J I USSI 2012I CEⅩⅩⅣ 学会旅行記
鹿児島大学大学院連合農学研究科(佐賀大学) 向井裕美
「百聞は一見に如かず」ということわざ がある.何度繰り返し聞いても,一度実際 に見たり経験したりすることには遠く及ば ない,という意である.
8 月 19 日から 24 日まで,韓国のテグで 開 催された I nt er nat i onal Congr ess of Ent omol ogy ⅩⅩⅣ に参加した.私にとっ て初めての国際学会.しかも幸運なことに, 社会性昆虫のシンポジウム(S1601: Recent advances i n bi ol ogy of soci al i ns ect s)
で講演させていただくという,大変貴重な機会をいただいた.私は,今回の体験を通して, このことわざの意を強く実感することとなった.
私たちのシンポジウムは,琉球大学の辻先生と,アメリカの Hof st r a 大学の Fi l i ppi 先 生をオーガナイザーとして,真社会性および亜社会性昆虫の近年発展した研究について報 告するものであった.会場は,これまで私が日本で発表したどの会場よりも広く,それで いて聴衆との距離は近く感じた.
まずは,真社会性種に関する発表.J . C. Choe,G. Bl och,S. Venk at ar amegowda,J . Bi l l en, J . I . Dr Kor b,そして辻先生と,各国の気鋭の研究者たちの発表が,15 分という短い時間 で繋がれていった.亜社会性ツチカメムシ類の保育行動を研究対象としている私にとって, それらの発表内容は勿論興味を惹かれるものであったが,それより何よりも,ネイティブ の方々の英語の想像以上の速さと美しさに衝撃を覚えた.また,プレゼンターの迫力満載 なパフォーマンスと効果的な表現方法にも魅入ってしまった.
コーヒーブレイクを挟んで,3 番目が私の発表であった.ブレイク終了時には,既に十分 過ぎるほど緊張しており,鈴木先生や野間口先生の発表は一切耳に入ってこなかった.こ の日のために,通常の学会の 2 倍も 3 倍も練習を重ねてきたという自負はあったけれど, それでも名前を呼ばれた瞬間は,最高潮に緊張が高まっていた.前に出ると,ちらほらと 見知った方々を見かけて,随分と心強くなった.発表は,概ね練習通りにできたが,動画 が再生できなかったことと,時間がおしてしまい質問タイムを設けられなかったことが残 念でならなかった.しかし,シンポジウム終了後,何人かの方とお話させていただく機会 に恵まれ,新たな視点からの意見や着眼点を学ぶことができたことが,とても嬉しかった.
これまでに,国際学会について先輩方か らお話を伺うことも多く,今大会に向けて もそれなりの準備をしてきたつもりだった. しかし実際には,その場の雰囲気に圧倒さ れてしまい,思った通りに立ち振舞えなか ったように思う.また,自分が思っていた 以上にネイティブの英語を聞き取れなかっ たことと,こちらの意志を伝えられなかっ たことに,もどかしさと苛立ちを覚えるこ とも多かった.今大会に参加して初めて, 世界レベルの語学やプレゼンテーション能 力などを含め,学ぶべきことが山のように あることを実感できたし,そのことを素直 に受け入れられる有意義な時間を過ごすこ とができた.
「百聞は一見に如かず」―言い換えるな
ら,該当する 100 本の論文を読むより,1 回その研究所に訪れて直接ディスカッションした 方がずっと良く理解できる,といったところだろうか.日本に籠ってぬくぬくとしていて はいけない.いつまでも井の中の蛙でいてはいけない.今大会への参加は,私に 世界 の存在を一層強く認識させてくれた.