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経済変動論
第 8 章 4.1 節 ( 成長会計 )
高尾 築
青森公立大学 経営経済学部
講師
2017/07/13
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0. アウトライン
第 8 章 4.1 節 成長会計 (教科書 pp.192-194)
0. イントロダクション
1. 成長会計
2. 1990年代日本の成長停滞
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失われた 20 年?
(1人あたり名目 GDP の国際間比較)出所:内閣府 平成26年度国民経済計算 確報 (フロー編) ポイントより抜粋
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実質 GDP 成長率, 日本(基準年: 2005 年)
出所:内閣府, 有斐閣『NLAS マクロ経済学』データベース
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成長会計
経済成長を経済学的に評価する上で,経済成長率(GDP成長率)の推 移だけでなく,
資本蓄積 労働力成長 技術進歩etc...
による経済成長への各貢献度を吟味すること(言い換えると,経済成 長の要因分解を行うこと)が重要となる.
以下では,ソローが考案した成長会計と呼ばれる考え方を学習する.
“Technical Change and the Aggregate Production Function” Rober M. Solow, The Review of Economics and Statistics, 1957.
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コブダグラス型生産関数
成長会計の分析を行うにあたり,まず経済全体の産出水準(GDP)が どのように決定されるかを考える.
経済成長を考察する場合のような長期の理論においては, GDPは生 産技術と生産要素(資本,労働)の投入から決まると考える.
Yt = AtK α t L
1−α
t (1)
Yt: t期のGDP
At: t期の全要素生産性(詳細は後述) Kt: t期の資本投入量
Lt: t期の労働投入量
α: 0から1の間の値をとるパラメーター
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具体的に数量分析を行う際には,
労働投入量(Lt): 労働力人口 (後述の計測では, 総労働時間 = 雇用 者数 ×1 人あたりの平均労働時間を用いて分析している.)
資本投入量(Kt): 現存する資本施設(土地は含まない)を実質 価格で評価したもの
1)有形固定資本
−建物及び建物附属設備 (住宅を除く)
−構築物 (交通施設、発電施設、通信施設等)
−機械及び装置
−船舶
−車両及び運搬具
−工具及び器具備品
−大動植物 (立木資産を除く。ただし、果樹は含める)
−建設仮勘定
−土地造成・改良 (土地取得を除く) 2)無形固定資本
−ソフトウェア
が用いられることが多い. Ytには実質GDPが用いられる.
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αの値について:
マクロ経済理論において(競争的な市場環境を考慮すれば), α の値は資本分配率, 1 − αの値は労働分配率に等しくなるこ とが知られている[詳細な証明は省略].
例えば, 労働分配率は「雇用者報酬/国民総所得」etc... の計算 で測定.
またこれらの値は,長期的に一定の値であることが確認されて いる.
※最新の研究では, αの値は近年上昇(1 − αの値は低下)して いることが指摘されている...
実際の分析では, αは0.3から0.4の間の値をとることが多い.
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労働分配率 (= 1 − α), 日本
出所: Penn World Table 8.0 より高尾作成
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労働分配率 (= 1 − α), 米国
出所: Penn World Table 8.0 より高尾作成
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全要素生産性(At): (Total Factor Productivity: TFPと略されること が多い)
(1)式より,この全要素生産性(At)が上昇すると,資本・労働の 投入水準が同一であっても,生産水準(GDP)が上昇することを 意味している.
つまり,資本や労働といった生産要素だけでは説明できない部 分を捉えたものである.
具体的には,技術水準,資本の質,労働の質,効率性etc...
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数値例(α = 0.40,青色: A = 10.0, オレンジ: A = 2.0)
Plotted by Mathematica 10.0
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以下では(1)式を用いて,どのように経済成長率の要因分解を行う かを解説.
まず数学準備として対数の計算方法について復習.
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.対数の定義 .
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xを正の数, aを1でない正の数とするとき, ay = x を満たす数yの値を
logax
と書く. ここでaを対数の底(てい), xを真数(しんすう)と呼ぶ.
(例) 103= 1000, log101000 = 3
参照: 「経済学で出る数学」(尾山, 安田) 2013 年 日本評論社
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.対数法則 .
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正の数a̸= 1, x, yと数pに対して次が成立: loga(xy ) = logax + logay
loga (x
y )
= logax −logay
loga(xp) = p logax
(例) log2(4x) = log24 + log2x= 2 + log2x (例) log2(x7) = 7 log2x
参照: 「経済学で出る数学」(尾山, 安田) 2013 年 日本評論社
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.ネイピア数 (オイラー数)e .
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... .
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e = lim
u→∞
( 1 + 1
u )u
e = 2.71828... .自然対数 .
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... .
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ネイピア数(オイラー数)eを底とする対数: logex
を自然対数と呼ぶ. 単にlog xやln xと略して表記することが多い. .自然対数の微分
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dln x dx =
1 x
参照: 「経済学で出る数学」(尾山, 安田) 2013 年 日本評論社
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(1)の両辺を自然対数をとると, ln Yt = ln(AtKtαL1−αt )
ln Yt = ln At+ α ln Kt + (1 − α) ln Lt
上式より,
ln Yt+1−ln Yt = ln At+1−ln At+ α (ln Kt+1−ln Kt) + (1 − α) (ln Lt+1−ln Lt) これを変形して,
ln (Yt+1
Yt )
= ln (At+1
At )
+ α ln (Kt+1
Kt )
+ (1 − α) ln (Lt+1
Lt )
(2)
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.対数近似 .
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... .
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任意のx ≈0について,
ln (1 + x) ≈ x
(意味) ある値xについて,それに1を足して自然対数をとったln (1 + x) は, xが0に近い値をとる時,上記のように近似できる:
証明: 板書にて
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ln(1 + x), x
Plotted by Mathematica 10.0
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ln(1 + x), x
Plotted by Mathematica 10.0
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(2)式を変形すると
ln
(Yt+1− Yt Yt + 1
)
= ln
(At+1− At At + 1
)
+ α ln
(Kt+1− Kt Kt + 1
)
+ (1 − α) ln
(Lt+1− Lt Lt + 1
)
(3)
(3)式に対数近似を適用 Yt+1− Yt
Yt
= At+1− At At
+ α
(Kt+1− Kt Kt
)
+ (1 − α)
(Lt+1− Lt Lt
)
(4)
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GDP成長率: Yt+1Y−Yt
t
TFP成長率: At+1A−At
t
資本成長率: Kt+1K−Kt
t
労働成長率: Lt+1L−Lt
t
であるので, (4)式は以下のように書き換えられる
GDP成長率=TFP成長率+α ∗資本成長率
| {z }
資本成長寄与率
+ (1 − α) ∗労働成長率
| {z }
労働成長寄与率
(5)
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ここで, TFP成長率以外は直接計測可能(ただし,資本・労働成長率の正
確な計測は困難を伴う. そのため,推計方法によって値が異なる). したがって, (5)式を変形して
TFP成長率= GDP成長率− α ∗資本成長率
| {z }
資本成長寄与率
−(1 − α) ∗労働成長率
| {z }
労働成長寄与率
(6)
(6)式を用いて, TFP成長率が計測できる. (6)式より, TFP成長率は GDPの変化のうち資本と労働が貢献した部分を取り除いた部分,つまり 資本や労働といった生産要素の投入だけでは説明できない残差を計測し ていると解釈できる. そのため, TFP成長率はソロー残差とも呼ばれる.
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TFP成長率は単純に技術進歩率と呼ばれることもあるが, 定義上, TFP成長率は様々な要素:
技術革新・新たなノウハウの発見
(価格で捉えられない)資本の質の変化: (例) IT投資 v.s. 伝統的な機械設備等の投資 労働者の質(人的資本)の変化
経済全体における生産要素利用の効率性の変化
(例) 生産効率の悪い企業から良い企業に生産資源が移る
⇒TFP成長率↑ ... Any idea?
を包括していることに留意.
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数値例
ある年のある国について以下のデータがあるとする: GDP成長率: 5.2%
資本成長率: 5.0% 労働成長率: 2.0% 労働分配率: 0.4
当該年のTFP成長率はいくらか?
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成長会計による要因分解, 日本 (1951-2011)
出所: Penn World Table 8.0 より高尾作成
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成長会計による要因分解, 米国 (1951-2011)
出所: Penn World Table 8.0 より高尾作成
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(Abstract) This paper examines the Japanese economy in the 1990s, a decade of economic stagnation. We find that the problem is not a breakdown of the financial system, as corporations large and small were able to find financing for investments. There is no evidence of profitable investment opportunities not being exploited due to lack of access to capital markets. The problem then and today is a low productivity growth rate. Growth theory, treating TFP as exogenous, accounts well for the Japanese lost decade of growth. We think that research effort should be focused on what policy changes will allow productivity to again grow rapidly.
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Hayashi and Prescott (2002)は, 1990年代の日本の不況の原因は大 きく以下の2点:
(1)TFP成長率の低下
(1983-1991年にかけてのTFP成長率は3.7%であったのに対 して, 1991-2000年にかけては0.3%にまで下落)
(2) 1988年の労働基準法改正に伴う週当たりの平均労働時間の
減少
にあることを指摘した.
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Hayashi and Prescott (2002)を契機に, TFPに関する様々な実証研 究が行われた. 労働や資本の計測方法に依存して,計測結果の違い はあるが,大方どの研究においても, TFP成長率が1990年代に一定 水準低下したことについて意見は一致している.
TFP成長率の原因は? still open question 2000年以降については? その他の国は?
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