第
6
章 生産者理論
●
1
.生産者行動
古典的な企業観・・・企業は利潤を最大にするように行動する.
企業は生産活動を行い,財・サービスを生産・販売し,
収入
を得る.
生産活動には人手(労働サービス)や機械設備(資本)など,
生産要素
が必
要.
生産要素の利用には
費用(機会費用を含む)
がかかる.
生産要素を利用するための価格(賃金など)を
生産要素価格
という.
完全競争市場を仮定(財の価格も生産要素価格も所与とする)
利潤=収入-費用
費用=生産要素価格 × 生産要素投入量
収入=価格 × 販売量
● 〇
1.1
生産関数
生産要素の量と生産物の量の間には関係がある.
これを
生産関数
という.
生産関数の性質
1.
生産要素投入量が増えると,生産量は増える.
2.
生産要素投入を増やすほど,生産要素の追加的投入から
得られる生産量の増加分は低下する.(
限界生産性の逓
減
)
3.
生産性が高い
ほど,一定の生産要素投入量のもとでの
生
産量が増加
する.
梶谷真也・鈴木史馬『しっかり基礎から ミクロ経済学-LQアプローチ』(日本 評論社)
〇●
1.1
生産関数
具体的な関数形の例
y
;生産量
l
;生産要素投入量
H
;生産性を表すパラメータ
2は後で計算を楽にするための工夫(特に意味はない).
数値例(で, の場合)
生産要素投入量 ;
l
1
4
9
16
生産量 ;
y
1
2
3
4
+3
+5
+7
● 〇
1.2
費用関数
生産量と,それを達成するために必要な生産要素投入量の関
係を
費用関数
という.
生産関数が生産要素投入量の増加関数であったように,費用関数は
生産量の増加関数.(たくさん作るほど,たくさん費用がかか
る.)
費用関数の性質
1.
生産量を増やすには生産要素投入量も増やす必要
がある.
2.
生産量を増やせば増やすほど追加的な増産に必要な生産要素
投入量の増分は大きくなる.(
限界費用の逓増
).
3.
生産性が高いほど
,一定の生産量を達成するために必要な
生
産要素投入量は少なくて済む
.
梶谷真也・鈴木史馬『しっかり基礎から ミクロ経済学-LQアプローチ』(日本 評論社)
〇●
1.2
費用関数
具体的な関数形の例
生産関数 より なので,
2次関数なので,生産量
y
が増加するほど生産要素投入量
l
も増加.
生産要素価格を
W
とすると,費用関数は
● 〇
2.1
生産関数と費用関数の関係
のケースで生産関数と費用関数の関係を考える.
費用関数は
生産関数は右下図のように示せる.
l
を 1 から 4 に 3 増やすと,
y
は 1 から 2 へ増加.
l
を 4 から 9 に 5 増やすと,
y
は 2 から 3 へ増加.
0 1 2 3
l;生産要素投入量
y;生産量
〇●
2.1
生産関数と費用関数の関係
生産要素価格を とすると,費用関数 は右下図のように
書ける.
y
を 1 から 2 に 1 増やすための
l
の増分は 1 から 4 への 3
y
を 2 から 3 に 1 増やすための
l
の増分は 4 から 9 への 5
限界生産性の逓減と限界費用の逓増は同じこと.
y;生産量 Wl;費用
3
5
梶谷真也・鈴木史馬『しっかり基礎から ミクロ経済学-LQアプローチ』(日本 評論社)
● 〇〇
2.2
生産者の利潤最大化問題
収入から費用を差し引いたものを利潤()と呼ぶ.
P
は財・サービスの価格.
生産要素を利用するための費用には機会費用も含まれる.
例:自営業者が自分の店で働いている間は他社で働くことはできない
⇒自営業者は他社で得られるはずの賃金を失っている.
そのため,生産者が考慮するべき費用の中には機会費用が含まれる.
〇●〇
2.2
生産者の利潤最大化問題
利潤関数()は2次関数となっている.
この関数は
のときにの値が最大となる.
利潤を最大化させる生産量を
供給量(
Supply
)
といい,
と表記.これを
供給関数
と呼ぶ.価格が上昇すると供給量
は増加.
供給関数は,生産要素価格(
W
)と生産性(
H
)が一定のもとで
,価格が上昇すると供給量が増加することを表す.
は価格変化に対する供給量の変化の程度を表す.
梶谷真也・鈴木史馬『しっかり基礎から ミクロ経済学-LQアプローチ』(日本 評論社)
〇〇●
2.2
生産者の利潤最大化問題
具体的な数値例
財・サービスの価格
P
=50
,生産要素価格
W
=1
,生産性
H
=1
と
する.
この関数は
のときにの値が最大になる.
上の式の利潤関数は右図.
利潤関数の接線の傾きを,
限界利潤
という.
生産量をわずかに増加させた
時の利潤の増加の程度.
最適生産量の時,限界利潤は
0になっている.
0 200 400 600 800 1000 1200 1400
● 〇〇
2.3
供給曲線の導出
供給関数を
P
=
の形に書き換え,横軸に供給量
S
,縦軸
に価格
P
として図示したものを
供給曲線
という.
供給曲線は右上がりの
線として描ける.
1.
価格が上がると
2.
供給量が増える.
梶谷真也・鈴木史馬『しっかり基礎から ミクロ経済学-LQアプローチ』(日本 評論社)
S;供給量
P;価格
① 価格が上がると
② 供給量が増える
〇●〇
2.3
供給曲線の導出
利潤を最大にする生産量は 限界利潤 =0
となる.
利潤が収入から費用を差し引いたものとして定義される.
限界利潤も同じように定義できる.
限界利潤 =
限界収入
- 限界費用
限界収入は生産量を 1 単位増やした時に得られる収入の増分.
生産
量を 1 単位増やした時の収入の増分は
⇒
価格
と等しい
.
限界利潤 =
価格
- 限界費用
「利潤が最大となる生産量では限界利潤がゼロとなる」とは
,以下を意味する.
0 = 価格 - 限界費用 ⇒
価格 = 限界費用
〇〇●
2.3
供給曲線の導出
ある価格のもとで利潤を最大にする生産量(供給量)を
表す供給関数から供給曲線を導出した.供給曲線は
前のスライドの議論より,利潤最大化の条件は
価格 = 限界費用
供給曲線の は供給量
S
の生産に必要な
限界費用
を表す
.
S
に対する限界費用は .従って, 以上なら生産してよい.
つまり,供給曲線は供給量
S
に対応する留保価格を表す.
梶谷真也・鈴木史馬『しっかり基礎から ミクロ経済学-LQアプローチ』(日本 評論社)
●
供給曲線と生産者余剰
供給曲線 で価格,対応する供給量をとする.
より少ない生産量の時,供給曲線上の値は生産量に対応する
限界費用
(
MC
)
を表す.
価格(限界収入) と限界費用(供給曲線上の値)
MC
の差は
限界利潤
これは 個目の生産をしたこ
とで追加的に得られる利潤に
相当(限界利潤がプラス).
価格より下,供給曲線より
上の領域は企業の利潤の
全体を表す.
(
生産者余
剰
)
限界利潤が
プラス
S
;供給量
P
;価格
MC
;限界費用
0
梶谷真也・鈴木史馬『しっかり基礎から ミクロ経済学-LQアプローチ』(日本 評論社)
W
=1
,
H
=1
として,供給曲線
P
=
S
を考える.
価格
P
が 5 であるとする.この時の供給量
S
は 5
S
=1 に対する限界費用は 1
→
1 個目の生産から得られる利潤は 4=5
-
1
S
=2 に対する限界費用は 2
→
2 個目の生産から得られる利潤は 3=5
-
2
S
=3 に対する限界費用は 3
→
3 個目の生産から得られる利潤は 2=5
-
3
S
=4 ,
S
=5 も同
様
に計算
可能
.
取
引単位がより
細
かければ,
価格より下,供給曲線より上の
三角
形の
面積
が利潤の合計
となることが分かる.
0
1
2
3
4
5
6
7
8
P
;価格
S
;供給
●
数値例
●
4.1
環境の変化が企業の行動に与える影響
供給曲線は,生産要素価格と生産性を一定にしたもとで
,ある価格
P
が与えられた時の利潤を最大にする企業
の生産量(供給量)を表す.
経
済
環境
が変わり,生産要素価格や生産性が変化すれば
,価格と供給量の関係そのものが変化する.
● 〇
4.2
費用の増加
生産要素価格が上昇したとする.
賃金の上昇,
原油
価格の上昇など.
W
が
W
’
へと上昇⇒供給曲線は へと変化.
生産要素価格の上昇は限界費用の上昇を意味する.
供給曲線の傾きが
急
になり,価格を一定としたもとでの供給量
が低下する.(下図)
梶谷真也・鈴木史馬『しっかり基礎から ミクロ経済学-LQアプローチ』(日本 評論社)