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(1)

学校選択制度における

アファーマティブアクションの効果に関す

る実験研究

川越敏司(公立はこだて未来大学)

with

松八重泰輔・瀧澤弘和

(2)

アファーマティブアクション

• アファーマティブアクション(AA)

– 積極的差別是正処置、ポジティブ・アクション

– 例:男女雇用機会均等法、障害者雇用促進法

– マイノリティに対して何らかの配慮を提供

– 例:入学特別枠の設定

– 論点:効率性が損なわれないか?

• 本来の順位では採用されるはずの人材が、マイノリティが 優先される結果、採用されなくなるため

(3)

AAに関する実験研究

• Shotter & Weigelt (1992)

– 労働者の間での昇進を巡るトーナメントでは、能力に劣る

労働者に配慮するAAには効果がある

• Corns & Shotter (1999)

– マイノリティによって運営される企業を入札で優遇するよ

うなAAには効果がある

• Calsamiglia et al. (2012)

– 現実的な労働課題(小学生に数独を解かせる)では、AA

に効果がある

• いずれの結果も、マジョリティ側の競争の激化が生産性や効

率性に好影響を与える結果、AAの弊害が軽減されている

(4)

学校選択制度の下でのAA

• Kojima (2012), Matsubae (2011)

– マジョリティ の席数に制限を置く、あるいはそれと

同値のAAは、マイノリティの厚生を低下させる場

合がある

• Hafalir et al. (2012)

– マイノリティ を優遇する席数を設定する、あるいは

それと同値のAAは、マイノリティの厚生を少なく

とも一人は(弱い意味で)改善する

(5)

4つのAAルール

• Kojima (2012), Matsubae (2011)

– DA1 : マジョリティの入学定員に上限を設ける

– DA4 :マイノリティの入学希望の有無にかかわらずマイノリ

ティだけが入学できる定員枠を別途設け、それ以外の定

員枠はどちらの生徒も入学可能

– この2つは同値

• Hafalir et al. (2011)

– DA2 : マイノリティのうち優先順位の高い生徒は、学校の

優先順位を超えて入学可能

– DA3 :マイノリティが入学希望した場合、マイノリティだけが

入学できる定員枠を別途設ける。それ以外の定員枠はど

ちらの生徒も入学可能

– この2つは同値

(6)

モデル

• 実験1

– 3つの学校X, Y, Zで各学校の総定員は2名

– 5人の生徒 A, B, C, D, E (DとEがマイノリティ)

– DA(ゲール=シャプレー)メカニズムを使用

• DA1, DA4

– マジョリティは各学校に最大でも1名しか入学できな

• DA2, DA3

– マイノリティのうち優先順位が一番高い1名が優遇さ

れる

(7)

マッチング マッチング マッチング

マッチング A B C D E

DA1と4 X Y Z Z Y

DA2と3 X X Z Y Y

AAなし X X Z Y Y

選好 選好 選好

選好 1 2 3

A X Y Z

B X Y Z

C X Y Z

D Y Z X

E Y X Z

優先順位 優先順位 優先順位

優先順位 1 2 3 4 5

X A E B D C

Y B E D C A

Z D C B A E

(8)

モデル

• 実験2

– 3つの学校X, Y, Zで各学校の総定員は2名

– 5人の生徒 A, B, C, D, E (DとEがマイノリティ)

– DA(ゲール=シャプレー)メカニズムを使用

– 優先順位は実験1と同一

– AAによる制約も同一

– Eの選好のみが異なる

(9)

マッチング マッチングマッチング

マッチング A B C D E

DA1と4 X Y Z Y X

DA2と3 X Y Z Y X

AAなし X Y Z Y X

選好選好選好

選好 1 2 3

A X Y Z

B X Y Z

C X Y Z

D Y Z X

E X Y Z

優先順位 優先順位 優先順位

優先順位 1 2 3 4 5

X A E B D C

Y B E D C A

Z D C B A E

(10)

実験手順

• 2012年10月に中央大学で実施

• 各セッションで、1グループ5名×9グループ=45

名が参加

• 各セッションは、それぞれのAAルールに対応

• 各セッションでは、実験1と2を同時決定し(戦略

決定法) 、くじでどちらか一方の結果を選んで謝

金を支払う

• 参加料500円+利得1点につき1円を支払う

• 1時間の実験で、平均報酬額約2000円

(11)

実験結果

• 真実表明

– DA(ゲール=シャプレー)メカニズムでは真実表明が

支配戦略である

– 実験1と2の両方で、各AAルールの間で真実表明の

割合に差がないという帰無仮説は棄却できなかった

DA1 DA2 DA3 DA4

実験

実験

実験

実験1 48.9% 44.4% 57.8% 53.3%

実験

実験

実験

実験2 53.3% 53.3% 60.0% 62.2%

(12)

実験結果

• 実験1

– 真実表明に関して、マジョリティとマイノリティとの

間の違い

– DA1と4で、両者の真実表明の割合に統計的に有

意な差がある

DA1 DA2 DA3 DA4

マジョリティ

マジョリティ

マジョリティ

マジョリティ 51.9% 37.0% 51.9% 37.0%

マイノリティ

マイノリティ

マイノリティ

マイノリティ 72.2% 55.6% 66.7% 77.8%

(13)

実験結果

• 実験2

– 真実表明に関して、マジョリティとマイノリティとの

間の違い

– DA1ー4すべてで、両者の真実表明の割合に統計

的に有意な差がある

DA1 DA2 DA3 DA4

マジョリティ

マジョリティ

マジョリティ

マジョリティ 25.9% 37.0% 44.4% 44.4%

マイノリティ

マイノリティ

マイノリティ

マイノリティ 94.4% 77.8% 83.3% 88.9%

(14)

実験結果

• 効率性(平均利得)

1500 1550 1600 1650 1700 1750

DA1 DA2 DA3 DA4

実験1 実験2

(15)

実験結果

• 効率性(均衡利得との比較)

– ブートストラップ法

• 実験での役割と表明された選好を固定したまま、グループ 所属を変えてマッチングを計算

– 実験1

• DA1,4の平均利得は均衡利得(1600)と差がない

• しかし、AAなしの場合の均衡利得(1800)より有意に低い

• DA2,3の平均利得は均衡利得(1800)より有意に低い

– 実験2

• DA1-4の平均利得はどれも均衡利得(1700)より有意に低い

(16)

実験結果

• 効率性(平均利得の比較)

– ブートストラップ法

• 実験での役割と表明された選好を固定したまま、グ

ループ所属を変えてマッチングを計算

– 実験1

• DA1, 4とDA2,3との間には統計的に有意な差

• それ以外には有意な差はない

– 実験2

• DA1と3、DA2と3,4、DA3と4に有意差がある

• それ以外には有意な差はない

(17)

実験結果

– 実験1におけるマジョリティ(M)とマイノリティ(m)の

平均利得の差

0.0 200.0 400.0 600.0 800.0 1000.0 1200.0 1400.0 1600.0 1800.0 2000.0

DA1 DA2 DA3 DA4

M m

(18)

実験結果

– 実験2におけるマジョリティ(M)とマイノリティ(m)の

平均利得の差

0.0 200.0 400.0 600.0 800.0 1000.0 1200.0 1400.0 1600.0 1800.0 2000.0

DA1 DA2 DA3 DA4

M m

(19)

実験結果

• 安定性(妬みなし性)

– DA(ゲール=シャプレー)メカニズムは、安定な

マッチングを導く

– しかし、被験者が真実表明しない場合、そうでな

い場合よりもランクの低い学校にマッチする可能

性がある

– その場合、マッチした学校よりも真の選好でみて

ランクの高い学校に、自分より優先順位が低い

生徒がマッチしていると妬みが発生する

(20)

実験結果

• 各実験における妬みをもつ生徒の割合

0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0% 12.0%

DA1 DA2 DA3 DA4

実験1 実験2

(21)

実験結果

• 実験1

– DA3における妬みをもつ生徒数の割合が高い

– 4つのAAルール間で有意な差があった

• 実験2

– DA2,3において他より妬みをもつ生徒数の割合が

高い

– 4つのAAルール間で有意な差があった

(22)

実験結果

– 実験1におけるマジョリティ(M)とマイノリティ(m)の差

– DA3ではマイノリティにも妬みをもつ生徒がいる

0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0% 12.0% 14.0% 16.0%

DA1 DA2 DA3 DA4

M m

(23)

実験結果

– 実験2におけるマジョリティ(M)とマイノリティ(m)の差

– DA3ではマイノリティにだけ妬みをもつ生徒がいる

0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0% 12.0% 14.0% 16.0%

DA1 DA2 DA3 DA4

M m

(24)

結論

• 学校選択制度における4つのAAルールを実験的に比較した

真実表明真実表明真実表明真実表明に関しては、おおむね全体の5~6割であり、これは実 験設定によらないものだった。

効率性効率性効率性効率性に関しては、理論上ルール間で差がある場合(実験実験実験実験1)では 理論予測通りであったが、理論上ルール間で差がない場合(実験実験実験実験 2)でも、結果に差がある場合があった

• また、いずれの実験設定でも、マイノリティの平均利得がマジョリマイノリティの平均利得がマジョリマイノリティの平均利得がマジョリマイノリティの平均利得がマジョリ ティよりも高かった

ティよりも高かった ティよりも高かった ティよりも高かった

安定性安定性安定性安定性に関しては、DA3において妬みにおいて妬みをもつにおいて妬みにおいて妬みをもつ生徒のをもつをもつ生徒の生徒の生徒の割合が割合が割合が割合が高かっ高かっ高かっ高かっ たた

たた。また、マイノリティで妬みをもつ生徒がいるのもDA3であった

• したがって、マイノリティの平均利得が高く、妬みが比較的少ないしたがって、マイノリティの平均利得が高く、妬みが比較的少ないしたがって、マイノリティの平均利得が高く、妬みが比較的少ないしたがって、マイノリティの平均利得が高く、妬みが比較的少ない DA2を、学校選択制度の下でのアファーマティブアクションとして用、学校選択制度の下でのアファーマティブアクションとして用、学校選択制度の下でのアファーマティブアクションとして用、学校選択制度の下でのアファーマティブアクションとして用 いるべきかもしれない

いるべきかもしれない いるべきかもしれない いるべきかもしれない。

(25)

参考文献

• Calsamiglia et al. (2012) “The incentive effects of affirmative action in a real-effort tournament,” mimeo.

• Corns, A. and A. Schotter (1999) “Can affirmative action be cost effective? an experimental examination of price-preference

auctions,” American Economic Review, 89, 291-305.

• Hafalir et al. (2012) “Effective affirmative action in school choice,” Theoretical Economics, forthcoming.

• Kojima, F. (2012) “School choice: impossibilities for affirmative action,” Games and Economic Behavior 75, 685-693.

• Matsubae, T (2011) “Do the minority students benefit from

affirmative action policy in school choice market?: reconsidered,” mimeo.

• Schotter, A. and K. Weigelt (1992) “Asymmetric tournaments, equal opportunity laws, and affirmative action: some experimental

results,” Quarterly Journal of Economics, 107, 511-539.

参照

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