視覚機能と画像表現
( 2017 年 10 月 2 日)
浅井紀久夫
本日のポイント
• 感覚と知覚
• 視覚機能
• 眼球の構造
• 高次認知
• 画像の表現
• 混色
• 表色系
教科書 視覚機能
画像表現 2
感覚と知覚
• 感覚 (sensation)
– 刺激受容器とそれに続く脳(皮質感覚領)までの 神経活動に依存している意識経験
– 視覚、聴覚、触覚、嗅覚(きゅうかく)、味覚、運動 感覚、平衡感覚など
• 知覚 (perception)
– 感覚器官を通して、現存する外界の事物や事象
感覚生理学の基本
• 感覚器官
– 目、耳、鼻、舌、…
• 感覚の種類
– 五感(視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚)
• 感覚の質
– 感覚上の印象の違い – 例:視覚明るさ、色
• 感覚の量
– 感覚の強度を量という
• 感覚の閾
– 反応を生み出す最も弱い刺激
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主観的感覚の強さ
• ウェーバー・フェヒナーの法則
– 刺激の強さSを変化させて、S+ΔSとする
かろうじて、この二つが等しくないと認めれば、ΔSが弁別閾である
– ΔS/S = 一定
刺激の変化の大きさは、刺激の大きさに比例する
• スチーブンスのべき関数
– 刺激の強さSを広い範囲で変化させ、標準刺激と比べる
S0を標準刺激とする
– I = K(S-S )n
ヒトの視覚
• 光学結像系
• 信号生成系
• 信号伝達系
• 信号処理系
眼球部分
大脳後頭葉
神経
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眼球の構造
• 直径:約20 mm
• 角膜:集光と保護
– 光を屈折させるレンズ機能を持つ
• 水晶体:焦点調節
– 厚さや曲率を変え、網膜に映る像の ピントを合わせる
– 注視時、その像は中心窩に結ばれる
• 虹彩(iris):入射する光量を調節
– 2-8 mm
眼球の構造
水晶体
網膜の仕組み
• 網膜:光電気変換
– 視細胞(桿体と錐体)によって、光を感受する – カメラのフィルムに相当
• 桿体
– 周辺視野機能
– 感度は高く、暗い環境でも働く – 色を感じない
• 錐体
– 中心窩(ちゅうしんか)に密集 – 感度は低く、明るい環境で働く – 色を感じる
網膜における視細胞の分布
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中心窩と盲点
• 中心窩
– 視力が最も良い部位 – 視野角約0.5度
• 盲点
– 中心視野から耳側に視野の欠けている部分
– 眼球に入った光は視細胞で光に電気信号に変換 され、視神経を伝って乳頭から脳に伝達される
眼球運動
• 高速運動
– サッケード:見たい対象に素早く眼球を動かし、 視点を移動する
– 例:次の行の先頭に視点を飛ばす「ココから」 – 「ココまで」
• 低速運動
– 追従運動:運動対象を視線で追うとき発生する
• 固視微動
– 微小振動:不規則で、意識されない
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視覚の神経伝達
• 網膜から入った視覚信号は視神 経を通り、視交叉に入る
• その際、視野の右側にある物体
は網膜の左側に映像として知覚 され、両眼から左側の外側膝状 体(がいそくしつじょうたい)を経 由して左側後頭葉の視覚野に 入る
標準比視感度
• 視覚は、同一の光エネルギー が入射しても、波長によって異 なった明るさに感じる
• 比視感度
– 入射する光エネルギーに対する 波長ごとの感度特性を、最大値 が1になるように正規化
• 標準比視感度
– 国際的な標準特性として利用さ れる
– 錐体群:550 nmにピーク – 桿体群:507 nmにピーク
薄暗くなると、赤い色は見えにく くなる(プルキニエ現象)
標準比視感度
錐体及び桿体の吸収スペクトル
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視覚の基本特性
• 同化と対比
• 順応と残光
• 恒常性
同化と対比
• 同化
– 周囲の明るさと同じ方向に知覚が生じる
• 対比
– 周囲の明るさとの差を強調するように逆の知覚を 生じさせる
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順応と残効
• 順応
– 知覚系が環境変化に対応して変化すること
– 同一刺激に長時間さらされると、感度が低下する
• 残効
– 刺激消失後に、その刺激に知覚が影響を受ける こと
– 残像
周囲のパターンが消える!
(目を動かさないで、じっと真ん中の点を見つめる)
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恒常性
• 大きさの恒常性
– 網膜像サイズを奥行き距離の情報を使って、実世 界の大きさに変換・補正している
• 位置の恒常性
– 眼球や頭部が運動することで網膜像がぶれても、 世界は静止して知覚される
• 明るさの恒常性
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何色に見える?
白い紙はどこに持っていっても白く見える
空間の知覚
• 眼球運動性手がかり
– 調整:水晶体を制御する筋の 状態による絶対距離
– 輻輳:両眼の内転・外転運動
• 両眼性手がかり
– 両眼視差:左右眼に生じる像 のズレ
– ステレオグラム
• 単眼性手がかり(絵画的手 がかり)
– 遮蔽(重なり)、遠近法、テク スチャ勾配、陰影など
テクスチャ勾配による奥行き知覚
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空間知覚の精度
運動視差
調節と輻輳
空気遠近法 視野内の高さ
両眼視差
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自己運動の知覚
• 網膜に投影された運動
– 物体・対象の運動
小さい領域のバラバラな運動
手前にある運動
– 自己身体の運動
視野の広い範囲を占める整合的運動
奥に提示された運動
• 自己運動感覚(ベクション)
– 隣の列車が動いたのに、自分が反対方向に動いたと勘
高次知覚
• 知覚:ボトムアップ処理依存
– 形状や奥行き、運動
– 物体認識はできない 知識との照合が必要
• 認識:トップダウン処理依存
– 認識
– 知識と注意を要する
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何が見える?
色の濃度にとらわれる
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同時に二つを認識できない
http://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/
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色の表現法
• 混色方法
– 加法混色 – 減法混色
• 表色系
– CIE-XYZ表色系 – CIE-Lab表色系 – マンセル表色系
可視光
• 可視光:波長が 380 ~ 780nm の電磁波
• 赤外線: 780nm よりも長い波長の電磁波
• 紫外線: 380nm よりも短い波長の電磁波
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カラー画像
• 混色
– 異なる色を混合して、別の色をつくる
• 色の三原色
– 互いに独立した三つの色を適当な割合で混色す ると、任意の単一波長の色を生成できる
加法混色と減法混色
• 加法混色
– 白いスクリーン上に色を重ね
て投影することで、別の色を つくる
– 三原色:赤(R)、緑(G)、青(B)
• 減法混色
– 白い紙の上で絵の具を混ぜ 合わせて、別の色をつくる – 三原色:シアン(C)、マゼンタ
(M)、黄(Y) 34
表色系
• 色を表示する体系
– 必要性:共通の認識で色を伝えあう
– 色という感覚を、科学的にシステム化する方法
• 混色系
– 色を、心理物理量として定量的に扱う
CIE-RGB表色系、CIE-XYZ表色系
• 顕色系
–
CIE-RGB 表色系
• 三原色を R (赤、 700nm )、 G (緑、 546nm )、 B
(青、 436nm )とする表色系
– 一つの色は、一点で決まる
CIE(国際照明委員会)
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CIE-XYZ 表色系
• 人間の視覚特性を考慮して作られた表色系
– 人間が色として感じる単色光に等色するのに、 必要な三刺激値(R,G,B)を実験(等色実験)に よって求め、
– 等色関数として規定した
等色関数
• 任意の色は、RGBスペクトル三刺激値 、 、 で等色させることができる
– 部分的に負の値になる
等色関数
等色実験
) (λ
x y(λ) z(λ)
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仮想的なスペクトル三刺激値
• 正の値になるように、仮想的なスペクトル三刺
激値を定める
CIE-XYZ表色系の等色関数
– RGBの代わりに、次のような仮想的な三原色
XYZが使われる
+ +
=
+ +
=
+ +
=
B G
R Y
B G
R X
081 .
0 655
. 0 263
. 0
175 .
0 299
. 0 478
. 0
色度座標
• 明るさを無視
– 任意の色は、その色を表 すベクトルと、(1,0,0),
(0,1,0), (0,0,1)の三点を
頂点とする正三角形との 交点(x,y,z)で規定できる
X
Y Z
0
C
• X,Y,Z を三軸とする直交座標を考えると、
任意の色 C は三次元ベクトルで表現できる
– ベクトルの方向:色味
– ベクトルの長さ:色の明るさ
(1,0,0)
(0,1,0) (0,0,1)
(x,y,z)
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色度図
• 色度座標 (x,y,z) を、三刺激値
X,Y,Z を用いて表すと
x=X/(X+Y+Z) y=Y/(X+Y+Z) z=Z/(X+Y+Z)
– このとき、x+y+z=1の関係から 色度座標(x,y,z)は二次元座標 (x,y)
X
Y Z
0
C
(1,0,0)
(0,1,0) (0,0,1)
(x,y,z)
xy 色度図
• スペクトル軌跡
– 外側のつりがね状の曲線
軌跡に沿って最も純度の高 い単色光が並んでいる
– 人が知覚できる色はすべ
て、スペクトル軌跡(380
~780nmの点)とその両 端を結ぶ直線(パープル・ ライン)で囲まれた領域内 に表される
xy色度図
パープル・ライン
NTSCで表現できる 色の範囲
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YIQ 信号
• RGB の代わりに、輝度信号 Y と色差信号 I 、 Q
を用いる
– テレビジョン方式の一つであるNTSCで使われて いる
– 輝度信号(濃度値)が得られるため、カラー画像 から白黒画像への変換式としても使われる
= + +
+ +
= R G B
Y 0.299 0.587 0.114
マンセル表色系
• 色を、心理学的な観点から三属性 で定義
– 色相:色の違いを示す
マンセルの色相環
– 明度:各色相の明るさを示す
黒から白までの11段階
– 彩度:色の鮮やかさを示す
無彩色グレーから最も鮮やかな色まで
• マンセルの色立体
– 三属性を立体的に表現したもの
• マンセルの色相環
– (五色+中間色)×10 = 100色相
マンセルの色相環 マンセルの色立体
色相 明度
彩度
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課題例
HDRI (High Dynamic Range Image)
写真:microsoftクリップアート
トーンカーブ@GIMP
HDRI変換@Qtpfsgui
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実写映像と CG の物体を合成
• モーショントラッキング(Voodoo Camera Tracker)
• 3DCG(cinema4D)
• 画像編集(Photoshop)
3D スキャン
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Qlone
スマホとパターン紙で 3次元物体の形状を取得
(3Dスキャンは無料だけど、 それ以上は、、、)
今日の動画
• お前の考えていることは、全部まるっとお見
通しだ!!!
視覚信号再構成
提示画像
(脳活動)
画像の単 位要素
再構成された 画像
画像要素 の識別
多重解像 度の組合
せ
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