府 政 共 生 第 438 号 平成28年3月31日
都道府県知事
各 殿 政令指定都市市長
内閣府政策統括官(共生社会政策担当) (公印省略)
自殺対策基本法の一部を改正する法律の公布について(通知)
平素より政府の自殺対策の推進に御理解、御協力いただき、誠にありがとうござい ます。
自殺対策基本法の一部を改正する法律(平成28年法律第11号。以下「本法」とい う。)は、平成28年3月30日に公布され、平成28年4月1日に施行されることとな ります。
つきましては、本法制定の経緯及び本法の概要は下記のとおりですので、御了知い ただきますとともに、保健、医療、福祉、教育、労働その他関係部局間の連携を密に し、適切な対応をお図りいただくよう御配慮願います。
また、都道府県知事におかれましては、貴管内市町村、関係機関・団体及び住民に 対して、政令指定都市市長におかれましては、関係機関・団体及び住民に対して、本 法制定の経緯及び本法の内容を広く周知いただくようお願いします。
なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定 に基づく技術的助言であることを申し添えます。
記
第1 本法制定の経緯
我が国の自殺者数は平成10年に急増し、その後長らく年間3万人を超え続けて
きたが、平成18年に自殺対策基本法(平成18年法律第85号)が制定されて以降、 自殺対策は大きく前進し、平成22年以降6年連続で減少し、平成27年には約2 万4千人となっている。
しかし、平成18年から平成27年までの10年間だけでも、我が国の自殺者数は 約30万人に上り、平成27年においても一日に平均66人が自殺で亡くなっている。
か国で最も高く、また、10 代後半から 30 代の死因第一位が自殺であり、児童、
生徒を含む若年世代の自殺も深刻な状況のままである。さらに、自殺で亡くなる 人の残された家族の数も増え続けている。
自殺の背景には、過労、生活困窮、育児や介護疲れ、いじめや孤立などの様々
な社会的要因があることが知られている。自殺総合対策大綱(平成 24 年8月 28
日閣議決定)においても、自殺は、その多くが追い込まれた末の死であり、その 多くが防ぐことができる社会的な問題であるとされ、そうした基本認識の下、自 殺対策は、国、地方公共団体、関係団体、民間団体、企業、国民等の関係者の連 携による包括的な生きる支援として展開されるべきことがうたわれている。そし て、これを踏まえ、地域の先駆的な取組を通じて得られた知見や経験を広く全国 各地における対策に還元していくこと等が求められており、地域レベルの実践的 な取組を中心とする自殺対策への転換を強力に推進していくことが必要である。
こうした観点から、平成27年6月2日、参議院厚生労働委員会において、全会
一致をもって「自殺総合対策の更なる推進を求める決議」が行われ、この決議に
おいて、「非常事態はいまだ続いており、我が国の自殺問題は決して楽観できない
との認識を共有するとともに、誰も自殺に追い込まれることのない社会を実現す るため、立法府の責任において、政府に対し自殺総合対策の更なる推進を促すと ともに、自殺対策基本法の改正等の法整備に取り組む」とされた。
本法は、この決議を踏まえ、自殺対策基本法を改正し、自殺対策を、地域レベ
ルの実践的な取組による生きることの包括的な支援としてその拡充を図り、更に 総合的かつ効果的に推進していくため、平成28年2月18日に参議院厚生労働委 員会において起草され、同月24日に参議院において、3月22日に衆議院におい て、それぞれ全会一致で可決され成立に至ったものである。
第2 本法の概要(条項は改正後のもの)
1 目的の改正(第1条関係)
目的規定に「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して、これ
に対処していくことが重要な課題となっていること」を追加するものとした。
2 基本理念の追加(第2条関係)
基本理念として次の事項を追加するものとした。
(1)自殺対策は、生きることの包括的な支援として、全ての人がかけがえのない
(2)自殺対策は、保健、医療、福祉、教育、労働その他の関連施策との有機的な 連携が図られ、総合的に実施されなければならないこと。
3 国の責務の改正(第3条第3項関係)
国は地方公共団体に対し地方公共団体の責務が十分に果たされるように必要な
助言その他の援助を行うものとする旨を規定するものとした。
4 自殺予防週間及び自殺対策強化月間(第7条関係)
自殺予防週間及び自殺対策強化月間に関する規定を次のとおり追加するものと
した。
(1)国民の間に広く自殺対策の重要性に関する理解と関心を深めるとともに、自
殺対策の総合的な推進に資するため、自殺予防週間及び自殺対策強化月間を設 ける。
(2)自殺予防週間は毎年9月10日から9月16日までとし、自殺対策強化月間は
毎年3月とする。
(3)国及び地方公共団体は、自殺予防週間においては、啓発活動を広く展開する
ものとし、それにふさわしい事業を実施するよう努める。
(4)国及び地方公共団体は、自殺対策強化月間においては、自殺対策を集中的に
展開するものとし、関係機関及び関係団体と相互に連携協力を図りながら、相 談事業その他それにふさわしい事業を実施するよう努める。
5 関係者の連携協力(第8条関係)
国、地方公共団体、医療機関、事業主、学校(学校教育法第1条に規定する学
校をいい、幼稚園及び特別支援学校の幼稚部を除く。10(1)及び(2)におい
て同じ。)、自殺対策に係る活動を行う民間の団体その他の関係者は、自殺対策の
総合的かつ効果的な推進のため、相互に連携を図りながら協力するものとした。
6 都道府県自殺対策計画等(第13条関係)
(1)都道府県は、自殺総合対策大綱及び地域の実情を勘案して、当該都道府県の 区域内における自殺対策についての計画((2)及び7において「都道府県自殺
対策計画」という。)を定めるものとした。
(2)市町村は、自殺総合対策大綱及び都道府県自殺対策計画並びに地域の実情を 勘案して、当該市町村の区域内における自殺対策についての計画(7において
「市町村自殺対策計画」という。)を定めるものとした。
国は、都道府県自殺対策計画又は市町村自殺対策計画に基づいて当該地域の状
況に応じた自殺対策のために必要な事業、その総合的かつ効果的な取組等を実施 する都道府県又は市町村に対し、当該事業等の実施に要する経費に充てるため、 推進される自殺対策の内容その他の事項を勘案して、厚生労働省令で定めるとこ ろにより、予算の範囲内で、交付金を交付することができるものとした。
なお、平成28年度における本条の規定に基づく交付金の扱いについては、平成
28年度予算成立後、別途交付要綱等について通知する予定である。
8 調査研究等の推進及び体制の整備(第15条関係)
(1)国及び地方公共団体は、自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するため、 自殺の実態、自殺の防止、自殺者の親族等の支援の在り方、地域の状況に応じ た自殺対策の在り方、自殺対策の実施の状況等又は心の健康の保持増進につい ての調査研究及び検証並びにその成果の活用を推進するとともに、自殺対策に ついて、先進的な取組に関する情報の収集、整理及び提供を行うものとした。
(2)国及び地方公共団体は、(1)の施策の効率的かつ円滑な実施に資するため
の体制の整備を行うものとした。
9 人材の確保(第16条関係)
国及び地方公共団体が自殺対策に係る人材の確保、養成及び資質の向上に必要 な施策を講ずるに当たって、大学、専修学校、関係団体等との連携協力を図る旨 の規定を加えるものとした。
10 心の健康の保持に係る教育及び啓発の推進等(第17条関係)
(1)国及び地方公共団体が講ずべき職域、学校、地域等における国民の心の健康
の保持に係る施策として「心の健康の保持に係る教育及び啓発の推進並びに相 談体制の整備、事業主、学校の教職員等に対する国民の心の健康の保持に関す
る研修の機会の確保」を規定するものとした。
(2)国及び地方公共団体は、(1)の施策で大学及び高等専門学校に係るものを講
ずるに当たっては、大学及び高等専門学校における教育の特性に配慮しなけれ ばならないものとした。
(3)学校は、当該学校に在籍する児童、生徒等の保護者、地域住民その他の関係
とした。
11 医療提供体制の整備(第18条関係)
心の健康の保持に支障を生じていることにより自殺のおそれがある者に対し必
要な医療が早期かつ適切に提供されるよう国及び地方公共団体が講ずべき施策と して「良質かつ適切な精神医療が提供される体制の整備」及び「精神科医とその 地域において自殺対策に係る活動を行うその他の心理、保健福祉等に関する専門 家、民間の団体等の関係者との円滑な連携の確保」を規定するものとした。
12 必要な組織の整備(第25条関係)
政府は、自殺対策を推進するにつき、必要な組織の整備を図るものとした。
第3 施行期日
本法は、附則の一部(公布日施行)を除き平成28年4月1日から施行するもの
とした。
第4 その他
(1)地方公共団体における事務の用に供するため、本法の概要資料(参考1)、自
殺対策基本法の新旧対照表(参考2)及び改正後の条文(参考3)を添付するの で、本通知と併せて参考にされたい。
(2)「内閣の重要政策に関する総合調整等に関する機能の強化のための国家行政組
織法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第66号)に基づき、平成28年4 月1日に自殺対策の推進業務が内閣府から厚生労働省に移管されることになる。 これに伴い、内閣府自殺対策推進室は廃止され、同室の業務については、新たに 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課に設置される自殺対策推進室に引 き継がれることになる。なお、業務移管後の連絡先等については別途事務連絡を
発出する予定である。