九州新幹線全線開業による鹿児島への経済効果
金融システム研究室 指導教員 飯島高雄
08175023 大島和晃
1.はじめに
鹿児島経済にとって念願であった九州新幹線 が全線開通して約1年が経ち、期待した効果あ るいは懸念された影響がどのように表れたのか を検証する時期に来ている。また、必ずしも開通 後の鹿児島経済の進むべき将来像が明らかにな っているわけでもない。そこで本研究では、九州 新幹線全線開通効果を生かすべく、鹿児島経済 が今後解決すべき問題点を分析し、改善策を考 察していくこととする。
2.鹿児島経済の抱える課題 2-1.中央からの距離・時間
全線開業前では博多に行くのですら乗り換え が必要であった。また、鹿児島空港の場所も悪く 中央まで行くには距離や時間の問題が大きい。 2-2.地理的な閉鎖性
鹿児島県は主に本土と呼ばれる九州島の部分 と離島と呼ばれる薩南諸島にわかれる。低地や 平野が極端に少ないために、県内のほとんどの 市町は周囲が山に囲まれている。それ故に各市 町は本土の各地に点々と散らばっている。地理 的にも他の県と比べると閉鎖性であり、県内の 需要が県外に流出しにくい一方で県外の需要も 取り込みにくい。
2-3.人口減少時代
鹿児島県の人口は1955年の200万人超をピ ークに減少に転じ、2010年には170万人と落 ち込み、過疎県の様相である。県域の人口減少を 止められなければ、市場縮小→労働力の確保が 困難→税収減少→財政悪化、といった負の連鎖 に陥り、持続的発展が難しくなる。人口減を伴う 経済の縮みを抑え、地域振興を図る有力な手段 の一つは交流人口を増やすことである。
3.新幹線全通の効果 3-1.交流人口の変化
平成16年3月の部分開業と今回の全線開業 では九州外の利用客が増加した。他県居住者の 利用目的として鹿児島の観光地(桜島・指宿・ 屋久島)への利用が多い。鹿児島県居住者の利 用目的として通勤・通学の利用者が部分開業よ
りも大幅に増加した。
3-2.県外からの需要取り込み
県外からの需要取組として、観光客や買い物 客の流入による売り上げ増加、人口増加、県外進 出の効果などの期待出来る。
3-3.県外への需要流出
県外への需要流出として県外企業による競争
激化、大都市圏への利用客の流出、事業所の県外
移転の悪影響がある。
4.新たな課題
4-1.第2次アクセスの整備
九州新幹線の影響により鹿児島中央は開発・
整備が行われ、急成長を遂げた。しかし、中央か
らの第2次アクセスの整備が進んでおらず、観
光地への交通手段がまだまだ少ない。 4-2.福岡へのストロー効果
部分開業では、今までにない経済効果を得ら れた一方、企業の支店・営業所の撤退や購買力 の県外流出といった側面もみられるようになっ た。これらの減少が全線開業時にはさらに加速 し、新幹線停車駅を有する他都市との間で厳し い競争が懸念されている。
4-3.地域振興の充実
新幹線の全線開業効果を沿線や一部の地域の みならず、離島も含めた県内各地に波及させ、県 全体の活性化を図るために、県民や民間事業者、 行政が相互に連携を図りながら、本県の魅力や 潜在能力を最大限に発揮する取組を、効果的・ 効率的に推進していくことが重要である。
5.おわりに
九州新幹線全線開通は、国内旅行の総需要が
伸び悩んでいる中、鹿児島のみならず、日本の観