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Academic year: 2017

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略奪価格

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本日の内容

•  略奪価格と評判形成 

–  略奪価格とは 

–  略奪価格の理論 

–  評判による略奪価格 

•  略奪価格に対する競争政策 

–  アメリカにおける略奪価格の扱い 

–  独占化に対するアメリカの司法判断の変遷 

–  日本における略奪価格の扱い

(3)

略奪価格

•  参入に直面した既存企業が、価格を下げて競争する のは普通の行為であり、費用を上回る範囲の価格の 引き下げであれば、正当な経済行為である 

•  既存の独占企業が、新規参入企業に対して、その企 業を市場から排除した後に価格を引き上げることを目 的として、費用を下回るような低価格を設定することを

「略奪価格」と呼ぶ 

•  既存企業にとって、費用を下回る低価格攻勢をかける ことは短期的には損失となるので、略奪価格を行うこ とが合理的であるためには、短期的に犠牲にした利 潤を長期的に取り返せること、つまり新規参入企業が 退出した後に、高価格を設定できることが必要である 

(4)

略奪価格の理論

•  Selten (1978) 

–  あるチェーン店が、 n の地域に1つずつ店を構えてお り、各店舗が順番に新規参入の脅威を受けるとする  –  参入の脅威にさらされた店舗は、費用を下回る非常

に低い価格で新規参入者を駆逐し、その後の新規参 入者に、参入しても利潤を得られないと印象付けると する 

•  この戦略はサブゲーム完全均衡ではない 

•  現実には観察されることが理論的に否定された

ため、「チェーンストア・パラドクス」と呼ばれる  

(5)

略奪価格の理論

•  チェーンストア・パラドクスは、すべてのプレイ

ヤーがすべての情報(市場の構造、各プレイ

ヤーの費用関数等)を知っている場合に成立

する  

•  情報のすべてが周知されていない「不完備情

報」のもとでは、略奪価格が成立する可能性

がある

(6)

評判による略奪価格

•  Milgrom and Roberts (1980) や Kreps and Wilson 

(1980) は、チェーンストアの例で、既存企業と参入企 業との間で持っている情報に差がある「情報の非対称 性」があるときに、略奪価格が成立しうることを示した 

•  既存企業の生産コストの高低のタイプについて、既存 企業は知っているが、参入企業が知らない場合を考 える 

–  参入企業は、既存企業が高生産コストタイプの企業であ る確率のみ知っている 

–  参入企業は、低価格では利潤が負になるとする 

–  既存企業は、高生産コストタイプであれば低価格で利潤 が負になるが、低生産コストタイプであれば低価格でも利 潤は正であるとする

(7)

評判による略奪価格

•  既存企業は、高コストであったとしても、一時的に利潤 が負となる低価格をつけることで、低コスト企業である と信じさせることが出来る 

•  既存企業が低コスト企業であるならば、参入企業は参 入しても必ず利潤が負になるため、参入しない 

•  ただし、真の低コスト企業でないと付けられないような 低価格が存在するとき、真の低コスト企業はその低価 格をつけることで自らが低コスト企業である「シグナ ル」を送ることができるが、高コスト企業はそこまでの 価格が付けられないため、低コスト企業であることを 信じこませることが難しいかもしれない

(8)

評判による略奪価格

•  企業の行動目標のタイプに関する情報の非対称性も考え られる 

–  利潤最大化を目的とする企業と売上(マーケット・シェア)最大 化を目的とする企業が存在するとする 

–  利潤最大化を目的とする企業であれば、参入を受け入れたほ うが利潤が高ければ参入を受け入れる 

–  売上最大化を目的とする企業は、参入に対してより攻撃的に なる 

•  参入が起きた際に、攻撃的な低価格をとることで、企業の

目標が売上最大化であると信じさせることができる 

•  攻撃的企業であるという評判が形成されると、独占企業は 参入を阻止できる可能性が高まる

(9)

評判による略奪価格

•  航空市場では略奪価格と思われる価格設定

がよく見られる  

–  アメリカン航空によるブラニフ航空の排除 

–  日本航空や全日空による、スカイマークやエア・

ドゥ参入に対する値下げ攻勢  

(10)

アメリカにおける略奪価格の扱い

•  独占化が安易に認定されないよう、 Areeda and 

Turner (1975)  は、短期限界費用を下回る価格を

略奪価格とする考え方を提唱した  

–  ただし、限界費用の計算は困難なため、実務上は平 均可変費用を用いることを提案した 

•  平均可変費用基準(「アリーダ=ターナー基準」)

は裁判所でも用いられるようになった  

•  現在では、平均可変費用基準に加えて、略奪価

格を実施している期間の損失を後に埋め合わせ

することが出来るかどうかの基準(埋め合わせ

基準)も加えられている

(11)

アメリカにおける略奪価格の扱い

•  略奪価格への政策的な対応は、認定基準を厳し

くする(略奪価格と認定されにくくする)と略奪価

格や不当廉売を違法としない可能性があり、認

定基準を緩くする(略奪価格と認定しやすくする)

と正当な競争を違法としてしまう可能性がある  

•  平均可変費用基準は、どちらかと言うと厳しい認

定基準である(固定費が高い産業では、価格を

低くつけても略奪価格とみなされない可能性が

あるため)

(12)

独占化に対するアメリカでの司法判断の変遷

•  Viscusi et al. (2005) による3つの時代区分 

1.  1890年のシャーマン法成立から1940年まで 

–  1911年に最高裁は、相次ぐ企業結合により石油の 精製・製品の90%のシェアを獲得したスタンダード・ オイルを、略奪価格、パイプラインの独占、鉄道会 社に貨物運賃の優遇を強制したことにより有罪と し、33のローカルな企業に分割した 

–  独占化を認定するには、大きなマーケット・シェアを 獲得したことと、独占的地位を獲得する意図を示す 証拠が必要であるとした 

–  65%のシェアを得ていたUSスチールは、略奪行為を 行なっていないとして有罪とはならなかった

(13)

独占化に対するアメリカでの司法判断の変遷

2.  1945年から1970年まで 

–  1945年に控訴裁は、略奪行為を行なっていなかったアメ リカで唯一のアルミニウム粗鋼の生産者であるアルコア を有罪とした 

•  需要の増加を見越して行なっていた生産能力の増強を、他の企 業の参入阻止にも利用できるとした 

–  独占化の意図を示す略奪的ないし濫用行為の証拠を求 めなかいという独占化の判断基準の変更 

–  1953年のユナイテッド・シュー・マシナリー判決では、靴 製造機で7585%のシェアを持っていた当該企業が、 販売を行わずにリースだけを行うとともに、無料で修理 サービスを提供していた点について、修理サービス業者 の新規参入を困難にするとして、違法とされた

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独占化に対するアメリカでの司法判断の変遷

3.  1970年以降 

–  支配的な企業による攻撃的な行為を従来よりも認める 傾向にある 

–  1980年には生産能力を拡大したデュポンが適法である と判断された 

–  ただし、 

•  写真の現像・焼付け会社のバーキーフォトによる、シェア60 90%のコダックによる互換性のない新フィルムの販売によって 市場から締め出されるおそれがあるため、事前にイノベーション を講評すべきであったという訴えは退けられた 

•  連邦取引委員会による、ケロッグら大手食品会社が様々な種類 のシリアルを販売する「ブランド拡散」によって新規参入の余地 をなくしている、という申し立ても取り下げられている 

(15)

日本における略奪価格の扱い

•  日本では支配的事業者が市場の競争を実質的

に制限する独占化は、独占禁止法第 2 条で「私

的独占」と呼ばれ、第 3 条で禁止されている  

•  「競争の実質的制限」とは、特定の事業者が市

場における価格やその他の取引条件を支配す

る力を持つ状態が現れ(ようとす)ることである  

•  コストを下回る価格をつけて他の事業者の事業

を困難にすることは「不当廉売」と呼ばれ、公正

な競争を阻害するおそれがある「不公正な取引

方法」の 1 つとして公正取引委員会に指定され、

独占禁止法第 19 条で禁止されている

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日本における略奪価格の扱い

•  「公正競争阻害性」とは、私的独占の禁止を補

完し、予防するものであり、市場への参入や良

質廉価な商品の提供による競争が行われなくな

る可能性がある場合を指す  

1.  競争の実質的制限よりも低い程度の反競争性(競 争の減殺) 

2.  欺瞞的取引(不当表示など)のような非難に値する 取引方法を違法とする競争手段の公正さ 

3.  取引主体の自由で主体的な判断により取引を行う という競争基盤の侵害を違法とする優越的地位の 濫用 等

(17)

日本における略奪価格の扱い

•  不当廉売は 

1.  正当な理由がないのに商品または役務をその供給に要 する費用を著しく下回る対価で継続して供給 

2.  不当に商品または役務を低い対価で供給…他の事業者 の事業活動を困難にさせるおそれがあること 

•  費用とは、小売業では商品の通常の仕入原価に販売 経費等を加えた総販売原価とされ、仕入原価を下回 るような価格は原価を著しく下回る対価とみなされる 

•  「費用を著しく下回る対価」は正当な理由がなければ 原則として違法となり、「低い対価」は不当であれば

(競争の減殺などがあれば)違法となる 

(18)

日本における略奪価格の扱い

•  日本では、アリーダ=ターナー基準に近い不

当廉売の基準が採用されており、埋め合わ

せ基準は採用されていない

(19)

参考文献

•  Areeda, P.E., and D.E. Turner (1975) “Predatory Pricing and  Related PracQces under SecQon 2 of Sherman Act”, Harvard  Law Review, 88, 697‐733 

•  Kreps, D., and R. Wilson (1980) “ReputaQon and Imperfect  InformaQon”, Journal of Economic Theory, 27, 253‐279 

•  Milgrom, P., and J. Roberts (1980) “PredaQon, ReputaQon  and Entry Deterrence”, Journal of Economic Theory, 27,  280‐312 

•  Selten, R., (1978) “The Chain‐Store Paradox”, Theory and  Decision, 9, 127‐159 

•  Viscusi, W.K., J.E. Harrington Jr., and J.M. Vernon (2005)  Economics of Regula;on and An;trust, MIT Press

参照

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