41 きょうだい構成と地位達成
1 家族が子どもの地位達成に与える影響
1・1 家族内の差異と家族間の差異と地位達成
本稿の目的は、きょうだいデータを用いたマルチレベル分析によって、教育達成と職業達成に対してきょうだい構成がどのような影響を与えるのかを明らかにすることである。以下ではきょうだい構成をみることの意義を、家族内の差異と家族間の差異の両方を視野に含めた地位達成研究の必要性という点から論じる。
個人の地位達成に家族が影響を与えていることはよく知られている︵BlauandDuncan1967︶。そしてその影響力は過去と比較しても同水準で維持されている。多くの産業国において、家族の社会経済的特徴が子どもの教育達成に与える影響 が、長期にわたって維持されていることや︵Shavitand
Blossfeld1993︶、世代間社会移動の構造が時間的そして空間的に安定していることが明らかにされている︵Eriksonand Goldthorpe1992︶。これらの研究は、子どもたちの地位達成に対する家族の影響が、産業化が進行し、進学率が上昇したうえでも根強く残り続けていることを示している。もちろん日本も例外ではなく、教育達成についても︵近藤・古田
二〇〇九︶、職業達成についても︵石田・三輪二〇〇九︶、家族の影響力が大きく変化しているとはいえない。
しかし、個人の地位達成が家族によって影響を受けるという問題を考える時、親の職業、学歴、収入そしてきょうだい数といった家族間の異質性だけではなく、家族内の異質性にも注意を向ける必要があるだろう。なかでもジェンダーや出生順位の問題は相互に関連しながら、家族内の異質性に関わ
き ょ う だ い 構 成 と 地 位 達 成
――きょうだいデータに対するマルチレベル分析による検
討――
藤 原
翔
る属性として注目に値する。ジェンダーと地位達成に関しては、女性の方が男性よりも教育達成が低かったことが繰り返し指摘されている。出生順位については、長男に優先的に教育投資が行われてきたという説︵長男優先説︶や、次三男は地位や財産を相続しない代わりに高い教育を得ることができたという説︵次三男説︶は古くから存在し、全国調査データからその妥当性が検証されてきた︵安田一九七一︶。 ただし家族内の問題といって、社会階層のような家族間の差異と関係がないわけではない。一般に、子どもの数が多い親の社会経済的地位は低い傾向にあり︵BlauandDuncan
1967︶、限られた資源の配分が出生順位や性別を基準に行われるならば、家族内の差異は家族間の差異つまり階層問題と関わってくる。家族内の異質性が家族間の異質性とどのように結びつきながら地位達成に影響してくるのかを検討する必要がある。
このように家族内の差異と家族間の差異の両方に目を向けることによって、社会階層研究においては単なる個人の社会的背景や資源の有無の指標としかみられない傾向にある家族背景の影響を、限られた資源や機会に制約された中での家族の教育戦略や子育て価値観・規範などが反映されたものとしてとらえ直すことが可能となる。また家族研究においても、子どもへの投資・教育戦略を社会階層構造と結びつけて論じることが可能となる。そして、このような家族内と家族間の 双方に注目する上で、同一世帯の複数の子どもに関する情報をもつきょうだいデータをもとに、きょうだい構成が地位達成に与える影響をみることは、もっとも一般的な方法なのである。1・2
きょうだいデータを用いることの利点
きょうだいデータは、対象者の複数の子どもについての情報をもつデータと、対象者とそのきょうだいの情報をもつデータに分けられる︵平沢二〇〇二︶。本稿では前者のきょうだいデータを用いる。きょうだいデータは子どもが家庭にネストされるという階層構造をもち、同じ家庭の子どもであれば親の職業や収入などは同一の情報をもつが、年齢、出生順位、性別などは異なる。このような階層構造をもつきょうだいデータは、家族内と家族間の特徴を識別するために用いられる。 きょうだいデータを用いることは、家族内の不平等の問題化だけではなく、家族間の不平等を扱う社会階層研究の発展にも貢献してきた。きょうだいデータに対して構造方程式モデルを適用し、家族内効果と家族間効果を分離することを試みる研究や︵HauserandMossel1985︶、きょうだい情報をもつ国際比較データにマルチレベルモデルを適用し、教育達成に与える影響を個人、家族、そして国家に起因する三つの段階に分けようとした研究がある︵SiebenandDeGraaf2003︶。このような効果の分解は、観測することのできない要因も含
43 きょうだい構成と地位達成
めた家族背景が、どれほど地位達成に影響を与えているのかを正確に推定する上で重要な方法である。
もちろん同時に同一家族内における地位達成の差異も発見されており、その差異がどのような要因によって生じているのかを検討した研究も多い。その上で家族内の異質性を吟味する際の方法の問題も指摘されてきている。特にクロスセクショナルデータを用い、異なる家庭の子どもたちの比較から間接的に家族内効果を検討した研究に対しては、厳しい批判もなされている ①︵Wichmanetal.2006︶。家庭の情報や異質性を十分に捉えきれない状態では、家族内の差異は家族間の差異も反映したバイアスのあるものとなる。家族内の差異が存在するのかどうかを厳密に検討するためには、直接家族内の比較が可能なきょうだいデータが必要なのである。そのため近年の研究では、きょうだいデータを用いてできるだけ純粋な形で家族内効果を抽出することが試みられている︵Black etal.2005;YuandSu2006︶。このように、海外では家族内の異質性を正確に測るためのきょうだいデータの収集と、そのきょうだいデータをどのように処理し、効果的な分析を行うのかという計量モデルの検討が盛んに進められてきた︵平沢
二〇〇二︶。
しかし日本にはきょうだい構成と地位達成を主題とした研究は少なく︵平沢二〇〇四︶、きょうだい構成の影響を取り上げていたとしても、その多くがきょうだいデータを用いな い間接的な検討にとどまる︵例外として、Lee2009
; 平沢
二〇一一︶。また、きょうだいの教育達成に関する研究はいくらかあるが、職業達成を検討した研究はほとんどみられない。
きょうだい構成の要素としては、きょうだい数、出生順位、年齢幅そして性別︵構成︶があるが、本稿では社会階層論と家族研究が共に注目してきたきょうだい数と出生順位をとりあげる ②。そして、教育達成と職業達成の二つの地位達成に対し、それらがそれぞれどのような影響を与えているのかを、きょうだいデータを用いたマルチレベル分析によって明らかにする。加えて、きょうだい数と出生順位の影響が時代とともにどのように変化したか、またそれが家族の社会経済的背景によってどのように異なるのかを検討する。
2 きょうだい構成と地位達成の関連
2・1 きょうだい構成の影響とそのメカニズム
きょうだい構成の地位達成に対する影響メカニズムを示した資源希釈説︵
resource dilution theory
︶によれば、きょうだい数が増えることは、一人当たりに投資できる経済的・文化的・精神的資源の減少につながり、その結果、きょうだい全体として教育達成が低くなる︵Blake1981︶。出生順位の効果については、もし子どもたちに均等に資源を分配しようとするなら、先に生まれたほうが必然的に享受できる資源の量が多くなるため、教育達成が高くなる傾向がみられる。しかし、出生順位の影響メカニズムとして取り上げられるのは、資源の希釈というよりも限られた資源をどのように投資するのかに注目した選択的投資説︵
selective investment theory
︶である。他にも、生物学的な要因や社会化要因に注目したものや、出産行動、ライフサイクル、そして教育制度の変化に説明を求めるものもあるが、本稿では、きょうだい構成の効果を検討する上で多くの社会階層研究が中心として取り上げてきた資源希釈説と選択的投資説の枠組みから仮説を導出する。また一方で、きょうだいデータを用いる意義を指摘した経済学者のグリリカス︵Griliches1979︶は、家族は資源を子どもたちに平等に配分しようとし、また才能に恵まれなかった子どものハンディを人的資本への投資や財の集中的な配分によってある程度補おうとするものと考える︵﹁平等化装置
equalizer
﹂としての家族︶。しかし、グリリカスも指摘するように、家庭内の差をなくすためには費用がかかり、高収入の家庭のみがそれを負担できる。費用を負担できないならば、なんらかの戦略のもと、ある子どもに対して優先的・選択的に限りある資源を投資するだろう。よって、家庭内つまりきょうだい間の教育達成の差異は、費用を負担できない低所得層に大きくみられ、高所得層ではその差異は減少するものと 考えられる。親の学歴が低い社会的に不利とされる家庭出身であると、そうでない家庭出身に比べてきょうだいの教育達成のばらつきが大きくなり、相関が低くなることを明らかにした研究もある︵ConleyandGlauber2008︶。以上の点については日本ではほとんど検討されてこなかったが、家族内要因と家族間要因の関連をみる上では重要な指摘である。2・2 日本におけるきょうだい構成の効果の趨勢
出生率の低下、産業構造の変化、高学歴化や教育機会構造の変容、そして家族構成のパターンや家族に関する規範の変化が背景にある以上、きょうだい構成の効果についても時代変化を考慮する必要がある。日本ではきょうだいを扱えるデータが少なく、一九六五年に実施されたSSM調査︵社会階層と社会移動全国調査︶やNFRJ︵全国家族調査︶がその例外としてあげられる。しかし、きょうだいデータを用いずに、対象者がどのようなきょうだい構成のもとで育ったのかについての情報から、きょうだい数や出生順位の効果の趨勢を間接的に検討した研究もある。 まずきょうだい数の効果について先行研究を検討する。近藤︵一九九六︶は、きょうだい数が多いことが教育達成に与える負の効果が少子化の進んだ若いコーホートで顕著になっていることを示した。一九七〇年代と一九九〇年代の男性全体を比較した石田︵一九九九︶からも同様の傾向が読み取れ
45 きょうだい構成と地位達成
る。平沢︵二〇〇四︶でもきょうだい数が少ない一九四一∼七〇年生まれのコーホートでは、きょうだい数が多いことによる負の効果が顕著であることが示されている。しかし、尾嶋・近藤︵二〇〇〇︶は、一九四六∼六〇年生まれのコーホートできょうだい数による格差が顕在化したが、一九六一∼七四年生まれのコーホートでは格差は縮小したとしている。平沢・片瀬︵二〇〇八︶の分析でも、男性については一九七一∼八〇年生まれのコーホートできょうだい数の負の効果は有意でなくなったことが示されている。きょうだい数が多いことが教育達成に与える負の効果は一時期増加したものの、近年のコーホートでは減少しているようである。 次に出生順位の効果について先行研究を検討する。きょうだい数と比較すれば出生順位の効果は小さいと国内外で結論付けられることもあり︵近藤一九九六︶、少なくとも米国においては、その効果はきょうだい数の効果に比べて小さいとされている︵Steelmanetal.2002︶。しかし、きょうだいデータを用いた分析から、きょうだい数よりも出生順位のほうが教育達成に強い影響を与えることを明らかにした研究もある︵Blacketal.2005︶。きょうだい数が減少していく中、そしてきょうだい数の効果が減少していくという結果がいくつか報告される中、日本でも出生順位の効果が改めて見直されている︵平沢・片瀬二〇〇八;保田二〇〇九︶。
一九六五年のSSMデータを用いて、安田︵一九七一︶は ひとりっ子・長男および末子で学歴が高く、中間子で学歴が低くなることを明らかにしている。この結果から安田は、日本では学歴獲得に関して長男を優先させるとともに︵農業層を除く︶、経済的要因が兄弟間の学歴の格差を生むものとしている。一方、近藤︵一九九六︶や尾嶋・近藤︵二〇〇〇︶は一九五一∼六五年生まれや一九四六∼六〇年生まれのコーホートでは、出生順位が早いほうが教育達成において有利になることを示した。平沢︵二〇〇四、二〇一一︶や平沢・片瀬︵二〇〇八︶も、かつては出生順位が早いことは教育達成に負の効果をもっていたが、一九五六∼七〇年生まれのコーホートでは出生順位が早いほうが正の効果をもつことを示した。同様の結果は保田︵二〇〇九︶の研究にもみられる。ただし、尾嶋・近藤︵二〇〇〇︶のように、若いコーホートでは出生順位の効果はなくなっていることを指摘する研究もある。
対象者の出生順位の情報をもとにした間接的な検討であったり、同一家族内のきょうだいを比較した直接的な検討であったりと方法に違いはみられるものの、かつては必ずしも出生順位が早い方が教育達成に有利というわけではなかったが、だんだんと出生順位の早いほうから順に優先的に進学させるというパターンの家族の教育戦略が顕在化したといえる。いつの時代においても、出生順位の影響に対しては、有限な資源をどの子どもに優先的に投資するかという家族の教育戦略が常に背景にみられること、そしてそれが時代ととも
に変化したことを裏付ける結果である。 ただし、先行研究がきょうだい構成の安定的な効果を発見した一九五三∼六八年生まれのコーホートと比較して、高等教育の再拡大期に高校を卒業した一九六九∼八六年生まれのコーホートがどのような動向をみせるのかを明らかにした先行研究は多くない。また、きょうだいの直接的な比較がほとんど行われていない以上、きょうだいデータによる検証が必要とされる。そこで、本稿では一九五三∼六八年生まれと一九六九∼八六年生まれのコーホートを比較し、きょうだい構成の効果の趨勢を、きょうだいデータをもとに明らかにする。
2・3 仮説
2・1より、資源希釈説や選択的投資説が正しいならば、きょうだい数や出生順位によって教育達成が異なるといえる。また、グリリカスの指摘にもあるように、出生順位が教育達成に与える影響は、経済的資源の多寡によって変化することが考えられる。同様に、きょうだい数の影響も経済資源の量にしたがって変化すると考えられる。よって、次の仮説が導かれる。仮説A1:教育達成に対するきょうだい数が多いことによる負の効果は、経済的資源が多ければ弱まる。仮説A2:教育達成に対する出生順位が遅いことによる負 の効果は、経済的資源が多ければ弱まる。
次に、2・2の議論を踏まえた上で、趨勢についての仮説を提示する。本稿が対象とする一九五三∼六八年生まれと一九六九∼八六年生まれのコーホートの間には、若干のきょうだい数の減少、高等教育進学率の停滞からの再拡大、そしてそれに伴う経済的格差の低下と親学歴や父職による格差の拡大という教育機会の変容︵近藤・古田二〇〇九︶がみられる。資源希釈説や選択的投資説の枠組みからここで注目すべきは、きょうだい構成の効果と密接な関係にある経済資源による格差の動向である。教育達成におけるきょうだい構成の効果が、家族間の経済的資源の多寡や家族内での限られた経済資源の不均衡な配分によるものであれば、近藤・古田︵二〇〇九︶が明らかにした教育達成の経済的格差の縮小傾向は、きょうだい構成の効果の減少を伴っていると考えられる。よって次のような趨勢に関する仮説を導くことができる。仮説B1:一九五三∼六八年生まれのコーホートと比較して、一九六九∼八六年生まれのコーホートでは、教育達成に対するきょうだい数が多いことによる負の効果は減少する。仮説B2:一九五三∼六八年生まれのコーホートと比較して、一九六九∼八六年生まれのコーホートでは、教育達成に対する出生順位が遅いことによる負の効果は減少する。
47 きょうだい構成と地位達成
きょうだい構成と職業達成についての研究蓄積は多くはないが、収入を従属変数とした分析からは、出生順位が遅いと収入が少ない傾向にあることが明らかにされている︵Black etal.2005︶。したがって職業達成に対しても、出生順位が遅いことは負の効果をもつと考えられる。もちろん、この職業達成に対する出生順位の効果は、教育達成を媒介した間接効果である可能性もある。しかし、教育をコントロールした上でも、出生順位の直接効果が有意に残るのであれば、家族は出生順位の早い子どもに対して優先的に職業達成に有利となる資源を与え、サポートしているといえる。仮説C1:職業達成に対して、出生順位が遅いことによる負の効果がみられる。仮説C2
―
1:職業達成に対する出生順位の負の効果は、教育達成を媒介としたものであり、直接効果はない。仮説C2―
2:職業達成に対する出生順位の負の効果は、教育達成をコントロールしても直接効果として残る。以下ではこれらの仮説をもとに分析を行う。なお、全体の傾向をシンプルな形で記述するという目的とケース数が少ないという技術的な問題から、男女別の分析は行わない。ただし性別と出生順位の交互作用項を投入した分析からは、教育達成についても職業達成についても出生順位の効果に男女差はみられないといえる ③。 3 データ・変数・分析モデル
3・1 データ
用いたデータは、一九七九年に東京大学が関東七都県の二六歳から六五歳までの有職男性を対象として行った社会調査︵計画サンプル数:八四〇、有効回収票数:六二九、回収率:七四・八%︶をもとに作成された﹁職業と人間﹂調査データセット︵以下、WPデータ︶である。一九七九年の男性調査に加え、八二年には東京都老人総合研究所︵現:東京都健康長寿医療センター研究所︶が男性の配偶者に対して調査を行い、二〇〇六年には大阪大学が追跡調査を実施した︵吉川編二〇一二︶。二〇〇六年の調査で子どもに関する情報が得られたのは二三八世帯︵回収率:三七・八%︶であり、三人目の子どもまでの情報を得ている ④。そのうち一人の子どもの情報が得られたのが二九世帯、二人の子どもの情報が得られたのが一三三世帯、三人の子どもの情報が得られたのが七六世帯となり、五二三名の子どもの情報が得られた。このうち、二〇〇六年時点で二〇歳以上五三歳以下であり欠損値のない四三六名が分析の対象となった。職業達成の分析では、無職や職業変数が欠損であるケースをさらに除いた三三二名が分析の対象となった。このようにWPデータは対象者の子どもたちに関する情報を含んだきょうだいデータである。
WPデータは、対象地域が限られていること、出身背景の情報が一九七九年のものであること、ケース数が少ないことがその限界としてあげられる。しかし、親の収入も含めた豊富な階層に関する情報をもつきょうだいデータであり、直接きょうだいを比較することができないというSSMデータの短所と、階層情報が多く含まれていないというNFRJデータの短所︵平沢・片瀬二〇〇八︶を補うことが可能である。また、きょうだい構成が職業達成に与える影響をみることのできる数少ないデータである。
3・2 変数
従属変数は二〇〇六年の調査時点における教育達成︵1=中学・高校、2=専門・短大・高専、3=四大・大学院︶と職業達成︵1=マニュアル・農業、2=事務・販売、3=専門・管理︶である。順序ロジットモデルによって水準変化を統制した相対的な格差を取り出すため、教育達成については学校段階を、職業達成についてはマニュアルとノンマニュアルの区分と威信や専門性を基準に、順序尺度として扱った。
独立変数は家族内レベルの変数と家族間レベルの変数に分けることができる。家族内レベルの変数は性別︵女性ダミー︶と出生順位︵1∼3までの連続変量︶である。職業達成の分析では、教育達成も独立変数として投入している。家族間レベルの変数は一九七九年時の父親の職業︵専門・管理、事務・ 販売、マニュアル、農業︶、親学歴︵高い方の親の学歴:中学、高校、高等教育︶、対数変換済み世帯収入、所有財数︵自家風呂、別荘、冷蔵庫、ガス湯沸器、カメラ、乗用車、電子レンジ、ピアノ、カラーテレビ、スポーツ会員券、セントラルヒーティング、宅地、家屋︹持家︺、応接セット、株券債券、ス
��1 ��2 ��1 ��2
�N=436) �N=332) �N=213� �N=194�
��� � � ��� � �
�������� 34.4 33.1 �������� 29.1 28.4
����������� 27.3 26.8 �������� 26.3 25.8
��������� 38.3 40.1 �������� 35.7 36.1
�������� � 26.2 ����� 8.9 9.8
�������� � 46.1 ������ 17.8 18.6
����������� � 27.7 ������ 49.3 50.0
�������� 47.3 36.8 �������� 32.9 31.4
����:�1� 44.7 44.3 �������� 11.3 8.8
����:�2� 40.6 40.1 1953–68������� 49.3 51.0
����:�3� 14.7 15.7 ��� �� (����) �� (����)
���������� 6.030 ( .480) 6.045 ( .465)
���� 11.601 (2.652) 11.623 (2.625)
������������� 2.415 ( .728) 2.400 ( .692)
���� .472 ( .361) .427 ( .346)
������ (Within-family)
������ (Between-family)
����1������������������2���������������������� � 表1 用いた変数の記述統計
49 きょうだい構成と地位達成
テレオ、エアコン、携帯用ラジオ、電話、貸付信託の二〇の資産について所有数を求めた︶である。また、二〇〇六年時点におけるきょうだい数︵一∼五人の連続変量︶とひとりっ子ダミーを投入した。加えて、家族別の子どもの平均出生コーホート︵一九五三∼六八年生まれと一九六九∼八六年生まれ︶と子どもの性別が女性である割合︵女性比率︶を投入した。職業達成の分析では、平均的なきょうだいの教育達成も独立変数として投入した。表1に、教育達成の分析と職業達成の分析に用いた変数の記述統計を示した。
3・3 きょうだいデータのマルチレベルモデル
きょうだいデータを用いて、きょうだい構成が教育達成と職業達成という二つの地位達成にそれぞれ与える影響を検討する上で、数式1のようなマルチレベル順序ロジットモデルを用いた
。 c は順序変数︵教育達成や職業達成︶のカテゴリ、τcは閾値である。家族内レベル︵1︶には女性ダミー︵
sex
ij︶と出生順位︵birth order
ij︶を独立変数として投入したが、その際、家族内平均︵sex
.jおよびbirth order
.j︶からの偏差をとっている︵centering within cluster
︶。このようなセンタリングで、家族内の差異にもとづく推定値︵within-clustereffects
︶を得ることが可能となる。家族間レベルは、家族レベルの切片
き︵傾のーミダ性女︶、2分部たし 0jと数変属従を︶︵ β
︵ β変1たしと数属従を︶j 生傾の位順き して出そ︶、3︵部分
数変のルベレ間族 し節で紹介複た数の家 。︵2・3は︶で2るでき 4がとこるけ分に︶︵ 数従属変分とした部を j2︶︵ β 果効ムダ ンラるな異てっよに族 て家し、れさ入投てそ kj独︶がし立変数と︵ w
き傾のーミ 。ダ性女るいてれさ定 0j仮が︶︵ u き傾の位順 い定れてさな。出生い ダり、ラン効ム果は仮 れおてさ固で間族定 つはにてい、効果は家 ︶3︵たしと数変属従 ︶1jを︵ β
収換対数変と済み世帯 ︶j︵トー
cohort birth
コホー生均平、はで出 たと属変数4し︵︶従 ︶2jを︵ β� �
�
���������������������
�
���
����������������������
�
����
���
����
β0j=
�K k=1
γ0kwkj+ u0j
β1j= γ10
�������
�������
�������
��������� ln
�Pr(yij≤ c)
Pr(yij> c)
�
= τc−�β0j+ β1j(sexij− sex·j) + β2j(birth orderij− birth order·j)
�
β2j= γ20+ γ21(birth cohortj) + γ22(log incomej)
数式1 マルチレベル順序ロジットモデル
入︵
log income
j︶が独立変数として投入されている。ただしここでもランダム効果は仮定されていない ⑤。なお、交互作用項を追加したモデルの主効果の解釈がしやすいように、家族間レベルの対数変換済み世帯収入については世帯収入が三〇〇万︵二五パーセンタイル︶、きょうだい数については三人が基準︵ゼロ︶になるようにスライドさせている。所有財については平均がゼロになるようにスライドさせた。このモデルによって、同一家庭の子どもに共有される家族間の異質性︵分析に投入された変数に加え、家庭の教育環境や教育方針等の長期的に変わらない家族特有のもの︶をコントロールしたうえで、出生年や性別そして出生順位といった家族内レベルの要因が地位達成にどのような影響を与えているのかを検討することが可能である︵YuandSu2006︶。同時に、子どもの平均的な地位達成が家族間レベルの要因によって異なるのかどうかを明らかにできる︵between- cluster effects
︶。推定には
Stata/SE
12.
0のGLLAMM
︵一般化線形潜在・混合モデルプログラム︶を用いた。なお、ひとりっ子の家庭の情報を含めても家族内効果の推定に問題は生じず︵Rabe-HeskethandSkrondal2008︶、家族間の差異に関するパラメータの偏りのない推定に用いられるため、分析に投入している。 4 きょうだい構成が地位達成に与える影響4・1 教育達成に対するきょうだい構成の影響
まず、教育達成を従属変数としたマルチレベル順序ロジット分析を行う。閾値のみで推定を行ったナル・モデルでは、- 2LL
=
886.
184、 σと相内級、りな関0j
.
4)=
u(
5352︵ ICC
︶は
.
580であった ⑥。モデル1では、家族内レベルに女性ダミーと出生順位を、家族間レベルに父職、親学歴、ひとりっ子ダミー、きょうだい数、対数変換済み世帯収入、所有財数、一九五三∼六八年生まれダミー、女性比率を独立変数として投入した。表2よりモデル1の結果をみると、家族内レベルでは女性ダミーと出生順位が負の効果をもっており、ある家庭内において女性の方が、そして出生順位が遅いほうが、教育達成が低くなる傾向にある。多くの先行研究は間接的に出生順位の効果を示したが、マルチレベル分析によるきょうだいの直接的な比較からも同様の傾向がみられた。また家族間レベルの変数についてみると、父職、学歴、ひとりっ子ダミー、きょうだい数、そして所有財数が有意な効果をもっていることがわかる。父職が専門・管理であるほうが、親学歴が高いほうが、きょうだい数が少ないほうが、そして所有財が多いほうが、平均的な教育達成の水準は高くなるといえる。ただし、二人きょうだいに比べてひとりっ子であると、教育51 きょうだい構成と地位達成
達成は不利になりやすく、保田︵二〇〇九︶の研究と同様の傾向を示す。 それではモデル1でみられた出生順位やきょうだい数の効果は、出生コーホートや世帯収入によって変化するのだろうか。これらの変数間の交互作用効果を仮定したモデル2からは、出生順位と一九五三∼六八年生まれダミーの交互作用項が負の効果をもつことが分かる。これは、一九五三∼六八年生まれのほうが出生順位が遅いことの不利益が大きかったことを意味する。また出生順位と世帯収入の交互作用項が正の効果をもっていた。これは、世帯収入が高ければ出生順位による不利益は減少するが、世帯収入が低いと出生順位による不利益が増加することを意味する。また同様に、きょうだい数の影響は一九五三∼六八年生まれのコーホートと一九六九∼八六年生まれのコーホートの間で減少したこと、そして、きょうだい数の不利益は世帯収入が多ければ緩和されることがモデル2による分析から示された。
4・2 職業達成に対するきょうだい構成と学歴の影響
次に、職業達成を従属変数としたマルチレベル順序ロジット分析を行う。モデル1では、家族内
表2 教育達成のマルチレベル順序ロジットモデル
Coef. S.E. Coef. S.E.
1 .438 .711 .778 .740
2 1.620 * .721 1.344 .745
.927 ** .299 .977 ** .303
.578 ** .181 .491 .272
.207 .349 1.110 * .514
(a) 1.474 ** .476 1.376 ** .477
1.885 ** .496 1.917 ** .500 1.658 * .686 1.558 * .691
(b) 1.826 ** .506 1.960 ** .515
2.150 ** .611 2.260 ** .617
1.462 * .740 1.218 .756
1.053 ** .308 .690 .415
.094 .414 1.049 .576
.155 * .072 .147 * .073
.274 .475 .454 .485
.781 * .375 1.104 ** .411 1.253 * .529 1.413 * .602
2LL 781.823 763.673
2(u
0 j) 2.663 .862 2.627 .867
Residual ICC [ 2(u0 j) / ( 2 (u0 j) + 2/3)] .447 .444 N ( ) = 436, N ( ) = 213.
2LL( ) = 886.184, 2 (u0j ) = 4.535, ICC = .580.
(a) = (b) =
1 2
** p < .01, * p p < .10.
レベルに女性ダミーと出生順位を、家族間レベルに父職、ひとりっ子ダミー、きょうだい数、対数変換済み世帯収入、一九五三∼六八年生まれダミー、女性比率を投入した ⑦。表3より、出生順位ときょうだい数の効果は負で統計的に有意であり、出生順位が遅いほど、またきょうだい数が多いほど、職業達成が低くなる傾向がある。交互作用を投入したモデル2では、出生順位についてもきょうだい数についても、出生コーホートや世帯収入との交互作用効果は有意ではなかった。モデル3はモデル1の家族内レベルに教育達成︵家族内平均からの偏差︶を、家族間レベルに教育達成の家族内平均を投入したものである。家族内レベルにおける教育達成の効果は有意であり、高い学歴を得たきょうだいのほうが、有利な職業につきやすい傾向にある。このようなきょうだいの学歴の違いをコントロールすると、出生順位の効果は弱まり、一〇%水準で有意となった。また平均的な教育達成をコントロールすることで子どもたちの職業達成に対する父職業やきょうだい数の効果はなくなった。
Coef. S.E. Coef. S.E. Coef. S.E.
1 1.204 ** .454 1.206 * .497 .533 .529
2 1.640 ** .468 1.652 ** .512 3.653 ** .631
.047 .330 .024 .335 .213 .341
.499 ** .194 .543 * .273 .355 .200
(a) 1.320 * .575
2.286 ** .708
.726 * .325 .671 .469 .865 ** .322
(b) .578 .419 .558 .423 .125 .421
1.078 ** .406 1.074 ** .409 .123 .414
1.399 * .597 1.370 * .606 .774 .586
1.290 .735 1.318 .744 .774 .725
.604 * .278 .663 .402 .247 .273
.234 .352 .451 .476 .090 .348
.634 .431 .614 .437 .859 * .436
.327 .383 .088 .385 .378 .570 .074 .488
1.035 * .505 2.757 ** .493
2LL 657.460 656.260 606.383
2(u
0 j) 1.780 .741 1.813 .748 1.473 .672
Residual ICC [ 2(u0 j) / ( 2 (u0 j) + 2/3)] .351 .355 .309 ** p < .01, * p p < .10.
1 2 3
N ( ) = 332, N ( ) = 194, 2LL( ) = 688.551, 2 (u0 j) = 2.119, ICC = .392.
(a) = (b) =
表3 職業達成のマルチレベル順序ロジットモデル
53 きょうだい構成と地位達成
5 家族内格差生成メカニズムの探求にむけて
本稿では、きょうだい構成が地位達成に対してどのような影響を与えているのかを、きょうだいデータに対するマルチレベル分析によって明らかにした。 分析の結果から、きょうだい数や出生順位の教育達成に対する負の影響は、収入が高ければ小さくなる傾向にある︵仮説A1、A2を支持︶。この交互作用効果の存在から、日本におけるきょうだい構成と教育達成の関係を考える上で、資源希釈説が一定の説明力をもつこと、そして経済的制約に直面した上での選択的な教育投資戦略が出生順位の差を生み出していると考えることができる。グリリカスの仮説にあるように、日本の家族は教育費用を負担できさえすれば、子どもたちを平等に扱ってきたといえるだろう。しかし、経済的な制約が大きければ、家族は﹁不平等化装置﹂となってしまう。
またきょうだい構成が教育達成に与える影響は時代とともに低下しつつあるといえる︵仮説B1、B2を支持︶。きょうだい数の負の影響は一九五三∼六八年生まれのコーホートと比較して一九六九∼八六年生まれのコーホートでは弱まっている。後に生まれた子どもの教育達成は相対的に低くなるというパターンに変化はないが、出生順位の負の効果も以前よりは弱くなっている。一九六九∼八六年生まれのコーホート は高等教育の再拡大とそれに伴う教育達成の経済的格差の縮小を経験した世代である︵近藤・古田二〇〇九︶。高等教育収容力が拡大した際に、増加する教育費負担の制約を受けながらもきょうだいをできるだけ平等に扱い、より高い教育を受けさせようとする家族の戦略をこの結果から読み取ることができる。しかし、教育の負担がますます大きくなる状況では、きょうだい数が多いことや出生順位が遅いことが、教育達成における大きな不利益を再度導く可能性がある。きょうだいデータを通じた分析から、きょうだい構成を起因とする家族間不平等と家族内不平等の動向を今後も把握する必要がある。
さらに職業達成に対する出生順位やきょうだい数の効果についてみると、きょうだい数が多くなるほど、そして出生順位が遅くなるほど、職業達成が不利になる傾向がみられた︵仮説C1を支持︶。この効果は時代を通じて一定であり、また経済的資源によって効果が異なることもない。ただし、教育達成をコントロールするときょうだい数の負の効果はみられなくなった。つまり、きょうだい数は教育達成を媒介にして後の職業達成に間接的に影響を与えているといえる。きょうだい数は投資可能な経済資源の総量と関連しており、きょうだい数が多いことが職業達成に対して直接不利益をもたらすことはないのである。一方で、出生順位が遅いことは教育達成をコントロールしても依然として職業達成に負の効果を与えている︵一〇%水準で有意、仮説C2
―
2を支持︶。その影響は育った家庭の経済的豊かさとは無関係であることから、経済資源が十分あれば出生順位による教育達成の差をなくすことが可能だが、職業達成の差まではなくすことはできないといえる。その背後には、出生順位の早い子どもに優先的に有利な職業を継承させたり、学校教育以外の投資や社会資本などを通じて熱心なサポートを提供する親の姿が想像される。家業の継承や財の相続あるいは扶養や介護の問題と関わりながら、きょうだい関係が地位達成に与える影響を検討する研究が、今後も精力的に進められる必要がある。その際、収入や職業達成の出生順位の違いは海外でもみられているので︵Blacketal.2005︶、日本の独自性というよりも、まず一般的な仮説や分析枠組みを検討するべきだろう。 本稿では資源希釈説と選択的投資説に注目し、その検討を行ったが、出生順位によって知的能力が異なるという報告もある︵ZajoncandSulloway2007︶。もしきょうだいの知的能力に体系的な差異があるとすれば、家族の経済的資源や投資戦略ではなく、むしろ子どもが増えることで価値が逓減する家庭の知的環境に注目すべきである︵
confluence theory
︶。試みに、高校偏差値︵平均=52、標準偏差
.
8たっかなれらみは果 出ところ、効生順位のった行し析分ルベレチルマたをと数変 を︶=10従属2
.
⑧︵ Coe f
.=
-.
727、 S.E.
=.
658、 p
=.
269︶。ゆえに、教育達成の分析のモデル1に高校偏差値を投入しても、出生順位の効果はほとんど変化しない。高校偏差値が知的能 力を十分な精度や妥当性をもって代替できているのかという問題は残るものの、高校卒業後のトラックを強く規定する偏差値に対しては出生順位による差はないが、その後の教育達成に対してはその差がみられるということは、やはり知的能力ではなく、限られた資源に直面した上での家族の教育戦略が問題の俎上に置かれるべきだろう。
それでは、このような家族内格差を取り入れた分析枠組みは、社会階層論にどのようなインプリケーションを提供してくれるのだろうか。出生順位別に家族背景︵家族間の異質性︶が教育達成に与える影響をみたのが表4である。
McFadden
のR2乗を家族背景の影響力として解釈するならば、それは第一子については小さいが、第二子、第三子と出生順位が遅くなるにつれて大きくなる。どのような表4 出生順位別の教育達成に対する家族間レベル変数の影響
���� McFadden's R2 N
������������� .094 195
������������� .099 171
��� .163 177
��� .295 64
McFadden's R 2 = 1 �LL/LL(�������
�����1953–68����������������������
������������������������
�����������������������
�
55 きょうだい構成と地位達成
社会経済的背景の家庭出身であっても、第一子は比較的多くの教育を受けることができる。しかし、出生順位が遅くなるにつれ、家族背景の影響が顕在化してくる。出身背景による教育達成の格差問題を考える上でも、出生順位という家族内の差異に注目する必要があることを示した結果といえる。
かねてから指摘されているように、きょうだいデータは構造方程式モデルや本稿が用いたマルチレベル分析などを適用することによって、クロスセクショナルデータの分析の限界を超え、豊かな情報を提供してくれる。そして社会階層論と家族研究の双方にとって重要な結果・考察を導いてくれる。本稿が用いたきょうだいデータには、地域、調査時点、きょうだいや家族についての情報量、サンプルサイズなどの問題が残る。きょうだい構成に関する諸説を厳密に比較検討するためには、知的能力、学業成績、パーソナリティが子どもの情報として、子育て、教育、相続、介護などに関する親の意識や行動が家族の情報として必要とされるだろう。これらすべての情報を得ることは難しいが、きょうだいデータの収集とその効果的な分析を念頭においた大規模な社会調査を日本でも行い、家族内要因と家族間要因の相互作用によって不平等が生じるプロセスを明らかにする研究が期待される。
注①ウィッチマンら︵Wichmanetal.2006︶は、知的能力に対する出生順位の効果がきょうだい間の差異ではなく家族間の差 異を反映している可能性を指摘した。
②年齢幅を教育達成と結びつけた社会学的研究は少なく、知的能力や学業成績との関連をみようとした心理学的研究が多い︵Steelmanetal.2002︶。また、日本のデータから性別構成が教育達成に与える影響を詳細にみた研究として、すでにリー︵Lee2009︶のものがあるので、本稿では扱わない。 ③性別と出生順位の交互作用項
の p 値は.792となった。 ④四人きょうだいの家庭は九つ、五人きょうだいの家庭は一つである。三人目までのきょうだい情報で全体の約九五%を把握することが可能であり、三人目までに限定したことが推定に与える影響は小さいと考えられる。
⑤ランダム効果を仮定しても、その分散は有意ではなく
、 AIC
の値も大きくなる。分析結果はほとんど変わらないので、ランダム効果を仮定しないモデルを用いた。
⑥教育年数を用いる
と ICC
=.444となり、NFRJデータ分析したLee
︵2009
︶のものと近い
︵ ICC
=.48︶。 ⑦事前の分析では、親学歴と所有財数を投入しても統計的に有意な効果はみられなかったので除外した。 ⑧高校偏差値を割り当てる上で、関塾教育研究所︵二〇〇七︶を用いた。よって、実際に進学した時点における高校の偏差値ではない。
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︵ふじはら しょう・大阪大学大学院人間科学研究科助教︶
SiblingConfigurationandStatusAttainmentinJapan
――MultilevelAnalysesofSiblingData――
ShoFUJIHARA
sho.fujihara@gmail.com
Theaimofthispaperistoestimatewithin-familyeffects,between-familyeffects,
andeffectsoftheseinteractionsonstatusattainment.Theauthoranalyzedtheeffects ofsiblingconfiguration,especiallythoseofthenumberofsiblingsandbirthorder,on educationalandoccupationalattainments,byapplyingamultilevelmodeltosibling data.Theresultshowedthatthenumberofsiblingshadanegativeeffectoneducational
attainmentsofchildreninthe1953-68cohort,butitseffectdecreasedinthe1969-86
cohort.Thisnegativeeffectofsibshipsizewassmallerforchildrenfromwealthier
families.Inthe1953-68cohort,birthorderhadaneffectoneducationalattainment.
Eldersiblingsweremorelikelytohavehigherlevelsofeducationthanyoungersiblings. This negative effect for younger birth-order siblings, however, decreased in the
1969-86cohort.Moreover,thenegativeeffectwassmallerforchildrenfromwealthier
families.Theanalysisalsoindicatedthatbothsibshipsizeandbirthorderhadeffects onoccupationalattainment.Childrenwithfewsiblingsandeldersiblingsweremore likelytohaveadvantageousjobs.Theseeffects,however,weremediatedbyeducational
attainment,althoughthedirecteffectofbirthorderremainedsignificantat10%level.
Theseanalysessupportedtheresourcedilutiontheoryandtheselectiveinvestment theory, which suggested that educational strategy under constraints of economic resourcesledtowithin-familydifferencesinstatusattainment.