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『しっかり基礎からミクロ経済学――LQアプローチ』関連資料 詳細|日本評論社 Ch8

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Academic year: 2018

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(1)

8

章 経営・政策分析への応用

(2)
(3)

● 〇〇

取引費用がある場合の需要と供給

 現実の社会では経済的取引に伴う様々な困難がある.こ

れを一括して取引費用という.

 財・サービスの購入・販売のための移動・輸送に伴う費用.

 売り手,買い手が信頼できるか分からない情報の非対称性を

緩和させるための調査や情報収集に伴う費用.

 生産活動により環境が破壊される場合その社会的な費用.

 単純化のため,取引費用を消費量・生産量に伴い生じる

定額の費用として定式化.

 消費者が 1 単位の消費を行うために必要な費用を T とする.

(4)

〇●〇

取引費用がある場合の需要と供給

消費者の効用最大化問題

 効用関数は従来と一緒.

 予算制約には取引費用.

効用最大化問題より,以下の需要関数・需要曲線

が得られる.

 需要関数

 需要曲線

需要曲線は

T

だけ下側にシフト

する.

(5)

〇〇●

取引費用がある場合の需要と供給

 生産者の利潤最大化問題

 生産関数は従来と一緒.

 収入関数は従来と一緒. 

 費用関数には取引費用.

 利潤最大化問題より,以下の供給関数・供給曲線が得られる.

 供給関数  供給曲線

(6)

● 〇

取引費用のある市場の市場均衡

 取引費用は企業のみが負担するケースに絞り,市場均衡を分

析.

S1Mは取引費用がない時, S2Mは取引費用がある時の市場供給曲線

 取引費用がない時の価格は P*

 ある場合は消費者の支払価格は P*’ ,企業の受け取り価格は P*’

E

P;価格

  S2M

 

市場需要曲線

E

o P*

S1M

 

市場供給曲線

DM

 

P*’

P*’E

Q*’ Q* DM S1M S2M ;需要量・供給

(7)

〇●

取引費用のある市場の市場均衡

 取引費用がない場合の消費者余剰は⊿ fab ,生産者余剰は⊿ oaf ,

  社会的余剰は⊿ oab の面積.

 取引費用がある場合の消費者余剰は⊿ edb ,生産者余剰は⊿ cde

,  社会的余剰は⊿ cdb .

 取引費用により,生産者だけでなく消費者の余剰も減少している

P;価格

  S2M

 

市場需要曲線

E a o e b c d P* f S1M  

市場供給曲線

g

DM

 

h

P*’

P*’E

Q*’ Q* DM S1M S2M ;需要量・供給

(8)

● 〇〇〇

取引仲介業者の役割

現実の経済では流通業と呼ばれる専門業者が取引を

仲介している.

取引仲介者

 1単位の財を生産者から PT で買い取り,消費者に手数

料 V を上乗せし, PT +V で販売するとする.

 仲介者は1単位の取引仲介につき Z の仲介取引費用を

負担する必要がある.

 V - Z >0 ⇔ V > Z であれば,取引仲介により利潤を得

(9)

〇●〇〇

取引仲介業者の役割

 企業と直接取引をした場合の消費者の支払価格は.

 消費者は仲介業者から PT +V で購入することができる.も

し,

  であれば,直接取引よりも仲介業者と取引したほうがよい .

(10)

〇〇●〇

取引仲介業者の役割

 消費者と直接取引をした場合の企業の受け取り価格は.

 企業は仲介業者に PT で販売することができる.もし,

 であれば,直接取引よりも仲介業者と取引したほうがよい.

 仲介業者の仲介取引費用が企業の取引費用を下回る場合

Z <E         (8.6)

 仲介業者と取引することが消費者・企業にとって望ましい.

 仲介業者も利潤を得ることができる.

(11)

〇〇〇●

取引仲介業者の役割

 仲介業者と取引することで取引量が Q*’ から QT へ拡大.

 消費者余剰は台形 eikd の分増加する.

 生産者余剰は台形 jghl の分増加する.

 仲介業者は (V - Z )QT (四角形 jlki )の利潤を得る. P;価格

  S2M

 

市場需要曲線

E a o e b c d i S1M

市場供給曲線

g

DM

 

h

P*’

P*’E PT + V

PT j

k

l

QT

Q*’ D

M, S1M , S2M;需要量・供給

(12)

● 〇

取引仲介業者が競争的または参入が自由の場合

 取引仲介者が競争的または参入が自由な場合

 既存の取引仲介者の利潤が正である限り,新規参入が生じる.  取引仲介者間で取引仲介の限界費用が同質的であるとする.  既存の仲介業者の仲介手数料が V0であるとする.

 新規参入者が V0 > V1 >Z というような手数料 V1 を提示すると,

既存の取引仲介者から顧客を奪うことができる.

 結果的に,

V

=

Z

   

      (8.7)

(13)

〇●

取引仲介業者が競争的または参入が自由の場合

 取引仲介の限界費用がゼロであり,取引仲介業者が競争

的である場合,

が成立する.

 市場均衡は,限界費用がゼロであり,競争的な取引仲介業者

が存在しているような市場を想定していることになる.

(14)

● 〇

現実の経済における取引仲介者の役割

 現実の経済における取引仲介者:卸売業や小売業が該当

 商品を購入して販売する事業所を卸売業や小売業という.ここ

で消費者に最も近い取引仲介者である小売業者に注目.

 経済産業省が 2011 年に実施した調査結果から日本の小売業に

おける手数料(マージン) V の大きさを確認してみよう.

 平均マージン率・・・商品の年間販売額に対する商品の平均的な手数料

の総額;の割合.平均マージン率が高いほど取引仲介者の手数料収入も

大きい.

表 8.1: 手数料(マージン)の割合

分類 平均マ(単: %ジン率 分類 平均マ(単: %ジン率

衣服・その他の繊維既製品 43.9 33.8

(15)

〇●

現実の経済における取引仲介者の役割

 日本の小売業は約 78万事業所存在⇒小売業者は競争的な環境で活動を行ってい

るともいえる.

 競争的な環境下で小売業者が活動しており手数料と仲介取引費用が等しいとい

う関係が成立していると仮定すれば, (8.6)式と (8.7)式から

という関係が成立する必要がある.

 これは,取引費用を企業のみが負担するという状況においては,企業の取引費

用は取引仲介者の手数料を上回るということを意味する.

 このように,単純化した分析の枠組みのもとでは,商品にかかる実際の企業の

取引費用は少なくないということが示唆される.

 現実の経済における様々な取引慣行・制度は,このような取引費用を節約する

ために存在しているといえる.

(16)
(17)

企業の参入が自由な場合

 利潤をあげられそうな市場では,企業は自由に参入する

という状況を考える.

 企業は同質的であるとする.

 企業の費用は生産量に応じて変化する可変費用と,生産

量に関係なく固定的にかかる固定費用からなるとする.

 総費用は次のように書き表せる.

可変費用 固定費用

(18)

限界費用と利潤最大化

条件

 利潤 は収入 Py から総費用を引いたもの

 企業の利潤を最大化する生産量は,

 利潤を最大にする生産量では,価格と限界費用が等しい

 固定費用は生産量の追加的な変化に関わらず必要なので,限界

費用には影響を与えない.そのため,限界費用に固定費用は含

まれない.

(19)

均費用と参入

条件

 企業は,ある市場で利潤をあげられるのであれば,参入

しようとするはず.

 左辺第1項は収入,第2項は総費用.両辺を y で割ると

  となる.総費用を y で割った右辺を平均費用という.

 価格が平均費用を上回るとき,正の利潤が発生するため,その市

場へ参入しようとする企業がいる.

 価格が平均費用と等しくなるとき,利潤がゼロとなるため,その

(20)

● 〇〇〇

自由参入のもとでの市場供給曲線

 個別企業の利潤最大化条件より以下が成立.

価格 = 限界費用

 企業が正の利潤を上げるためには以下が成立.

価格 > 平均費用

 企業が利潤を最大にし,かつ正の利潤を上げるための条 件

限界費用 > 平均費用

 上記の条件を前提とすると,市場供給曲線はどうなる

(21)

〇●〇〇

自由参入のもとでの市場供給曲線

 数値例: 以下の総費用曲線を考える.

で, W=4 , H=2 , F=4 として,

 限界費用は, より,

 平均費用は, より,

 平均費用は,で, で, で, で, で,…

 限界費用と平均費用は, で交点を持つ.

(22)

0 0.8 1.6 2.4 3.2 4 4.8 0 5 10 15 20 25 30

y;生産量

総費用

〇〇●〇

自由参入のもとでの市場供給曲線

 平均費用が最小の点で,限

界費用と平均費用が交点を

持つ.

 平均費用は総費用関数上の一

点と,原点を結んだ線分の傾

き.

 限界費用は,総費用関数上の

一点での接線の傾き.

 生産量が非常に低い時,平均

費用に相当する原点と総費用

関数上の点を結んだ線分の傾

きは非常に大きいが,生産量

を増やすごとに徐々に平均費

用は小さくなる.

 平均費用と限界費用が一致す

るところで平均費用は最小に

c

b

(23)

〇〇〇●

自由参入のもとでの市場供給曲線

 価格( = 限界費用)が平均費用より高いかぎり,新規の

企業が参入し,価格( = 限界費用) = 平均費用であると

き,新規の企業の参入はない.

 限界費用と平均費用と等しくなるような価格を損益分岐

価格という.

 もし,市場における価格が損益分岐価格を上まわれば,新規の

企業が参入する.

 新規企業の参入は市場供給曲線を右下にシフトさせる.

 損益分岐価格のもとでの需要量により,市場の均衡取引

量が決まる.

 新規参入により社会的余剰は可能な限り大きくなるが,

(24)

● 〇〇〇

独占

市場

 市場に少数の企業しか存在しない場合,企業は価格支配 力を持つ場合がある.

 市場に1社しかいない場合を独占,2社の場合を複占,少数の

場合を寡占という.

 独占企業が存在する理由

 鉄道や電力など,固定費用が非常に大きい場合(自然独占).

 技術の特殊性や特許などにより,1人の生産者しか特定の財・

サービスを生産できない場合.

 独占企業は,市場の相場価格を所与とするのではなく,

  自らの生産量に応じて価格が決まることを見越して 生産量を決める.

 独占企業は需要を観察しつつ利潤が最大となるように生産量を

(25)

〇●〇〇

独占

市場

 独占企業は市場需要曲線を知っているとする.

 独占企業の供給量()と市場需要量は事後的に一致.

 独占市場では独占企業の生産量に応じて価格が決まる.

(26)

〇〇●〇

独占

市場

 独占企業の利潤()は次のように書き表せる.

 独占企業の利潤もの2次関数となる.利潤は以下で最大

 上の式は以下のように書き換えられる.

 企業の利潤最大化条件は「限界収入 = 限界費用」.

 右辺は限界費用.ということは,左辺は限界収入.

(27)

〇〇〇●

独占

市場

 限界収入曲線は右下がり.限界費用曲線は右上がり.交 点の生産量()が利潤を最大にする.この時,価格は需 要曲線上で決まるので.

 生産者余剰は

  台形 ofhb の面積.

 消費者余剰は

  ⊿ bhd の面積.

 競争的な市場と比べ,

⊿feh の面積の分

  余剰が失われる.

  (死荷重)

;価格 ;限界収入 ;限界費用

 

限界費用曲線

;生産量 ;需要量  市場需要曲線

限界収入曲線

(28)
(29)

● 〇〇〇〇

課税

とその

帰着

 完全競争市場が機能していれば,消費者と生産者の間の

市場取引で社会的余剰が最大化される.

 政府が市場に何らかの介入をすると,市場はどうなる

か?

 政府は福祉や医療,年金などの公共サービスを国民に提

供するため,対価として税金を徴収する.

 近年,消費税が注目を集めているが,消費税の導入は市

場均衡にどのような影響を与えるか?

 消費者に対する課税は,市場需要曲線に影響を与えるだろう.

(30)

〇●〇〇〇

課税

とその

帰着

 財の価格は,消費税率は t で,消費者は財の購入に対し

て支払う.

 予算制約は次のように書き表せる.

 効用関数はこれまでと同様

 予算制約式と効用関数より,以下の式を得る.

 効用を最大にする消費量を需要量 D とすると,需要関数

(31)

〇〇●〇〇

課税

とその

帰着

 市場需要曲線は  

 課税前の市場需要曲線を横軸との交点を一定にしたまま下シフ

ト.

Q*Q*

P*’

P* P;価格

市場供給曲線

e

h

o (1+t)P*’

B

市場需要曲線(課税前)

市場需要曲線(課税後)

 

 

DM, SM;需要量・供給量

 

 

(32)

〇〇〇●〇

課税

とその

帰着

 消費税の導入により,市場需要曲線が下シフトする.

 市場供給曲線は変化しない.

 消費者が支払う価格は.

従って消費者余剰は⊿ ifk の面積.

 生産者が受け取る価格は.

従って生産者余剰は⊿ oha の面積.

 税収は なので,

四角形 ahfi の面積.

 消費税増税による社会的余剰の損失(死荷重)は⊿ hef

 税収は消費者,生産者の余剰からは差し引かれるが政府が適切に

利用すれば社会的な損失が生じているわけではないと考えられる .

Q*Q*

P;価格 市場供給曲線

e h o f b a k B

市場需要曲線 (課税後)

DM, SM;需要量・供給量

d g i

 

 

(1+t)P*’

(33)

〇〇〇〇●

課税

とその

帰着

 税収 ( 四角形 ahfi )の構成.

 四角形 dgfi の面積分は消費者余剰の減少分に相当.

 四角形 ahgd の面積分は生産者余剰の減少分に相当.

 実際に税を支払っているのは消費者だが,消費者だけで

なく生産者も租税の負担をしていることになる.

 消費税課税により消費者の需要量が減少する分,企業

の収入・利潤が低下するから.

 税金が実際に誰に貸されているかではなく,実質的にだ

れが負担しているのかを考えることを「税の帰着」とい う.

(34)

● 〇

価格に対する

帰着

 

 税の帰着の配分はどのように決まるのか?

 消費者と生産者の負担分は線分 gf と線分 hg の長さで決

まる.

 線分 gf と線分 hg の長さの

比率は市場供給曲線と 課税前の市場需要曲線

が交わる部分(市場均衡 e )

の角度で決まる.

 両者の傾きが同じ場合

 供給曲線の傾きが大きい場合

 需要曲線の傾きが大きい場合

右図は⊿ を拡大したもの.

e2

g2 の場 

e3

g3 の場  合

f

h

e1

g1 の場  合

市場需要曲線の傾きと 市場供給曲線の傾きの

(35)

〇●

価格に対する

帰着

 

 需要曲線・供給曲線の傾きとは,価格の変化に対する需

要量・供給量の変化の大きさに相当する.

 供給曲線に対して需要曲線の傾きが急であるほど,消費

者の租税の負担が大きくなる.(逆は逆)

 価格変化に対して需要量・供給量の変化が相対的に小さ

いほど,相対的に多くの税負担をすることになる.

 ペットボトルのお茶に課税された場合,コーヒーや水など他の

飲料で代替がきく.

 一方,タバコに課税されると他の財では代替がきかない.

 ペットボトルのお茶に課税するよりも,タバコに課税したほう

が,消費者はタバコを買い続けざるを得ない分,多くの税負担

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