平 成 27 年 度
三原市の農業振興施策に関する
建 議 書
平成26年10月29日
三 原 市 農 業 委 員 会
はじめに
日本の農業・農村は,生産活動を通じて,安全で安心良質かつ多様な食料を生 産・供給するとともに,自然環境・原風景・景観の保全,水源涵養,地域コミュニティ の維持,活性化,更には代々伝わる祭り等の地域文化の継承など大きな役割を果た しています。
また,近年三原市民の生活様式の多様化,健康志向・環境意識の広がりの中に あって,社会を安定させる基盤として,農業の多面的機能と存在価値への期待はさ らに高まっています。
しかし,本市を取り巻く農業の現状は,担い手の減少と高齢化,耕作放棄地の増 加,有害鳥獣や近年の異常気象による被害の拡大など,課題が山積しています。
昨年のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加で,農業を取り巻く環境は世界 規模で大きく変わろうとしています。
このような状況の中,本市では集落法人の経営強化に向け,法人の合併や米に 変わる栽培品目の導入などを推進するため,平成26年度中に,三原市農業振興ビ ジョンの新たな実施計画を策定し,数値目標や支援策を盛り込むとされております。
新たな計画を実現するためには,農業関係者が誇りを持ち,努力を続けることは 第一義ですが,行政の強力な施策展開が不可欠です。
農業委員会としましても,農業者の代表機関として,その役割と責任の重さを十 分認識し,多様な課題に対しての解決に向け,積極的に取り組んでいます。
現況における重要課題を別記のとおり取りまとめましたので,市当局におかれま しては,平成27年度予算編成において格別の配慮の上,建議項目の具体化につい て特段のお取り計らいを賜りたく,農業委員会等に関する法律第6条第3項の規定 に基づき,ここに建議いたします。
Ⅰ 担い手の育成・確保について
市内の農業地帯では,過疎・高齢化・後継者不足が深刻となっており,農業を継続し , 農地を維持することが困難となっています。特に中山間地域においては,集落機能の維 持すら危ぶまれる状況にあります。
経営形態としては農業法人から専業大規模農家,兼業の中規模農家,自給型の小 規模農家や集落営農と様々ですが,これらの農業者と地域住民との共助により農村を 守っている状況で,今後の三原市の農業農村の姿を考えると非常に心許ない現状があ り,今,現在作成されている農業振興ビジョンのもと,それぞれの地域の特性を活かし た対策が必要となっています。
(1)様々な規模・形態の地域担い手の育成
市内の農業農地の現状から,農家の分類を専兼業別に整理し,市独自の指針を打ち 出し,担い手を育成する必要があります。
現在でも,意欲ある農家は,米以外にも野菜・果樹などの多様な生産を行うとともに 露地・施設栽培とそれぞれの工夫をしながら,営農を継続しています。
このような,意欲ある農家に対して,市として地域性を加味し,整備・管理に係る事業 に対しては大きく助成を行い,育成していくことが重要と考えます。
分類として
1 ) 専業的に農業を行う中核的担い手 1
水稲など面的規模拡大型(概ね 20 h a 程度) 2
野菜・果樹など施設活用型 3
複合経営型
2 ) 副業的に農業を行う担い手 1
土地利用型(経営規模1 ~ 4 h a 程度) 2
親子共同経営
3 ) 自給農業を行う担い手( 0.5~ 1 h a 程度) 1
高齢者も含めた家族総援助型 2
趣味型
等が考えられ,これら規模・形態が様々な担い手農家を広範に育成し,地域の集落事 情に即した担い手として位置づけることが必要と考えます。
(2)次世代の担い手の育成
現在,市内には認定農業者・法人経営体が 91 件育成されてきていますが,高齢 化や後継者不足が進み,現在の担い手農家が廃業し,減少すれば遊休荒廃地の増加 に直結し,環境面からも大きな影響を及ぼすことが危惧されます。
10 年後, 20 年後を考慮すると,新規に担い手となる農家の育成が急がれます。 今後,地産地消といった形態も増えつつある中,6次産業化に向けた取り組みも進め る必要に迫られ,三原市においても,独自に多様な経営体を育成して,担い手農家が安 定して経営に取り組み,また,新規就農者への助成や後継者確保のために市内での就 業機会を増やすとともに,次のような施策の推進を求めます。
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担い手の育成対策として, 1 )
次の用件を満たす後継者・新規就農者に助成されている青年就農給付金を単独市費 で盛り込み,内容を拡充し,早期の育成を求めます。
1 国・県の施策を活用して三原市園芸振興センターの継続的充実を図り,2年程 度の研修を終えた農業に意欲ある若者及び就農希望者に対し現在実施され ている新規就農者育成研修の拡充。
2 土地利用型の水稲等の経営では,就農当初 50a 以上からスタートし, 3 年 後には 1ha , 5 年後には 5ha 以上を目標とする農業者。
3 水稲+野菜・果樹等の複合型の経営では,当初 50a 以上からスタートし, 5 年目以降 1ha ~ 3ha を目標とする農業者。
4 施設型経営では, 10a からスタートし, 5 年目以降 50a ~ 1ha を目 標とする農業者。
5 農業は,家族の理解と協力が不可欠であり,特に女性の参画が必要であり , その感性と発信力・技術力が活かされる所得の配分等家族経営協定の推進 と相まって女性グループの設立・運営について検討。
6 担い手に農地を集積するにあたり,大型機械を個人または法人で保有すること は困難であり負担も大きい。現在の農業情勢を踏まえ,市と JA で共同購入い ただき,機械利用組合組織の設立。
2 )
新たな中間管理事業対象とならない農業者に対しては,利用権設定を活用して,後継 者や新規就農者へ農地をあっせんできる施策の更なる展開。
1 人・農地プラン等の施策にとらわれず,そのあっせんを後押しできる助成策創 設。
2 市が中心となって,意欲的な若者が三原市に残ってくれる,来てくれるための
『公募制度』を実施し,後継者,新規就農者の確保。
3 新規就農者の経営が安定するまでの初期段階において就労先をあっせんでき る体制,制度の確立。
3 )
認定農業者の新規・再認定には,経営面積や施設,機器の整備,または経営規模(所 得)によって議論されてきたが,そこに農業の若返りを目的とした,年齢による制限 を加える。
1 新規就農は 62 歳までとする。
2 認定更新時には 67 歳以上のものは後継者を指名する。
(3)担い手や集落を支援できる制度の取り組み
農業は地域との関わりがあって成り立つものであり,大規模農家だけでは点在狭小 農地の管理に困難性があります。また,高齢化した集落では農地の保全そのものに困 難性が生じています。このことから,地域の農業を周辺から支援できる,農業人材派遣 による労働力の供給確保や大規模農家との調整機能の創設や農地の外周管理に高 齢者を活用した支援団体創設の施策推進を求めます。
(4)農業行政に取り組む体制の整備
三原市が中心となって,県や農業関係機関と連携され,地域や農家の指導にあたら れたい。そのためには,農業・農政の専門職を育成していただき,長期に亘って展望が 拓ける一貫した農業行政に取り組む体制を求めます。
Ⅱ 有害鳥獣被害対策の強化について
有害鳥獣被害は,山林の荒廃や耕作放棄地の増加等から,年々加速的に発生してお り,農作物や農業施設への被害により農業生産意欲の減退をまねき,ひいては耕作放
棄地の増加・過疎化の要因ともなっている。また,農作物被害にとどまらず,車両との接 触等での人身被害など市民生活全般に及んでいます。
有害鳥獣被害対策の強化は,こうした状況について改めて調査を行い市民の鳥獣被 害に対する認識度を上げ,地域社会全体で道筋をつけることが重要であると考えます。
そこで,次のことを求めます。
1) 現在,補助事業予算を確保されている採択の基準を個人規模から地域規模へ の取り組みとされているが,地域全体で有害鳥獣対策にあたるための , 予算 増額。
2) 有害鳥獣免許およびワナ免許の所有者に対する助成を行い,特に新規就農者 を対象とした免許保有者の拡大と若返りを支援する体制の充実。
3 ) 有害鳥獣,特に猪・鹿・ヌートリアによる生態被害防止対策についての情報 提供・指導助言を充実すると共に,これら施策の継続的な実施。
Ⅲ 農業用施設長寿命化について
今まで,三原市域では国・県の予算をはじめ三原市の単独予算により多くの農業用 施設を施工されてきました。しかしながら,長い年月を経て,老朽化した施設の維持管 理に大変な労力を要し,管理が極めて困難な施設が多数あります。
そこで,農業用施設の延命化を図るため,三原市域全域の調査を行っていただき,施 設内容の精査をされ更新時期の到来している施設については,予算を確保していただ き,三原市の重要な農業財産であることを十分ご認識の上で,延命措置を図っていた だくことを求めます。
そのことが,将来にわたって安心安全な農業持続はもとより,三原市の予算抑制につ ながると考えます。
Ⅳ 農業振興地域整備計画の見直しについて
農振法は,自然的社会的経済的諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ること が必要であると認められる地域について農用地区域が指定されていると思いますが, 山林に囲まれた農地や,耕地部にあるが小面積で点在している農地について,今後
10 年以上にわたり農業上の利用を確保できない土地については,計画の見直しを求 めます。
Ⅴ 農業・農村の活性化対策について
農村は農業従事者のみならず様々な職業・年齢者が暮らす生活の場でもあり,地域 の活性化の源はそこに暮らす住民の多様性にあることから次のことを求めます。
1)農産物生産者が,三原市内外各企業に野菜等生産物を出荷する際,貯蔵施設が ないため,販売価格が確保できないことから,生産物の価格安定及び消費者への 新鮮野菜供給を図ることを目的に保冷庫等の貯蔵施設の設置。
2) 農業への関心の高まりに対応した市民農園・観光農園・オーナー制度等の導入 拡充,食農教育,農業体験学習や地域特産物の周知。
3) 農産物生産資材の高騰に対する農家対策への取組みや,堆肥・有機肥料による 土地づくりのためのシステム構築。
4) 農村の生産環境と生活環境は密接な関係にあることから,高齢者でも安心で安 全な営農が可能な環境整備の促進。
Ⅵ 農業委員会制度・組織改革について
農業・農村の発展を掲げ,農業者,特に担い手から見て,農業委員会が良くなり地域
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の農地利用の最適化が進むようになると思える改革とすることを目的に現在,国におい ても,進められているところである。
そこで,次のことを求めます。 1 )
農業委員会組織の体制整備と関係事務職員の充実強化。
・ 農業委員会事務局については,事務局員の適正な人事サイクルを図るなど事 務局体制の充実。
2 )
新たな処理事務に対応した財政的支援対策を検討。
Ⅶ 遊休農地の解消について
遊休農地対策は,国の「食料・農業・農村基本計画」においても重要かつ緊急な課題 として位置付けられています。
三原市においても,農業者の高齢化や後継者不足による農家数の減少,農産物の価 格低迷などから遊休農地は増加している現実があります。近年では,ほ場整備実施区 域においても発生がみられるようになってきています。
遊休農地対策は行政と集落・地域が一体となって取り組む必要があることから,今 後,市や再生協議会,関係機関の全面的な協力・支援を求めます。
Ⅷ その他
【経営所得安定対策について】
販売価格が生産費を恒常的に下回っている作物を対象に,その差額を交付 することにより,農業経営の安定と国内生産力の確保を図り,もって食料自給 率の向上と農業の多面的機能を維持することを目的とされています。
三原市では未整備地で耕作放棄地も多くあるなか,畑などは小面積分散型 のため,適した作目が少なく,対象作物が少ない状況にあります。田や畑を活 用した農作物を生産する農業者に対して直接交付される交付金について,農 地の基盤整備を図りつつ,県や国に土地基盤にあった対象作物の拡充を求め ます。
【女性農業委員の参画について】
女性の参画が言われて長く,農林水産業や農山漁村の活性化を図るために は,女性の能力を積極的に活用することが不可欠といわれています。国では第 3次男女共同参画基本計画が策定され,本市においても第2次三原市男女共 同参画プランが策定されて各種施策を進められていると考えます。
現在三原市農業委員会には2名の女性農業委員が在籍しておりますが,全 国農業会議所,広島県農業会議では女性農業委員のいない委員会をなくし, 30%の女性が参画できるような取組みを行っています。
三原市議会から女性を推薦いただけるよう,三原市からもご助言いただくよ う,求めます。