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はじめに 地方議会を取り巻く現状周知のように地方分権改革の課題の一つとして、議会改革がローズアップされており、先の地方分権推進委員会第二次勧︵一九九七年七月︶で、議会の機能強化と組織及び運営の活化が提言されて以来、地方議会の在り方は改革課題として認されてきた。また、二〇〇一年六月に出された分権推進委員会最終報告は、住民自治の拡充﹂が今後の重要な改革課題として位置づけら、団体自治の側面から住民自治への側面へと改革の重心が移中で住民自治の拡充策の一つとして地方議会の活性化が扱わ、またそのための法改正もなされた。しかしその後も、地方会の機能を十全に発揮させるための地方議会改革は分権改革 の重要テーマの一つとして取り上げられるようになっている。

さらにこれを引き継いだ第二八次地方制度調査会が二〇〇五年一二月に提出した﹃地方の自主性・自律性の拡大及び地方議会のあり方に関する答申﹄は、地方議会について、議会の自主性・自律性の拡大の観点から、議会の権限並びに長との関係など議会制度の基本的事項については法律で定めるとしつつ、その組織と運営はできるだけ議会の自主性・自律性に委ねるとされたところである。

⑵議会事務局研究会の設置

このような状況の中で、地方議会事務局はどうあるべきかを実務面から探るために、立命館大学の駒林良則教授の呼びかけに応じて議会事務局の在り方に関心を持つ有志が集まり、二〇〇九年七月に、﹁議会事務局研究会﹂を立ち上げた。参加したのは、

市 民 と 議 会 を 結 ぶ 議 会 事 務 局

高 沖 秀 宣

ぶ 調﹄︵。﹃﹂﹄︵﹁︶、﹃② ︶︵︶﹄稿

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議会と市民をつなぐ

筆者も含め主として関西を中心とする地方議会の事務局職員や議員、研究者であるが、中には遠く九州地区から参加の議員や事務局職員も入れて、現在では総勢一五名程度である。 その﹁議会事務局研究会﹂が二〇一〇年三月に、﹃今後の地方議会改革の方向性と実務上の問題、特に議会事務局について﹄という中間報告書︵以下、中間報告書︶を出した。三重県議会事務局が、この研究会の事務局的用務を一部お手伝いさせていただいている関係で、本リポートは、この研究会における議論を紹介することをベースにして、三重県議会での実務面での実態を根幹にしているが、全体として駒林説に依拠していることをお断りしておく。また、特に断りのない場合、意見にわたる部分はあくまで筆者の個人的見解である。

一 議会事務局研究会における議論経過

⑴中間報告書の全体概要

地方議会改革を支える条件整備として、議会事務局の体制強化が不可欠であることは、以前から繰り返し指摘され多くの提言がなされてきたところであるが、議会事務局の充実強化には人事面や予算面など多くの制約や課題があり、十分な整備が図られたとは言えない状況にある。今後、議会の監視機能や政策立案機能を強めて住民の負託に応えうる議会を構築するためには、議員だけでなく事務局職員も一体となって取り組むことが 討していく予定である。

公表された中間報告書によると、全体構成は、﹁事務局機能の見直し﹂と﹁事務局体制の強化について﹂の大きく二つに分かれている。 一つ目の﹁事務局機能の見直し﹂では、議会事務局の任務に関して、議会改革の進展を踏まえつつ、議会事務

議会事務局研究会名簿

駒林 良則(立命館大学法学部教授) ★代表 青木 正晴(三重県議会事務局議事課長) 池渕 佐知子(吹田市議会議員) 小西 義人(吹田市議会事務局議事課長) 沢村 功(大阪府議会事務局次長) 高沖 秀宣(三重県議会事務局次長) 辻 陽(近畿大学法学部准教授) 西峯 久美(五條市議会事務局係長) 樋本 伸夫(滋賀県議会事務局議事調査課長) 松本 勉(滋賀県議会事務局議事調査課主幹) 盛 泰子(伊万里市議会議員)

和田 恭典(福井県議会事務局議事調査課企画主査) 2010 年2月 20 日現在

欠かせないという認識のもとに、議会事務局研究会では議論を重ねてきた。

現時点では、前述の中間報告書が公表されているだけであるが、同研究会としては、議会事務局の将来像を提起できるまでには至らず、議会事務局の現状把握とその課題を整理するにとどまらざるを得なかった点は、物足りないと思っている。 この中間報告書にある実務上の諸課題をどう克服していくべきか、議会事務局が真に議会改革を支える存在になることを願って、同研究会では今後具体的な提言を視野に入れてさらに検

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の機能面から次の四つに整理している。議会運営を補助する機能議会の監視機能・政策立案機能を支援する機能議会と執行機関︵部局︶との調整的機能議会と住民との媒介的機能

議会と住民との関係この四つの機能のうち、本稿のテーマと関連するのは、④議と住民との媒介的機能であり、この機能について以下に述べ。二元代表制の下で、議会が政策形成能力を高めて執行機関に峙していくためには、究極的には住民との連携が必要となる。かし、執行部局側には多くの職員がいるのに対して、議会事局職員の人数は圧倒的に少ないのが実情である。こうした条の下で議会が真に政策立案を行うのであれば、議会外部からサポートとともに、住民との結びつきが重要となるはずであ。もっとも、議会と住民との連携は、執行部局がこれまでに様々住民参加の仕組みを築いており、住民参加は執行部局のいわ専売特許になっている。こうした状況を踏まえつつ、住民と連携を模索しなければならない議会は、住民の監視を受けつも、住民から多様なニーズを吸収し集約することにより、そ の政策形成に結びつけていかなければならない。

これまでに制定された議会基本条例においては、住民と議会との基本的関係に触れた規定が置かれている。例えば、三重県議会基本条例第一八条第一項は、﹁議会は、住民の意向を議会活動に反映することができるよう、県民の議会活動に参画する機会の確保に努めるものとする。﹂と定めて、県民の議会への参画の確保を定めている。 また、同条例第一九条では、議会の広聴広報活動を含む住民への議会情報の積極的提供及び発信、第二〇条及び第二一条では、住民による議会参画の前提として、委員会等や議会活動に関する資料の公開も、これに含まれることになる。つまり、情報発信には、議会側からの積極的な情報公開が伴われなければならないといえよう。

これらを整理すれば、︵ⅰ︶議会活動への住民参画の保障という側面と、︵ⅱ︶議会から住民に対するアプローチの側面とに分けることができよう。 ︵ⅰ︶については、議会活動の公開のほか、公聴会の開催、参考人の招致、議会独自の附属機関の委員への住民の就任が挙げられる。︵ⅱ︶については、議員が地域に出向いて行う議会報告会や説明会などが挙げられよう。

以上のように、議会と住民との関係は、議会への住民参画という要因と、議会側からの情報発信等による住民への議会活動

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議会と市民をつなぐ

の周知という要因によって成り立つ。このような﹁議会と住民との連携構築﹂を議会事務局としても積極的にサポートしていかねばならず、仕組みができたときの具体的実施作業を担わねばならない。このような事務局の機能をここでは﹁媒介的機能﹂と呼んでおく。

⑶議会と住民との媒介的機能

これまでの事務局のスタンスは、専ら﹁議員に顔を向けた﹂ものであった。つまり、議員の先にいる住民を意識してこなかったといえる。この議会と住民との媒介的機能は、こうした議会事務局のスタンスを改めることを求めるとも言える。この機能としては、次のような内容を持つものであろう。︵ア︶議会情報発信機能︵イ︶住民との窓口機能︵ウ︶住民情報収集機能

この三つの機能のうち、︵ア︶議会情報発信機能については、住民が議会活動に参画しやすくするためには、議会は、住民に対して、常に議会情報を発信していく必要がある。議会は、これまでも様々な手段で情報を発信してきたが、それによって住民が議会に﹁顔を向ける﹂ようになったか、言い換えると、議会に関心を持つようになったかというと、甚だ疑問と言わざるを得ない。 住民が議会に関心を持つためには、議会と住民が情報を共有することが必要であるが、今までは議会として住民が真に知りたい議会情報を提供できていないのではないか。例えば、重要な議会審議について、議会としての意思を住民に伝えたいのであれば、会議録だけでは不十分であると思われるので、その審議経過と結論を詳細に記した審議報告書を作成することは、情報公開という側面からも必要となるかも知れない。

次いで、︵イ︶住民との窓口機能であるが、この機能は、議会事務局が議会と住民との接点として位置づけられることを想定しているが、現状では、事務局がそうした機能を発揮しているとは言えない。 しかし、﹁窓口﹂機能は、単に情報を発信することや情報を収集することではなく、議会と住民との﹁溝﹂を埋めて、議会と住民との関係を結ぶことをその目的としている。今次の議会改革で議会が﹁住民に顔を向ける﹂ようになったのであれば、議会と住民との接点としての議会事務局の窓口機能は、より重要なものと位置づけられよう。

さらに、︵ウ︶住民情報収集機能についてであるが、議会の政策立案機能の向上にとって課題となるのは、いわゆる政策情報をいかに獲得するかである。これまでは執行部局からの行政情報に依拠してきた。しかし、それだけで議会の政策立案に十分であるとは言えない。議会が独自に政策立案するのであるから、

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行部局からの情報だけではなく多角的な情報収集をする必要あり、とりわけ、住民から情報を、執行部局を通じてではな、独自のチャンネルによって吸い上げることも必要となる。

二 住民三重県議会事務局連携

住民に分かりやすい議会運営の推進前述の︵ア︶∼︵ウ︶の三つの機能について、実際の三重県会の取組について述べてみたい。まず、三重県議会では、三重県議会基本条例の第三条に基本念に基づく基本方針を規定しており、同条第1号で﹁議会活を県民に対して説明する責務を有することにかんがみ、積極に情報の公開を図るとともに、県民が参加しやすい開かれた会運営を図ること。﹂と規定している。これを受けて、住民に分かりやすい議会運営の推進を図るた、同条例第一九条第二項により、議員で構成する広聴広報会︵委員一一人、副議長が座長︶を設置し、県議会における効的な広聴・広報の取組について協議・調整している。また、会議の公開、中継等の状況については、本会議をはじ、委員会、全員協議会、代表者会議まで原則全ての会議を公しており、さらには議長、委員長等の候補者や会派割当て等協議する役員改選の場までオープンとしている。さらに議会ホームページでは、本会議・委員会の会議録はも とより、常任委員会・特別委員会で配付する資料を、委員会当日の会議開始三〇分前に公開している。

それから、これも他府県ではあまり例がないかもしれないが、議長から、生の声で分かりやすく県民に議会に係る情報発信を行うことにより、議会活動への関心が高まるよう、議長定例記者会見を二〇〇七年六月から月に一回実施し、インターネットによる生中継と録画配信、会見録の公表を行っている。 そして、議員の議案等に対する賛否状況は、有権者が議員の行動を知る上で重要な情報であり、その情報公開を求める声が高まっていること、議決結果について県民に説明する責務があることなどから、二〇〇八年五月一六日以降の採決について議案等に対する議員別の賛否等の状況を議会ホームページで公表している。

また、学校からの申込みを受けて、児童・生徒・学生に対して、三重県議会の仕組みや議会改革の取組みについて、広聴広報会議の委員二名が直接出向いて分かりやすく説明し、質疑応答を行う﹁みえ県議会出前講座﹂を二〇〇七年九月から実施している。

⑵住民が参加しやすい議会運営の推進

次いで、住民が参加しやすい議会運営の推進としては、︵イ︶住民窓口機能と︵ウ︶住民情報収集機能とを合わせた機能であるが、議会の政策立案機能の充実に資するため、二〇〇〇年三

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議会と市民をつなぐ

月から、県民から直接議会に政策提言できる﹁政策提案制度﹂を設けている。提案は、広聴広報会議を経て、会派単位で議員に周知される。 また、各特別委員会の所管事項について県民から意見を募集するため、議会広報誌である﹁みえ県議会だより﹂に意見募集ハガキを刷り込んでいる。

さらには、議会基本条例制定後、会期の見直しを図り、定例会を年二回とし、会期を長くし開催しやすくなったこともあるが、県民の利害に関わる重要な案件の審査・調査に当たっては、県民の意見を聞くため、委員会で必要に応じ公聴会を開催している。 同様に、従来から招致していた参考人による意見聴取が、会期を長くしたために従来の二倍以上の参考人から意見聴取することになった。

それから、県民との意見交換の場であるが、二〇〇三年には﹁議長の県民ふれあいトーク﹂、二〇〇五∼二〇〇六年にかけて﹁県民ミーティング﹂を開催し、県民の意見等を集約し、正副議長から知事に提言を行った。 三 住民議会をつなぐ

⑴事務局体制の抜本的改善が必要

議会事務局の果たすべき任務については、議会改革の進展に 伴って、議事運営を中心とした狭い意味での議会活動の補佐や議員・会派に関連する庶務的事務の処理のような従来からの役割よりも、政策立案とか住民との連携といった今後強化されるべき議会機能に対応する役割の比重が増してくるであろう。

しかし、この機能を支える法的根拠を地方自治法は与えていない。そもそも、そうした機能を事務局が担うことを地方自治法は想定していなかったのである。したがって、当面は、議会基本条例等によりその明確な根拠が付与されることが必要となる。 これまでの議会改革論議については、地方分権推進委員会第二次勧告では、﹁議員とそれを補佐する議会事務局職員の調査能力、政策立案能力、法制能力等の向上を図るための研修機会の拡大と研修内容の充実に努めるものとする。﹂﹁事務局職員の資質の向上と執行機関からの独立性の確保を図る観点から、専門的能力の育成強化を図る共同研修の実施、︵地方公共団体︶相互の人事交流の促進等の措置を積極的に講じ、中核となる職員の養成、事務局の体制整備に努めるものとする。﹂とされている。

この第二次勧告における議会改革に対する学説の動向については、﹁議会事務局の充実には抜本的改善が必要﹂との次の見解が主張されている。 ﹁勧告は、こうした議会の役割の増加に応えられる議会の政

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能力の向上を要請している。しかし、町村の議会事務局体制現状は、こうした要請に応えるためにはその人員や能力におてあまりにも不十分である。勧告は、まさに、こうした整備すすめる方策として、議会事務局についての自治体相互間で人事交流や共同研修を提示しているが、町村の議会事務局の員が一般には数名程度であることで、その職務の大半を議事営関係に費やさざるをえないため、調査部門に割く余裕がいというのが実情のようである。従って、勧告の目指す議会務局の充実には抜本的改善が必要と言わねばならない。もっも議会にこれまでは真の意味での政策能力が必要とされていわけではなかった。しかし、勧告をうけて、自治体が真の地の政策主体への転換が求められているとき、政策・立案能力各地方議会がいかに主体的に向上させるかが重要である。地議会があるいは地方議会議員が自らの問題として取り組む認を深めたときに、事務局もその対応を真剣に迫られるであろ。﹂︵駒林良則著﹃地方議会の法構造﹄︵成文堂、二〇〇六年︶︶

住民と議会とをつなぐ存在へ以上のように、これまでの議会事務局体制は、主として議会議に関する経験や専門能力について人材育成を行う体制を整 えてきたと言えるが、今後は、これまでの議会慣例や思考にとらわれない姿勢が必要である。

そして、議会が﹁住民の方に顔を向ける﹂ようになり、議員や執行部職員のみならず、議会事務局職員もまた、住民を意識することが重要になってきている。つまり、これまでは議員の先にいる住民への意識がなかったわけであり、事務局職員は意識改革を迫られることになる。住民を意識することは自治体職員であれば当然のことであり、﹁議会・議員と住民との架け橋﹂であるとの自覚を持つことが重要である いみじくも駒林良則教授が﹃議会事務局の将来像︱議員のための存在から﹁住民と議会をつなぐ﹂存在へ﹄と議会事務局の将来像を示されている ように、今こそ議会事務局職員は、議会改革の裏方・サポーターの立場から改革の働きかけの立場へ、さらに﹁議員の面倒をみる﹂存在から、﹁住民と議会をつなぐ﹂存在へと変革すべきであると思われる。

1 ﹄︵ル 号 2 ﹄︵︶、﹄︵ス 

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