社会医学実習(西山班)
班:青木さん、岡部さん、武内さん、竹原さん
臨床シナリオ
最近足のむくみを感じた青木さんが、むくみの予防法をいろいろ試したいと考えた。
放課後に弾性ストッキングをはいて徒歩で帰宅しているが、それがむくみの予防になってい るのか気になり、この臨床疑問について EBM の4ステップを行うことにした。
臨床疑問の定式化 P)足にむくみのある人が E)足を圧迫すると
C)圧迫しない場合と比較して O)むくみが改善するか エビデンスの検索
PubMed:「足の圧迫」という用語は漠然としているため,とりあえず「弾性ストッキング」で検索する ことにし,その MeSH タームの MeSH="Stockings, Compression"[Mesh]を使うことにした。さらに,
「むくみ」の専門用語として「venous insufficiency」を使うことにしたが,これに相当する MeSH ター ムはなかったため,検索式「("Stockings, Compression"[Mesh]) AND "venous insufficiency "」を 使うことにした。Clinical Queries: Type=” Therapy”, Scope=”Narrow”でこの用語を使い検索した ところ,30 件にヒットした。これだけの研究がなされているなら,系統的レビューもあるはずだと考 え,そのページの真ん中の列の系統的レビューの検索結果を見ると 20 件にヒットしていたため, 系統的レビューを調べたところ,今回の臨床疑問とはやや P がずれるが,以下の 1 件の系統的 レビューがもっとも解答を与えてくれそうであった。
Robertson L, Yeoh SE, Kolbach DN.Cochrane Database Syst Rev. 2013 Oct 15;10:CD006345.
このレビューの中をざっと読んだところ,包含基準を満たす RCT は 1 件だけということであった。 したがって,その RCT を批判的吟味することにした。
Weiss RA, Duffy D. Dermatologic Surgery 1999;25(9):701–4.
エビデンスの批判的吟味
チェックポイント
1 治療への割り付けはランダムに行われていたか.さらにこの割り付けは適切に隠蔽されてい たか.
→そもそもランダマイズされていない。全員が2種類の軽量圧縮ストッキングを着用して比較 している。
2 臨床試験に参加したすべての患者が試験の終了時点でどうなったかについて説明があるか. ITT 分析をしているか。
→ITT 分析されていない。健康で国際便で勤務している客室乗務員49人の中から19人を 研究対象としているが、残りの30人についての記載はなかった。
3 アウトカムは臨床的に重要か.
→OK. 主要評価項目である「軽量圧縮ストッキングの着用は浮腫の予防に効果的である」は 臨床的に重要である。
4 患者・治療者・評価者・データ分析者は,どの治療を割り付けられているかに対してブライン ドであったか.少なくとも,評価者はブランドであったか.
→そもそも研究デザインにおいて全員が2種類の軽量圧縮ストッキングを着用しているので ブラインドではない。
5 治療群と対照群は,臨床試験の目的である介入以外では同等に扱われたか. →軽量圧縮ストッキングの着用条件以外の部分では同等か否かの記載はなかった。
結果の定量化
以上より、評価に値しない。
エビデンスの臨床シナリオへの適用
この研究は、RCT でもなく、ITT 分析も行っていなかったが、軽量圧縮ストッキングは臨床的に効果 的であるとして治療に使われている。私たちが医師となってから十分に検討したいと思う。