀初頭 )
Weblio より
「機械」が労働者の雇用を奪っている と考えた労働者による
「機械」を破壊する運動
労働の限界生産性に与える影響
資本の増加は、生産量を増加させる
資本の増加が、労働の限界生産性に与える影響が重要 これだけでは雇用量が増えるかどうかわからない。
補完と代替
労働と な資本:
資本水準の増加が、労働の限界生産性を増加させるよ うな資本
例)パワーショベルは重機の免許を持つ、高技能な労働 者と補完的である
労働と な資本:
資本水準の増加が、労働の限界生産性を低下させるよ うな資本
例)パワーショベルは重機の免許を持たない、単純労働 者と代替的である。
補完的な資本の増加
限界収入、 費用
限界費用 限界収入
雇用量を増やす
代替的な資本の増加
限界収入、 費用
雇用量L
限界費用 限界収入
雇用量を減らす
高学歴化と資本蓄積
• 近代における技術革新は、高技能労働者と補完 的、単純労働者と代替的であるものが多い。
• 結果、単純労働者への労働需要が減り、高技能労 働者への需要が増えた。
• この変化に対応するため、労働者の技能や知識へ
IT革命
• 近年の大きな技術革新:IT技術の進歩
Levy and Murnane(96, American Economic Review)
米国のある銀行の事例を調査し,コンピューターの導入 によって高学歴者に対する需要が増えた。
Autor, Levy, and Murnane (03, The Quarterly Journal of Economics)
コンピュータは、労働者によるルーティンワーク的な作業 と代替的である。
労働者間の代替・補完関係
• Kを属性の違う労働者の雇用数と解釈可能。 (例)L:自国生まれの労働者、K:外国からの移民
• 移民の増加は、自国労働者の雇用にどのような影 響を与えるか?⇒労働者間が代替関係にあるか、 補完関係にあるかで異なる
移民
技能水準の高くない移民は、国内の同様の技能水準に ある労働者と代替的ではないか?
Borjas, G. J. (2006, Journal of Human Resources)
移民は、国内の非熟練労働者と代替的 Card, D. (2005,The Economic Journal)
移民は、国内の非熟練労働者と代替的ではない
まとめ
• 労働需要量と決定する要因として、労働の限界収入 が重要となる。
• 限界収入が上昇した場合労働需要は増大し、減少 した場合は減少する。
• 現実の雇用においては、企業は賃金以外にも、社 会保障費等を支出している。⇒雇用の意思決定に