The 28th Annual Conference of the Japanese Society for Artificial Intelligence, 2014
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複雑ネットワークの自己組織化メカニズム−同質原理の正体
Self-organization Mechanism of Complex Networks - The Nature of Homophily
石川
孝
Takashi Ishikawa
日本工業大学
Nippon Institute of Technology
The paper aims to clarify the nature of the homophily principle as a self-organization mechanism which causes emergence of community structure in complex networks and describes a generalized adaptive voter model based on the models in the preceding works as well as its preliminary evaluation.
1.
はじめに
複 雑 ネ ッ ト ワ ー ク 研 究 の 重 要 な 課 題 の 1 つ は , そ の 特 異 的 な 構 造 が なぜ ,どの ように 生 じるか を明 らか にす ることで ある.この 研 究 課 題 は 一 般 に 複 雑 ネ ッ ト ワ ー ク の 自 己 組 織 化 と 呼 ば れ
[Boccaletti 2006], ノ ー ド の 状 態 と ネ ッ ト ワ ー ク の ト ポ ロ ジ ー が 相 互発展する相互発展ネットワーク[Fernando 2009] や適応的ネッ トワーク[Gross 2009]の研究において多くの知見が得られている. 社 会 ネ ッ ト ワ ー ク の 分 野 で は , ネ ッ ト ワ ー ク に お け る コ ミ ュ ニ テ ィ 構 造 を 創 発 す る 基 本 原 理 と し て 同 質 原 理[McPherson 2001]が 知 ら れ て い る . 同 質 原 理 と は , 「 似 た 人 同 士 は つ な が り や す い 」 と い う 人 間 の 傾 向 で あ る[石 川 2013]. こ の 原 理 に よ れ ば , 社 会 ネ ッ ト ワ ー ク の コ ミ ュ ニ テ ィ 構 造 を 人 間 の 凝 集 性 に よ っ て 説 明 で き そ う で あ る が , な ぜ 時 間 的 に 安 定 な コ ミ ュ ニ テ ィ が 複 数 で き る のかは,これまでの研究では十分に説明されてはいない.
本 研 究 は , 同 質 原 理 に よ る ネ ッ ト ワ ー ク ダ イ ナ ミ ク ス を 形 成 化 し て ,数 学 的 な モ デ ル の 性 質 と し て コ ミュ ニ テ ィ構 造 を 創 発 す る 複 雑 ネ ッ ト ワ ー ク の 自 己 組 織 化 メ カ ニ ズ ム を 導 く こ と を 目 的 と す る . 社 会 学 に お け る 同 質 原 理 の 定 性 的 な 表 現 を 厳 密 な 数 学 モ デ ル として 表 現 す ることが 目 標 で あ る.これ に よっ て ネ ットワ ー ク の 自 己 組 織 化 に 対 す る 同 質 原 理 の 正 体 を 明 ら か に す る . こ の 目 的 に 対 し て 本 研 究 は , ネ ッ トワ ー ク の 自 己 組 織 化 を 要 素 間 の 相 互 作 用 に よ っ て 説 明 す る 統 計 物 理 学 の ア プ ロ ー チ[石 川
2009]を と る . こ の た め , コ ミ ュ ニ テ ィ 構 造 を 創 発 す る 最 も 単 純 な 数学モデルの1つである適応的投票者モデル[Holme 2006]を 用いて,同質原理のどのような側面がコミュニティ構造を創発す る条件であるかを解析する.
本論文は,まず第 2章で適応的投票者モデルに関する先行 研 究 を 紹 介 し , つ ぎ に 本 研 究 で 目 標 と す る 同 質 原 理 の 正 体 を 導くための適応的投票者モデルを一般化して形式化する.そし て , こ の モ デ ル の 基 本 的 性 質 を 解 析 す る 予 備 実 験 と そ の 結 果 についての考察を述べ,最後に本論文のまとめと今後の課題を 述べる.
2.
先行研究
2.1 相互発展ネットワーク上の意見ダイナミクス
[Vazquez 2013]は , 社 会 に お け る 意 見 形 成 の ダ イ ナ ミ ク ス に ついての最近の研究をサーベイしている.意見ダイナミクスにお いて,2 つの等価な意見の間の競合を調べるために,投票者モ
デ ル と 閾 値 モ デ ル が よ く 研 究 さ れ て い る . 投 票 者 モ デ ル で は , 個人はランダムな隣人の意見を採用し,閾値モデルでは,反対 の 意 見 を も つ 隣 人 の 数 が あ る 与 え ら れ た 閾 値 を 超 え た と き に だ け 意 見 を 変 え る . こ の サ ー ベ イ は , 最 近 研 究 さ れ て い る 相 互 発 展 ま た は 適 応 的 ネ ッ ト ワ ー ク 上 の こ れ ら の モ デ ル の い く つ か 変 形 に つ い て 概 要 を 与 え て い る .こ れ ら の 研 究 で は ,意 見 とネ ッ ト ワ ー ク の 相 互 発 展 が ど の よ う に し て マ ク ロ な パ タ ー ン を 創 発 し , 静 的 な ネ ッ ト ワ ー ク に は 見 ら れ な い 意 見 の 安 定 ま た は 準 安 定 な 共 存 や ネ ッ ト ワ ー ク の コ ミ ュ ニ テ ィ へ の 断 片 化 が 報 告 さ れ て い る . そして,これらの現象の起こりやすさは,意見拡散とネットワーク 適 応 プ ロ セ ス の 相 対 速 度 に 依 存 す る . 単 一 意 見 の 一 致 は 意 見 が ネ ッ ト ワ ー ク の 発 展 よ り 速 く 拡 散 す る と き に 起 こ り , 一 方 , 適 応 の 方 が 速 い ネ ッ ト ワ ー ク は 同 じ 意 見 の 個 人 か ら な る 静 的 ま た は 時 として動 的 なコミュニティに分 離 す る.さらに,このサー ベ イは , 相 互 発 展 ネ ッ トワ ー ク の ダ イ ナ ミク ス を 記 述 す る 平 均 場 ア プ ロ ー チの性能と限界について論じている.
複 雑 ネ ッ ト ワ ー ク の 初 期 の 研 究 は , 個 人 間 の 相 互 作 用 ネ ッ ト ワ ー ク の ト ポ ロ ジ ー が 拡 散 ダ イ ナ ミ ク ス の 間 に 変 わ ら な い ま ま で あ る と 考 え た が , 人 間 の 相 互 作 用 ネ ッ ト ワ ー ク は 時 間 と と も に 変 わ る こ と が 観 察 さ れ て い る . 最 も 単 純 な 場 合 に は ネ ッ ト ワ ー ク の ダイナミクスが 拡散現象とは独立であるかもしれないが,両方の ダイナミクスは現実においては結合している.すなわち,個人の 決 定 は 社 会 的 圧 力 の メカニ ズ ムを通 じて 隣 人 に よって 影 響 され , かつ個人は同質原理によって類似な他人との新しいつながりを 作ったり,逆に幅広いグループとのつながりを作ったりする傾向 を も っ て い る . こ れ ら の 傾 向 は , ネ ッ ト ワ ー ク の ノ ー ド ( 個 人 を 表 す)の状態と,リンク(相互作用を表す)のトポロジー(つながり方) の間のフィードバックループを作り,非常に豊富で複雑なダイナ ミク ス を 生 じ る . こ の よ うな 性 質 を 示 す ネ ッ トワ ー ク は 相 互 発 展 ネ ットワークまたは適応的ネットワークと呼ばれている[Gross 2008]. 相互発展ネットワークは,社会科学の他にも,生物学,生態学, 伝 染 病 学 , ゲ ー ム 理 論 , 神 経 / 免 疫 シ ス テ ム , お よ び 通 信 の よ うな多くの研究分野に現れている.対象となるすべてのシステム は,マクロレベルでのつぎの共通の特徴をもっている.
• 臨界挙動に向かう自己組織化
• 複雑なトポロジーの形成
• 静的ネットワークよりも複雑な挙動
• 均質な集団からの特別なノードの創発
[Vazquez 2008]は,同質原理に基づくリンクつなぎ替えをもつ 投 票 者 モ デ ル を 研 究 し た . こ の モ デ ル は , ノ ー ド の 取 り う る 状 態 が2つで,リンク数が保存されるために特に単純である.各ステ ップで,1つのノードiとその隣人の1つjがランダムに選ばれ 連 絡 先 : 石 川 孝 , 日 本 工 業 大 学 情 報 工 学 科 , 〒 345-8501
埼玉県南埼玉郡宮代町学園台4-1
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る.それらが同じ状態ならば何も起きない.さもなくば,確率pで ノードiはjとのリンクを,iと同じ状態をもつ他の1つのランダム に選ばれたノードにつなぎ替えるが,相補的確率1 - pでノード
iがjの状態をコピーする.この結果,ネットワークの発展と意見 の 拡 散 との 競 合 が ネ ットワー クの 断 片 化 を 導 く.す な わ ち ,2 つ のプロセスの割合の比p / (1 - p) がある閾値より大きいとき,つ ま り ネ ッ ト ワ ー ク の 発 展 が ノ ー ド 状 態 の 拡 散 よ り 速 い と , ネ ッ ト ワ ークは最終的に同じような大きさの 2 つの断片に分かれる.反 対に,比p / (1 - p) が閾値より小さいとき,ネットワークは1つの コンポ ー ネ ントに な るまで 連 結 の ままで ある.この 断 片 化 転 移 は 相互発展ネットワークの多くのモデルに特有であり,モデルの詳 細にはよらない.
2.2 相 互 発 展 ネットワークにおけるコミュニティ構 造 の 創
発と持続
[González-Avella 2014]は,ネットワークにおける適応的なリン クつなぎ替えのプロセスを研究するための一般的な枠組みを提 案 し て , 相 互 発 展 ネ ッ ト ワ ー ク に お い て ど の よ う に コ ミ ュ ニ テ ィ 構 造 が 創 発 し 持 続 す る か を 示 し た .そ の 結 論 は ,コ ミュ ニ テ ィ構 造 の創発が,i)ノード状態の多様性,および ii) ノード状態を考慮 したノード間のつなぎ替えという 2 つの成分を必要とするという ことである.この枠組みは,ノードの状態変化を投票者モデルに よ っ て 記 述 し , 適 応 的 つ な ぎ 替 え の プ ロ セ ス を ノ ー ド 間 の リ ン ク の切断と接続という2つの動作で記述する.そしてこの研究は, リ ン ク の 総 数 が 保 存 す る つ な ぎ 替 え プ ロ セ ス に 焦 点 を 当 て て , 系の集団行動をリンクの切断と接続を特徴付ける 2 つのパラメ ータの空間で調べた.
コミュニティのような特徴的なトポロジー構造がランダムまたは 特徴のないネットワークから創発するには,ノード間の相互作用 を 表 す リン クの 性 質 を 変 更 す る何 らか の ダ イナ ミカ ル プ ロセ スが 必 要 で あ る . こ の プ ロ セ ス は 一 般 に リ ン ク つ な ぎ 替 え プ ロ セ ス と 呼 ば れ て い る . 上 記 の 文 献 の 著 者 ら の 考 え で は , リ ン ク つ な ぎ 替 え プ ロ セ ス は , 局 所 的 な ト ポ ロ ジ ー の 考 慮 に 基 づ く も の と , ノ ードの状態に依存するものに区別される.前者のトポロジカルな つ な ぎ 替 え プ ロ セ ス は , ス ケ ー ル フ リ ー ネ ッ ト ワ ー ク や ス モ ー ル ワー ル ドネ ットワー クの 起 源 を 説 明 す るた め に 使 わ れ て きた .他 方 , 最 近 , ト ポ ロ ジ ー と 状 態 の 間 の 結 合 を 示 す ネ ッ ト ワ ー ク を 研 究 す る こ と に 多 く の 関 心 が あ る . 多 く の 場 合 , ネ ッ ト ワ ー ク の ト ポ ロジーの変更は,ノード状態のダイナミクスのフィードバック効果 と し て 起 こ る . つ ま り , ネ ッ ト ワ ー ク は ノ ー ド 状 態 の 発 展 に 応 じ て 変化し,逆にそれはネットワークの変更を決定する.
一般的に,適応的つなぎ替えプロセスにおける切断と接続の 動 作 は , ノ ー ド の 状 態 を 比 較 す る 何 ら か の メ カ ニ ズ ム に 基 づ い て い る . こ の メ カ ニ ズ ム は , 同 じ 状 態 に あ る ノ ー ド 間 の リ ン ク を 切 断する確率d∈[0, 1]と,同じ状態にある2つのつながっていな いノードを接続する確率r∈[0, 1]という2つのパラメータによっ て特徴付けられる.対(d, r)のパラメータ空間によって,これまで の文献で扱われてきた多くの適応的つなぎ替えプロセスが分類 できる.ノード状態によらないノード間のランダムなつなぎ替えは, 値d = r = 0.5 によって記述され,それはトポロジカルなつなぎ 替 え と し て 分 類 で き る . さ ら に , 適 応 的 つ な ぎ 替 え プ ロ セ ス の 特 定のモデルは,特定の結合条件またはつなぎ替え関数r = f(d) を 定 式 化 す る ことに よ っ て ,(d, r)平 面 上 で 表 す こ とが で き る .ソ ー シ ャ ル ダ イ ナ ミ ク ス の 文 脈 で は , 同 質 性 ( 同 じ 状 態 の ノ ー ド と 相互作用する傾向)と異質性(異なる状態のノードと相互作用す る傾向)の現象が(d, r)平面上で自然に記述される.
上 の 仮 定 に 基 づ い て 適 応 的 つ な ぎ 替 え プ ロ セ ス に 対 す る 一 般的なモデルを形式化するため,平均次数 k をもつ N 個のノ
ー ドか らなる無 向 ランダ ムネ ットワー クを初 期 状 態 として考 える. ノードiの隣人の集合をviとし,それはki個の要素からなる.簡 単のためにノード状態変数は離散的で G 個の選択肢をもつと し,ノードiの状態変数を giと書く.状態 giは最初に一様分布 で ラ ン ダ ム に 割 り 当 て ら れ る . こ の ネ ッ ト ワ ー ク の 相 互 発 展 は つ ぎのステップを反復することによって定義される.
(1) ki > 0であるようなノードiをランダムに選ぶ.
(2) つなぎ替えプロセス(d, r)の動作を適用する:iとその隣人
j∈viの間の条件dを満たすリンクを切断し,代わりにiとノ ードl∉viの間に条件rを満たすリンクを接続する.
(3) ノード状態変化のプロセスを適用する: gi≠gmであるよう な1つのノードm∈viをランダムに選んでgi ←gmとする.
N / G = 10に固定した実験(N = 200,< ki > = 4)の結果,(d,
r)空間で2つの主な相が見られた(図1a).1つはほとんどのノ ー ド が 大 き な 連 結 ネ ッ ト ワ ー ク を 形 成 す る 連 結 相 (Ia) で , も う 1 つ は 同 じ 状 態 の 小 さ い 非 連 結 部 分 に よ っ て 形 成 さ れ る 断 片 化 相(II)である.これら 2 つの相の間でコミュニティ構造が創発し,
1 つの大きな連結ネットワーク上で多様な状態が準安定的に共 存するパラメータの領域が発見された(Ib).また,ノードダイナミ クスが存在しなくてもコミュニティ構造が創発することが示された (図1b).
図1.(d, r)空間上の相図[González-Avella 2014]
2.3 発 展 す る ソ ー シ ャ ル ネ ッ ト ワ ー ク に お け る 分 離 の 創
発
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た . こ の 論 文 は , 任 意 の 初 期 ネ ッ ト ワ ー ク ト ポ ロ ジ ー が 与 え ら れ た と き , モ デ ル の プ ロ セ ス の 下 で 分 離 し た ネ ッ ト ワ ー ク が 創 発 す ることを解析的に証明した.このことは,Schelling の元のモデル と同 じく,離 反 プ ロ セ ス が 属 性 の 近 い 個 人 か らな る 分 離 した ネ ッ トワーク構造の創発を説明するのに十分であることを示している.
この 論 文 に お け るネ ットワー ク発 展 プ ロセ スは つ ぎ の 通 りで あ る . ネ ッ ト ワ ー ク 発 展 は , リ ン ク の 切 断 と 続 い て 起 こ る 切 断 し た リ ン ク の ラ ン ダ ム な つ な ぎ 替 え と い う 確 率 的 な プ ロ セ ス に よ っ て 起 こ る . こ れ は , 各 時 間 ス テ ッ プ で ラ ン ダ ム な リ ン ク を 選 択 す る こ と によってモデル化される.つぎに,そのリンクでつながる 2 つの ノー ドの 類 似 度 を評 価 して ,離 反 バ イア スに 基 づ い て リンクを切 断 す る か 維 持 す る か の 選 択 を 行 う . リ ン ク を 切 断 す る と き は ,1 つのノードをランダムに選択して,切断するリンクの両端ノードの い ず れ か との 間 に 等 し い 確 率 で リン クを つ な ぎ 替 え る .こ れ に よ っ て ネ ッ ト ワ ー ク に お け る リ ン ク の 総 数 は 一 定 で あ る が , 次 数 分 布 は 動 的 に 変 わ り う る . こ の モ デ ル で は , つ な が っ た ノ ー ド 間 の 属 性 の類 似 度 の分 布 が時 間 的 に定 常 な分 布 に常 に収 束 し,そ の 定 常 分 布 は 初 期 ネ ットワー クの 構 造 や 離 反 バ イア スの レ ベ ル には依存しない.
2.4 相互発展ネットワークの自己組織化
上述の相互発展ネットワークに関する先行研究における自己 組織化についての知見をまとめると以下のようになる.
(1) ノード状態に依存するリンクつなぎ替え
いずれの先行研究もネットワークの発展,すなわちトポロジー の 変 化 を 起 こ す リ ン ク つ な ぎ 替 え の ル ー ル を 関 連 す る ノ ー ド の 状 態 に よっ て 記 述 して い る.そ の 多 くは ,状 態 の 類 似 す るノー ド が よ りつ な が りや す くな る 同 質 原 理 に 基 づ い て い る .し た が っ て , 同質原理がネットワークの自己組織化のメカニズムであると考え ら れ て い る が , 同 質 原 理 の パ ラ メ ー タ と 自 己 組 織 化 と の 一 般 的 な関係は明らかにはされていない.
(2) 断片化転移
先行研究のモデルに共通する特徴は,パラメータのある範囲 に お い てネットワー クが 非 連 結 な部 分 ネットワー クに 分 か れ る断 片 化 転 移 が 起 こ る こ と で あ る . こ の 断 片 化 の 原 因 は モ デ ル に 仮 定 さ れ た 同 質 原 理 で あ る が , 同 質 原 理 の パ ラ メ ー タ と 断 片 化 転 移との関係はやはり明らかにされていない.
(3) コミュニティ構造の創発
一 部 の 先 行 研 究 で は ,断 片 化 転 移 に お け る 連 結 相 と 断 片 化 相の間に,準安定なコミュニティ構造が創発することが発見され て い る . コ ミ ュ ニ テ ィ 構 造 の 創 発 は 同 質 的 な リ ン ク を 切 断 す る 確 率 と 接 続 す る 確 率 の あ る 一 定 に 範 囲 で 起 こ る こ と が 指 摘 さ れ て いるが,同質原理の他のパラメータである社会的影響に相当す るノードの状態変化の速さとの関係は明らかになっていない.
3.
一般化適応的投票者モデル
本 章 は , 投 票 者 モ デ ル を 基 礎 と す る 相 互 発 展 ネ ッ ト ワ ー ク に 関 す る 先 行 研 究 で 提 案 さ れ た 上 述 の モ デ ル の 性 質 を 包 含 す る より一般的な一般化適応的投票者モデルについて述べる.この モ デ ル の 目 的 は , コ ミ ュ ニ テ ィ 構 造 を 創 発 す る 同 質 原 理 の 条 件 を 調 べ て , 複 雑 ネ ッ ト ワ ー ク の 自 己 組 織 化 メ カ ニ ズ ム と し て の 同 質原理の正体を明らかにすることである.
一 般 化 適 応 的 投 票 者 モ デ ル の ネ ッ ト ワ ー ク は , 一 定 の ノ ー ド 数 N の無向単純グラフとする.ノードは一般に離散的な状態を もつとする.モデルを単純化するためにリンク数Mも一定とする 制約を設ける.この制約は,後述するように,リンクつなぎ替えの アルゴリズムに特別の条件を課す.相互発展ネットワークの特徴 であるノードの状態変化とリンクのつなぎ替えの 2つのプロセス は , 独 立 し た 確 率 過 程 と し て モ デ ル 化 す る . ノ ー ド の 状 態 変 化 は 同 質 原 理 に お け る 誘 導 的 同 質 性 (つ な が りに よ っ て 人 が 似 る こ と ) に 対 応 し , リ ン ク の つ な ぎ 替 え は 選 好 的 同 質 性 ( 似 た 人 同 士 は つ な が りや す い こと)に 対 応 す る[石 川 2013].研 究 の 仮 説 は,これら 2 つのプロセスの相互のフィードバックがコミュニティ 構 造 の 創 発 を 促 進 す る こ と , す な わ ち ノ ー ド の 状 態 変 化 の 役 割 を明らかにすることである.
モ デ ル の ダ イ ナ ミ ク ス を 記 述 す る ア ル ゴ リ ズ ム は , 与 え ら れ た 初期ネットワークから始めて,つぎの 3 つのステップを反復する.
(1) ノードをランダムに1つ選択する.
(2) そのノードの状態変化を確率pで実行する.
(3) そのノードについてリンクつなぎ替えを確率qで実行する. ノードの状態変化(2)のアルゴリズムは,選択されたノード iの隣 人 j∈vi(viは隣人集合を表す)をランダムに1つ選択して,iと j の状態が異なれば,i の状態を jと同じ状態に変更する.リンク つなぎ替え(3)のアルゴリズムは,選択されたノードiの隣人k∈
vi(kはjと同じでもよい)をランダムに1つ選択して,iとkの状態 が異なれば,確率dでリンク(i, k)を切断する.さらに,確率rで
iと状態が同じノードl≠iを1つ選択し, さもなくば相補的確率
1 - rでiと状態が異なるノードl≠iを1つ選択して,リンク(i, l) を接続する.lは j と同じでもよいので,結果的につなぎ替えが 起こらないことがありうる.値d = r = 0.5は,ランダムなリンクつな ぎ替えを表す.値d = 0かつr = 1は,最も強い選好的同質性 を表す.このモデルの確率過程は 4 つのパラメータ p,q,d,r によって決定される.
4.
予備実験
上 述 の 一 般 化 適 応 的 投 票 者 モ デ ル が 先 行 研 究 と 同 様 の 断 片 化 転 移 と コ ミ ュ ニ テ ィ 構 造 の 創 発 を 起 こ す こ と を 実 験 に よ っ て 確認した.実験はNetLogoを用いたエージェントベースシミュレ ー ションにより行 う.断 片 化 転 移 に対 す る秩 序 パ ラメー タは最 大 コ ン ポ ー ネ ン トサ イズ の ノー ド数 との 比 S とし,コ ミュ ニ テ ィ構 造 の創発に対してはモジュラリティ Q(同じ状態のノード間のリンク の割合)の初期ネットワークとの差ΔQとする.
まず ,断 片 化 転 移 の 確 認 は ,先 行 研 究 に よって ノー ドの 状 態 変化がなくても(p = 0)断片化転移が起こることが知られている ので,最も強い選好的同質性(d = 0,r = 1)を仮定して,ネットワ ークの状態が安定する時間ステップt = 100000でのSとリンク つなぎ替え確率 qとの関係を調べた(図 2).この結果,連結相 と断片化相(2つの連結部分)が存在することが確認された.
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図2.ネットワークの断片化
図3.コミュニティ構造の創発
5.
考察
予備実験の結果,投票者モデルを基礎とする相互発展ネット ワ ー ク モ デ ル の 共 通 の 特 徴 で あ る 断 片 化 転 移 と コ ミ ュ ニ テ ィ 構 造 の 創 発 が 本 論 文 で 提 案 し た 一 般 化 適 応 的 投 票 者 モ デ ル で 起 こ る こ と が 確 認 で き た . こ の 結 果 は 提 案 モ デ ル が 先 行 研 究 に おけるやや個別的なモデルの一般化になっていることの傍証で あ る . ま た , 先 行 研 究 が 同 質 原 理 を モ デ ル の 一 部 と し て 他 の 要 素と合わせてモデル化していたのに対して,提案モデルは同質 原 理 の 要 素 だ け を 単 純 な 投 票 者 モ デ ル に 組 込 ん で い る た め に , コ ミ ュ ニ テ ィ 構 造 を 創 発 す る 同 質 原 理 の 条 件 を 調 べ る こ と に 効 果 的 で あ る . こ の 提 案 モ デ ル に よ っ て , 先 行 研 究 で は 明 ら か に さ れ て い な い コ ミ ュ ニ テ ィ 構 造 を 創 発 す る 同 質 原 理 の 条 件 を 調 べることが今後の課題である.
6.
おわりに
本論文は,複雑ネットワークの自己組織化メカニズム,特にコ ミュニティ構造を創発する同質原理の条件を明らかにすることを 目的として,投票者モデルを基礎とする相互発展ネットワークに 関 す る先 行 研 究 で 提 案 され たモ デ ル を包 含 す る一 般 化 適 応 的 投 票 者 モ デ ル と そ の 予 備 的 な 評 価 に つ い て 述 べ た . こ の モ デ ルは,同質原理を定式化する 4 つの確率パラメータによって支 配 さ れ る の で , コ ミ ュ ニ テ ィ 構 造 が 創 発 す る パ ラ メ ー タ の 範 囲 を 調べることによって,複雑ネットワークの自己組織化メカニズムと しての同質原理の正体を一般的に明らかにすることが期待され る.
参考文献
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[石川 2013] 石川孝: 同質原理に基づくネットワークダイナミクス をもつ情報伝播モデル. 人工知能学会全国大会JSAI2013.
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
0 0.05 0.1 0.15 0.2
S
:
最大コンポーネントサイズ
q:リンクつなぎ替え確率
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Δ
Q
:
モジュラリティ変化