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学術雑誌掲載論文等

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Academic year: 2018

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タクサ No. 44 (2018)

  

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文一総合出版 2017年11月9日刊行 180 pp.

ISBN 978–4–8299–7221–2 2,400円+税

多彩極まる海洋プランクトンの世界を,職業柄, 主に大学生を対象に実習・講義を通して教育するこ とが多い.その際,我が国や欧米の教科書等を参考

にしても,種まで落とせないことが多々ある.その 事は,却って謎だらけのプランクトンの世界に興味 が尽きないものにしてくれる.しかし,自身の専門 範囲ならばいざ知らず(本書の有クラゲ類とクシク

ラゲ類の大半は山口県青海島での撮影で,稀少種ベ ニクラゲモドキは新参地等,日本海産の肉眼的“ク ラゲリスト”として有用),全般にわたってとなれば

種以上のランクへの落としどころが問題であろう. 今回,本書を手にした時,クラゲ類の他に多分類 群にわたる数々の素晴らしい写真にも信頼できる同

定と解説を施していると感心した.変態する海洋動 物の多彩で魅惑的な姿はまさに永遠の宝である.宝 探しに携わったお三方のご苦労は並ならぬものが

あったかもしれない.宇宙のオアシスである地球, 否“海球”で生きとし生ける現生動物33門(教科 書的配慮で分類)の大半が海洋暮らしなのは周知で ある.しかし,各種の生活史が全て分かっている種

は極めて少ない.確かに,昨今,得体のしれないプ ランクトンの正体を遺伝子鑑定で突き止めることが できる時代に徐々になってはきているのだが….

本書は25年もの歳月をかけて,日本の中部以南 各地(神奈川県・富山県から沖縄島周辺及び小笠原 諸島)の水深数m前後の海洋で撮影し,相当たく

さんのソースから選りすぐったものであろう.180

ページにわたって,メソ・マクロ・メガ動物プラン クトンの紹介を中心としている.多様な動物門の幼

生・幼稚体・仔稚魚・成体等が250種以上取り挙げ られているのである.特にイセエビとセミエビやイ

カ・タコ及び魚類の章はさすがに素晴らしい.登場 する浮遊生物一覧が,本書の最初の方で実物大で紹

介されており,多種多様のミニチュアのプランクト ンの代表選手の姿がオンパレードで一目瞭然で,関 心のある分類群へもすぐ飛べる.そして,各所に散

りばめられた宝石の様な生き物に目を見張らせられ る.日本初公開種も多々ありそうである.

本書の諸所に,背景の色をメインブラックから変

えて紹介しているもの,例えば3 mのサケガシラ属

や25 cmのイセエビ等は,ネクトンやベントスのこ

ともあるが,大形プランクトンとして,最長20 mに

達するとされているナガヒカリボヤ(1.2 m)にも目

を見張る.ウキゴカイ類の体長(50 cm)には度胆 を抜かれた.両者にはいつか海で出会いたい. こう して取り扱ったプランクトン全種のサイズを記録し

ている本書はとても労作である.ここで,評者が最 も興味ある有クラゲ類に再び目を向けると,例えば ベニクラゲ属の一種が10 mmとなっている.それ程

のサイズになるのは,北日本に分布するベニクラゲ で,口柄は紅色である.その色にならない南日本産 のニホンベニクラゲとチチュウカイベニクラゲは,

目下その半分位のサイズなので,どちらの種でも本 書での記録が特大・最大となるのかもしれない.

本書で取り扱われている動物門は,脊索動物(脊 椎動物と尾索動物); 半索動物; 毛顎動物; 棘皮動

物; 箒虫動物; 節足動物; 軟体動物; 環形動物(星 口動物を含む); 有櫛動物; 刺胞動物である.昨今, 本書の様なプランクトン撮影を狙う世界の浮遊系ダ

イバーも周知と思うが,本書をもってしても身近な 港湾や海の沖合に暮らすプランクトンの尽きせぬ未 『美しい海の浮遊生物図鑑』

若林香織・田中祐志(著)

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タクサ No. 44 (2018)

知の世界を,まだまだ堪能できそうである.という

のも,双眼実体顕微鏡を使って観察してみれば, もっともっと出現する動物たちが控えている.そし て,それらよりもさらに小さな放散虫,有孔虫,藍

藻なども存在しているが,これら動物界以外の生物 も本書の末尾で確かに紹介はされている.そういえ ば,本書の表紙裏にヘッケルの描いた放散虫の殻の 精密な造形美の隠し絵があった.このような生物

を,クロミスタ界等にも留まらず,本書漏れしたは ずの多くのソースを用いて,姉妹編の刊行も期待し たい.いずれも電子版で画像の自由拡大ができる

Versionもつくれればいいと思う.海球で生きてい

る地球生物は本当に奥深い.地球の命の宝箱であ る.電子顕微鏡を使えば海洋細菌も分かるだろう.

生産者である植物プランクトンも多様である.しか し,海球の汚染が富に懸念される昨今である.全生 物がその影響下にさらされないで,青く美しい海で

厳しい食物連鎖を切り抜け,健全な親に育ち,益々

豊かに生き続け,絶滅動物図鑑にならないようにし てほしい.

最後になったが,今後,本書は各地で実施される

臨海実習などでも大いに活用されるに違いない.ま た,大勢の一般市民にとっても,海洋国日本の豊か な自然芸術品を十分に鑑賞させてくれるだろう.プ

ランクトンの観察やその撮影のポイントも収録され ているので実用的でもある.また,フィールドへ持 ち運べる手頃なサイズともなっている.現に,かく いう小生も,本書と共にこの原稿を書きながらの漂

泊途上の陸生メガプランクトンで,水生に時折移行 もあって…

久保田 信

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