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創作遊びと材料金庫の活用: 茨城大学機関リポジトリ

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お問合せ先

茨城大学学術企画部学術情報課(図書館)  情報支援係

http://www.lib.ibaraki.ac .jp/toiawas e/toiawas e.html

T itle

小学校における生活科と図画工作科を結ぶ教材研究 : 創

作遊びと材料金庫の活用

A uthor(s )

向野, 康江

C itation

茨城大学教育学部紀要. 教育科学, 67: 221-231

Is s ue D ate

2018-01-30

UR L

http://hdl.handle.net/10109/13451

R ig hts

(2)

小学校における生活科と図画工作科を結ぶ教材研究

創作遊びと材料金庫の活用

向野康江*

(2017 年 8 月 31 日受理)

Educational Materials which Tie SEIKASTUKA and

ZUGAKOSAKUKA in Elementary Schools

The Utilization of

SOSAKUASOBI and ZAIRYOKINKO

Yasue Kohno*

(Accepted August 31, 2017)

はじめに

小学校における生活科と結ぶ図画工作科の内容と指導方法を考案するとき,この両科目を結ぶ確 かな教材が存在したならば,きっと教材開発へのモチベーションも高まるであろうと予測する。本 稿は,学習指導要領に沿った教材開発の論理に立って,現在までに開発し実践してきた教材内容を 紹介しながら,「創作遊び」という教材を提案する。この提案は,すでに拙著『子どものための美 術教育―学校での図画工作科教育と家庭でのART教育―』(弦書房,2010年)で,簡単に紹介して

いる1)ものの,詳しい事例などは割愛している。また,『新学習指導要領』(文部科学省,平成29

年3月公示)(以下,『平成29年新学習指導要領)との整合性も検討していない。よって,あらた

めて「創作遊び」を「造形遊び」のように特色をもった意義ある活動として説明する。

1 『平成 29 年新学習指導要領』における「生活」と「図画工作」の目標

1-1 生活科と図画工作科の全体目標

小学校低学年に設定されている生活科は,『平成29年新学習指導要領』では,「第5節」で「生活」

の目標や内容が示されている。それによれば,科目としての全体目標は,

具体的な活動や体験を通して,身近な生活に関わる見方・考え方を生かし,自立し生活を 豊かにしていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

とある。さらに項目別に3つの内容が記述されているものの,全体目標を多少具体的に説明してい

       

*茨城大学教育学部美術教育研究室(〒310-8512 水戸市文京2-1-1; Laboratory of Art Education, College of Education, Ibraki University, Mito 310-8512 Japan).

向野:生活科と図画工作科を結ぶ創作遊びと材料金庫の活用 221

(3)

るだけである。一方,図画工作科は,「第7節」でその目標や内容が示されており,それによれば,

全体目標は,

表現及び鑑賞の活動を通して,造形的な見方・考え方を働かせ,生活や社会の中の形や色 などと豊かに関わる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

となっている。

3つの項目で示されている上記「次のとおり」の内容については,生活科が,

(1) 活動や体験の過程において,自分自身,身近な人々,社会及び自然の特徴やよさ,それらの

関わり等に気付くとともに,生活上必要な習慣や技能を身に付けるようにする。

(2) 身近な人々,社会及び自然を自分との関わりで捉え,自分自身や自分の生活について考え,

表現することができるようにする。

(3) 身近な人々,社会及び自然に自ら働きかけ,意欲や自信をもって学んだり生活を豊かにした

りしようとする態度を養う。

と述べられているのに対し,図画工作科では,

(1) 対象や事象を捉える造形的な視点について自分の感覚や行為を通して理解するとともに,材

料や用具を使い,表し方などを工夫して,創造的につくったり表したりすることができるよう にする。

(2) 造形的なよさや美しさ,表したいこと,表し方などについて考え,創造的に発想や構想をし

たり,作品などに対する自分の見方や感じ方を深めたりすることができるようにする。 (3) つくりだす喜びを味わうとともに,感性を育み,楽しく豊かな生活を創造しようとする態度

を養い,豊かな情操を培う。 と記述されている。

両科目での全体目標における類似点は,「生活を豊かにしていくための資質・能力を育成すること」 である。それぞれの3つの項目内容を統合すると,「生活を豊かにしていくための資質・能力」とは,

「社会及び自然を自分との関わり」で捉えた思考を,表現として創造的に構築できる力のことを指 していると考えられよう。その構築方法として,図画工作科における材料,用具の使用,表し方な どの工夫,発想・構想の能力の育成が活用されることともなる。

1-2 生活科と図画工作科との共有部分

さらに,生活科が小学校第1学年及び第2学年に設定されている見地から,両科目に共有可能

な部分を抜粋してみた。ただし,内面的な効果を求める部分については省いている。下記①~⑮が その結果である。

① 地域に愛着をもち自然を大切にしたり集団や社会の一員として安全で適切な行動をしたりす るようにする。(要約,学年目標・生活科)

② 活動のよさや大切さに気付き,自分たちの遊びや生活をよりよくするようにする。(要約, 学年目標・生活科)

(4)

④ (6)身近な自然を利用したり,身近にある物を使ったりするなどして遊ぶ活動を通して,遊

びや遊びに使う物を工夫してつくることができ,その面白さや自然の不思議さに気付くととも に,みんなと楽しみながら遊びを創り出そうとする。〔抜粋,身近な人々,社会及び自然と関 わる活動に関する内容・生活科〕

⑤ (8)自分たちの生活や地域の出来事を身近な人々と伝え合う活動を通して,相手のことを想

像したり伝えたいことや伝え方を選んだりすることができ,身近な人々と関わることのよさや 楽しさが分かるとともに,進んで触れ合い交流しようとする。〔抜粋,身近な人々,社会及び 自然と関わる活動に関する内容・生活科〕

⑥ (9)自分自身の生活や成長を振り返る活動を通して,自分のことや支えてくれた人々につい

て考えることができ,自分が大きくなったこと,自分でできるようになったこと,役割が増え たことなどが分かるとともに,これまでの生活や成長を支えてくれた人々に感謝の気持ちをも ち,これからの成長への願いをもって,意欲的に生活しようとする。〔抜粋,自分自身の生活 や成長に関する内容・生活科〕

⑦ 手や体全体の感覚などを働かせ材料や用具を使い,表し方などを工夫して,創造的につくっ たり表したりすることができるようになり,楽しく発想や構想をしたり,表現したり鑑賞した りする活動に取り組み,つくりだす喜びを味わうとともに,形や色などに関わり楽しい生活を 創造しようとする態度を養う。〔要約,図画工作科の第1学年及び第2学年の目標〕

また,「指導計画の作成と内容の取扱い」のなかで共有可能な部分は,

⑧ 児童の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。〔抜粋,生活科・図画工作科〕 ⑨ 障害のある児童などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指

導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。〔抜粋,生活科・図画工作科〕

⑩ 地域の人々,社会及び自然を生かすとともに,それらを一体的に扱うよう学習活動を工夫す ること。〔要約,生活科〕

⑪ 言葉,絵,動作,劇化などの多様な方法により表現し,考えることができるようにすること。 〔要約,生活科〕

⑫ 「A表現」及び「B鑑賞」の指導については相互の関連を図るようにすること。〔抜粋,図画

工作科〕

⑬ 適宜共同してつくりだす活動を取り上げるようにすること。〔抜粋,図画工作科〕

⑭ 各学年の「A表現」の指導に当たっては,活動の全過程を通して児童が実現したい思いを大

切にしながら活動できるようにし,自分のよさや可能性を見いだし,楽しく豊かな生活を創造 しようとする態度を養うようにすること。〔抜粋,図画工作科〕

⑮ 第1学年及び第2学年においては,土,粘土,木,紙,クレヨン,パス,はさみ,のり,簡

単な小刀類など身近で扱いやすいものを用いること。〔抜粋,図画工作科〕

そして,集大成的な部分は,幼稚園教育との繋がり,他教科との関連部分である。生活科は,幼 児期における遊びを通した総合的な学びから他教科等における学習に円滑に移行し,主体的に自己 を発揮しながら,より自覚的な学びに向かうことを要求している。一方,図画工作科は他教科等と の関連を積極的に図り,指導の効果を高めるようにするとともに,幼稚園教育要領等に示す幼児期 の終わりまでに育ってほしい姿との関連を考慮すること,特に,小学校入学当初においては,生活

(5)

科を中心とした合科的・関連的な指導や,弾力的な時間割の設定を行うなどの工夫をすることを要 求している。このことによって,積極的に図画工作科と生活科が連携する活動が望ましいと保証で きる。

一方,両科目において逆な部分もある。コンピュータなどの情報機器に関することでは,生活科 が,その特質を踏まえ,児童の発達の段階や特性及び生活科の特質などに応じて適切に活用するよ うにすることを進めるのに対し,図画工作科では「コンピュータ,カメラなどの情報機器を利用す ることについては,表現や鑑賞の活動で使う用具の一つとして扱うとともに,必要性を十分に検討 して利用すること」といった感じで,どちらかと言うと消極的な態度である。

2 .生活科で生きる「創作遊び」の提案 ―その概念と方法―

次に,どのような形で上記①~⑮を実践できるのか考えてみたい。その前に,図画工作科におい て,生活科には特に定めていない学習活動要素,学習ジャンルを押さえておこう。それは,「A 表

現」「B 鑑賞」である。「A 表現」には,「造形遊び」「絵や立体」「工作」という活動が明確に示され

ており,「B 鑑賞」では,低学年において「身の回りの作品鑑賞」と「自分たちの作品の鑑賞」活

動が提示されている。つまり,必ずA,Bの学習活動を通して「自分の感覚や行為を通して,形や

色などに気付くこと」,「形や色などを基に,自分のイメージをもつこと」へ導く。この点が生活科 との違いであり,図画工作科の特徴になっている。

図画工作科での特徴を押さえながら上記①~⑮を実現できる教材として,本稿で「創作遊び」と 命名する活動はどうであろうか。以下,①~⑮の観点で検討していこう。

2-1 「創作遊び」の概念

美術教育の教材には,主に次のような三つのパターンがある。

₁.材料からくる直観によって導きだされるところの‘つくる’という行為そのものを楽しむ活 動で,学習者には教材に対するイメージの形成が不要であり,感覚的要素によって支えられる 造形活動。「造形遊び」などはこの範疇に属す。

₂.材料を手に取ってその性質を確認したうえで,材料に接触して生じた直観に従ってイメージ を形成しながら製作していく教材。素材に触れて何をつくるか,次第にイメージを形成してい くので,イメージに沿って素材を選択していく方法ではない。菓子箱を用いたおもちゃ製作で は,菓子箱を手に取るうちに発想を促す。材料金庫を用いた「創作遊び」などはこの類に入る。 ₃.最初に何をつくるのかきちんとイメージを設定して,そのイメージに沿って材料や道具を選

び,最初のイメージどおりにつくり上げる教材,すなわち「イメージ設定教材」である。たと えば,郵便ポストをつくろうと計画したならば,まずデザインを描き,素材を選ぶ。それから 製作方法を検討していく。高等学校での工芸制作などは完全にこの範疇に属す。

(6)

授業の論理性は₃→₂→₁の順に難易度が高くなる。

そして,今回改訂の『新学習指導要領』「図画工作」科の中に,「造形遊び」という活動が示され ている。「造形遊び」は₁の教材パターンに属するものであって,本稿で提案する「創作遊び」は, 上記₂に属し,その概念は,「材料金庫,工夫,直観,イメージ設定,創作意欲,「ごっこ遊び」, 評定」といったキーワードで構成される。つま

り,「創作遊び」とは,材料群から導き出され た直観に基づいて,簡単なイメージ設定をしな がら工夫してつくり,完成した作品で遊ぶ教材 のことである。創作して遊ぶことをより活発に するために「材料金庫」(写真1)を活用すると

よい。「材料金庫」とは,日常の生活のなかで 捨てられないでいる美しいものや面白いものな ど,創作に活用できる材料を集めておくことで ある。互いの材料金庫の中身を交換し合うと「材 料銀行」にもなる。この種の教材は発達段階上, 低学年において効果的である。

「創作遊び」の具体例としては,

㋐ 小麦粉粘土でいろいろな料理をつくり,料理の鉄人を競った。

㋑ ダンボールを集めておいて,それで舟をつくり,サバイバルごっこをした。 ㋒ 自分のイメージで洋服をつくり,ブティックごっこをした。

㋓ おもちゃを考案し,おもちゃ屋さんごっこをした。

㋔ おはじき,きれいな包装紙,お菓子の箱,紐などを捨てないでとっておいたので,それを利 用して,お弁当箱の中味をつくった。そして,お弁当やさんごっこをした。

㋕ ストロー,きれいな包装紙,お菓子の箱,紐などを利用して鞄をつくった。そして,鞄屋さ んごっこをした。

㋖ きれいな葉っぱで,洋服をつくってファッションショーをした。 ㋗ ダンボールで,船やジープをつくり,サバイバルごっこをして遊んだ。 ㋘ 版画を彫り,年賀状と切手をつくってクラスで郵便局を開いた。

㋙ 互いの「材料金庫」を用いて「材料銀行」設置したうえで,それぞれが販売したい作品を作 り,デパート屋さんごっこをした。

㋚ 「材料金庫」の材料で魚をつくり,魚市場(築地)ごっこをした。

などである。これらの教材では,「ごっこ遊び」を通してつくって遊ぶと同時に社会のシステム を学ぶことができる。上記㋐~㋚のうち,㋘㋙㋚は特に社会科の要素が強い。㋘では郵便局のシス テムを,㋙ではデパートのお中元の宅配システム,㋚では魚市場のシステムを同時にまなぶからで ある。活動内容は図画工作的であっても,生活科と結びつけて題材を設定するとより効果的である。

写真1:材料金庫の例

(7)

2-2 「創作遊び」の方法 (1)材料金庫の用意

「創作遊び」を充実させるには,「材料金庫」の中身の充 実が不可欠である。授業者は,日頃から材料として使えそ うな物を集めさせておく。一週間前に家から持参するよう に指示しても,たいていは牛乳パックやトレーしか集めら れない。「創作遊び」での発想の豊かさは,「材料金庫」に おける材料の豊富さにある。

まず,学習者各人が写真1のような「材料金庫」の材料

を手に取る。眺めながらあるいは触りながら,どのような 作品をつくるかイメージする。ここでのイメージ形成は, アイデアスケッチ等で最初からイメージを形成しておくこ ととは違って簡単な形成に留まる。

(2)授業者による題材名の工夫

たとえば,写真2のような「野外フリーマーケットごっこ」を教材として考案したとしよう。まず,

題材名の工夫が必要である。題材名によって,製作する作品や開店する店のイメージが異なるから である。野外マーケットであれば,写真3や4のように,野外マーケットらしい作品が出来上がる。

逆に,写真5のように題材名を「ようこそセレブな銀座(ぎんざ)ストリートへ」と設定すると,

学習者(児童)はまず,「セレブ」の意味と「銀座」の「街(ストリート)」の情報を獲得すること になる。情報の獲得は,教師が映像を活用して伝授的にもたらしても,学習者による主体的な調査 報告材によるものでも,どちらでも学習者の実態に合わせておこなえばよい。情報の獲得と「材料 金庫」の中身との整合性によって,自動的に,自分が何の店を開店するか決まる。出来上がる作品は,

写真2:「野外フリーマーケットごっこ」

(8)

写真6,7にように,高級感が漂うものになり,値段のつけ方も違ってくる。導入段階で題材名を知っ

た学習者は,材料金庫の中身を吟味しながら製作に取り掛かる。たとえば,「材料金庫」の折り紙 を手に取るうちに,自分が何の店を開くか決めていく。

(3)売上伝票と電子マネーカードの用意

その間,教師は売上伝票1枚とクレジットカー

ドもしくは電子マネーカード1枚を用意してお

く。近年は,PasmoやSUGOCAなどの電子マネー

が身近である。売上伝票と電子マネーカードを各 人に配り,伝票の書き方,カードの使い方を説明 しておく。説明の仕方にはいろいろな形式が考え られる一方,子どもたちにデパートや商店街など で取材させるのもよい。

表1.売上伝票の形式

写真5:教育学部の大学生による「創作遊び」の     教材開発場面

向野:小学校における生活科と図画工作科を結ぶ教材研究

7

からである。野外マーケットであれば、写真3や4のように、野外マーケットらしい作品が出来上 がる。

逆に、写真のように題材名を「ようこそセレブな銀座(ぎんざ)ストリートへ」と設定すると、 学習者(児童)はまず、「セレブ」の意味と「銀座」の「街(ストリート)」の情報を獲得すること になる。情報の獲得は、教師が映像を活用して伝授的にもたらしても、学習者による主体的な調査 報告材によるものでも、どちらでも学習者の実態に合わせておこなえばよい。情報の獲得と「材料 金庫」の中身との整合性によって、自動的に、自分が何の店を開店するか決まる。出来上がる作品 は、写真、7にように、高級感が漂うものになり、値段のつけ方も違ってくる。導入段階で題材 名を知った学習者は、材料金庫の中身を吟味しながら製作に取り掛かる。たとえば、「材料金庫」の 折り紙を手に取るうちに、自分が何の店を開くか決めていく。

(3)売上伝票と電子マネーカードの用意

その間、教師は売上伝票1枚とクレジットカ ードもしくは電子マネーカード1枚を用意し ておく。近年は、3DVPRや68*2&$などの電子 マネーが身近である。売上伝票と電子マネーカ ードを各人に配り、伝票の書き方、カードの使 い方を説明しておく。説明の仕方にはいろいろ な形式が考えられる一方、子どもたちにデパー トや商店街などで取材させるのもよい。

表1.売上伝票の形式

売り上げでんぴょう(2年○組)お店の名前(○○○ )

しょうひん番号

1番(あるいは作品名)

2番

3番

1このねだん

100円

200円

350円

×

×

×

売れた数 各番号の合計

全部の合計→

「全部の合計」が「売上げだか」になります。計算ができた人は、先生に見せにいきましょ う。

写真5:教育学部の大学生による「創作遊び」の 教材開発場面

(9)

学習者は,開店する店舗のイメージが決定したら作品をつくりはじめる。ここで注意しておかね ばならないのは,つくって展示する作品は,くれぐれも商品見本である,ということを理解させて おくということである。これを理解しておかな

いと,製作した作品を実際に客人役に手渡さな ければいけないと思い込み,同一作品を何個も つくろうとする子が出現する。

作品ができあがったら店を開店して展示す る。各人,一店舗ずつ開店し,作品を展示しつ つ看板を掲げる。作品はあくまで商品の見本と して扱い,ディスプレイして作品が華やぐよう に,展示方法などを工夫させる。

学習者は2人1組になり,店番を隣の人に依

頼して,電子マネーカードをもって買い物に行 く。電子マネーカードには,あらかじめ消費で きる金額が設定されている。金額は各学校の学 習状況に応じて設定する。店を見てまわり,気 に入った作品があれば,自分の氏名を記入した 電子マネーをその店の店員役の児童に渡す。店 員役の児童は,電子マネーカードをお客役の児 童から受け取り,カードに商品の名前とその値 段,購入個数を記入する。同時に,自分の持っ ている売上伝票には,売れた作品(予約商品) 名の欄,お客様名の欄,個数欄を記入しておく。 最後にいくら売れたか集計して伝票を教師に提 出する。

表2.電子マネーの形式

表2.電子マネーの形式

学習者は、開店する店舗のイメージが

決定したら作品をつくりはじめる。ここ

で注意しておかねばならないのは、つく

って展示する作品は、くれぐれも商品見

本である、ということを理解させておく

ということである。これを理解しておか

ないと、製作した作品を実際に客人役に

手渡さなければいけないと思い込み、同

一作品を何個もつくろうとする子が出現

する。

作品ができあがったら店を開店して展

示する。各人、一店舗ずつ開店し、作品を

展示しつつ看板を掲げる。作品はあくま

で商品の見本として扱い、ディスプレイ

して作品が華やぐように、展示方法など

を工夫させる。

学習者は 人1組になり、店番を隣の

人に依頼して、電子マネーカードをもっ

て買い物に行く。電子マネーカードには、

あらかじめ消費できる金額が設定されて

いる。金額は各学校の学習状況に応じて

設定する。店を見てまわり、気に入った作

品があれば、自分の氏名を記入した電子

マネーをその店の店員役の児童に渡す。

店員役の児童は、電子マネーカードをお

写真7:高級弁当。値段は 円

写真6:銀座デパート内の店舗「花村」

○○小学校電子マネーカード(円)

買ったしょうひんの番号

(もしくは商品名)

・1

・ ・ ・

お店の名前

花村

ねだん(円)

500

買った数

合計

500

全部の合計

ざんだか

10,000から全部の合計を引くと「ざんだか」なります。

写真6:銀座デパート内の店舗「花村」

(10)

購入を予約して戻ってきたら,隣の人と交代して自分の店と隣の店の番をする。また,移動販売 しながら展示する方法も面白い。このように作品を商品に見立てることで,社会の仕組みを自分で つくった作品で遊びながら学ぶことができる。つまり,学習者を生活科への学習へと誘うことがで きるのである。

3  創作遊びでの鑑賞方法と評価・評定の例

「創作遊び」の評価規準・基準はどのように設定すればよいのか。最終的には,教材による学習 目標についてきちんと定めておく必要がある。創作遊びの種類の数だけ,様々な評価・評定の方法 がある。

たとえば,築地漁場を想定した「お魚(さかな)せりっこ大会(たいかい)」を実践したとする。 プロジェクターの映像ですでに築地の日常のせりの様子は学習している。写真8は,教師役がルー

ルなどを板書し,本時の活動の手順を説明し ている場面である。

各自が競りにかけたい魚を作成している。 写真9はそれらの1つである。写真10は,

この魚を競りにかける準備に入る場面であ る。全員,黒のポリビニール袋でつくった上 着と,新聞紙で作った帽子を被って臨場感を 出している。写真11は競り開始場面である。

競り人役が値段を釣り上げていくと,次第に,

写真8:授業開始導入部分

写真9:アルミホイルでつくった魚一尾とビー玉,   おはじきでそれらしく見せている氷。

写真10:競りの開始準備

(11)

差し出している自分の店の札が下り始める。そして最後まで札が上がっていた店が,その魚(作品) を競り落としたことになる。

このように,作った作品で社会のシステムを遊びながら学ぶことになる。この「ごっこ遊び」の 時間が,生活科目におけるお互いの作品鑑賞の時間になる。ここでの鑑賞行為は,作品を商品に見 立てながら実施されている。感動を呼ぶ作品ほどよく売れる。ただし,学習者から教師に提出され た売上伝票を,教師が直に下す評定の参考にはしない。

これらの「創作遊び」では,図画工作科の「B 鑑賞」の学習活動は,作品で「ごっこ遊び」し

ている最中に,商品の品定めとして実施 される。やはり,できのよい作品,面白 さを工夫した作品,すなわち感動を与え る作品がよく売れるのである。このよう な活動をとおして,学習者自身が他者と 自分との関係を考えながら工夫すること の重要性に気付くことが大切である。そ のための方法として,①たくさんつくる  ②丁寧に丈夫につくる ③お店をきれい に飾る ④他の人と違った品物をつく る,といった目標やルール作りも必要で あろう。

おわりに

最後に,学習目標として生活科と図画工作科との連携部分である①~⑮について検討する。「創 作遊び」による地域で行われる祭りでの「夜店屋さんごっこ」,要するに市場ごっこなどによっ て①③の目標は実施できる。また,自分たちでつくったもので見立て遊びをすることによって,② における活動のよさや大切さに気付き,自分たちの遊びや生活をよりよくするようにする目標,お よび④の〔学校,家庭及び地域の生活に関する内容(6))・生活科〕は実施できる。⑤の〔身近な人々,

社会及び自然と関わる活動に関する内容(8)・生活科〕も実施できる。⑥の〔自分自身の生活や成

長に関する内容(9)・生活科〕の目標も,「創作遊び」のなかでの作品製作や自分の役割を実践し

ながら,⑦の感覚などを働かせ,用具を使い,表し方などを工夫して,創造的につくったり表し たりすることができ,みんなが欲しくなる作品を考えるようになる仕掛けによって,達成すること ができる。

さらに,「指導計画の作成と内容の取扱い」のなかで共有可能な部分は,「創作遊び」見立てによっ て,⑧の児童の主体的・対話的で深い学びの実現を図ることができ,⑨はもちろんのこと,⑩の地 域の人々,社会及び自然を一体的に学習できる。「ごっこ遊び」は⑪の実現であり,劇化である。

そして図画工作科が注意を払っている「A表現」及び「B鑑賞」指導の相互関連を実現できている。

要するに,自分たちがつくった作品で「ごっこ遊び」をすることは⑫をおのずと実現させているの である。「材料金庫」が「材料銀行」になるとき,そこには⑬の適宜な情報交換や共同製作が成立

(12)

したりする。当然,「ごっこ遊び」のなかの「売上伝票」や「電子マネー」の見立てによって,数 の計算学習が成立し,各教科との連携も促進される。⑭の「児童が実現したい思い」や「楽しく豊 かな生活を創造しようとする態度」を育成する手掛かりになる。そこには,当然,図画工作科の⑮ の材料・道具の扱い方も学ぶことになる。よって,「創作遊び」という教材を提案する。

1)向野康江『子どものための美術教育―学校での図画工作科教育と家庭でのART教育―』(弦書房,2010年)

45-49頁.

参照

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