金融資本市場と資金需要
10-1-116-0076
最近の金融資本市場の動向
( 1 )震災前後の金融市場の動き
東日本大震災発生後、株式市場や為替市場は短期的 に
大きな変動を経験した。 95 年の 1 月の阪神・淡路大 震災
前後、アメリカにおける 2005 年 8 月末のハリケー ン・カト
短期的な株価変動は阪神・淡路大震災後を
大きく上回る
東日本大震災後、日経平均株価は大きく下落した。地震 の発
生が金曜日の市場取引終了直前であったため、マーケット は週
末明けに、震災の影響を消化することになった。週明けの 月曜
日の日経平均株価 ( 終値 ) は、震災前の 10 日に比べて 8 %の下
阪神・淡路大震災とカトリーナの比較
その (1)
阪神・淡路大震災とカトリーナの比較 その (2)
株価変動の比較
東日本大震災が経済にもたらした特徴
株価の振幅がマーケットにも大きな影響を及ぼし ている。
東日本大震災の特徴として、サプライチェーン寸断 の影響、
原子力発電所の事故に伴う電力供給制約の問題や放 射
能被害、さらに風評被害などの、震災後の経済の不 確実
為替レートは一時的に円高に振れた後、安定
化
円ドルレート ( 日次 ) で見ると、海外投資家を中心に円が買われたことな どによる、急激な円高の背景が見られる。実際は、投資家の思惑とは
違っていたため、過度の変動がもたらされた例といえる。
次に、月次で見ると、東日本大震災後の円ドルレートはおおむね安定し ているのに対し、阪神・淡路大震災後のほうが急激な変動を示している。
今回、円買いに向かった投資家の影響や、阪神・淡路大震災の影響を 円高と結びつけた市場参加者によりこのような結果になったと考えられ
一
段
の金融
緩和
により、短期金
利
はさらに
低
下、長期金
利
は安定して推移
その (1)
東日本大震災の発生後、日本銀行は、被災地への現金供給 など一段の金融緩和を行った。この動きを受け、市場の短期 金利は低下した。金融緩和の一段の強化を受け、市場レート がさらに低下したためである。阪神・淡路大震災においては 、短期金利はほとんど変化していないことが分かる。東日本 大震災による経済的影響は被災地のみならず、広く全国に及
一
段
の金融
緩和
により、短期金
利
はさらに
低
下、長期金
利
は安定して推移
その (2)
長期金利の動向を見ると、東日本大震災後の金利動向 は比較的安定して推移した。震災後の復旧・復興のため の資金需要が予想されるなかでも、長期金利は抑制され
て推移しているともいえる。また、カトリーナは、エネルギー 価格上昇とも相まって、一時的な景気下押し要因と捉え
られたものの、金融政策の変更をもたらすような持続的な 下押し圧力にはならないと認識されたことがこの背景にあ
る。ブレーク・イーブン・インフレ率を見ると、東日本大震災 直後に一時的なマイナス幅が縮小したが景気の足踏みと
ともにマイナス幅の拡大していた。東日本大震災後に期
中
央銀行
による
潤沢
な資金供給が金融
部門
の外に
波
及
せず
中央銀行による潤沢な資金供給は金融市場の安定に寄
与している。その一方で、デフレとの関係を考える場合、中
マネタリーベース・マネーストック・名目 GDP の動向
リーマンショック後のアメリカにおけるマネタリーベースの拡大は大 規模であり、マネーストックの増加率を大きく上回っている。
日本においては、 2001 年の量的緩和導入時以降にマネタリー
(2) 資金供給と貸出
中央銀行の潤沢な資金供給にもかかわらず、金融 機関
による貸出が増加しない背景がある。特に、金融機 関の
側から見て、貸出よりも国債を始めとする債券購入
を
マ
ネ
ーストッ
ク
の
伸び悩み
は貸出の
弱
さが
主因
経済全体への通貨供給量が伸び悩んでいる原因を探
る。
マ
ネ
ーストッ
ク
の変動要
因
① 金融機関から家計や企業に対する貸出の増減 ( 貸 出要因 )
② 通貨保有者のマネーストックから他の金融資産
( 国債や株式等 ) へのシフト ( 通貨保有主体内の資 金シフト要因 )
③ 政府の資金過不足 ( 財政収支要因 )
④ 海外部門の資金過不足 ( 経済収支要因 )
マ
ネ
ーストッ
ク
変動の要
因分解
• 過去 10 年程度の動向を見ると、 2008 年を例外として、
貸出要因はマネーストックの伸びを抑制する要因である
。
• 2008 年は、リーマンショックによる金融市場の混乱から
、銀行への借り入れが一時的に大きく増加した年であり
、貸出要因は常に経済全体の通貨供給量を減少させる方
向に寄与してきたといえる。
• マネーストックの増加要因となっているのが、政府の財
政赤字拡大と経常収支黒字の増加である。
• 寄与度で見ると圧倒的に財政赤字の拡大による資金需要
増が大きい。財政赤字が拡大することにより、経済全体
の通貨供給量が増加していることになり、経済の面でも
近年では
利鞘
と
銀行
貸出に
相
関が見られな
い
• 貸出が伸びない要因を探るため、銀行の預金量と貸出金の動向や貸
出利鞘の動きを見る。
• 過去のデータを見ると、預金はコンスタントに増加する一方、貸出
金の方が、
リーマンショック直後を除き、横ばいや低下しており、 2009 年以降は 低下
傾向が定着しており、預貸ギャップは 2009 年以降拡大傾向にある。
• 預金増加により、銀行の資金調達は容易である一方、貸出先が探し
出せ
ていない。銀行に資金は、集まるが銀行から外の経済主体に資金が出 て
行かず、マネーストックの伸びにつながっていない。
• 資金調達と貸出の動向を利回りの面から見ると、 2006 年から 2009
年に
かけて、調達利率、貸出利率ともに大きく低下しているが、貸出利率 の低下
幅の方が相対的に低いため、貸出利鞘は若干の改善傾向にあった。
• 実際、貸出利鞘の変化と貸出金の増減を散布図にしても、両指標の
間に
確な相関はみられないため、銀行が、潤沢な預金量にもかかわらず、 貸出を
銀行
の貸出
減少
•銀行の保有資産の貸出のシェアは、 2008 年後半以降、低下傾向にある。その 間、株式や社債の保有シェアに大きな変化がない一方、国債・国庫短期証券のシ ェアを拡大しており、保有資産の内容が貸出から国債等にシフトしている姿と なっており、銀行部門が国
債増発の受け皿となっているといえる。
•銀行の収益構造を見ると、国債保有の収益性が貸出に比べて高まっているとい
国
債
保有
の
拡
大の背景に
企業
の
手元
資金の
厚
さ
•資金需要は依然として弱い。 2010 年半ば以降、設備投資は持ち直してきたに もかかわらず、企業の設備投資用の資金需要は依然として前年比マイナスを続け ている。
•デフレ状況が続くなか、企業の期待成長率は低下しており、設備投資の持ち直
しのペースは鈍い。その一方で企業収益は改善傾向にあることから、企業は設備 投資の増加を資金で賄える状態にある。