(抗議声明)
患者の医療アクセスを更に阻害する
定額負担制度導入に断固反対する
厚生労働省は5月19日、社会保障と税の一体改革を検討する政府・与党の集中検討
会議へ、外来受診時の窓口負担に一定額を上乗せする定額負担制度の導入を盛り込む 医療・介護制度改革案を提示した。同日付の産経新聞では、「初診時に200円、再診 時に100円程度を徴収する方向で調整」と報道されている。
しかし、本制度は健康保険法の附則にある「医療に係る給付の割合については、将 来にわたり100の70を維持するものとする」との規定に反することを、まずは指摘 しておかざるを得ない。政策実行における財源の裏付けが見出せない政府・与党にあ って、この法律をあっさりと反故にする厚顔な姿勢は許せるものではない。
また、これまでも幾度となく政府関係の諸会議で、一定額までは医療保険の適用と しない「保険免責制度」の導入が議論されてきた。本制度はこれとは異なるものの、 その様態を多少変えた形で再検討されていると言っても過言ではなく、一部負担金以 外の定額負担が生じるという点では、免責制度より更に過重になることも問題である。
本制度は健康保険制度の根本である現在の現物給付方式を変容することに繋がり かねず、憲法に基づく社会保障充実の理念からも著しく背反するものである。
一方、本会が加盟する全国保険医団体連合会が、昨年全国1万件の医療機関に行っ た患者受診実態調査によれば、半年間に「患者の経済的理由から治療を中止・中断し たことがある」医療機関は 38.7%、「窓口負担を理由に治療や検査等を断られたこと がある」は43.1%、「窓口負担の未収金がある」は48.2%との結果が出ている。
本調査や他の世論調査においても、窓口負担が払えないために落命すると言う悲惨 な事例も報告されているが、マスコミでも同様の報道が度々特集されている。
多くの国では、患者の窓口負担は原則無料であり、定率や定額であっても少額負担 の国が多い中、ただでさえ日本の原則3割負担は異常な重さと言える。ひと度本制度 が導入されたなら、この定額負担部分は将来に渡り引き上げられていくであろうこと は、政府の常套手段としても容易に推測され、更なる負担増を招くことに繋がる。
5 月 12 日に厚労省が示した社会保障改革案には、財源の確保については敢えて示
されなかったが、政府が6月下旬にもまとめる社会保障と税の一体改革案には、蓋し 消費税増税が盛り込まれる可能性がある。今日の日本の経済不況を後押しする形で東 日本大震災が起き、多くの国民生活が困窮する中で、本制度も含めこれ以上の負担増 は決して国民に受け入れられるものではない。
我々はこれまでも、いつでもどこでも、誰もが必要な時に必要な医療が充分受けら れるよう改善運動を進める中で、患者の窓口負担の軽減を一貫して求めてきた。
この度の定額負担制度導入には断固反対すると共に、空疎な政策に終始することな く、憲法に基づく社会保障の拡充に向け議論を進めることを切に求めるものである。