国際金融論(黒沢
2011年度): 講義アウトライン
リスクの増加とデリバティブ(先物・スワップ・オプション)
1. なぜリスクが増加したか
国際金本位制度の終焉と為替変動相場制への移行(為替リスクの発生) 金融・資本市場の規制緩和・自由化(株価・金利・債券価格の変動)
国内的・国際的競争の激化(グローバル化)による企業倒産(信用リスクの増加) 国際資本移動に関する規制緩和(資本移動による価格の変動・マクロ経済の変動)
2. リスクの測定の進歩
サンプリング統計手法を開発(18C ヤコブ・ベルヌイ:大数の法則) 正規分布・標準偏差の概念発見(18C アブラアム・ド・モアブル)
限界効用逓減の概念・リスク回避的な根拠を示す(18C ダニエル・ベルヌイ) 平均への回帰現象:繁栄の後に没落がある(19C フランシス・ゴールトン) 分散投資によるリスク減少を数理的に明らかにする(20C ハリー・マーコビッ ツ)
キャピタル・アセット・プライシング・モデル(20C ウイリアム・シャープ) 金融工学の発達(金融証券化商品・Credit Default Swap・Collateralized Debt
Obligation)
(注)「リスク・神々への反逆」(P.バーンスタイン)日本経済新聞社1998年を 是非参照してください
3. リスク回避の概念
● 将来の価格変動や倒産リスクを回避するのがリスク・ヘッジ、したがって、先渡し、 先物、フューチャーなどと呼ばれる
● 実物金融資産(株式、債券、外貨など)を保有している者が価格変動などを回避する ために利用する:実物資産を保有しないで先物だけを売買することができるが失敗 すると大きな損失が発生する(ベアリングス社、鹿島石油などの例)
● 商品先物と金融先物とは基本は同じだが、内容・手法は異なる
商品先物:18 世紀、大阪堂島におけるお米の先物が先物の始まりといわれている 金融先物:1972 年、シカゴの通貨先物が金融先物の嚆矢(大阪お米の先物を金融
に応用したといわれている)
1989 年 、 東 京 金 融 先 物 取 引 所 開 始 ( 現 、 東 京 金 融 取 引 所 http://www.tfx.co.jp)
● デリバティブ(金融派生商品)とは金融資産から派生したリスク回避商品のこと
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株価:日経株価指数先物、トピックス先物 為替:為替先物
金利:金利先物
● 先渡しと先物とは異なる
先渡し:forward 為替の先渡し(個別の銀行が個別の顧客に販売する)
先物 :future, option, swapマーケットで売買される(東京金融取引所、シ カゴ先物取引所)
4. リスク回避手法
●為替の先渡し取引(フォワード)
為替リスクはヘッジできるが、利益機会は放棄する ●先物取引(フューチャー)
為替先物、短期金利先物、その他(国債、株価など) ●オプション
コール・オプション(買う権利)とプット・オプション(売る権利) ●スワップ
為替スワップ、金利スワップなど ●クレジット・デリバティブ (CDS)
信用リスクをヘッジする
●金融証券化商品とCDO(サブプライム証券) コール・オプション等の例(パワー・ポイント)
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