第
7
章 市場均衡
● 〇
1
.市場と価格
消費者が財・サービスを購入しようとする場所,
企業が財・サービスを販売しようとする場所のこ
とを「市場(
しじょう
)」という.
市場はモノを売ろうとする企業(人々)と買おうとす
る人々が出会う場所.
市場において消費者や企業が需要量や供給量を決める
上で価格が重要な役割を果たす.
〇●
1
.市場と価格
しかし,価格の持つ意味は
消費者と企業では正反対
.
消費は価格が安いほど得
(消費者余剰が大きくなる).
企業は価格が高いほど得
(生産者余剰が大きくなる).
市場においては
消費者の需要量と企業の供給量とがちょう
ど一致するように価格が決まる.
これを「
均衡
」と呼ぶ.
市場で成立する均衡で,消費者と企業の満足度がどのよう
になっているのかを評価できる.
市場が持つ様々な経済主体の利害を調整する働きを分析す
2
.市場需要曲線と市場供給曲線
● 〇〇〇〇
2.1
市場需要曲線
これまでは
1人の消費者の最適な消費行動
としての価格
と需要量の関係を確認してきた.
様々な個人からなる市場全体の需要量がどうなるか?
個人をと表記
.は1からまでの値を取る.
個人の需要量をと表記
単純化のために
家計は同質的であると
仮定する.その
ため,個人の効用関数を示す未知の定数(パラメー
タ)はすべての個人で共通とする.
また,価格は
市場参加者すべてに共通
.
〇●〇〇〇
2.1
市場需要曲線
この時,個人の需要関数は次のように書く.
人の需要量の合計である市場需要関数を考えよ
う.
k
=
1
,…,
K
の需要関数を並べてみる.
〇〇●〇〇
2.1
市場需要曲線
人すべての需要量を足し合わせる
と以下の式が導ける;
ここで市場全体の需要量を と書く.
( という記号は「意味する」ということを表す.)
〇〇〇●〇
2.1
市場需要曲線
この時,市場全体の需要関数は次のように書ける;
を について解くと,
これが
市場の需要曲線
となる.
市場参加者が多くなると
,値が大きくなるので,市場の
需要曲線の
傾きは緩やかになる
.
〇〇〇〇●
2.1
市場需要曲線:
市場参加者が
1
人から
2
人になった場合
P
;価
格
;需要量
● 〇〇〇〇〇
2.2
市場供給曲線
1つの企業の最適な生産量の決定
としての価格と供給量
の関係から,
様々な企業からなる市場全体の供給量がど
うなるかを考える.
ただし,ある市場で企業が利潤を得ることができるな
らば,他の企業もその財・サービスを生産することで
利潤を得ようとするだろう.
新しい企業が市場にやってくることを「
参入
」と呼ぶ
.
また,市場において利潤を得られなくなった企業は市
場から「
退出
」する.
このような「参入・退出」を考えると市場全体の供給曲
線の導出は複雑になるので,「
参入・退出のないケー
ス
」を考える.
梶谷真也・鈴木史馬『しっかり基礎から〇●〇〇〇〇
2.2 市場供給曲線
1種類の財・サービスを生産している多数の企業がいるよう
な状況を考える.
企業をと表記
.は1からまでの値を取る.
供給量は企業の利潤最大化を前提とした企業の供給量.
複数の企業を考えるには,企業ごとの供給関数が存在すると
いうことを明示しなければいけない.
完全競争市場において企業は市場で形成される相場で販売
すると仮定している⇒
価格は外生
(与えられたもの).
生産要素価格も自分では操作できない⇒
は外生
と仮定.
単純化のために
生産性は各企業とも同質的である
と仮定.
〇〇●〇〇〇
2.2 市場供給曲線
この時,企業の供給関数は次のように書く.
社
の供給量の合計である市場供給関数を考えよう.
j
=
1
,…,
J
の供給関数を並べてみる.
〇〇〇●〇〇
2.2 市場供給曲線
社
すべての供給量を足し合わせる
と以下の式が導ける;
ここで市場全体の供給量を と書く.
( という記号は「意味する」ということを表
す.)
〇〇〇〇●〇
2.2 市場供給曲線
この時,市場全体の供給関数は次のように書ける;
を について解くと,
これが
市場の供給曲線
となる.
市場参加企業数が多くなると,値が大きくなるので,市
場の供給曲線の傾きは緩やかになる.
〇〇〇〇〇●
2.2 市場供給曲線:
市場参加企業数が 1 社から 2 社になった場合
P
;価
格
;供
給
量
3
.市場均衡の導出
● 〇〇〇〇
3 .市場均衡の導出
消費者が
K
人,企業が
J
社
のケースで考える.
市場需要曲線
市場供給曲線
ある価格において需要量と供給量とが一致しているとする.
これは,買いたいと考えている人の買いたい量と売りたい
と考える企業の売りたい量とが同じであることを意味する
.
〇●〇〇〇
3 .市場均衡の導出
ある価格の下で,
需要量と供給量が一致するその価格と
取
引
量との
組
み合わせ
を「
市場均衡
」という.
その価格
=
「
均衡価格
」
その取
引
量
=
「
均衡取
引
量
」
数式で表すと,
(1)
(2)
(3)
〇〇●〇〇
3 .市場均衡の導出
(3)
より
(4)
(5)
が与えられれば,
(4)
と
(5)
を
連
立
方程
式として解くと
〇〇〇●〇
3 .市場均衡の導出:具体的な数値例
の場合
上式より,均衡価格と均衡取
引
量を
求
めてみよ
う.
〇〇〇〇●
3 .市場均衡の導出:具体的な数値例
0
3
6
9
12
15
18
市場需要曲線
市場供給曲線
DM, SM
;
4
.
社
会的余剰
● 〇
4.1 市場均衡と社会的余剰
需要曲線や供給曲線には,経済主体の満足度についての
情報
が
含
まれる.
消費者余剰・生産者余剰・
社
会的余剰
市場均衡は,
社
会的余剰を最大にする
という
点
から「経
〇●
4.1 市場均衡と社会的余剰
P
*
需要量・供
給
量
P
;価格
価格
P
*
のもとで
の消
費
者
余
剰
価格
P
*
のもとで
の生
産
者
余
剰
価 格 の もとで
の消
費
者
余
剰
価格 のもとでの
社
会
的
余
剰の
損失分
価格のもとでの
生
産
者
余
剰
● 〇〇〇
4.2
市場均衡の効
率
性:
価格が市場均衡
水準
よりも高い場合
P
;需要量・供
給
量
P
;価格
e
価格が
高
い()ので
市
場
均衡
と
比
べて
需要量が
少
なく,供
給
量が
多
い.
a
b
c
g
d
f
o
市
場で成
立
する
取引
量は
相
対
的に
少
ない需要量()で決まる
.
価格のもとでの
消
費
者
余
剰
価格のもとでの
社
会
的
余
剰の
損失分
価格のもとでの生
産
者
余
剰
〇●〇〇
4.2
市場均衡の効
率
性:
価格が市場均衡
水準
よりも
低
い場合
P
;需要量・供
給
量
P
;価格
e
価格が
低
い(
)ので
市
場
均衡
と
比
べて
需要量が
多
く,供
給
量が
少
な
い.
g
d
o
a
b
c
f
梶谷真也・鈴木史馬『しっかり基礎から
市
場で成
立
する
取引
量は
相
対
的に
少
ない供
給
量( )で決まる.
〇〇●〇
4.2 市場均衡の効率性
価格が市場均衡水準よりも高い場合,社会的余剰が
減少
価格が市場均衡水準よりも
低
い場合,社会的余剰が
減少
市場均衡では,
社
会的余剰が最大となる.
価格と取引量との組み合わせを「
配
分」という.
市場均衡における配分は
社
会的にみて最も
望
ましい
配
分=「効
率
的な
配
分」
市場均衡における配分は
社
会的にみて最も
望
ましい
配
分であ
〇〇〇●
4.2 市場均衡の効率性
価格が市場均衡
水準
よりも
高い
場合と
比
べて
,市場均衡での
消費者余剰のほうが大きい,生産者余剰の
増減
は
不
明.
市場均衡水準よりも価格が高くなることで,生産者余剰が
大きくなることはあり得る.
企業にとって,市場均衡よりも高い価格が付いたほうが望
ましいこともあり得る.
価格が市場均衡
水準
よりも
低
い
場合と
比
べて
,市場均衡での
生産者余剰のほうが大きい,消費者余剰の
増減
は
不
明.
市場均衡水準よりも価格が低くなることで,消費者余剰が
大きくなることはあり得る.
消費者にとって,市場均衡よりも低い価格が付いたほうが
望ましいこともあり得る.
●
5.1 比較静学分析
消費者行動,企業行動で
説
明したように,経済
環境
が
変
化すると
需要曲線,供給曲線そのもの
が
変
化する.
⇒ 経済
環境
の
変
化は
市場均衡
(需要曲線と供給曲線の
交
点
)を
変
化させる.
「
需要曲線・供給曲線の
変
化
」と「
市場均衡の
変
化
」の
関係を分析する
方法
を
「
比較静学
分析
」という.
● 〇〇〇〇〇〇
5.2 消費者行動の変化;効用の変化
消費者がある財・サービスを
より
強
く
好む
ようになる.
(
例
)
寒
くなって
来
て
鍋
を
食
べたくなり,
白菜
をより
好む
ようになる.
⇒ 財・サービスの消費から得られる
効用関数の未知の定
数(パラメータ)
B
が上
昇
.
貨幣保有
よりも
財・サービスを
好む
ようになる.
(
例
)
景気
が
良
くなり,もしもの時のために
備
えてお
く
必
要がなくなる.
⇒
貨幣保有
の効用を表す未知の定数(パラメータ)
A
〇●〇〇〇〇〇
5.2 消費者行動の変化;
パラメータ
B
(財の価値)の上昇
(
例
)
A
=
1
とする.
B
=5
から
B’
=10
に上
昇
したとする.
単純化のため消費者は1人(
K
=
1
)とする.
需要曲線は
P
=5
-
から
P
=10
-
に
変
化.
;需要量・供
給
量
P
;価格
供
給
曲
線
5
5
P
=5
-
10
10
P
=10
-
P
*
Q
*
P
*’
Q
*’
市
場
均衡
は
右
上に
変化
.
価格
P
は上
昇
し,
取引
量も上
昇
する.
梶谷真也・鈴木史馬『しっかり基礎から
市
場
〇〇●〇〇〇〇
5.2 消費者行動の変化;
パラメータ
A
(貨幣価値)の低下
(
例
)
B
=10
とする.
A
=2
から
A’
=1
に
低
下
したとする.
単純化のため消費者は1人とする.
需要曲線は
P
=5
-
0.5
から
P
=10
-
に
変
化
.
;需要量・供
給
量
P
;価格
供
給
曲
線
5
10
P
=5
-
0.5
10
P
=10
-
P
*
Q
*
P
*’
Q
*’
市
場
均衡
は
右
上に
変化
.
価格
P
は上
昇
し,
取引
量も上
昇
する.
市
場
〇〇〇●〇〇〇
5.2 消費者行動の変化;消費者数の増加
(
例
)
A
=
0.5
とする.
B
=5
とする.
消費者の数が1人から
2
人に
増
加
.
需要曲線は
P
=10
-
2
から
P
=10
-
に
変
化.
;需要量・供
給
量
P
;価格
供
給
曲
線
10
5
P
=5
-
10
P
=10
-
P
*
Q
*
P
*’
Q
*’
市
場
均衡
は
右
上に
変化
.
価格
P
は上
昇
し,
取引
量も上
昇
する.
梶谷真也・鈴木史馬『しっかり基礎から