バッタを倒しにアフリカへ(資料紹介)
著者
児玉 由佳
権利
Copyr i ght s 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / I ns t i t ut e of D
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雑誌名
アフリカレポート
巻
56
ページ
20- 20
発行年
2018
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
資
料
紹
介
20 ア フリカ レポー ト 2018年 No.56
Ⓒ IDE-JETRO 2018
バッタを倒しにアフリカへ
前野 ウルド 浩太郎 著
東京 光文社 2017年 378p.
本書は、昆虫学者である著者が、2011年からの2年間モーリタニアに滞在し、サバクトビバッ
タの調査を行ったときの経験を綴ったものである。前著書である『孤独なバッタが群れるとき―
―サバクトビバッタの相変異と大発生』(東海大学出版部、2012 年)でもサバクトビバッタを扱
っているが、研究室での実験が中心であった。本書では、モーリタニアの野生のサバクトビバッ
タが対象である。
モーリタニアでの生活や所属していた国立サバクトビバッタ研究所の人間模様も興味深いが、
この本をより魅力的にしているのは、バッタ博士を名乗る著者のサバクトビバッタとの格闘であ
る。研究テーマを見つけるために試行錯誤している様子は、研究論文になる前に理系の研究者が
どのようなことを考え、行動しているのかが伺えてとても興味深い。途中でサバクトビバッタの
大群に巡り合えずにゴミムシダマシという甲虫の研究に寄り道してしまうのもご愛敬である。ま
た、写真がカラーも含めて多数掲載されており、現地の様子だけでなく、サバクトビバッタやほ
かの昆虫たちの姿や生態を垣間見ることができる。ただ一つ残念なことがあるとすれば、現地で
の研究上の具体的な発見については、論文の発表前ということで、本書ではまだ明かされていな
い点である。
本書で並行して語られるもう一つの重要なストーリーが、研究と生活のための資金獲得に奔走
する著者の姿である。子どものころからファーブルにあこがれ、夢見ていた「昆虫博士」になっ
たものの、生活が安泰になることはなく、モーリタニアで調査していること自体もネタにして資
金獲得を目指すところに、研究を続けることの難しさと著者のバッタの研究を続けるための懸命
さが伝わってくる。
本書からは一貫して、著者のバッタへの愛が十分に伝わってくる。著者の小学生時代からの夢
の一つが、雑誌で読んだ大量発生したバッタを見に行った観光客の緑の服がバッタに食われてし
まったという記事の再現であった。その夢をかなえ、ついに本書の最後で全身に緑をまとってバ
ッタの大群の中にたつ場面は、おかしくも不思議な感動をもたらす。時として表現が上滑りして
しまっているところもあるが、モーリタニアでの生活も織り込み軽妙な文体で楽しく読み進める
ことができる。