• 検索結果がありません。

化学数学 安藤耕司のページ chap03

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "化学数学 安藤耕司のページ chap03"

Copied!
24
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

3 章 常微分方程式

化学における1 階常微分方程式と言えば、まずは反応速度式である。本 章では、できるだけ反応速度論から例を引きながら、常微分方程式につ いて議論する。ただし、反応速度論そのものについては詳しくは説明し ない。時刻t における化学種 A の濃度を [A]tのように書く場合が多いが、 ここでは簡単のためA(t) または単に A と書く。

2 階常微分方程式については、強制振動子を例にとる。こちらは、分子 運動のモデルとして用いられることがある。例えば、分子振動や回転の 運動方程式に、媒質からの摩擦や、光電場による振動外力を現象論的に 加えたモデルである。

3.1 変数分離型

常微分方程式の初等解法で最も基本的なのは、変数分離型である。典 型的な例について計算した後、3.1.5 節で一般論をまとめる。

3.1.1 単分子 1 次反応

単純な1 次反応 A → P の反応速度は、 dA

dt = −kA (3.1)

と表される。k は速度定数である。導関数が自身に比例することから、こ の解は指数関数

A(t) = A(0)e−kt (3.2) であることが直ちに分かるが、丁寧に書くならば次のようになる。

(3.1) ⇒

dA A = −k

dt ⇒ ln A(t) = −kt + C

(2)

t = 0 とおけば C = ln A(0) なので、

⇒ ln(A(t)/A(0)) = −kt ⇒ (3.2)

補足 上では不定積分の後、積分定数Cを初期条件A(0)から決めたが、次のよ うに定積分として考えてもよい。

A(t)

A(0)

dA A = −k

t 0

dt ⇒ [ln A]A(t)A(0)= −k[t]t0

3.1.2 単分子 2 次反応

2次反応の速度式は、

dA

dt = −kA

2 (3.3)

と表される。この場合は、

dA A2 = k

dt ⇒ 1 A(t)

1

A(0) = kt

⇒ A(t) = A(0)

1 + ktA(0) (3.4) となる。

3.1.3 2 分子 2 次反応

反応 A + B → P が速度則

dA

dt = kAB

に従うとする。A(t) = A(0) − x(t) とおく。すなわち、x(t) は反応によ る減少分である。この反応では1分子の A と1分子の B が反応するの で、B(t) = B(0) − x(t) と書ける。(これとは異なった分子数比の場合に は、x(t) に適当な係数を付ければ良い。) さらに A(0) = a, B(0) = b と おくと、

dx

dt = k(a − x)(b − x)

∫ 1

(a − x)(b − x)dx = k

∫ dt

(3)

左辺の被積分関数を部分分数に分解する。 1

a − b

∫ ( 1 b − x

1 a − x

)

dx = k

∫ dt

ただしa ̸= b とする。a = b の場合は後で別に考える。t = 0 で x = 0 を 考慮して積分を実行すると、

1 a − b

( ln b

b − x − ln a a − x

)

= kt x について解けば、

x(t) = b(e

κt− 1)

eκt− (b/a), κ = k(a − b) となる。

長時間における振る舞いを調べよう。a < b のときは κ < 0 なので、 t → ∞ で eκt→ 0 だから、x → a となる。

練習問題 a > b のときはどうなるか。

以上のように、t → ∞ で x は a と b の小さい方に漸近する。これは、初 期濃度の小さい方が無くなるまで反応が進むことを意味する。

濃度A(t), B(t) で表すと、 A(t) = a − x(t) = (a − b)a

a − be−κt, B(t) = b − x(t) = (b − a)b b − aeκt

対称性から、B(t) の式は A(t) で a と b を交換したものに等しい。また、 a と b の大小により κ の符号が決まり、分母の指数関数が t → ∞ で発散 したり消えたりする。

a = b の場合には、

∫ 1

(a − x)2dx = k

∫ dt 1

a − x 1

a = kt x(t) = a akt 1 + akt

⇒ A(t) = B(t) = a 1 + akt よって、t → ∞ では x → a すなわち A(t) → 0 となる。

(4)

練習問題 (自己触媒反応) 反応 A → P が速度則 dA

dt = −kAP

を満たすとする。右辺に生成物P の濃度が現れている点が特異的である。 これは、生成物が反応を促進することを意味する。このような反応は自己触 媒反応と呼ばれる。A(0) = a, P (0) = p, A(t) = a − x(t), P (t) = p + x(t) とおいて、x に関する微分方程式を解け。

3.1.4 対向反応

次式のような対向反応

A⇌B

の正・逆反応ともに1 次反応とし、速度定数は kf, kbとする。このとき、

速度式は

dA

dt = −kfA + kbB dB

dt = kfA − kbB となる。両辺の和をとると、

d

dt(A + B) = 0

なので、和A(t) + B(t) は一定である。これは、物質総量の保存を表す。 初期条件をA(0) = a ̸= 0, B(0) = 0 とする。A + B は不変なので、

A(t) + B(t) = A(0) + B(0) = a これよりB(t) を消去すると、

dA(t)

dt = −kfA(t) + kb(a − A(t))

= −(kf + kb) (

A(t) − kba kf + kb

)

ここで、kba/(kf + kb) は定数だからその時間微分はゼロであることを利 用して、上式を

d dt

(

A(t) − kba kf + kb

)

= −(kf + kb) (

A(t) − kba kf + kb

)

(5)

と書き直す。括弧内を一つの関数と見れば、これは1 次反応と同じ形な ので、解は指数関数

A(t) − kba kf + kb

= (

a − kba kf + kb

)

e−(kf+kb)t

となる。整理すると

A(t) = A(0) kf + kb

[kfe−(kf+kb)t+ kb

] (3.5)

ここで、A(0) = a を戻した。上式の t → ∞ の極限を A(∞) = kbA(0)

kf + kb

(3.6)

とすれば、

A(t) = (A(0) − A(∞))e−(kf+kb)t+ A(∞) (3.7) となり、A(0) → A(∞) のつながりが見やすい形になる。

B(t) は B(t) = A(0) − A(t) から計算できる。

3.1.5 変数分離型の一般論

変数分離型

dA

dt = f (A) g(t)

のように、右辺がA だけの関数 f (A) と変数 t だけの関数 g(t) の積で 表される場合を変数分離型と呼ぶ。この解は

∫ dA f (A) =

g(t)dt

の両辺を積分することで得られる。

前節の反応速度論の例では、g(t) は定数だったので、上式の右辺は容 易に積分された。また、f (A) は A の多項式だったので、上式の左辺は 1/f (A) を直接または部分分数分解して積分した。

適当な変数変換により、変数分離型に帰着される場合がある。例えば、 dA

dt = f (A/t)

(6)

のように、右辺がA/t の関数で表される場合は、B = A/t とおけば、 dB

dt =

f (B) − B t に帰着する。

練習問題 p, q, r を定数として、 dA

dt = f (pt + qA + r) の形の場合は、B = pt + qA + r とおけば、

dB

dt = p + qf (B) に帰着することを示せ。

3.2 線形方程式

3.2.1 逐次反応

次式のような逐次反応

A−→ Bka −→ Ckb の各段階が1 次反応であるとすると、速度式は

dA

dt = −kaA dB

dt = kaA − kbB dC

dt = kbB

(3.8)

となる。両辺の和をとれば、 d

dt(A + B + C) = 0

これは、総物質量の保存である。初期条件をA(0) ̸= 0, B(0) = C(0) = 0 とする。

(7)

まず、A の速度式は単分子 1 次反応の場合と同じで、解は A(t) = A(0) e−kat

となる。これをB の式に代入すれば、 dB

dt + kbB = kaA(0) e

−kat

(3.9)

となる。左辺は、B(t) およびその微分の 1 次式になっている。次節で改 めて解説するように、このようなものをB(t) に関する線形微分方程式と 呼ぶ。上式の右辺をゼロとしたものを斉次、上式のように右辺が変数t の 関数になっているものを非斉次の微分方程式と呼ぶ。

斉次の場合はB の代りに ˜B と書くことにすると、 d ˜B

dt + kbB = 0˜ これは1 次反応と同じで、解は

B(t) = ˜˜ B(0) e−kbt

となる。この斉次解を参考に、非斉次方程式の解B(t) を B(t) = u(t) e−kbt

とおいてみる。すると、式(3.9) は u(t) の微分方程式として、 du

dt = kaA(0) e

(kb−ka)t

を与える。これは直ちに積分できて u(t) − u(0) = kaA(0)

kb− ka

(e(kb−ka)t− 1)

となる。B(0) = 0 より u(0) = 0 であるから、結局 B(t) = kaA(0)

kb− ka

(e−kat− e−kbt)

が得られる。次節で示すように、上記は非斉次の線形微分方程式を解く 一般的な手続きに従っている。

(8)

補足 C(t)については、上のB(t)を積分してもよいし、あるいは保存則 A(t) + B(t) + C(t) = A(0) + B(0) + C(0) = A(0)

から求めることも出来る。いずれにしても、

C(t) = A(0) (

1 + 1 ka− kb

(kbe−kat− kae−kbt) )

となる。

3.2.2 1 階線形常微分方程式の一般論

f (t), g(t) が与えられたとき、A(t) に関する微分方程式で、A とその微 分に関して1 次であるような

線形常微分方程式 (1 階, 非斉次)

dA

dt + f (t)A = g(t) (3.10)

の形のものを線形微分方程式と呼ぶ。上式で、右辺をゼロとした d ˜A

dt + f (t) ˜A = 0 (3.11) を斉次(homogeneous) 方程式、上式のように右辺に g(t) が残っているも のを非斉次(inhomogeneous) 方程式と呼ぶ。

斉次方程式の解A(t) が得られたとして、それを用いて˜

A(t) = u(t) ˜A(t) (3.12) とおくと、非斉次方程式(3.10) の左辺は

du dtA(t)˜ と簡略化される。

実際、斉次方程式(3.11) は変数分離型なので次のように解かれる。

∫ d ˜A A˜ = −

f (t)dt ⇒ A(t) = ˜˜ A(0) e0tf(τ )dτ (3.13)

(9)

よって、非斉次方程式(3.10) は u(t) の微分方程式として du

dt = 1 A(0)˜ e

t

0f(τ )dτg(t)

となる。これを積分すれば、 u(t) = u(0) + 1

A(0)˜

t 0

e0sf(τ )dτg(s)ds

両辺に式(3.13) の ˜A(t) を掛けることにより、式 (3.10) の解として、 1 階線形常微分方程式の一般解

A(t) = e0tf(τ )dτ (

A(0) +

t 0

e0sf(τ )dτg(s)ds )

(3.14)

を得る。前節の逐次反応の場合はf (t) = kb (定数) だったので、右辺に相 当する積分は容易だった。

上式は、1 階線形常微分方程式 (3.10) の解を与える一般的な公式になっ ている。個々の問題において上の公式をそのままあてはめても良いが、前 節で逐次反応について実行したように、上記の手続きに沿って計算を進 めることも容易である。その要点は、(1) まず斉次方程式を解き、(2) そ の解に新たな関数(ここでは u(t)) を掛けたものを非斉次方程式へ代入す ると直接積分できる形に簡略化されるというものである。これは定数変 化法と呼ばれる。

3.2.3 定数係数 2 階線形常微分方程式

2 階の微分方程式の代表例は Newton 方程式であろう。

外力F (t) の下にある質量 m の質点の座標を y とすると、Newton の運 動方程式は

d2y dt2 =

F (t) m

例えば、y を平衡位置からの変位として、ばね定数 k の調和振動子ポテン シャルV (y) = ky2/2 の下にあるとき、

F = −ky

(10)

となる。質点がまさつ係数ζ の媒質中にあるときは、速度に比例する摩 擦抵抗

F = −ζdy dt

を受ける。これら以外の力をg(t) とおく。例えば、質点が電荷 q を持って おり、外部から電場E(t) = E0cos ωt が掛かる場合には、

g(t) = qE(t) = qE0cos ωt (3.15) 等となる。以上を全て考慮すると、運動方程式は

d2y dt2 +

ζ m

dy dt +

k my =

g(t)

m (3.16)

となる。これは、定数係数で非斉次の2 階線形常微分方程式である。 定数係数2 階線形常微分方程式 (非斉次)

d2y dt2 + a

dy

dt + by = f (t) (3.17)

以後、簡単のため上式を

y′′+ ay+ by = f (t) (3.18) と書く。対応する斉次方程式は

y′′+ ay+ by = 0 (3.19) となる。以下に見るように、斉次方程式の一般解は比較的容易に得られ る。2 階の微分方程式なので、一般解は任意定数を 2 つ含むことになる。 補足 証明は省略するが、一般にn階の斉次線形常微分方程式には、一次独立 な解をn個作ることができ、それより多く作ることはできない。一般解はそれ らの一次結合で表され、その係数がn個の任意定数となる。例えば、2階の微分 方程式を解くことは2回積分することなので、積分定数が2つ出る。Newton 程式の場合であれば、2定数を定めることは、初期座標と初期速度の2つを定め ることに相当する。

いま、式(3.17) の一つの特解 y0(t) が分ったとする。これは y′′0 + ay0 + by0 = f (t)

(11)

を満たす。これを式(3.17) から引くと、z(t) ≡ y(t) − y0(t) で定義される z(t) は斉次方程式 (3.19) を満たすことが分かる。

z′′+ az+ bz = 0

よって、この一般解が任意定数c1, c2を含むz(t) として求まったとすると、 y(t) = y0(t) + z(t) (3.20) が非斉次方程式(3.17) の一般解となる。このように、

非斉次方程式(3.17) の一般解は、斉次方程式 (3.19) の一般解と、非斉 次方程式の特解の和で表される。

補足 上の議論からも直ちに分かるように、上記はより一般的なn階の線形微 分方程式(定数係数でなくてもよい)についても言える。

定数係数斉次方程式の解法は、以下が標準的である。微分演算子を記 号D = d/dt で表すことにすると、式 (3.19) は

(D2+ aD + b)y = 0 (3.21) と書かれる。ここで、変数λ に関する二次方程式

λ2+ aλ + b = 0 (3.22) を考える。これを、この微分方程式の特性方程式と呼ぶ。この解をλ1, λ2 とすると、式(3.21) は

(D − λ1)(D − λ2)y = 0 と変形される。そこで、

(D − λ1)y1 = 0, (D − λ2)y2 = 0

を満たすy1, y2を求めれば、これらの任意の線形結合は式(3.21) を満た す。上式は

(D − λi)y = 0 ⇒ y− λiy = 0 ⇒ yi(t) = cieλit (3.23)

(12)

のように、定数係数の1 階斉次線形微分方程式として容易に解ける。 λ1 ̸= λ2のときは、式(3.23) が独立な二つの解を与えるので、

z(t) = c1eλ1t+ c2eλ2t (3.24) が斉次方程式の一般解として十分である。

λ1 = λ2 (重解) のときは、式 (3.21) は

(D − λ1)2y = 0 (3.25) となり、上のような考察では独立な解は一つしか得られない。しかし、式 (3.25) に左から e−λ1tを掛け、恒等式

e−λ1t(D − λ1)y = D(e−λ1ty) (3.26) を2 回用いることにより

e−λ1t(D − λ1)2y = D(e−λ1t(D − λ1)y) = D2(e−λ1ty) = 0 が得られる。2 回微分したものが 0 となるのは 1 次式だから、

⇒ e−λ1ty = c1+ c2t ⇒ z(t) = (c1+ c2t)eλ1t (3.27) が一般解となる。

非斉次方程式(3.17) の特解を求めるにも、式 (3.26) を利用できる。 (D − λ1)(D − λ2)y = f

の両辺に左からe−λ1tを掛け、式(3.26) を用いれば、 D(e−λ1t(D − λ2)y) = e−λ1tf 積分して

e−λ1t(D − λ2)y =

t 0

e−λ1sf (s)ds + C

特解を求めればよいので、C = 0 とする。両辺に eλ1t e−λ2t を掛けて再 び式(3.26) を用いれば、

D(e−λ2ty0) = e1−λ2)t

t 0

e−λ1sf (s)ds 積分して両辺にeλ2t を掛ければ、特解y0(t) は

y0(t) = eλ2t

t 0

e1−λ2

τ 0

e−λ1sf (s)dsdτ (3.28) と求まる。

これはfg + f g = (f g)に他ならない。

(13)

まとめ 式(3.17) のような非斉次微分方程式を解くには、その特解を一 つ見つけ、対応する斉次方程式の一般解との和をとれば、それが非斉次 方程式の一般解となっている。斉次方程式を解くには、対応する特性方 程式(3.22) を考える。それが重解を持たないならば、指数関数の 1 次結 合(3.24) が一般解となる。重解を持つときには、式 (3.27) が一般解とな る。非斉次方程式の特解は、式(3.28) とすればよい。

3.3 連立線形方程式

3.3.1 逐次反応 ( 再考 )

3.2.1 節で扱った逐次反応

A−→ Bka −→ Ckb

を再考する。C(t) は保存則から求まるので、A(t) と B(t) のみを扱えばよ い。速度方程式(3.8) は

d dt

[A B ]

=

[−ka 0 ka −kb

] [A B ]

≡ K [A

B ]

(3.29)

のように行列形式で書くことができる。最右辺で行列K を定義した。 上式は、1 次反応の微分方程式

d

dtA = −kA A(t) = A(0)e−kt

を行列形式に拡張した形になっている。これと同様に、式(3.29) の解を [A(t)

B(t) ]

= eKt

[A(0) B(0) ]

(3.30)

と書けるかどうか検討する。行列の指数関数は eKt = I + Kt +(Kt)

2

2 + (Kt)3

3! + · · · =

n=0

(Kt)n n! で定義される。(1.3.3 節、定義 1.7) これを t で微分すれば

d dte

Kt = K + K2t + K3t2

2! + K4t3

3! + · · · =

n=1

Kntn−1

(n − 1)! = Ke

Kt

(14)

であり、確かに式(3.30) は式 (3.29) の解となっている。

よって、あとはeKtを計算すればよいことになる。それには、1.3.3 節で 見たように、K を対角化すればよい。今の例では、それは容易に可能で、

T−1KT =

[−ka 0 0 −kb

]

T =

[kb− ka 0 ka 1 ]

, T−1 = 1 kb − ka

[ 1 0

−ka kb− ka

]

となる。よって、 eKt = T

[e−kat 0 0 e−kbt

] T−1

= 1 kb− ka

[ (kb− ka)e−kat 0 ka(e−kat− e−kbt) (kb − ka)e−kbt

]

3.2.1 節と同様、初期条件として A(0) ̸= 0, B(0) = 0 とすれば、 [A(t)

B(t) ]

= eKtA(0) [1

0 ]

= A(0) kb− ka

[ (kb− ka)e−kat ka(e−kat− e−kbt)

]

となる。これは3.2.1 節の結果と一致している。

3.3.2 高階微分方程式

3.2.3 節で考察した 2 階の定数係数線形斉次方程式 (3.19) y′′+ ay+ by = 0

を再考する。z ≡ yにより新たな関数z(t) を定義すれば、上式は 1 階の 連立微分方程式

d dt

[y z ]

=

[ 0 1

−b −a ] [y

z ]

に帰着する。右辺の2 × 2 行列を K とおくと、微分方程式の解は [y(t)

z(t) ]

= eKt [y(0)

z(0) ]

(15)

となる。上式のK の固有値 λ は次式から求まる。

−λ 1

−b −a − λ

= λ2+ aλ + b = 0

これは、与えられた微分方程式の係数から決まる特性方程式(3.22) に他 ならない。

3 階の微分方程式

y′′′+ ay′′+ by+ cy = 0 であれば、z = y およびw = z = y′′ を導入すれば、

d dt

 y z w

=

0 1 0 0 0 1

−c −b −a

 y z w

となり、やはり連立1 階微分方程式に帰着される。

補足 n階微分方程式であれば、新たな変数をn − 1個導入することで、n変数 に関する1階連立微分方程式に帰着される。例えば、n階微分をy(n)と書くこ とにして

y(n)+ an−1y(n−1)+ · · · + a1y+ a0y = 0 が与えられたとする。

y0= y, y1 = y, y2 = y′′= y1, · · · , yn= y(n) のようにy0, · · · , ynを定義すれば、

d dt

 y0 y1 ... yn

=

0 1 0 · · · 0

0 0 1 · · · 0

... ...

−a0 −a1 −a2 · · · −an−1

 y0 y1 ... yn

となる。右辺のn × n行列をAとすると、その固有値λを決める特性方程式は λn+ an−1λn−1+ · · · + a1λ + a0 = 0 (3.31) である。

n = 3の場合に確認してみる。固有値を決める方程式は|A − λI| = 0すなわち

−λ 1 0

0 −λ 1

−a0 −a1 −a2− λ

= 0

(16)

である。左辺の3列目をλ倍して2列目に加えて真中の−λを消し、続いて2 目をλ倍して1列目に加えて左上の−λを消せば、

0 1 0

0 0 1

−a0− a1λ − a2λ2− λ3 −a1− a2λ − λ2 −a2− λ

= 0

となる。1列目について余因子展開すれば、右上の2 × 2部分は単位行列なので λ3+ a2λ2+ a1λ + a0 = 0

が得られる。同様の方法により、一般のnについて式(3.31)が導かれる。

3.4 Laplace 変換

線形常微分方程式の解法の一つにLaplace 変換による方法がある。

定義 3.1 t ≥ 0 で定義された関数 f (t) の Laplace 変換を L{f (t)} = F (s) =

0

e−stf (t)dt (3.32)

で定義する。s は上の積分が収束する範囲で考える。

補足 上式の積分があるs0で収束すれば、s > s0なるすべてのsで収束するこ とが示される。積分が収束する最小のs0を収束座標という。

よく使う関数の変換をいくつか挙げると、

例 3.1 a を定数として、 L{a} = a

s, L{e

at} = 1

s − a, L{t

n} = n!

sn+1 (3.33) L{sin at} = a

s2+ a2, L{cos at} = s

s2+ a2 (3.34) L{sinh at} = a

s2− a2, L{cosh at} = s

s2− a2 (3.35)

(17)

練習問題 式(3.33)–(3.35) を確かめよ

(ヒント: (3.34)(3.33)2式でa → iaとし、実部と虚部。) Laplace 変換の特徴は、次式のような微分の変換にある。

定理 3.1 微分の Laplace 変換

L{f(t)} = sF (s) − f (0) (3.36) L{f′′(t)} = s2F (s) − sf (0) − f(0) (3.37)

ただし、f, f′′は1 階および 2 階の微分を表す。上式のように、Laplace 変 換により微分演算は変数s の掛け算に置き換わる。

練習問題 上の2 式を確かめよ。

微分方程式への応用

以上を利用すると、微分方程式が簡単に解けることがある。 例 3.2 定数係数 1 階線形斉次型

f(t) + af (t) = 0 Laplace 変換すると、

sF (s) − f (0) + aF (s) = 0 F (s) について解くと、

F (s) = f (0) 1 s + a

右辺は式(3.33) の 2 番目の式の形なので、直ちに逆変換できて、 f (t) = f (0)e−at

が得られる。

このように、式(3.36) や (3.37) を用いて微分方程式を Laplace 変換した 式は、F (s) と s の単純な式になる。それを F (s) について解いたものを、 必要ならば部分分数分解し、式(3.33)–(3.35) と見比べて逆変換が見つか れば、微分方程式は直ちに解かれる。

双曲線関数 sinh x = (ex− e−x)/2, cosh x = (ex+ e−x)/2

(18)

練習問題 式(3.37) と (3.34) を利用して、 f′′(t) = −a2f (t)

を解け。(調和振動子の Newton 方程式はこの形である。)

次の定理は定義から容易に導かれ、応用において有用となる。

定理 3.2 F (s) を f (t) の Laplace 変換とすると、F (s + a) は e−atf (t) のLaplace 変換である。

証明 (3.32)から F (s + a) =

0

e−(s+a)tf (t)dt =

0

e−st{e−atf (t)}dt = L{e−atf (t)}

3.3

F (s) = 1

(s + a)2 ⇒ f (t) = te−at F (s) = s − b

(s − b)2+ a2 ⇒ f (t) = ebtcos at

練習問題 次の微分方程式を解け。

f′′(t) + f(t) − 2f (t) = −3e−2t, (f (0) = 0, f(0) = 1)

3.4.1 畳み込み (convolution)

次式の性質は特に重要である。

定理 3.3 Laplace 変換の積は、畳み込み積分の Laplace 変換である。 L{f (t)} · L{g(t)} = L

{∫ t 0

f (t − τ )g(τ )dτ }

(3.38)

(19)

証明 右辺は定義により、

0

dte−st

t 0

f (t − τ )g(τ )dτ

変数をtτ の組からτ u ≡ t − τ に変換すれば、積分は分離されて

0

0

due−s(τ +u)f (u)g(τ ) = L{f }L{g}

注意 上の変数変換は (u

τ )

= (1 −1 0 1

) ( t τ

)

と書けるので、変換のJacobian J =

1 −1 0 1

= 1 である。また、積分範囲は0 ≤ t, 0 ≤ τ ≤ tなので、(τ, t) 平面の第1象限で直線t = τの上側となる。この領域を覆うのに、直線t = τ + u を、t軸の切片であるuをパラメータとして動かすと考えれば、0 ≤ τ, 0 ≤ u 得られる。

例 3.4 定数係数 1 階線形方程式

f+ kf = g(t)

を考える。f (t), g(t) の Laplace 変換を F (s), G(s) とおく。両辺を Laplace 変換すると

sF (s) − f (0) + kF (s) = G(s) F (s) について解けば

F (s) = 1

s + kf (0) + 1

s + kG(s)

右辺第1 項は e−ktのLaplace 変換に比例している。第 2 項は e−ktLaplace 変換とg(t) の Laplace 変換の積であるから、式 (3.38) が適用される。よっ て、上式の逆変換は

f (t) = e−ktf (0) +

t 0

e−k(t−τ )g(τ )dτ

となる。これは、一般公式(3.14) と一致している。

(20)

補足 定数係数2階線形方程式の一般形

f′′+ af+ bf = g(t)

に応用してみる。Laplace変換は、

(s2F (s) − sf (0) − f(0)) + a(sF (s) − f (0)) + bF (s) = G(s)

⇒ (s2+ as + b)F (s) = (s + a)f (0) + f(0) + G(s)

F (s)に掛かる因子は、以前に考察した特性方程式(3.22)の左辺に他ならない。

その解λ1, λ2により、 F (s) = s + a

(s − λ1)(s − λ2)f (0) +

1

(s − λ1)(s − λ2)(f

(0) + G(s))

λ1+ λ2 = −aを用いると、 s + a

(s − λ1)(s − λ2) = 1 λ1− λ2

( −λ2 s − λ1

+ λ1 s − λ2

)

1

(s − λ1)(s − λ2) = 1 λ1− λ2

( 1

s − λ1 1 s − λ2

)

と部分分数分解される。これらの逆変換は指数関数となるので、

f (t) = f (0) λ1− λ2

(

−λ2eλ1t+ λ1eλ2t)+ f

(0)

λ1− λ2 (

eλ1t− eλ2t)

+ 1

λ1− λ2

t 0

(eλ1(t−τ )− eλ2(t−τ ))g(τ )dτ

1行目がf (0)f(0)を任意定数とする斉次方程式の一般解、2行目が非斉次方 程式の特解になっている。

応用例: 結合振動子

x(t), y(t) が次の連立運動方程式を満たすとする

¨

x(t) = −∂U (x)

∂x − cy (3.39)

¨

y(t) = −ω2y − cx (3.40)

簡単のため、自由度x, y ともに質量は 1 とした。あるいは、質量加重座標に変換し たと考えてもよい。

(21)

これは、ポテンシャルエネルギー

V (x, y) = U (x) +1 2ω

2y2+ cxy

から導かれる。第1 項は x に関するポテンシャル、第 2 項は y に関する調 和振動子ポテンシャル、第3 項は x, y 間の相互作用を表し、c は結合の強 さを表す定数とする。y の運動方程式を Laplace 変換すると

Y (s) = s

s2+ ω2y(0) + 1

s2+ ω2 ˙y(0) − c

s2+ ω2X(s) となるから、逆変換して

y(t) = y(0) cos ωt + ˙y(0)

ω sin ωt − c ω

t 0

sin ω(t − τ )x(τ )dτ

これを式(3.39) に代入すれば、y(t) は表から消えて x(t) だけを含む運動 方程式となる。上式の最後の積分を部分積分して

t 0

sin ω(t−τ )x(τ )dτ = 1

ω [cos ω(t − τ )x(τ )]tτ=01 ω

t 0

cos ω(t−τ ) ˙x(τ )dτ

と書き換えると、x(t) の運動方程式は、

¨

x(t) = −∂U (x)

∂x c2 ω2

t 0

cos ω(t − τ ) ˙x(τ )dτ + c

2

ω2x(t) + R(t) となる§。右辺第2 項の積分は速度 ˙x に掛かる摩擦の形をしており、時刻 0 から t までの履歴あるいは記憶に依存している

3.5 速度場と安定性

3.5.1 ロジスティ ック方程式

dy

dt = ay y(t) = y(0)eat

§x(t) を含まない項を R(t) = −cy(0) cos ωt − ωc ˙y(0) sin ωt −ωc22x(0) cos ωt にまとめ た。

Brown 運動を記述する Langevin 方程式に、摩擦の記憶効果を取り入れた「一般化 Langevin 方程式」は、上記と同様にして導かれる。

(22)

a > 0 ならば y は指数関数的に増大する。例えば、細胞分裂による増殖は この形の方程式に従う。このときa は増殖率である。

例えば、細胞数が増加するにつれ環境が悪化し、増殖率が減少すると して、これをa = b − gy と表すことにする。ただし、b > 0, g > 0 とす る。このときy(t) の変化を記述する微分方程式は

dy

dt = (b − gy)y (3.41) となる。これは、ロジスティック方程式と呼ばれる。

練習問題 式(3.41) を解け。

上の解より、t → ∞ で y → b/g に漸近することが分る。

速度場

dy/dt の符号が y の増減の方向を表すことに着目すれば、微分方程式を 解かなくとも解の大体の様子を調べることができる。

まず、式(3.41) の右辺は y = 0 と y = b/g で 0 となる。このとき y の変 化の速度が0 となるので、これらは停留点である。

次に、式(3.41) の右辺は 0 < y < b/g で正、y < 0 と y > b/g で負であ る。よって、前者の領域でy は増加し、後者の領域では減少する。これ らより、y = 0 の両側ではその点から離れていく向きにあり、y = b/g の 両側では引き込まれる向きにあることが分る。すなわち、y = 0 は不安定 点、y = b/g は安定点である。

3.5.2 Lotka-Volterra モデル

A と B の変化が次式で与えられるとする。 dA

dt = (p1− q1B)A dB

dt = (−p2+ q2A)B

(3.42)

ただし、p1, q1, p2, q2は全て正の定数とする。また、A > 0, B > 0 とす る。これはLotka-Volterra モデルと呼ばれるものの一種で、以下に説明 するように、餌食A と捕食者 B が共存する系のモデルと見なせる。

(23)

まず、第一式において−q1B の項が無いとすると、A は ep1tのように増 大する。しかし、−q1B の項があるためにこの増大は抑制される。すなわ ち、B の増加は A の増殖を抑制する。第二式について同様に考えると、B はA が無いと e−p2tのように減衰するが、A の存在がこの減衰を抑制する。

この方程式系の安定点は、(p1− q1B)A = 0 かつ (−p2+ q2A)B = 0 よ り、(A, B) = (0, 0) および (p2/q2, p1/q1) の二点である。また、

0 < B < p1/q1

dA

dt > 0, B > p1/q1 dA

dt < 0 0 < A < p2/q2

dB

dt < 0, A > p2/q2 dB

dt > 0

であるから、速度場の向きは図XX のようになる。この図から、軌道は 安定点(p2/q2, p1/q1) の周りを周回すると予想される。すなわち、餌食 A と捕食者B は、一方が増えたら他方が減るという具合に入れ違いつつ振 動する。

補足 (3.42)の第一式より、 1 A

dA dt =

d(ln A)

dt = p1− q1B

周回運動の周期をTとすると、ある時刻tから一周期積分して 0 = ln A(t + T ) − ln A(t) = p1T − q1

t+T

t

B(τ )dτ

これより、tからt + T の間のBの平均個体数が次式のように求まる。 1

T

t+T t

B(τ )dτ = p1 q1

同様に、(3.42)の第二式より、Aの平均個体数は式

1 T

t+T t

A(τ )dτ = p2 q2

となる。いま、何らかの環境の変化が生じて、式(3.42) dA

dt = (p1− q1B)A + αA dB

dt = (−p2+ q2A)B + βB

(24)

のように変ったとする。α > 0, β > 0とすれば、これはA, B両者にとって好都 合な変化である。式の上では、p1p1+ αに、p2p2− βに変ったことに相 当する。よって、平均個体数については

p1+ α q1

> p1 q1

, p2− β q2

< p2 q1

となり、Bについては増え、Aについては減る。すなわち、両者にとって好都合な変 化であっても、餌食Aの平均個体数はむしろ減少してしまう。逆に、α < 0, β < 0 とすれば、両者にとって不利な環境変化であり、この場合には捕食者の平均個 体数が減少する。これは、例えば害虫を駆除するために農薬を散布したところ、 害虫の天敵の方に打撃を与えてしまい、害虫がむしろ増加してしまうような現 象を説明する。

参照

関連したドキュメント

出版社 教科書名 該当ページ 備考(海洋に関連する用語の記載) 相当領域(学習課題) 学習項目 2-4 海・漁港・船舶・鮨屋のイラスト A 生活・健康・安全 教育. 学校のまわり

タンク・容器の種類 容量 数量 化学物質名称

一高 龍司 主な担当科目 現 職 税法.