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17- D- 0197
201 7 年 6 月 7 日
セ
メ
ン
ト
専業大手の 17/ 3 期決算の
注目点
セメント専業大手(住友大阪セメント、太平洋セメントの 2社)の 17/ 3 期決算および 18/ 3 期業績予想 を踏まえ、株式会社日本格付研究所(J CR)の現況に関する認識と格付上の注目点を整理した。
1. 業界動向
16 年度のセメント国内需要(内需)は前年度比 2. 1%減の 4, 178 万トンとなり 3 年連続で減少した。地区 別にみると、北海道と関東 2 区、熊本の震災復旧工事があった九州の3 地区は増加したが、震災復興工事が 端境期となった東北地区を含め 8地区で減少した。人手不足による工期の遅れや、建築工法の変化が影響し たもようである。一方、16 年度のセメント輸出については、前年度比 8. 9%増の 1, 153 万 t となり 3 年連続 で増加した。内需減少を受けて、各社とも高い工場稼働率を維持するために輸出を増やした。
17 年度のセメント内需については、セメント協会が前年度比 2. 9%増の 4, 300 万トンを予想している(17 年 2 月公表)。前年度からの公共工事のずれ込みに加え、東京オリンピック・パラリンピック関連工事の増 加を見込む。実際、セメント内需は16 年の 11 月より前年度比プラスとなる月が多くなっている。もっとも 内需が力強さを欠く中、17 年度のセメント輸出量についてセメント協会では、アジアやオセアニア地域の根 強い需要を背景に前年度比 4. 1%増の 1, 200 万 t を予想している。
セメントの国内価格については、各社とも維持・更新投資に必要なキャッシュフローを確保すべく値上げ 交渉を続けている。主燃料の石炭価格が 16 年秋以降に急騰し、一旦落ち着いたものの、依然として高い水 準にある。物流費も増加しており、コストアップ分のセメント価格への転嫁が課題となっている。
2. 決算動向
17/ 3 期の専業 2 社の営業利益は、住友大阪セメントが 215 億円(前年度比 8. 8%減)の減益となる一方、 太平洋セメントは 632 億円(同 4. 6%増)の増益となった。住友大阪セメントは、光電子や電池材料などの 高機能品は堅調であったが、セメント販売数量減少に加え、円高による輸出採算悪化の影響を受けた。太平 洋セメントも、国内のセメント販売数量減少や円高が収益を圧迫したが、石炭価格低下や好調な米国のセメ ント事業の収益拡大が増益に寄与した。
18/ 3 期の専業 2 社の営業利益は、住友大阪セメントが 215 億円(同 0. 1%減)とほぼ横ばいであるのに対 して、太平洋セメントは 650 億円(同 2. 8%)と増益を予想している。両社とも国内セメント事業が石炭価 格の上昇により減益を予想する。しかし、住友大阪セメントは高機能品の収益向上でカバーし横ばいの見通 し。一方、太平洋セメントは、好調な海外事業の収益貢献により増益となる見通し。
なお、兼業メーカー(三菱マテリアル、宇部興産、トクヤマ)のセメント関連セグメントを見ると、17/ 3 期の営業利益は三菱マテリアルとトクヤマは石炭価格の低下などにより増益だったが、宇部興産は販売数量 減少や輸出価格低下などにより減益となった。18/ 3 期の営業利益は 3 社とも減益の見通し。セメント販売数 量は増加するものの、石炭価格上昇の影響を受ける。
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3. 決算に
お
け
る
格付上の
注目点
18/ 3 期における格付上の注目点として、①セメント内需の動向、②石炭価格の動向、③セメント価格の 動向、④国内セメント以外の事業動向- の 4 つがあげられる。
17 年度のセメント内需は回復するとの見通しだが、その回復力は弱い。背景には建設工事における人手 不足や地方都市の衰退という構造的な問題もあり、先行きを楽観視できない。東京オリンピック・パラリン ピック以降も、国土強靭化基本計画、リニア中央新幹線などに関連する建設投資が比較的長期にわたり出て くるが、中長期的にどの程度の水準のセメント内需を維持できるかは重要なポイントである。17 年度は今後 の内需の方向性を見定める重要な時期になると見ている。
近年はエネルギーコスト低下が収益のプラス要因となっていたが、18/ 3 期は収益のマイナス要因に転じ る可能性が高い。今後の石炭価格の動向によっては、収益が大きく圧迫される懸念もある。セメントの値上 げ交渉には長らく進展がみられていないが、物流費の上昇もあり、今後の対応が注目される。
18/ 3 期の国内のセメント事業の営業利益は兼業メーカーも含む全社で減益予想となっており、専業 2 社 については国内セメント以外の事業でどれだけカバーできるかが注目される。住友大阪セメントについては、 光電子などの高機能品がこれまで通り好調さを持続できるかがポイントとなる。太平洋セメントについては、 米国セメント需要の持続性と中国事業の回復など海外事業の収益動向を確認していく必要がある。
設備投資については、各社ともセメント設備の老朽化対応や成長のための投資を積極化する計画だが、財 務構成に大きな影響を与えるような大型の設備投資や M&A は想定していない。太平洋セメントは、設備投資 や事業買収を実施しながらも、課題であった財務体質の改善が進んでおり、今後その進捗状況に注目してい く。
(担当)古川 聖治・井上 肇
(図表 1)専業各社の決算 (単位:億円、%)
14/ 3 期 15/ 3 期 16/ 3 期 17/ 3 期 18/ 3 期予想
住友大阪セメント 売上高 2, 350 2, 345 2, 341 2, 340 2, 515
(5232) 営業利益 215 222 236 215 215
営業利益率 9. 2 9. 5 10. 1 9. 2 8. 5
当期利益 133 133 161 162 155
自己資本 1, 533 1, 741 1, 756 1, 942 -
有利子負債 982 843 765 642 625
自己資本比率 47. 1 51. 9 53. 9 57. 7 -
太平洋セメント 売上高 8, 402 8, 428 8, 353 7, 985 8, 530
(5233) 営業利益 704 654 604 632 650
営業利益率 8. 4 7. 8 7. 2 7. 9 7. 6
当期利益 352 441 364 475 350
自己資本 2, 402 3, 026 3, 182 3, 618 -
有利子負債 4, 351 3, 991 3, 945 3, 409 3, 200
自己資本比率 23. 7 29. 1 31. 4 35. 6 -
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(図表 2)各社(兼業含む)のセメント事業の収益 (単位:億円)
14/ 3 期 15/ 3 期 16/ 3 期 17/ 3 期 18/ 3 期予想
住友大阪セメント 売上高 1, 831 1, 828 1, 801 1, 803 1, 860
セメント 営業利益 165 158 165 146 125
太平洋セメント 売上高 5, 350 5, 707 5, 747 5, 589 5, 900
セメント 営業利益 463 402 346 388 387
三菱マテリアル 売上高 1, 901 1, 933 1, 975 1, 775 1, 852
セメント 営業利益 191 173 201 209 192
宇部興産 売上高 2, 235 2, 224 2, 373 2, 272 2, 300
建設資材 営業利益 155 170 198 162 130
トクヤマ 売上高 789 812 854 829 860
セメント 営業利益 66 44 58 78 55
(注)住友大阪セメントは外部顧客に対する売上高 (出所:各社決算資料より J C R 作成)
【参考】
発行体:住友大阪セメント株式会社
長期発行体格付:A 見通し:安定的
発行体:太平洋セメント株式会社
長期発行体格付:BBB+ 見通し:安定的
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